Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 私情ですが、スマホを機種変更します。
 やったねと思う反面、ストックが全て消えてしまう可能性もあるので早い内に仕上げてしまいます。

 それと、沙綾はヤンデレタイプ!(唐突)



-2の1-『強制連行』*

 ◇◇◇

 

 とある地下。

 

「っ………」

 

 目を覚ました。

 ぼんやりとした記憶が蘇る最中、俺は辺りを見回した。

 そして、意識がくっきり覚醒する。

 

「………なんやこれ」

 

 部屋だ。

 ただ窓がない。そういう設計なのか、もしくは地下なのか。時間が分からん。あ、時計ある。まだ十時か。

 部屋の中央で椅子に座っているのが俺。

 足が動かない。ということは、今の俺の状態は所謂監禁なのだろうが、監禁部屋にしては部屋の内部はいかにも普通。ド普通。

 一風変わっているのはキーボードにギターケースやアンプ、果てには電子ドラムも置いてある。てか、広くないか?この部屋。

 

「あ、起きた?」

 

 誰かが階段を下りてきたような気配。

 ちょうど背後なので見えない。

 

「起きた」

 

 隣に来た誰かを確認。沙綾だ。

 

「皆、後ちょっとで来るよ」

「皆?」

「さっき言ったでしょ?私のバンドメンバーを今日紹介するって」

「あー思い出した。てか、俺寝てた?」

「寝てたみたいだね」

 

 監禁ではなく、単なる睡眠不足でした。

 よくよく考えてみれば、足が動かんのも変な体制で寝たせいで痺れているだけだ。両手は普通に動く。茶番すぎた。

 さてーーー今朝の話だ。

 一夜漬けのせいであまり寝れてないのにも関わらず、いきなり沙綾に呼び出された。愚痴を溢しつつ、指定された場所にいけば沙綾に付いて来てと言われ大人しく付いていく。いつの間にか古風な一軒家の玄関に案内されたかと思えば、沙綾が入っていったのは家ではなく蔵。扉になんか『蔵イブ』とか書いた表札っぽいのがあったけど。

 階段降りた先で沙綾に「ここで待ってて」と言われたのが今いる場所。蔵の地下部屋。

 今日の目的は沙綾の現バンドメンバーの紹介らしいが、どういう成り行きで決定したのか、詳しい事情は話してくれなかった。

 

「てか、何?その服」

「あ、ようやく気づいた。どう?今度のライブで着る衣装だよ」

 

 くるり、と一回転する沙綾。

 全体的に青を基調とした服装。パーカーにミニスカートと格好いい女の子らしい仕上がりとなっている。

 俺は自然と口を開いていた。

 

「良いやん」

「ほんと?」

「いつもと違う沙綾っぽさが出てて、なんか………新鮮に感じるわ」

「うんうん、ありがとね」

 

 沙綾は満足そうに頷く。

 正直に見惚れていたなんて男のプライドとして口には出せないがこれは映像保存級だ。

 元々、世間体で見れば沙綾は美少女の類いに入るだろう。加えて、最近の沙綾は成長して大人っぽさも無意識に取り込んでいるせいか、彼女の醸し出す美しさは格段と上がっている。

 

「あ、来た」

 

 沙綾の視線が背後の階段へ。

 もう既に痺れも取れたので俺も振り向いた。

 

「お待たせ~」

「おまたー」

「香澄ちゃん!転けるから走らないで~!」

「………はぁ~」

 

 順に降りてきた少女達。

 彼女達もまた沙綾と同じ型の衣装を身に纏って登場した。てか、明らかに最後に降りてきた子、面倒くさそうに溜め息ついてる。きっと俺と似たような待遇にあったんだろうな。

 さてと、俺からしてみれば、初見の子の方が多いが、見た感じ全体的に賑やかなメンバーが揃ってるようだ。

 

「あぁ、どもどうも」

「蒼真君、今日は来てくれてありがとね」

「どういたしまして」

 

 猫耳の髪型をした少女が代表して言う。

 その間に他のメンバーは各々、自分の担当の楽器の元へと移動していく。あ、やっぱりあの電子ドラムは沙綾のなんだ。

 

「正直、あんまり事情は把握してないんやけどね」

「うん、だから、蒼真君には特別にこれから私達"Poppin'party"の演奏を練習がてらになるんだけど見てもらって良いかな?」

「観客は俺だけ?」

「うん。今回だけ!」

 

 おぉ。特等席、というわけか。

 なら、折角だし堪能させてもらおうではないか。沙綾の属するバンド"Poppin'party"の現段階での実力を。

 

「じゃあ行くよ。ワン、ツー、ーーー」

 

 沙綾のカウントでライブが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 有咲家、蔵の地下。

 

「ありがとうございました!!」

 

 香澄の声が響く。

 合同ライブの時にも感じたが、彼女達のバンドの魅力は単なる演奏力ではなく、そこから垣間見れる、人を惹き付ける音楽性だ。

 実力で言えば、RoseliaやAftergrowの方が上。それでも、Poppin'Partyが他のバンドに比べて色褪せないのは彼女達が全身で音楽を楽しみ、その楽しさを全力で観客に魅せてくれるからである。

 簡単に思えて実は極悪難易度な所業をポピパはこなしていると言える。これだからバンドは面白い。

 

「あれ?お前らってそんな曲すんの?」

「ううん。こういうダークな感じなのは初めて!」

 

 普段からのイメージだと明るくポップ調の曲がメインなのだが、先程披露されたのはダークロックな雰囲気を放つ曲だったので少し驚いた。

 

「やんな。前と全然違うからびっくりしたわ」

「"ティアドロップス"って曲!!」

「なるほど。良い曲やと思うよ」

「やったね!」

 

 ガッツポーズをとる香澄。

 

「香澄、そろそろポピパの事を………ね」

「あ………ごめんね、さーや」

「ううん、全然平気」

 

 盛り上がってる俺と香澄。

 これは区切りをつけないと、と勘づいた幼馴染みの沙綾が優しく次へ行くようにと香澄へ言う。

 

「それでは、蒼真君!私達ポピパの紹介タイムへと入りたいと思いまーす!」

 

 わぁー!と香澄さん、ハイテンション。

 ばしっ、とばかりに香澄がまず狙いをつけたのはベースを持つ女の子。

 

「まず!ベースのりみりん!」

「お、お願いします………」

「よろしく~」

「りみりんはチョココロネが大好きだよ」

「か、香澄ちゃん!?」

「そうなん?もしかしたら、山吹ベーカリーの常連さんかな?」

「は、はい!」

「だとしたら、俺と昔会ってるかもしれんね。俺もたまに店番してた時もあったから」

「あ、そうかもしれないです」

 

 ひとまず挨拶はここまで。

 次に香澄が向かったのはキーボードの子。俺と同じ境遇で此処にいると予想される金髪のツインテール。

 

「次は有咲!私達が練習に使ってるここも有咲のお陰で出来てるんだよ!」

「お、おい。余計なことは言うんじゃーーー」

「後!蒼真君のバンドの大ファンだよ!」

「うわぁぁぁあああ!!!香澄ぃぃぃいいい!!!」

 

 有咲の悲鳴を合図に鬼ごっこな開始。

 キーボードなので手ぶらな有咲はついさっきギターを置いた香澄を懲らしめようとしている。

 ファン、と聞いて嬉しくないミュージシャンはいない。そうかそうか。

 暫くして喧騒が静かになった。かと思えば、二人の姿はない。

 

「どうする?二人ともどっか行っちゃった」

「勝手に進めても良いかな?」

 

 残されたメンバーも何事もなかったかのように事を進める。

 慣れてる。これが普段のポピパなのだ。

 沙綾は既に承知してるので最後の一人はリードギターの子だ。

 

「私のことは覚えてる?」

「………え?会ったことあんの?」

 

 だとしたら、どこでだ。

 俺の返答に彼女のとった行動は顔を両手で隠す仕草であった。

 そして、悲しそうにーーー

 

「そんなぁ………私としたあれはお遊びだったのね………」

「おたえ!?」

「おたえちゃん!?」

「まじ何したんや俺!?」

 

 怖い怖い。マジ、記憶がないぞ。

 

「っていうのは冗談で」

「はぁ………良かったな、俺」

「蒼真君と会ったことがあるのは本当だよ」

「………」

 

 これは真か嘘か。

 

「リードギター担当の"花園たえ"。CiRCLEのバイトの件でお世話になった女の子です」

「CiRCLE………花園………あぁ!!思いだしたわ!いたな!てか、俺、がっつり教えたな!」

「その花園!」

 

 バイトの後輩に花園という子にPAの基本を教えた覚えはある。これは冗談でも幻覚でもない。

 

「名前………今初めて聞いたな。たえって言うんか」

「そう言えば言ってなかったね。たえでもおたえでもお好きなように呼んでね」

「今、ハートマーク飛んできた」

「えぇ~。飛ばしてないよ~」

 

 っ!?これは………。

 

「沙綾ちゃん?どうしたの?」

「何でもないよ、大丈夫」

「それなら良いんだけど………」

 

 無言の圧力、強し。

 

「最近、全然バイト入ってないけど大丈夫?」

「流石にヤバイよな………まぁ近々戻るから言っておいてくれ」

「うん、分かった」

 

 そんなこんなでポピパの紹介タイムは幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 有咲家の蔵。地下部屋。

 

「ねぇねぇ」

「ん、なに?」

 

 つんつん、と香澄に肩をつつかれる。

 香澄は先程まで行方を眩ましていたのだが飲み物を入れたコップを入れて、さっき戻ってきた。なんでも有咲のお婆ちゃんの差し入れとのこと。ありがたい。

 それはそうと、俺の瞳に映るのは興味津々とばかりの香澄のみ。

 

「蒼真君の喋り方、それって関西弁?」

 

 そんなことを聞かれた。

 ここは東京である。関西とはほど遠い地域である。

 だが、しかし。

 

「そうやね」

「おお!!」

「母親が根っからの関西人。それに俺が生まれてちょっとまでは関西に住んでたらしいし、その名残で俺もちょっと関西弁っぽくなってもうたみたい」

 

 普段というか初対面とかでは標準語で話す。

 が、完全に油断してたり、リラックスしてたりするときには自然と関西弁も混じった話し方になっているらしい。

 らしい、というのも俺自身あまり意識してないから何とも言えないのが現状。

 

「それからはずっとこっち住んでるせいか、関西弁と標準語がごっちゃ混ぜになってる」

「おぉ、カッコいい………」

「そうか?」

 

 目を光らせる香澄に怯えを感じる。

 

「香澄、忘れてるんだろうけど………」

「何?さーや?」

 

 話の一部始終を聞いていた紗綾は会話に入るために近寄ってきた。相変わらず俺は座ったままだけど。

 

「ソウ君、先輩だよ?」

「ソウ君?」

「うん、どうしてそっちに興味が行っちゃうんだろうね………香澄らしいと言えばそうなんだけど………」

「さーや、蒼真君のこと、呼び捨てで呼んでなかった?」

「あれはだね………その方が伝わりやすいって思って」

「じぃー」

「もぅ………今はそれよりも!」

 

 先輩よりも渾名の方に食い付いた香澄。

 正直に俺から言えば、分からんこともない。沙綾には悪いが。

 

「取り敢えず、これでも先輩だからね!皆!」

「先輩?………だと?」

「言われてみればそう見えるね」

「おたえちゃん………それは失礼だよ」

「何だろうな………俺」

 

 もう俺の立ち位置が絶賛迷子中。

 有咲は完全に疑い深く、たえは然り気無く酷いことを言う。心がずたボロですわ、

 唯一の癒しはりみちゃん。

 

「蒼真君はさーやの事、なんて呼んでるの?」

「さーちゃん」

 

 また外野が騒がしくなってくる。

 

「へぇ~。あの沙綾がねぇ~」

「さーちゃん、さーちゃん」

「仲が良いんだね」

 

 そこ、静かに。と厳重注意ばりの視線を向ける沙綾。

 

「改めて言われると………恥ずかしいね」

「俺はそんなに。他の奴等にもたまにソウ君って呼ばれるし」

「えっ………ソウ君、後で覚えといてね」

「なんでぇ………」

 

 何故か一気に不機嫌へと変貌した沙綾。

 あまりの剣幕に俺は否定という概念を失っていた。

 

「決めた!」

 

 と、ここで香澄が声を大にして言う。

 短い付き合いの俺でも分かる。これはただ事では終わらない幕開けの合図だということを。

 

「蒼真君!あ、じゃなかった。ソウ君!私達にも付けてよ、()()!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -2の2- へ続く。

 




 *有咲。実は熱狂的ファン。ベースさんのせい。
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