書いたら出るって聞いたから書いた。それだけ。
(この前のイベントのあこちゃんの星4、逃したから決意した)
-1の1-『師弟関係』*
◇◇◇
カフェテリア。
「え?私のドラムを始めた切っ掛け?」
ふとした会話中に漏れたそんな問い。
う~ん、と思考に浸り始めた沙綾は左手に持っていたカップをテーブルへと置く。しばらく何かを迷っているのか唸る。
そんな状態へ沙綾を追い込んだ張本人の香澄はさらに追い打ちをかけていく。
「うん、さーやはどうやってドラムに出会ったのかなぁ?って思って」
「確かに。私達が出会う前から沙綾はバンドしてたから沙綾のドラムの秘訣は知らないね」
仲良く頷く香澄とたえ。
今更だけどバンド練習を終えたまま休憩がてらにこちらに移動してきた為、"poppin'party"のメンバー五人は勢揃いしている。
つまりは残り二人もいるわけで。
「二人も気になるよね?」
「まぁ………」
「ちょっと………ね」
有咲とりみもあちら側に回ってしまう。
りみからはこっそり「ごめんね…」とアイコンタクト。
「教えるのは良いけど、なんで私だけなの?」
どうにか悪足掻きをしようとするが。
「私はほら!キラキラしてたから!」
「私の場合は偶然出会った人がギターしてたからかな」
「私は………お姉ちゃんの影響かなぁ」
「小さい時、習ってた」
うん、皆すぐに説明終わっちゃった。
「私達の場合と違ってドラムって手をつけにくいでしょ?だから、さーやだと何をきっかけにしたのかな~って」
「まぁ、すぐにドラム始めるってのは確かに難しいかもね」
香澄の言う通り、ドラムは色々とめんどうな楽器でもあることは承知の事実だ。
教えてもらうにも、そもそも人とか場所が殆どない。それに家で本物で練習すると近所迷惑という難癖をつけられやすい楽器の代表でもあると想像つく。
「話長くなるけどいい?」
同時に頷く四人。
「そう来られると逆に緊張しちゃうな………よし、そうだね………私がドラムを始めたのはある人が影響してるかな」
「ある人?」
香澄が代表して声を出した。
「えっ~と………そうだ!この前、私達が出た合同ライブに男の子のバンドがゲスト枠として来てたでしょ?」
「うん、男子のバンドなかなか見ないから新鮮な感じがしたね」
「あ、お姉ちゃんが彼らは全体を見ても演奏レベルが高かったって言ってたけど………」
「やたらあの時は盛り上がってたな」
「私の言うある人ってのはそのバンドのドラムの人」
「「「………え?」」」
香澄、りみ、有咲の動きが一致した。
唯一の例外、たえは少し考えた様子を見せるとまさかのーーー
「蒼真君?」
「せ、正解………」
これには沙綾も驚いた様子を見せる。
「蒼真君?おたえ、その人知ってるの?」
「うん、CiRCLEでバイトしてた」
「ん?でも、働いてるとこ見たことねぇけど?」
「うん、私も気になってけど、最近はあまりシフトが入ってなかったみたい」
ふーん、と有咲の興味なさげな態度。
実際、ないのだろう。
一方で、香澄は席を立ち上がりーーー
「まだ蒼真君とはちゃんと喋ったことないから、今度聞いてみようよ!!」
「パス」
「香澄ちゃん、初対面で急に質問されても困るだけじゃあ………」
「あはは………」
彼の知らない所で、ちょっとした災難が生まれたが沙綾は苦笑いした。彼なら適当に香澄の相手をするだろうからフォローはしない。
「で、沙綾は蒼真君の何?」
「な、何って………」
たえの真っ直ぐな視線に沙綾は思わずたじろいだ。他の三人もいつの間にか黙ってこちらに耳を傾けている。
なんと言っても聞き方がいやらしい。天然おたえのことだ。無意識に出た言葉に違いない。憎めない。
「彼女?」
ーーー刹那、ばっ!と香澄の方に振り向くりみと有咲。
乙女に恋話は大好物。ましてや、沙綾にそんな噂は一つも無かった為、より一層二人の興味度が右肩上がりしていく。
お互いに意志疎通したのか、頷き合う。
「「「で、どうなの!?」」」
再び、ばっ!と振り向いた三人。
「ぅ………私が………か、彼女………」
三人は目撃した沙綾の顔はトマト以上に真っ赤になっていた。俯いたその表情はまさに恋する乙女と言えた。
これは………手応え有り?
「照れてる~」
「写真パシャり」
「さーやちゃん………可愛い………」
「まさか………」
にやにや。
「っ!!」
生緩い視線に気づいた沙綾、とっさに顔をぶるぶる横に振りまくる。
「今は蒼真とはそんな関係じゃないから!」
「今は?」
「おおっ!!」
「えっ、あっ………そうじゃないからぁ~………」
火照る頬を抑え、沙綾は懸命に否定する。がその返答に、いつもの彼女らしさはなく、萎むかのように薄れていく。
沙綾の失われた元気さは他のメンバーが回収していた。具体的には香澄とたえ。
「もうそのぐらいにしておかないと沙綾ちゃんが………」
「えぇ~」
「見てるこっちが恥ずかしいわ!!」
止めに入るりみと叫ぶ有咲。
香澄が抗議するが、受理される様子はない。
「もう………話すよ」
既に疲労困憊の沙綾。
彼女の口から語られるのはドラムを通しての彼との思い出話であった。
◇◇◇
中学校。
「バンドやらない?」
放課後の下駄箱。偶然訪れた二人きりの空間で持ちかけられた話は予想外の勧誘であった。
彼女の名前は"海野夏希"。
それほど親好が深いわけでもない、単なる同級生という認識だった。誘われる理由がぱっと思い付かなかった。
「えっと………私が?」
「うん」
「どうして?」
「山吹さん、リズム感良さそうな気がするから」
「そんな理由で………」
しかもあの顔は勘で選んだ顔だ。
夏希は断れる可能性はないと見ているのか、それはもうキラキラな瞳を浴びせてきている。
やったことがない未知の世界。バンド。
躊躇していると夏希が、何を思ったのか。
「試しにやってみるだけで良いから。お願い!!私達のバンド入ってくれない?」
両手をぎゅっと握られる。
この頃から、自分でも頼み事は断れない性格を理解していた私。勿論、この状況でも例外な手段を取れる訳ではなく………。
「分かった。分かったから」
「ほんと!!やったぁ!!沙綾、ドラム得意そうだもんね!!」
「ド、ドラム………?」
一応知っているが実物を触るどころかどういう仕組みで音を鳴らすかさえ知らない。
というか、音楽自体が無縁の存在。
「私がボーカルとギター。で、沙綾にはドラムをお願いしたいんだけど」
「やったことない………」
「あ、それは大丈夫。ドラム経験者が教えてくれるって話つけてあるから」
「えっ、あっ、展開が早い。ちょっと待って」
ドラム。ドラムかぁ………。
楽器初心者なので誰かは分からないが教えてもらえる、とのこと。
試すだけならまだ良いかも。
「あ、急にごめんね」
「大丈夫。整理はついたから」
「加えて早速で悪いんだけど、明日の放課後大丈夫?」
「明日?時間はとれるけど………」
まさか。
「じゃあ明日のこの時間にここ集合でよろしくね」
「………やっぱり、一つ良い?」
「何?」
「その………教えてくれる人って………」
「あー!そういえば言ってなかったね」
ドラムを教えてくれるのはありがたい、とは言え、まだ相手の事を一切合切知らないのは不安になる。
「山吹さんが一番知ってる人だよ?」
「えっ?」
そして、名前を彼女は口にした。
「ドラムを教えてくれるのは蒼真先輩。"山吹蒼真"君」
ーーーえ?あの"蒼真"?
◇
次の日の放課後。
「あ、来た、おーい!!」
授業中、うやむやな気持ちと格闘した後の私の足取りは軽いとは言えなかった。
ただ約束をむやみやたらに破るわけもいかないので渋々向かったのだが、見えた矢先の私の初感想として、あのテンションに慣れるのには時間がかかりそうだなぁと心がそう諦めている。
そんな私の心情は露知らず、夏希はこちらへ駆け寄ってきた。
「じゃ、早速行くよ!」
「えっ、あっ、ちょっと!」
整理する間もなく、私は夏希に腕を掴まれて引っ張られる。
「………」
外に行くのかと思っていたが意外にもそうではないらしい。というのも、現在の私達は校舎の階段を上っている最中であるからだ。
やがて四階に辿り着くと、夏希は先々と廊下へと歩き出す。既に腕の拘束は解除されていた私も後へと続く。
この校舎の四階と言えば。
そんなことを考えていると、夏希は一つの扉の前で振り向く。教室を確認すると私の予想通りの場所であった。
"第二音楽室"。
「入るよ~」
コンコン、と部屋をノック。返事を待たずして夏希は室内へ入る。少し慌てて私も扉が締め切る前に室内へ。
「いや、まだ何も言ってないんやけど」
「えー、良いじゃないですか~」
「………うん、見た目通りの性格やな」
「それ、どういう意味です?」
「気にすんな」
第二音楽室の内部は至って普通。
ピアノがあり、授業で生徒が座る椅子が並べてあったりと。
ただ私が違和感を感じたのは教室の後ろ部分にボン、と置かれた楽器。
そう"ドラム"である。
夏希が話している相手はそのドラムに隠れて座っているからなのか、はっきりと姿を確認できないが、声の感じから男子なのは判断がつく。
「それはそうと、先輩、連れてきました」
「ん?………あ~あれね。ん?もう見つけたのか」
「こう見えても結構私は本気なんです!」
未だ扉から数歩の位置にいる私。
ドラムの近くへと移動した夏希に手招きをされて、私もそこへ向かう。
初めてドラムを意識して間近で見た。
ーーードラム。私が演奏する………。
刹那、彼が突然立ち上がった。その動きについつれらた私と彼の目が合う。
ゆっくりと彼は口を開いた。
「久し振り………さーちゃん」
「うん、久し振りだね、ソウ君」
これが、私と蒼真とドラムの出会い。
小学校以来の再会であった。
-1の2- へ続く。
*大体一話辺り、これぐらいの量でいきます。