ザ・コクピット・オブ・コスモゼロ   作:島田イスケ

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不意を突くべし

そうして撃たれたビームこそが、古代の見た光だった。まるで巨大なエボシ貝といった形の砲台が、まさにその種の生物が隠れ棲むような岩の隙間にある台座から飛び出させた光線は、行く手の宇宙空間に浮かぶまるで四ツ葉のクローバーのような人工衛星を直撃した。

 

いや、当たったわけではない。その奇妙な〈四枚貝〉は受けたビームを反射して別の方向へ()らす機能を持っていたのだ。それはまさしく宇宙に置かれた〈鏡〉だった。

 

〈鏡〉と言っても、むろんガラスの板を磨いて銀を塗りつけたようなものではないが、〈空間磁力メッキ〉とでも呼ぶべきような技術によってによってそれがある前の〈()〉を〈折り曲げ〉、ビームであれなんであれ向きをカクリと変えさせられる。無数のこれを冥王星の周囲に配置することで、敵がどこから近づこうともただ一基の砲台だけですべて撃退せしめるのだ。

 

地下に置かれた砲台から撃ち出された一本のビームは、まず最初の反射衛星によって(はじ)かれ次の衛星でまた弾かれた。そうしてグルリと星の周りを回って最後に〈ヤマト〉の後方に着けて置かれていた一基の衛星に届く。

 

〈反射衛星砲〉の利点は、砲台の位置を隠しながら敵を狙い撃つことや、地平線の向こうの敵を狙い撃てるだけではない。敵の急所をひと突きにする最もいい角度を探してそこに衛星を送ることにより、不意を突いての必殺の一撃を放ちうるのだ。馬に乗った武士を待ち伏せ首の高さの宙に針金を張り渡すようなもの。あるいは、藪に潜みながら、武士の鎧の隙間めがけて槍を突き出す野伏(のぶせり)とでも呼ぶべきもの――それが〈反射衛星砲〉だ。思いもよらぬ角度から急所めがけて突き出す一撃。これを(のが)れるものなど果たしていようものか。

 

対艦ビーム攻撃は敵の艦橋を狙うが基本――とは言え、それは通常ならば決して容易(たやす)いことではない。〈ヤマト〉ほどの大型艦が相手ならばなおさらだ。秒速数キロから数百キロもの速度で進む宇宙軍艦はビーム砲撃を警戒して絶えず加減速を繰り返すものだし、そもそもそう易々(やすやす)と敵に首を(さら)しはしない。そして強力な主砲によって、近づく船の急所など選ぶことなく真っ二つにヘシ折ってしまうと言うのでは……。

 

そうだ、〈ヤマト〉の艦橋など、普通ならば簡単に狙って当てられるようなものではなかった。だが、〈反射衛星砲〉にとっては違う。敵が懐に入り込み、星の丸みを味方につけたと思うまさにそのときを狙って背から首を獲る。不意を突くことでそれを可能ならしめることこそ、この奇想天外とも言える兵器の(かなめ)なのだった。

 

ゆえに〈ヤマト〉に、これを(かわ)せるわけがない。古代が光を見たときには、すべてが決していたはずだった。亜光速のビームは一秒の数十分の一の時間で直径二千三百キロしかない星の周囲をカクカクと(めぐ)り、〈ヤマト〉の艦橋を背後から突くべく進んでいたのである。

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