〈ゼロ〉は気流に
古代が見る冥王星の地表は一度溶けたアイスクリームを冷蔵庫で凍らせ直し、出してはまた半分食べて凍らせて――と、そんなことを繰り返して食えたものでなくしたような荒れたガチガチの氷のかさぶた。ウロコのような
今のところ、めぼしいものは見つからない。あっても気づかずその上を飛び越してしまったのではないかという不安にかられる。
が、それ以上に、どういうことなのだと思う。敵地を飛んでいるはずなのに、相変わらず敵は何も仕掛けてこない。まさかここにいるおれ達に気づいてないなんてことがあるとも思えないが……。
どういうことなのだろう。わざと好きにさせているのか? 基地が見つからぬ自信でもあるか、それともどうせ
あるいはそうなのかもしれない。もはや昨日に地球人類が滅んだ今、この星の基地を死守する必要などもうガミラスは持たないのだ。どうせ廃棄する基地なら、囮の役を果たさせるのはむしろ有効利用と言うもの。だからあえておれ達戦闘機部隊には手を出さずにほっておく――そういうことなんだろうか。
敵の狙いはあくまで〈ヤマト〉。それもわかりきった話だ。すべては〈ヤマト〉をこの星に誘うため計画されたことでもある。それと知りつつあえて沖田が
と、そういうことなのか。確かに〈ヤマト〉が沈んだら、核で基地を潰したところでなんの意味もなくなってしまう。おれ達は帰るところを失って、燃料が尽きて自分で墜ちるだけ。だからわざわざ迎撃機を出す必要はナシ。
そうだ。そのため、こうしてほっておかれてる。ならば、と思った。さっき見た空を横切るあの光。
あれは対艦ビームだった。ならば〈ヤマト〉を狙ったものと言うことになる。あのビームが進んだ先に〈ヤマト〉がいた、と言うのであれば……。
まさか、と思う。〈ヤマト〉はあれに貫かれたのか? あれっきり同じ光を見ないと言うのはつまり、あの一発で〈ヤマト〉は沈んだ?
いや、そんな。どんな対艦ビームだろうと、ただ一発で沈むほど〈ヤマト〉はヤワではないはずだ。しかし大破させられて動けないでいるとしたら――。
何人かの顔が浮かんだ。整備員の大山田に、結城という船務科員。佐渡先生に、島と、それから、森なんとか。
ユキか。まったく、どうしてあんなの、こんなときに思い出すのか――けれどもあの小展望室であの女がおれを見た顔。
あのとき、なんと言われたんだっけ。思い出せない。出くわすたびにペラペラと立派なことをエリートらしくまくしたてられてきたけれど、ひとつも頭に入っていることがない。ただ、なぜかその眼がいつも、おれに向かって別のことを訴えかけてきていたような――。
あの彼女がブレーキかけてビームを
わからん。しかし、どうなってんだ? あの光は、まるで見当違いのところを抜けた。そのようにしか見えなかった。〈ヤマト〉を狙う光線が、今おれが飛ぶこの場所で見えるわけがそもそもないのに――。
と、思ったときだった。古代はまた光を見た。キャノピー窓の横側に、地平線の遠い彼方。黒い宇宙を一本の光線が後ろから前に抜けていく。
同じ光だ! 古代がそう思ったとき、ビームが〈ゼロ〉の前方で折れ曲がったように見えた。え?と思うとまた曲がり、地平線の下に消える。
「なんだ?」
言ったときだった。〈ゼロ〉の翼が気流に
途端、四方八方から、パルスビームが〈ゼロ〉めがけて飛んできた。古代はロールを打って躱し、クルクルと螺旋を切って高度を下げる。
そこに対空ミサイルが来た。後方からエンジンの熱を探知し何発も追ってくると同時に前からも数発。
「わわっ」
と叫んで古代は機を踊らせた。全部躱して振り切るのにグルグルと宙を転げまわらなければならなかった。
やっと最後の一発を地に叩きつけさせて、
「おーあぶねえ……」
そこに山本から通信が来た。『大丈夫ですか』
「ってなんだよ。今の、見てただけか?」
『ええまあ……ヘタに撃つと隊長に当たりそうだったので』
「ちぇっ」と言った。「それより、光を見たか?」
『見ました。宙で曲がったような……』
「やっぱり」
と言った。それから気づいた。あれはやはり対艦ビーム。ならば狙い撃たれたのは〈ヤマト〉!