ザ・コクピット・オブ・コスモゼロ   作:島田イスケ

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窮状

「〈タイガー〉が二機殺られたようです。敵は一機ずつ狙いを定めて一斉に襲いかかるらしい……」

 

〈ヤマト〉第一艦橋で相原が言った。続いて新見が、

 

「まずいですね。それでは〈魔女〉を探すどころじゃなくなってしまう……」

 

「そんな。なんとかならないのか?」太田が言った。「それじゃこの船、こっから出られないじゃないか」

 

すると島が、「いや、どうなんだろ。いっそ〈ヤマト〉が氷の上に出てみたらどうなんだ?」

 

「は? 何言ってんですか。いま出たら〈魔女〉のビームに狙い撃たれちまうでしょう」

 

「いや、だからさ。完全に水から上がるんじゃなくて、氷の上にちょっと頭だけ出すんだ。敵の手の内はもうある程度読めたんだから、撃ってきたらサッと急速潜行で(かわ)す」

 

「そんなのうまくいくかなあ」

 

「敵がビームを撃ちさえすれば探さなくても古代には〈魔女〉の居場所がわかるだろ。そこにまっすぐ核をブチ込みゃいいことなんだ。その後は敵の戦闘機とも戦いやすくなるんじゃないか」

 

「どっちにしても、今はダメだぞ」徳川が言った。「今、藪がゲロイフェルター・ラックスをレバークヌーデルズッペにしている。それが済むまでエンジンは動かせん」

 

「はあ」と言った。「彼、大丈夫なんですか?」

 

「どうだろうな」

 

「けれど――」と新見が言った。「航空隊はこのままではまずいでしょう。敵はいちばん端の者から順に墜とす気でいるんですよね。だったら〈端〉を作らなければいいんじゃないですか?」

 

南部が言う。「ん? なんだ?」

 

「だから、全体で輪を組んで、〈端〉ができないような陣形を取るんです。で、真ん中に〈アルファー〉を置いて、他の者を護らせる。タイガー隊に〈魔女〉を探させ〈ゼロ〉で上から来るのを見張る……」

 

「ははあ」

 

と言った。〈コスモゼロ〉は〈警戒管制機〉としての任も受け持つ戦闘機だ。タイガー隊のミッションを後ろで護り支える機だから指揮官が乗る。この状況ではだから〈タイガー〉を護ると言うのが古代の役と言うことになる。

 

島はそのように考えた顔で頷いたが、

 

「待て」とそこで沖田が言った。「それをやったら、敵は必ず古代の機を次に狙うぞ」

 

「あ」と新見。

 

「いいや。敵はもう古代に狙いを付けているのかもしれん。わしならそうするだろうからな。さてどうする……」

 

言ってから、沖田は真田に眼を向けた。

 

「真田君。さっき何か考えがありそうなことを言ったな。古代を助ける手があるんじゃないのか」

 

「え?」

 

と真田が言った。彼は話に加わらず、コンソールにひとり向かって何やらやっていたのだったが、

 

「あ、はい。ひょっとしていけるかもしれないと思う手はあるんですが、しかし……」

 

「ほう。なんだ、言ってみろ」


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