『あいつらは群れで襲ってきたんです! 何十機がひとつの大きな塊になって、上から――!』
インディア編隊の隊長機の叫びが通信で聞こえてくる。その内容に古代は慄然とした。
「つまり」と言う。「そうして一機に狙いをつけて、集中的に……」
『そうです!』
『いかん!』と加藤の声がした。『そんなの、
そうだ、と思う。他の者らも、
『そうだ、狙われたらおしまいだぞ!』『どうする?』
と通信で呼び合っている。レーダーには上昇していく敵の編隊。バラバラに映っていたものがやがてひとつにまとまって、ステルスの
『来るぞ!』
数人が口々に言った。そうだ、レーダーから消えたのは、敵がまたこちらの一機に狙いを付けて一斉に急降下を始めたと言うこと――次の標的は誰なんだ、おれか?と古代は思った。隊長機がこの〈ゼロ〉だと思えば当然やつら――。
おれを狙うに決まっている! そう思った。だが違った。『ぎゃああっ!』と言う悲鳴が通信で聞こえてくる。
レーダーを見る。《D2》――デルタ隊の二番機が敵にロック・オンされたのを
『おれか! 救けてくれ!』
と〈デルタ・ツー〉。彼の〈タイガー〉が宙を転がるようになって逃げ惑う――と、その機に向かって敵が、一斉にミサイルを発射したのが画面に映し出された。
『うわあっ!』と〈デルタ・ツー〉。『やられた! ちくちょう、翼がもう――』
『イシダ!』と〈デルタ・ワン〉の声がする。それがパイロットの名なのだろう。『生きてるのか! 脱出しろ!』
だが、次の瞬間に、また何十と言うミサイルが〈デルタ・ツー〉めがけて射たれたのがわかった。空の彼方で爆発する光が見える。
《D2》はレーダーから消えた。
敵の戦闘機隊は散開。ステルスの蓑が剥がれてレーダーに映り、すぐまた上に昇っていくのが見て取れるようになる。
『地球の機と一対一や三対一で不利な戦いをする気などない。百対一で一機一機と潰していくのみだ』と決め込んでいるのがはっきりと知れる動きだった。
「そんな……」
古代はつぶやいた。これをどう防ぐ。いや、防ぐ方法なんてあるのか……。
*
「百機が玉のようになって一機めがけて襲い掛かる。そして〈玉〉の先頭の十数機が標的にミサイルを射つ――これは近接信管で、命中を狙うのではなく標的の近くで爆発し、ダメージを与えるように設定しています。それ一発で墜落に至ることはまずないですが、完全に躱すこともまず不可能。弱ってフラフラになったところを第二撃目でトドメを刺す」
冥王星ガミラス基地司令室でガンツが言う。シュルツはそれをほくそ笑みながら聞いていた。
ガンツは続けて、「そうして一機殺ったならサッサと上に逃げてしまう。それに対してやつらは追いかけることができない……」
「フフフフフ」
「一機一機とやつらはただ餌食になるしかないわけです。『戦闘機の性能では地球の方が上だから、まともにやれば勝てるはず』とやつらは思っていたのでしょうが……」
「さて、どうするかな。これでもやつらはビーム砲台を探すつもりか」
「無理でしょう」ガンツは言った。「やつらもさすがに、こっちがいちばん端から片付ける考えなのは気づくでしょう。横一列に並んでモップをかけるように砲台を探すのは自殺行為だと知ることになる」
「連中もバカではないだろうからな。当然、やつらも、なるべくひとつにまとまって互いに互いを護り合う陣形を取ることになる。一機がロック・オンされたらまわりの数機でそれをかばう――」
「そうするしかないでしょうね」
「そうだ。けれども、それもやつらの思い通りにさせるものか。ここは一気に先手を取ってやつらの息の根を止めることだ」
「と言いますと?」
「何、簡単な話だよ。今までは、敵の機体を端の方から順番に片付けようとしていたな。次はその逆を行くのだ」シュルツは言った。「二機だけ色と形の違う戦闘機がいるだろう。銀色のやつだ。うち片方が隊長機だ。次はあいつを撃ち墜とす」
ニヤリとした。
「隊長機を失えば、やつらはいよいよガタガタになる。残りを
シュルツは望遠レンズが捉えた銀色の戦闘機の画像をスクリーンに拡大させた。地球人が〈コスモゼロ〉と呼ぶものらしい二機いるうちの先にいる方。
「バラノドン隊に命じろ。次に殺るのはこいつだ」