ってことで、自分はバンドリで追加されたカバー曲のフルコンを頑張ってきますね(関係ない!)。
気になった点や感想、評価など大歓迎ですのでお気楽にどうぞ。
◇◇◇
悠希ちゃんから蒼君の過去の顛末を語られた。
当事者の第三者に近い悠希ちゃんは詳しい事情をあまり知らない。それでも、悠希ちゃんが知ってる限りの全てをちゃんと話してくれた。
蒼君が中学三年生の頃に恋人が出来たこと。その子は家によく遊びに来て、悠希ちゃんとも交流があったこと。そして、中学を卒業する前に病気で亡くなり、既にこの世には居ないこと。
全てを聞き終えた、私の芽生えた感情はただ一つ。
―――後悔であった。
中学に入学したての頃の私と彼との当時の関係は殆ど無縁に近い。歳が違うせいでバラバラな時期に中学に入り、それまで仲が良かったのに自然と連絡すら取り合わなくなった。
私がドラムを始める。それが切っ掛けで彼との交流が復活したものの、以前までとは行かずじまい。
やがて私がバンドに対して様々な事情で焦りを感じてしまった時期と平行して、彼は彼で私とはまた違う困難に心を痛めていたのだ。
過去は永遠に変えれない。そう理解していても、あの時の自分に文句を付けて変えてほしかった。
兎も角、ここまでの全ての話をしてくれた悠希ちゃんに感謝の気持ちを。
「ありがとうね、悠希ちゃん」
「ううん。沙綾ねぇには知ってもらいたかったから」
「悠希ちゃん………」
その蒼君の元カノさんとも沢山話をしたことがある悠希ちゃん。当時はまだ小学生であった悠希ちゃんは細かいとこまでは流石に、だそう。
でも、実の兄が悲しそうにしていた。それだけは印象的に覚えていたそうだ。
「沙綾ねぇはどうなの?」
「え?どうって?」
「兄さんへの気持ちは変わった?」
彼女はそう尋ねる。
ふと私の視線は下へ。座る膝に添えた手が震えていた。
悠希ちゃんが私のどういう返答に対して怯えているかは想像がつく。
―――蒼君を見捨てることだ。
私は彼女の手を優しく握った。
「大丈夫、悠希ちゃん。私が蒼君を見捨てたりするなんてことしないから」
「………本当?」
「ホント。こんな可愛い妹を放ったらかしにするぐらい、ダメダメなお兄さんの面倒は私が見てあげないとね?」
「沙綾ねぇ………ハグしてもいい?」
「うん………おいで」
ぎゅっと小さい彼女を抱き締める。
彼女にとって、今日と言う日までずっと誰にも言えず、抱え込んできたその想いがようやく解放されたのも同然。その安心感は私にはきっと計り知れないものと成りうる。
だとしても、こうして悠希ちゃんの背中をそっと擦り、安心させてあげることぐらいなら私にも出来るはず。
「………後は任せて」
私の中で何かが変わった。
◇◇◇
―――外に出た。
「思ったよりも寒いね」
凍える、とは違う。この体がゾッとする絶妙な気温に思わず両手を身体に抱えてしまった沙綾。
夏とは言え、山の夜は肌寒い。
何故外にいるかと言うと、沙綾が部屋に戻ってくるなり、部屋で寛いでいた蒼真に景色が綺麗だから外の散歩をしようと提案したのだ。初めは戸惑いの様子を見せた彼も直ぐに同意を示し、二人は揃って旅館の外へと出たのである。
「上着貸そうか?」
「………ううん、大丈夫」
純粋に沙綾の体調を心配した蒼真。これが裏目に。
変なものを見る目をした沙綾は恐る恐る尋ね返した。
「まさか………他の女の子にもそんなことしてないよね?」
「他の女の子ってなんだよ」
「それは………ドラマーの子達とか」
「最近会うことは増えたけど、いつも通りやし。さーちゃんの言うのに該当はしないと思うけど」
「そう?なら、いいけど………」
沢山の竹に彩られた道を歩く。
「最近のバンドの調子はどう?」
「さーちゃんが俺のバンドを気にするなんて唐突だな。まぁ………特になし。相変わらず馬鹿ばっかやっとる」
「だと思った」
「そういうさーちゃんの方はどうなん?」
「こっちも相変わらず、香澄がはしゃいで、おたえが天然を発動して、りみりんが慌てて、有咲が苦労してる、ぐらいかな」
「ご愁傷さまやね」
人の気配は一切ない。夏の夜に相応しいゆったりとした雰囲気を味わいながら、二人は並んで歩く。
「さーちゃん」
彼がそう呼ぶ。
「何?」
沙綾はふと彼の横顔を見る。
「今日のさーちゃん………いや、正確には今のさーちゃんか。何かおかしい」
「おかしい?」
「正直、言葉にしづらいんやけど………他人行儀というか、今になってさーちゃんとの距離感が急に掴めなくなった」
「あはは。ソウ君の気のせいだって。勘違いも程ほどに………」
蒼真の真剣な眼差し。
沙綾は言葉を詰まらせる。
「はぁ………なんで蒼君はすぐに気付いちゃうのかな………もう」
「え?なんやて?」
「蒼君の昔の話、さっき悠希ちゃんから聞いたよ」
「は?俺の話?悠希から?」
沙綾の大胆に近い告白に蒼真の動きが止まる。やがて、驚きよりも焦りに近い表情へと変貌する。
「あんまり聞いても、面白くないやろ、俺の過去の話なんて」
「うん、そうだね。でも、ソウ君の事は全部知りたかったから」
「………懐かしいな」
彼は遠い目で虚空を見つめる。
きっと脳裏にはあの頃の思い出が蘇っているのだろう。
「ソウ君は今でも、その………彼女さんのことが好きなの?」
「どうやろね。当時も好きかどうかは分からんままやったし」
「でも、家にはよく招待してたんでしょ?」
「なんでそんなことまで………あぁ、悠希か。確かに家にはよく居たね。連絡なしでいきなり突撃してくる奴やったから追い返す訳にもいかんし」
「へぇ~。私も会いたかったな~」
「それは………俺が困る」
「どうして?」
「迷いなしに動く奴やったから、きっとさーちゃんの存在を知ったら、すぐに会おうとしてたはず。となると、絶対に俺にまで被害が及んでくるのは目に見えてる」
「聞いてる感じだと、蒼君の彼女さんって香澄みたいな子かな?」
「あいつらで例えるなら、そうやな。かーくんとハロハピのボーカルの子を合わせて半分で割ったようなもんだね」
「………羨ましい」
「ん?何が羨ましいって?」
「え~?私、そんなこと言ってないよ~?」
「………」
「―――って、過去の私ならきっとこんな風に言うんだろうね」
「………マジでどうした?頭打った?」
「蒼君、今の私、嫉妬してるよ」
「へ?」
「蒼君に彼女が出来たときに教えてくれなかったこともそうだし、何より私に黙って可愛い女の子と付き合っていたって事実が一番ムカつく」
「落ち着いて………な?な?」
「何であの時、言ってくれなかったの!?」
「何でって、聞かれなかったし………自分から言う内容じゃ無いやろうし」
「それはそうだけど………でも~!!」
「そこまで食い付かれてもさ、俺の元カノが沙綾とどう関係あるんだ?」
「大有りだよ!!さっきだってつい意識しちゃって、そのせいで直ぐに蒼君にバレるし」
「人の元カノぐらいで緊張しちゃう幼馴染のことぐらいは何でも分かるけど?」
「もう!!変なことは言わないの!!昔から思ってたけど、蒼君ってまさか………天然たらし?」
「それはない。初めて言われた」
「………」
「あれ?さーちゃん?」
急に黙りこんでしまった沙綾。
「………だったらこれなら分かる?―――」
沙綾は前へと大きく一歩出た。
くるり、と後ろへ振り返ると彼の顔が月明かりに照らされ沙綾視点からよく見える。
ずっと前から秘めていたこの恋心に今、沙綾は最後のけじめを付けようとしていた。
小さく沙綾の口元が動く。
「………すき」
―――そよ風がふらっと舞った。
「山吹蒼真君………貴方が好きな女の子が目の前に居るってこと」
-4-『温泉旅行』 終
*☆10 柚鯖様
☆9 慶和様
☆9 フェイト2415様
☆9 殺神鬼 命様
☆10 モスネコ様
改めて!自分の作品に評価をくださり、ありがとうございます!(2018.08.05)
『乙女心は永遠の謎!補足シリーズ』
・時系列整理
-1-『師弟関係』より、沙綾に蒼真がドラム指導している。この頃、沙綾は中学一年生。蒼真は中学二年生。
一年後、沙綾は母親の体調不良が続き、バンドを脱退する決意を見せたのと丁度同じ頃に蒼真は璃里亜との辛い現実と対面していた。
性格が邪魔してなのか、どちらも相談はせず、そのまま中学校生活を終えることになる。
・悠希の語り部
→此処では省略してますが、花音編-4-と内容は殆ど同じですのでそちらをご覧ください。いずれはちゃんとした過去編を執筆予定ですのでしばしお待ちを。
・沙綾の告白
→この小説ではトップバッター!!
やったね!!
・予告編-4-
→あこ編-4-を追加しました。
お気に入りの話はどれですか?「沙綾編」
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-1-『師弟関係』
-
-2-『強制連行』
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-3-『緊急看病』
-
-4-『温泉旅行』
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-5-『絶対領域』