スターが足りません!!切実!!
さて、沙綾編も、沙綾がついに………って感じで話が進むかもしれません。私次第です笑笑
ってことで、評価・感想などお待ちしてますよ。
◇◇◇
―――なんか温泉旅行に行くらしい。
とまぁ、唐突に言われても理解が追い付かないのが普通だ。よし、ゆっくりと最初から整理しよう。
『なんか旅行券が商店街のくじで当たったから行くわよ』
数日前、俺の母親が晩飯中にそんなことを言った。相変わらず、破天荒というか前振りがないというか。兎に角、突然出現したその話題に俺と妹の反応は最早適当に返事を返すぐらい。
その日は偶然、帰宅していた父親が口数少なく、母親に言葉を返す。それを待ってましたとばかりに―――
『温泉よ!!お・ん・せ・ん!!山吹家総一同揃って行くわよ!!』
勿論、下っ端の俺らに拒否権はなかった。
言い忘れていたが、今日はその温泉旅行の初日である。
現在の様子はというと、旅行の荷物を忘れ物がないか確認して家族愛用の自家自動車に丁度積め終えた所だ。
「んじゃ、行くわよ~」
母親の合図で車が走る。運転は親父が担当。
後部座席に座った俺。隣には同じ被害者でもある妹も座っており、退屈そうにスマホを弄っている。
という俺もやることがない。
イヤホンを耳に当てて、曲でも聴いて時間を潰すことにした。
―――数分後。
「ん?」
車の揺れがなくなった。
到着にしては時間が早すぎる。事前の情報では目的地までは数時間単位での移動のはず。スマホの時刻を再確認して、明らかに着いたにしてはおかしいと俺は判断する。
外を見てみないと。俺は座席を倒して、寝かしていた上半身を起こす。そこから俺は窓をちらっと覗いた。
―――"山吹ベーカリー"。
ん?、と目を疑った俺。まず第一に考えたのは此所でパンでも買って長距離移動のお供にでもする可能性だ。
きっとそうに違いない。早朝からの出発でもあるので朝食の事も考えての行動だろう。
「ちょっと待っとってね」
母親が車から降りて、店内へと入っていく。一方で俺はまた音楽鑑賞を再開した。
ドラマー妹のあこから新曲のフレーズを一緒に考えて欲しいと言われていた俺は早速その曲のデモを聞き流していく。
全体を見越して、ぱっと思い付くままにドラムのフレーズを叩く自分を想像。
これは俗に"イメージトレーニング"だ。
略して"イメトレ"。楽器が殆んど手元にないドラマーがよくする恒例の練習方法でもある。
「あっ、悠希ちゃん!!今日はよろしくね!」
「うん、そうやね。よろしく。純も今日は楽しもう」
「お、おう………」
ちらりと俺は横目に確かめる。
どう見ても、従弟の純と紗南だ。二人とも体格に覚束無い荷物を車へと引き揚げようとしている。
「え?なんでおんの?」
「あっ、ソウ兄!おはよー!荷物手伝って!」
「あ、あぁ………」
紗南の隙間ない言葉攻撃に俺は反撃の余地なく手を伸ばした。車の背後にいた紗南は意気揚々と渡してきた。
恐らく、純と紗南の荷物が詰め込まれた二人には似合わぬ大きさの荷物。それを車の後ろ部分へ引き入れた。
「お前らも来んの?」
「兄さん、聞いてなかった?皆、来るよ」
「………あっそうなのね」
「悠希ちゃん一緒に座ろ~?」
「行くから引っ張らないで」
初耳であった。
俺はてっきり四人だけの旅行かと決めつけていた。確かに山吹家一同となると二つの山吹家族が一緒に旅行に行く意味にもなる。
純と紗南は俺の後ろにある座席へと乗り込む。妹の悠希も紗南に引っ張れるように席を移動する。
この二人が来るとなるともう一人の存在も俺の脳内をちらつき出す。
「今日はこんな私が保護者代わりやけど、よろしくね~」
「いえいえ。お陰で安心して旅行に行けますから」
山吹ベーカリーから出てきたのは二人。
一人は俺の母親。片手にパンが入ったと思わしき袋を持つ。
そして、もう一人は山吹家の最長女である沙綾だ。彼女もやはり旅行を醸し出す重そうな荷物をローラーで運んでいる。
「おはよう、ソウ君」
「おう。おはよう」
んしょっ、と荷物を車に乗せた沙綾はそのドアを閉めた。俺とは反対側の方から車に乗り込み、座椅子に座ると自分が入ったドアもしっかり閉める。
俺の隣に座った沙綾。ふとその様子を特に意味もなく眺めていた俺と目があった。
「どうしたの?」
「………んや、気にすんな」
そして―――
母親の「レッツゴー!!」と共に父親が車を発進。目的地までの快適なドライブが開始された。
◇◇◇
―――数時間後。温泉街。
「着いたぁー!!」
「着いたー」
シスターズが騒いでいる。
車での移動もまちまちと。山吹家一同は無事、温泉のある旅館へと辿り着いた。相当な長時間の移動で疲労が貯まったちびどもははち切れんないばかりの元気ぶりを周囲に振り撒く。
辺りを見渡すと今日が休日なのか、活気溢れる町並みに多くの家族が歩いていた。硫黄の匂いも微かに感じる。
「さて、ここからどうしよっか?」
「予定ないの?」
「勿論、ないわよ?」
妹の問いにがっつり答えた母親。
と、ここで純が元気よく挙手をする。
「俺、お土産見たい!」
「私も!!」
「なら、私も」
「んじゃあ、お土産でも見に行きましょうか。蒼真と沙綾ちゃんは自由行動で良いわよ。高校生なんだから大丈夫でしょ」
見ての通り、母親は自由奔放な性格。
親父も特に反論はなく、黙って付いていくようだ。
俺の隣に立つ沙綾も困り顔でいる。
そんな沙綾の気持ちも余所に、弟&妹二人を引き連れた母親は俺と沙綾を意識の外に出してしまったのか躊躇なくその場を離れていった。
―――もう姿が見えへんな………。
「一瞬で置いてけぼりか………どうすっかな」
「それなら、ほら、二人でここのお店回らない?」
「う~ん。それは良いんやけど………」
「何~?私と居るのが嫌ってこと~?」
沙綾、そうなに不機嫌っぽい言い草はしないでくれ。俺だってこんな可愛い美少女と温泉街を歩ける事に不満があるなんて思ってない。
どちらかと言えば、そのせいで生じる弊害に俺は不安を抱きつつある。
「なんか………デートみたいやなって思ってさ」
「でーと?………デ、デート!?」
「ど、どうした?」
焦った。急に大声出されては驚く。
「確かにそうだよね………よくよく考えれてみれば、今この状況では私とソウ君しかいないんだ………」
「さーちゃん?」
「………チャンス?他の皆には悪いけど折角の機会であるわけだし………」
「あっちに足湯あるな」
「………ソ、ソウ君!!私達もデートとやらにでも行こうよ!!………ってあれ?いない?」
独り言の沙綾は触れぬが吉。
既に俺は近場の足湯らしきエリアに足を踏み入れようとしていた。
「さーちゃん!!こっち!!」
そう呼び掛けると、はっ!と沙綾の視線がこちらへ。駆け足かそれ未満、曖昧な速度で駆け寄ってくる。
「何で先行くの!?」
「ほら、ここ足湯やってるからつい」
「足湯?」
俺は早速片足を爪先からそっと入れる。
「あぁ………良い湯加減」
「ホント?―――あ、ホントだ」
両足を浸けて、木の板の上に腰を下ろす。沙綾も俺の隣に座り、足湯を堪能している。
俺の視線は少し下に。
彼女の左手との距離が俺の右手と届きそうな何とも言えない絶妙なこの距離感。まぁ良いか。
「「………」」
何より、この静寂感がむしろ心地よいぐらい。
「ソウ君は………」
無言の中、沙綾は言う。
「私のことどう見てるの?」
「なんやって?………唐突に聞くね」
「さっき変なこと言うから」
「これデートみたいやなってくだり?」
静かに沙綾は頷く。
むろん、あれは冗談のつもり。特に他意などは含まれていない。
「家族であって、従妹であり………俺のドラマーの弟子であって………そんな感じやね」
「女の子としては………見てない?」
ふと横を見ると、沙綾と視線が合う。
気恥ずかしいその空気にたまらず俺は目線を前へ逃がした。
「見てないわけ無いだろ………じゃなきゃ、こうして今もデートしてるなんて思わないだろうし」
「………うん、ありがとう」
いつもと違う彼女の仕草に俺は戸惑う一方だ。ここまで奥深くまで俺の恋愛観を沙綾が掘り下げてくるなんてこと、人生一度もなかった。
「俺からも質問良い?」
「うん?なぁに?」
「なんでさっきのを俺に聞いた?普段のさーちゃんなら言わないと思うんやけど」
「そうかな?私、いつも通りだと思うけど………あえて理由を上げるなら、そうだね………」
俺は覚えている。この時、沙綾は笑った。
ただ俺にはその沙綾の笑顔をすんなり受け入れない自分がいたことをはっきり自覚していた。どこか苦しそうで、悲しそうな情景が彼女の笑顔の裏に感じたからかもしれない。
正直に彼女へ告げれば良かったかどうかは今も昔もそして未来も分からないだろう。
何故か。それは俺はこれから沙綾の言う言葉に何も言い返せないことに未来永劫変わりはないのだから。
「私に
◇◇◇
宿泊先の旅館。受付。
「はぁ?なんやて?」
母親からのその一言に俺は耳を疑かった。
それほどまでに俺は先程の言葉を一度で理解できる程、思考が動いていなかったからだ。
因みにあの後、暫くしてから母親から集合を旨とする連絡が来たので合流して、宿泊予定の宿へ赴いたのがついさっきの話になる。
「だーかーらー、蒼真は沙綾ちゃんと一緒の部屋ね」
「あー同室ってことね。いやいやいや!!おかしいやろ!!」
沙綾は従姉だ。でも、思春期真っ盛りの高校生だ。女の子と大人女子の狭間。
常識からしてみれば、二人の高校生の異性を同じ部屋にするなど有り得ない。
「しょうがないんよ。元々当たった旅行券は大人四人まで。子供は二人で大人一人扱いね。そうなると必然的に私とお父さん、悠希に純君に紗南ちゃんでいっぱいって訳」
「父さんと沙綾を入れ換えればいいやろ」
「もう一部屋………ついうっかり恋人部屋の予約で取っちゃった♪」
「………」
殺意が芽生えた瞬間。
「沙綾ちゃんからは事前にOKもらっとるよ?」
「さーちゃん、マジで言うてんの?」
俺の背後で見守る沙綾に問い掛ける。
この時の台詞に若干の怒気が混じっていたことは否定しない。
「うん。子供達だけで同じ部屋になるよりも最年長の私達が別部屋になった方が問題が起きたとしても直ぐに対応出来るかと思って」
理解は出来る。出来るけど。
「俺、男子高校生ね」
「知ってる」
「さーちゃん、現役女子高校生」
「そうだね」
「泊まる部屋が一緒になる」
「うん。それがなに?」
「………」
まさか、危惧してないのだろうか。
そもそも俺が男として認識されているかどうかすら疑惑に上がるレベルだぞ。
ここは最終手段。脅迫紛いになるが致し方ない。
「俺、襲っちゃうかもよ?」
「ソウ君ならそんなことしないの分かってるし。それに………」
「それに………?」
沙綾は唐突に頬を赤く染める。
「な、何でもないっ!!兎も角、もう後戻り出来ないんだから覚悟しなさいってこと!!」
「へー………」
一蹴されて、俺は逃げ場を無くす。
少しだけ姿を消していた母親が俺達の所へ戻ってきた。そして、掴んだ俺の腕を持ち上げ、掌に何かを乗せた。
「ほら、これが鍵ね」
「やたら用意が早い」
「元からあんたに断る権利はないのよ」
「そうですかい。はいもー!、分かりましたよ!」
―――荷物置いたら、さっさと温泉に入るんや。それするしか選択肢がないな、これ。
俺は全てを投げ出す勢いで沙綾と一緒の部屋に泊まるのを決意したのであった。
-4の2- へ続く。
*5thlive行った人、どうでした………?
『星4が当たらない作者の補足シリーズ』
・山吹悠希
→蒼真の妹。あこと同じ中学三年生。
口数少なく冷静沈着な雰囲気を出すが、兄などの自分の許す人の前では口調が豹変して、甘えん坊になる。
・蒼真の母親
→蒼真が関西弁を使うことになった元凶の一つ。比較的、子育ては自由奔放にさせる割りに娘にはかなりの心配性ぶりを発揮する。
実は乗車する前、山吹ベーカリーの店内で少し沙綾に蒼真の弱点を告げ口している。
・イメージトレーニング
→貧乏ゆすりではないですよ?ほら、両足が一定のリズム刻んでるでしょ?貧乏ゆすりではないですよ?
・ドラマー妹のあこから新曲のフレーズ相談
→オペラなんとかって曲らしい。
・温泉街
→作者、子供の頃に行ったのみであまり覚えてません。殆どをテレビや妄想で補ってます。
・二人、相部屋。
→羨ましいぞぉ!!こんちきしょう!!