ザ・コクピット・オブ・コスモゼロ   作:島田イスケ

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歓呼

「ヤマト! ヤマト! ヤマト! ヤマト!」

 

「ヤマト! ヤマト! ヤマト! ヤマト!」

 

また人々がヤマト・コールを上げ始める。近藤勇人もまた野球場のスタンドで、皆と声を揃えて叫んだ。周りでは同じチームの仲間達や、あの少年やその父親も叫んでいた。

 

ありがとう、ありがとうヤマトと叫ぶ声も聞こえる。オレは信じるぞ、君らの帰りを待つぞと叫ぶ声が聞こえる。〈ヤマト〉の力を疑う者などもうここにはいるはずもなかった。

 

「ヤマト! ヤマト! ヤマト! ヤマト!」

 

「ヤマト! ヤマト! ヤマト! ヤマト!」

 

北変電所でもヤマト・コールが上がっていた。敷井晴彦も傷の痛みをこらえながら皆と共に叫んでいた。足立や他の死んだ仲間に『聞こえるか』と胸の中で唱えながら。

 

聞こえるか、みんな。やったぞ。〈ヤマト〉は勝った。でも、おれ達がここでやったことも決して負けてないよな――そう唱えつつ敷井は叫んだ。

 

そうだ、信じる。信じるぞ。〈ヤマト〉の帰りをオレは信じる――そう叫ぶ者がいる。オレは、〈ヤマト〉が戻るまで、この地下都市を護り続ける。ガミラスへの降伏を唱える者に『バカめ』と応える! オレ達は、決して敵にも、味方の中の狂信徒にも敗けはしない!

 

その言葉に『おおーっ!』と応える声が響き、ヤマト・コールが続いた。

 

「ヤマト! ヤマト! ヤマト! ヤマト!」

 

「ヤマト! ヤマト! ヤマト! ヤマト!」

 

街の至るところで人がヤマト・コールを上げている。しかし、中にはその声を、ただ呆然と聞くだけの者も多くいた。〈ガミラス教〉の信者達や、降伏を唱えてきた者達だ。彼らは膝付き、首を振って、『嘘だ嘘だ』とつぶやいていた。

 

そしてまた、『日本人を殺せ』と叫んで外国からやって来ていた暴徒達。彼らも眼の前の光景を毒気を抜かれて見入るしかなかった。ある一機のタッドポールの中では黒コートにサングラスの男達が呆然と、自分達が元来た国でも民衆が『YAMATO、YAMATO』と湧いていると言う報せを見ていた。『日本へ行ったバカどもはもう帰ってこなくていい。あいつらどうせ国の恥だ』と言われていると言うニュースを。

 

日本国内の者らにしても国外から来る者にしても、狂信徒は一様(いちよう)に、『波動砲で冥王星を撃たれる前に〈ヤマト〉を止めよう。地下東京の市民をみんなブチ殺せばそれができる』などと信じて行動していた。その考えを本気で信じ込めるがゆえに虐殺を正当化できたのである。しかし事がこのようになると、彼らは彼らの歪んだ正義を見失う。そして、もはや彼らには、武器を捨てて逃げる以外にどんなこともできないのだ。

 

「YAMATO! YAMATO! YAMATO! YAMATO!」

 

「YAMATO! YAMATO! YAMATO! YAMATO!」

 

人は叫んでいた。人類社会の至るところで。月の基地でも、火星でも、木星の衛星にある基地の中でも。宇宙要塞や軍艦の中でも人が叫んでいた。

 

地球では〈ノアの方舟〉の職員達や、地下農牧場の職員達や、種子バンクの職員達が、涙を流し抱き合いながら叫んでいた。キリンや象やライオンがいる(むろ)の前で叫んでいた。フラミンゴや(わし)を飛ばす室の前でも、イルカが泳ぐプールの前でも叫んでいた。ありがとう、〈ヤマト〉、ありがとう! こいつらのためにも必ず帰ってきてくれ!

 

そして多くの一般家庭で、人々が、自分の飼う犬や猫に叫んでいた。ねえ、やったのよ。〈ヤマト〉がやったの! これであんたも生きられるのよ!

 

あらゆる国の人々が、それぞれの言葉でそう叫ぶ。そしてオウオウと泣き崩れ、力の限り声を上げる。

 

まさに号泣(ごうきゅう)だった。何も知らない犬や猫は、『このニンゲンは急に一体どうしてしまったのだろう』という顔をして眺めながら、自分の()(ちち)をやったりなどしていた。


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