「そうか。ラグランジュ・ポイントに敵は衛星を置いている。で、〈L4〉は使ってない。〈1〉〈2〉〈3〉はまずないから、残るポイントは〈L5〉で決まり……」と古代は言った。「『やえ、よのなか』はそういう意味だと言うんだな」
『他に考えがありますか?』と加藤の声。
「うん、まあわかる。けど、それでどうしろってんだ。おれ達に〈L5〉に行けってことなのか? けど……」
山本が、『〈L5〉と言ってもかなり広いんじゃないですか』
「だよなあ。そんなの対空砲のいい
加藤が言う。『隊長ならやれると思っているんじゃないすか』
「やめてくれ」
『とにかく』と山本。『敵は〈L5〉の衛星を使う……〈L4〉を使わないのは「使えない」と言うことでしょう。砲台はそっちの半球にあると言うこと』
「あ」と言った。「なるほど、それか。それもおそらく赤道付近だろうと言ったな」
『ええ』
「なら、だいぶわかったじゃないか。みんなでそこを探していけば……」
『砲台が見つかる?』と隊員のひとりが言った。『しかし「赤道半周」と言うけど、3600キロになりますよ』
「うーん」
と言った。日本の北海道から沖縄までが三千キロ。それ以上の距離と言うことか。
『それでも』と加藤が言う。『ここにこうしているよりゃいいだろ。行こうぜ、隊長。〈魔女〉を見つけに』
「うーん」
『それに』とまた別の隊員が言った。『行けば、何か手掛かりが見つかるかもしれません。それに〈ヤマト〉がまた何か掴んで教えてくれるかも』
「うーん」
『そうだよ、隊長。あと何かひとつわかればグッと範囲を絞り込めると思うぜ。行こう。行けば見つかるって』
とまた加藤。古代はうーんと唸ってから、
「そうだな」と言った。「わかった、行こう」
*
「敵戦闘機隊が一斉に向きを変えました。全機が同じ方向へと進んでいます」
冥王星ガミラス基地でオペレーターが言った。
「ほう」とガンツがレーダー画像に眼をやって、それから驚いたように、「これは!」
「やつら、気づいたかな」
とシュルツが言う。
ガンツが言う。「これは
「そういうことになるらしいな」シュルツは言った。「〈死角でないところが死角〉だ。我々は〈ヤマト〉がこちらの砲台の逆半球にいるときしか撃てなかった。そうしなければ重力均衡点にある
そして笑った。
しかしそれも
「まあいい。これでこそおもしろいと言うものだ」シュルツは言った。「注意エリアに敵が向かっていると言うのは、〈第一の死角〉に気づかれたと言うのに過ぎん。まだ〈第二の死角〉までは気づいていないということだ。そうだな?」
「はあ。ですが……」とガンツが言う。「しかし、時間の問題かと……」
「わかっているさ。〈バラノドン〉隊の準備は整っているのだろうな」
「はい。全機発進可能です」
「よかろう。出すのは、やつらが〈第二の死角〉に気づいたときだ」シュルツは言った。「死角に死角を重ねるだけだ。よほどのバカでなければ気づくさ。しかしそのときこそやつらの最期だ」