ザ・コクピット・オブ・コスモゼロ   作:島田イスケ

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下弦のカロン

空の向こう、はるか遠くに茶碗を伏せたような半円。それが横へとゆっくり動く。古代のいる位置からは、冥王星の衛星カロンはそのように見えた。〈月〉は下弦(かげん)。つまり下半分が陰って見える半月形だ。

 

〈ヤマト〉はどうなったんだろう――カロンを眺めて考えながら、古代は〈ゼロ〉を飛ばしていた。何も発見できないままにそろそろ自分の索敵範囲は終わりかけている。あと二周ほど巡って何もなければおしまい。

 

タイガー隊の者達もなんの連絡もしてこない。32機が全機健在ではあるのだろう。レーダーにもエリアの端を、味方機を示す《FRIEND》の文字付き指標が横切るようになってきた。この直径千キロを部下が外から内へと巡り、自分と山本が中心から外へと巡る。蚊取り線香の内と外から火をまわすようにしてグルグル巡る九つの火が、そろそろ出会うときが近づいているのだった。

 

なんの成果もないままに。基地を討つべく腹に抱いた核ミサイルを誰ひとりとして放つことなしに。

 

全機がたとえ無事であろうと、これは作戦失敗を意味する。だが、それよりも問題は、タイガー隊と出会った後でどうすればいいかわからぬことだ。

 

敵基地に核を数発ブチ込んだなら全機まとめて〈ヤマト〉に帰投。トドメを刺したかは見届けずにサッサとこの星から逃げる――それが当初の計画だった。どうせ基地の中枢は地下深くに置かれていて、核でも潰せはしないだろう。〈ヤマト〉の主砲を(もっ)てしても貫くことはできないだろうと推測がされている。

 

それでもかなりのダメージを与えることはできるだろう。〈ヤマト〉としてはそれで務めは果たせるはずで、心おきなくマゼランへと向かえるのだ、と。

 

だが、その基地が見つからない。見つからなかったではすまないと言ったところで見つからないものはしかたがない。全機が核を持ったまま〈ヤマト〉に戻るしかないではないか。

 

だが、と思う。その〈ヤマト〉はどうなったんだ? ビームに殺られてもう沈んでしまったのでは? あれきり妙なカクカクビームの光は見えない。それはつまり、もうおれ達の帰る船がなくなってると言うことじゃないのか? だったらどうすればいい?

 

どうしようもありはしないのだ。燃料が尽きたところでおしまいだ。古代は燃料計を見た。目盛はまだ満タンに近い状態を指している。宇宙戦闘機としてはごくゆっくりの経済飛行をしているために、ほとんど消費していないに等しい。

 

窓にはカロン。南極点の近くを飛んでいた頃には真横に見た下弦の月は、古代が緯度を下げるにつれて少しずつ昇り、今ではやや見上げるほどになっている。

 

さて、どうなってしまうのだろう。〈ヤマト〉が沈んでいたならば、おれもあの〈月〉と同じにこの星の衛星となってグルグル永遠にまわり続けることになるのか……そう思ったときだった。カロンの黒い下弦の中に、光るものが見えた気がした。それもいくつも。

 

「ん?」と言った。「なんだ?」

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