Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 追加タグ:AngelBeats,ガルデモ



-5の4-

 ◇◇◇

 

 CiRCLE。

 

「次回までに先程述べた反省点を各自修正するようにしてください。では―――」

 

 練習終了です、と一人の女性が告げる。

 "Roselia"ギター担当。氷川紗夜。

 水髪ロングにキリッとした目。背中にギターケースを背負う美人さん。

 

「は~い、分かりました~」

「宇田川さん?」

「はい!了解であります!」

 

 "Roselia"ドラム担当。宇田川あこ。

 気の抜けた返事に紗夜の威圧が仕向けられるが、どうにか難を逃れる。

 

「ライブまで後少しだし、次は最後の仕上げって感じかな」

 

 "Roselia"ベース担当。今井リサ。

 バンドにおいて母親的存在を務める頑張り屋のギャル風な女の子。家庭的なものなら全般的に得意。

 

「は、はい………想像するだけで緊張します………」

 

 "Roselia"キーボード担当。白金燐子。

 奥手で控えめな性格の少女。キーボードの腕は確かであり、メロディーの要とされている。

 

「今回の対バン相手は私達"Roselia"にとってかつてない強敵になることは間違いないわ。入念に確認しておいて損はないはずよ」

 

 そして、最後の一人。リーダー。

 "Roselia"ボーカル担当。湊友希那。

 彼女は大好きな音楽に対し、猛烈な熱意を秘めながらも、ストイックな姿勢を顕著に示す。只、最近ではメンバーに優しさを見せる面も増えつつある。

 

 ―――"○□対決ライブ"。

 

 それが現在、彼女達が目指すもの。

 二つのライブハウスから代表バンドをそれぞれ三つ選出。己のプライドを掲げ、バンド演奏でぶつかり合うライブだ。

 今回、"Roselia"はCiRCLE代表としての初出場となる。故に、本番がどういう雰囲気で迎えるのか未だに想像がついていない。

 何しろ、相手が相手だけに。生半可な完成度で挑む行為自体が恐ろしいと感じてしまう。

 

 ―――絶対王者"アークラ"を筆頭として。

 

 ダークホースバンド"HTT"に魅惑のツインボーカルバンド"ガルデモ"が敵として立ち塞がるのだ。

 こちらもまた"ポピパ"に"パスパレ"と波に乗りつつあるガールズバンドで対抗する。どちらも味方として頼りになるバンド。だが、友希那にとって今回のライブ、勝利の旗がどちらに上がるのか、微妙なラインであった。

 

「この後、どうする?レストランで反省会でもしようか?」

「はーい!あこもリサ姉の意見に賛成でーす!」

 

 元気よく挙手したあこ。

 他の皆も特に反論を示す様子もなさそうかなと、確認したリサ。

 

「じゃあ、時間もそろそろだしスタジオ出よっか」

「えぇ」

「えっ?リサ姉!片付けるのが早い!!」

「何を言ってるのですか、宇田川さん。終わってないのは貴女だけです」

「なん………だと!?」

 

 紗夜の痛烈な指摘。

 確かに、荷物の少ない友希那は愚か、キーボードの燐子も既に支度は済ませてあった。

 そそくさとあこは機材をケースに戻す作業へ。

 

「そういえば、友希那」

「何かしら?」

「対バンの相手はどんなスタイルのバンドなのか聞いてる?」

「私も気になってはいました。湊さんも一目置いているとのことなので」

「そうね。私達"Roselia"はCiRCLEの代表バンドの一つとして出るわ。対して、迎え撃つのはライブハウス"SquareRoad"。まりなさんの話によれば、今年は特に粒揃いみたいよ」

「そのライブハウスって確か………ソウの?」

「………えぇ、アークラも出るわ。今回は正真正銘、私達の敵よ」

「それは………一筋縄ではいけませんね」

 

 絶対王者、アークラ。

 圧倒的な演奏とパーフォーマンスの融合したライブは観た者の心全てを掴む。

 一度、虜になってしまえば、後戻りは不可能なギター。身体全身を骨の髄から震えさせるベース。全てを喰らいにかかる迫力のドラム。聴いた者の魂を轟かせるボーカル。

 そんな定評のあるバンドが今回の対戦相手として立ち塞がる。弱音を吐きそうになるのも無理はない。

 

「ソウ先輩も出るんだ!湊さん、他に出るバンドはどういうバンドなんですか?」

「あれ?あこ、片付けは終わったの?」

「うん!」

「なら、まずはここを出ましょ。話はそれからよ」

 

 スタジオから完全撤収。

 廊下を抜け、受付に練習を終えた趣旨とスタジオ料の会計をリサが代表して済ませた。

 施設の自動ドアを潜り抜け、カフェテリアが広がるエリアに到着した。

 

「それで、湊さん。話の続きをお願いします」

「紗夜~?紗夜も案外気になってるんだね」

「別におかしな事ではありませんよ?情報収集は大切です」

 

 楽器を背負い、一団は歩いていく。

 前列にリサ、友希那、紗夜。後列にあこ、燐子と並んでいる。

 

「そうね………話すと言っても私も直接知ってるわけではないわ」

「へぇー。ってことはあれ?誰かから聞いた感じ?」

「まりなさんからよ。それによると、今回ライブに出場するバンドはアークラ以外も油断できないわ」

「友希那がそこまで言うなんて………ちょっと楽しみになってきたかも」

「あまり調子には乗らないように、リサ。冗談で言ってる訳じゃないのよ。私達が頂点を目指す上で―――」

「まぁまぁまぁ!!友希那の言いたいことは分かってるから!!今は落ち着いて?ね?」

 

 熱が入りそうになる友希那を瞬時に見分け、冷静に対処していくリサ。ここで話の路線がずれてしまうのは不味い。

 

「………話を戻すわ。出場するバンドはCiRCLE'

と同じ計三つ。一つ目がアークラだと言うのはさっき言ったわね」

「うん」

「二つはそうね………あくまで噂に過ぎないのだけれど、ガールズバンドにも関わらず、男女共に人気を剥奪するバンドが一つ」

「男女両方となると、様々な技術等が要求されますが………」

 

 Roseliaのファンは女性優勢。

 クールを重点的に青薔薇の骨頂を大いに振り撒くその背中は主に女性の目を虜にしてきた。

 逆に言えば、男性への反応は薄い。

 

「バンド名は―――"GirlsDeadMonster"。ファンの人はガルデモと略すようね」

「うわぁ………気迫ある名前ですね~。でも、カッコいい………!!」

「少女、死、怪物………私の勝手な想像だと、いかにもロックなバンドってイメージかな~」

「えぇ。リサの予想通り、王道ロックを貫いてるわ。ただ、そのバンドにはある特徴があるの」

「ある特徴………とは?」

 

 紗夜が尋ねる。

 

「ツインボーカルを採用してるのよ」

「それは………確かにCiRCLE内では全然見かけないかも………ポピパがギリギリ該当するぐらいかな?」

「戸山さんと花園さんですね。ですが、あれはあくまでコーラスという枠組みに収まってしまいます。ツインボーカルの枠組みに収まるとなると少々物足りないかと」

「因みにガルデモのツインボーカル、どちらもボーカルとしての実力は高いそうよ」

 

 折角なので休憩をする事に。

 適当に空いていたテーブル席を一つ確保したので、軽めの飲み物をオーダーをしに行く。

 

「皆、何する?」

「今井さん、付き添います」

「ありがとう、紗夜。助かるよ」

 

 その場の流れからリサと紗夜に決まる。

 友希那はいつもの、あこはオレンジ、燐子はココアと要望は予め聞き出しておく。

 

「あれ………?」

 

 ぴたり、と燐子の動きが止まった。

 

「りんりん?」

 

 真っ先に気付いたのはあこ。

 彼女に声をかけたあこ。だが、彼女の視線がとある一点を見つめたまま微動だにしない。

 

「綺麗………」

「どうかしました?」

「二人ともどうしたの?何か他に欲しいものでもあるの?」

 

 リサと紗夜も異変に気付く。

 一方で、あこが燐子の視線の先を辿っていた。一見、普通な日常の光景。違和感な点は皆無だ。

 やがて、ある場所に視点が定まる。

 

「あれは………弾き語り?」

 

 テラスのオープンスペース。

 小さな子供達が円を囲むように座り込んでいた。その中心には誰かがギターと一緒に店の椅子に座っている。

 足を組み、ギターを持つ少女。

 真っ赤なショートヘアーに季節外れのサングラスを装備。如何にも怪しい格好の人物を醸し出している。

 下手をすれば、通報案件。

 だが、しかし―――

 

「お姉ちゃん!!もっと!!」

「次は何を歌うの~?」

 

 意気揚々と楽しそうな子供達。

 保護者と思わしき人物も各々、自分の座るテーブル席から微笑ましく見守っている。

 肝心の張本人は満更でもなさそうに頬を緩めるとギターのネックを一撫でした。

 

「困ったな………ちょっとあいつらを待ってただけなのに、こうなるとは………」

「歌ってくれないの?」

「………よし。一曲、アンコールだ」

 

 幼き歓声が巻き起こる。

 純真な子供の上目遣いに敗北していた。

 と、顔を上げたその少女。離れた場所から見ていたこちらの存在に気付いてしまう。

 

「………呼んでますね」

 

 少女の右手がくいくい動いている。

 

「え?私達の事?」

「恐らく………私達、いえ。もしかすれば、"Roselia"自体をご存じなのかと」

「紗夜の言う通りかもしれないわね。ここは大人しく従いましょう」

 

 無駄な抵抗はせず、接近する。

 声が届く距離にまで近付けば、少女はその場を立ち上がった。

 子供達も何かを感じ取ったのか、残念そうな表情を浮かべながらも保護者の元へ散らばっていく。

 

「もしかして………アンタ達、Roseliaってバンドのメンバー?」

「そうですけど………」

 

 リサが答える。

 

「いや、急にすまない。只、個人的に確認したいだけだったから今のは気にしないでくれ」

「はぁ………」

「そういう貴方こそ何者なの?さっきの歌声といい、ただ者じゃないのは分かるわ」

「ちょっと友希那!?なんでそんなに喧嘩腰なの!?」

 

 リサが友希那の敵意ある瞳を捕捉。

 初対面に対してのあるまじき行為に慌てて対処しようとしてしまう。

 ところが、その少女が友希那の態度に気にした様子はない。むしろ、笑っていた。

 

「全然良いよ。名前を尋ねる前にこちらから名乗っておくべきだった」

 

 彼女はサングラスを外す。

 真っ直ぐ揺らぎない瞳を持つ少女が一寸も怯む事なく友希那の前へと並び立つ。

 

「あたしは"岩沢まさみ"だ。って、名前だけ言ってもあれか………そうだな、次の◯□ライブに"SquareRoad"の代表バンドとして出させてもらう()()()()のボーカルでもあるって言えば分かるか?同じバンドマンとして、よろしく頼むよ」

 

 ガルデモ。正式名称は―――

 

「ガルデモ………?はっ!?え!?この人がさっき話してたツインボーカルの内の一人!?」

「あっ!ホントだ!!」

「おっ?アタシの噂でもしてたのか?そうなのか?」

 

 ―――"GirlsDeadMonster"。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -5の5- に続く。

 




『ふじつぼ前線補足シリーズ』
・岩沢さん
→ガルデモにおいての主軸。この人がいないとバンドが始まらない。
 母校では体育館でゲリラライブを行う度に全校生徒を巻き込ませる程の人気ぶりを誇る。
 ファンも多く、噂も幾つか。その中には彼氏についての内容も―――


・ガルデモ
→ガールズバンドの原点にして頂点。
 これまでは四人での活動を主にしてきたが、最近からツインボーカルの導入が本格化となる。それにより、バンドとしての戦力も倍以上の効果を見せているらしい。


・弾き語り
→My Song


・作者のぼやき
→調べて知ったけど、岩沢さんの名前って「まさみ」なんだ。へぇ~。
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