藪はひたすらひたすらに重いハンドルを回していた。機関長はまだ何分もやってない、などと言ったがあんなの絶対嘘だと思う。もう二十日間くらいこの仕事をやらされている気がする。一体なんでこんなことに。
重いハンドル試練の道を回す男のド根性。真っ赤に光るランプの色が緑色に変わるまで。回せ回せ藪助治。貧乏クジもあったもんだ。
ハンドルは重い。とても重い。とてもひとりで延々と何分間も回すシロモノと思えない。よっぽど力のある人間なら話は別かもしれないが――一体全体、あとどれだけこれを回せばいいと言うんだ?
金庫の扉のようなものにはただ一個の赤いランプが付いてるだけで自分がこれを何回まわしてあとどれだけ続ければいいのか示すものは何もない。
そういうものがあってもよさそうなものじゃないかと思った。地球でパチンコ打つときだって機械の上にデータ表示器が付いてるだろう。せめて何かあればちょっとは――と思いながらランプを見ていて、それがパッと緑に変わるのを藪は認めた。え?と思う。
目をこすろうにも銀ピカのバイザーに遮られていて触れられない。機関室の中はまだ摂氏百度のオーブンで、藪が今いるこの区画には技術科員が送る冷気も届いていない。藪はいったん目を閉じて、
確かに緑だ。決して自分が色盲になり、赤と緑の識別ができなくなったわけではない。
藪は言った。「やった……」
*
「よし!」
と〈ヤマト〉第一艦橋で、波動エンジンの炉の状態をモニターしていた徳川が言った。
「ゲロイフェルター・ラックスがレバークヌーデルズッペになった。炉はもう危険な状態を脱したぞ。藪、よくやった!」
『ふわあ』
と、もうヘトヘトな返事がくる。艦橋クルーの南部を除く全員が徳川を向いて、『実際のところエンジンはどんな危険な状態にあって、どう危機を脱したのだろう』という顔をしたが、しかしあえて聞きただそうとする者はなかった。ゲロイなんとかがどんなものか知ってどうする、ともいった表情だ。
ともかく、エンジンが危機を抜けたと言うのなら、それはすなわち〈ヤマト〉が戦闘能力を取り戻したと言うことだ。医務室前にケガ人はもう転がっておらず、動ける者は包帯巻いて持ち場に戻り、重傷者のみベッドにくくりつける作業が主になっている。
機関科員も例外ではない。回復した者から順に元の配置に取り付いていく。カメラが撮ったそのようすがマルチスクリーンに映っていた。
ならば、当面の問題は、古代と航空隊員達が、〈魔女〉を討ち取れるかだ。相原が空の戦いに〈耳〉を澄ませているが、
「とてもビーム砲台を探すどころではないようです。もう限界ではないかと……」
「わかってる」
と真田が言った。眼は南部が取り組んでいる計算に向けたままだ。
島や太田がそのようすを
「出来ました!」
南部が叫んだ。キーボードをカチャカチャと叩いて何やら入力し、〈実行〉キーを押して言う。
「この線上のどこかです!」
メインスクリーンの画像が変わった。冥王星の地図が映る。そこに緩い弧を描く長い一本の線が描かれていた。
クルー達が皆それを見る。島が言った。「線?」
「そう」
と真田が言った。彼にはわかっていたらしかった。計算で〈魔女〉の居場所は〈点〉では特定できない。だが、〈線〉でならわかるだろう、と。
事はどうやら彼の読み通りであったらしかった。スクリーンの
「ここまでわかれば上出来だ」