ザ・コクピット・オブ・コスモゼロ   作:島田イスケ

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撃墜

『み……見たか、今の?』

 

〈タイガー〉乗りのひとりが言う。それを受けた別の者が、『見た。見たぞ』と応えて言う。パイロットらのそんな通信が、冥王星の〈魔女〉が居る地の上空を飛び交った。

 

「なんだ?」

 

と加藤は言った。幾人かのパイロットが『見た』と言う瞬間を、彼は見ていなかったのだ。

 

「なんだ? 何があったと……」

 

言うんだ、と言いかけて口を閉じ、ともかく何かが起きたらしい空の方角に眼を向ける。

 

一機の戦闘機が煙を吐いて墜ちてゆき、冥王星の地面に当たって激突するのが見えた。

 

ガミラスの〈ゴンズイ〉だった。山本のすぐ後ろに食らいつき、決して上には行かすまいとしていたやつだ。

 

それがたったいま墜落した。そしてそいつがいたところ、山本機のすぐ後ろに、今はもう一機の〈ゼロ〉が位置を取っている。無論、古代に違いなかった。本来は古代が先で山本がその背中を護って飛ぶのが定めのところ、今は逆に山本の背を古代が護っている格好だ。

 

これはつまり古代があの敵を墜としたと言うことなのか? しかし一体どうやって?

 

加藤は思った。そして他にも、〈その瞬間〉を見ていなかった何人かのパイロットが、『なんだ、何があったんだ、何を見たんだ』と口々に、〈見た〉者達に問いかけた。

 

『クルビットだ』とひとりが応える。『クルビットで山本の上を転がって衝突を(かわ)し、インメルマンターンで敵の背後を取った……』

 

「なんだと?」

 

と加藤は言った。クルビットにインメルマン――用語の意味はわかるにしても、ただそう言われただけのことでは、具体的に古代がどう飛び敵を討ったのか加藤にも理解できたわけではなかった。しかし思った。〈クルビット〉だと?

 

やったと言うのか、今、あの技を? 鉄棒で逆上がりをするように宙で機体をでんぐり返させ、正面から来る敵を躱す〈クルビット機動〉。シミュレーターの模擬空戦で古代はやってはのけたものの、その後にバランスを失って機を空中分解させた。フィギュアスケートで大技を決めてはみせたが着地ができず転倒する選手のような光景だった。

 

しかし今、古代がああして飛んでいて、山本の背後の敵が討ち取られたと言うことは――。

 

やったと言うのか、本当に? 今度は完璧に決めたのか。古代が〈ゼロ〉でクルビットを――加藤は思った。そのときに、『行け、山本!』と叫ぶ声が通信機に入ってきた。

 

古代の声だ。それに応える山本の『了解』と言う声が聞こえ、山本の〈ゼロ〉――〈アルファー・ツー〉が、上昇していくのが見えた。

 

その推力にモノを言わせて、ほぼ垂直に急上昇。見上げて加藤は、やったんだな、本当にやったんだなと考えた。クルビットを。ならば古代は――。

 

『〈アルファー・ワン〉より全機へ!』古代の声がした。『敵ビーム砲台まわりの対空火器のデータを送る! 山本の攻撃前に殲滅しろ! それで今度こそ〈魔女〉は終わりだ!』

 

「おおっ!」加藤は叫んだ。「隊長! あんたがおれ達のエースだ!」

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