最近がんがんと攻めてきてるバンドリですが、慌てずにのんびりとしたペースで自分は頑張ります。
◇◇◇
CiRCLE。練習スタジオ。
「な!?蘭、それは本当か!?」
―――"Aftergrow"。
それがアタシの属するバンド名。幼馴染で結成されたそれはアタシにとって居心地のよい場所でもあった。
そして、現在。バンドの練習も終わり、一段落。気持ちも落ち着くはずなのにアタシは蘭からの言葉に耳を疑っていた。
「ほんと。今度、対バンするから」
「蘭にしては急な話だね~」
「うん。まさか蘭ちゃんからそんな話が出るなんて」
「因みにだ、蘭」
「ん?」
「………どのバンドと?」
「アークラ」
「「アークラ!?」」
蘭がメンバー全員に事後報告でライブ要件を持ってきた事も問題だが、それ以上に確かめるべき言葉がアタシの鼓膜を通過した。
―――"アークラ"。
此処等一帯を活動拠点としているバンドマンが共通して共演するのに覚悟がいるバンドはどれ?と聞かれると揃ってその名が候補に上がるとされるバンド。
彼等の演奏に自身の姿を重ね、比べてしまえば堪らず多くの人がつい彼等の演奏の完成度の前にナイーブになってしまうからだ。
そして、彼等が出たオーディションは全て我が物にしている。負け知らずの最強バンドと噂が立つ、と言えばある程度は想像がつくだろう。
アタシとつぐみが揃って驚いていた。
「蘭ちゃん、それは本当なの!?」
「つぐみ?」
「はっ!!………わ、忘れてね?」
紅潮させた頬を隠すつぐみ。
まさかとは思うが、つぐみはアークラとの共演を嬉しく思っている側なのだろうか。
アタシは正直………乗り気ではない。
「アークラと正々堂々勝負するから」
「それっていつもの対バンみたいなもの?」
「ひまりの言う通り、大半はそう。だけど、最後に観に来てくれた人にどのバンドが良かったか投票して貰って、票の多いバンドが勝ちっていう所がいつもと違う」
「おぉ~。ガチガチのガチだね~」
「結構本気で勝負するんだ。ちょっと私、ワクワクしてきたかも!」
ひまりのテンションが上昇。
対バンは一般的に同じライブで順番に演奏を披露することを指す。ところが蘭が言うにはそこに投票制を導入するとのこと。
つまり、どちらのバンドが良かったのか数字としてくっきりと勝敗が提示されるという意味になる。
アークラは四人で構成されるバンド。
全員が男子と言うこともあり、全体的に会場一体を激しく盛り上げるライブが主体。その点では一般的なボーイズバンドとほぼ変わりがない。
ただアークラはここから別次元のスタイルへ移行していくのだ。アタシはついこの前に合同ライブで間近にそれを目撃したから分かる。
―――あれはヤバイ、と。
「蘭………本当に勝てると思ってるのか?」
「巴?どうしたの?普段の巴よりだいぶ弱気だけど………」
「確かに今のアタシは弱気かもしれない。ひまり、前のアークラのライブは観たか?」
「合同ライブの時?その時は私達の出番が次だったから見れずじまいだけど」
「巴ちゃん。ここにいる皆、ひまりちゃんと同じ感じだと思うけど………」
つぐみの質問にアタシを除く四人は頷く。
合同ライブではアークラの次の出番に控えたアタシ達。本番に向けて準備があるので前の出番のバンドの演奏はあまり意識しないことが多い。
ただ、アタシはアークラの序盤だけライブを観ていた。
「蒼真先輩だけでもあのレベルなんだよ………くっ。四人全員が合わさったとなれば………あぁぁ!!」
「ともちんが壊れた~!」
「巴ちゃん、何を観たんだろ………」
「さ、さぁ?」
思い出すだけでも鳥肌が立つ。
ともかく現段階のアタシ達の実力ではアークラに勝つなど到底不可能とだけは分かる。下手をすれば、手足も全く出ない無惨な結果に陥ることだって。
「でも、らーん。何で急にアークラさんと対バンすることになったの~?」
「それは向こうが悪い」
「え?」
「アタシ達の音楽を馬鹿にしてきたから。つい頭に来て、ライブで見せてやるって言ったらこうなった」
「要するにアークラの誰かと喧嘩しちゃって、その決着を付けようと?」
「………そう」
―――動機があまりにも不憫だ。
蘭はプライドが高い。特に音楽に関しては人一倍高く、何か少しでも汚されると即座に反発するぐらい。
記憶に新しいのだとRoseliaのボーカリスト、湊さんと衝突して口喧嘩をしていた。周りのメンバーは冷や汗だらけの中で。
歳上だろうが、歳下だろうが誰とも構わず蘭は自らのプライドの元に行動する。
「正直、不安だらけだ………」
「いつも通りのアタシ達ならいける」
「そうだよ!巴ちゃん、頑張ろうね!」
「ワクワク~」
「よーし、この調子でどんどん行くよ!えいえいおー!」
「「「「………」」」」
唐突に静けさが到来。
ぐすっ、と鼻を啜る音がやけに響く。
「………分かってたもんね!!」
◇◇◇
電話中。
『―――って話が出まして、蒼真先輩の方はどんな感じですか?』
巴からの電話。
何事かと思えば、対バンライブでの打ち合わせだそうで。手っ取り早く連絡を取れるのが俺しか居なかったみたい。
巴の話すこの企画イベントは随分と短い準備期間で本番を迎える。と言うのも、これをやる動機が対バン相手のボーカル・蘭ちゃんがアークラに対してバチバチの火花を散らしたのが原因だと一昨日訊いたからだ。
「こっちはいつも通りやねんけどなぁ………」
基本的にライブや練習のスケジュール管理はベースの光が担っている。先程も光からライブ決定の連絡が某アプリで伝わって来た。
Aftergrowと対バン形式でライブをすると。会場はアークラの拠点であるライブハウスだそう。
『いつも通り………アークラはよく投票でバンド対決とかやってるんですか?』
「やるね。数回に一回って頻度やけどね」
『因みにこれまでの戦歴は………』
「あんまし覚えてへんな………あ~1回負けたのは覚えてるんやけど………うーん」
『で、ですよね………』
なんか巴に納得された。
勝負に其処まで拘る性格ではない俺。勝ちだろうが、負けだろうがその瞬間が心の底から楽しければ、十分勝ち組だろう。
にしても、先程から巴の消極的に捉えられる態度が如何せん気になって仕方がない。
「巴はあんまり乗り気ではない?」
『普通のライブならまだしも今回は勝敗がくっきりと出ますから………蘭が特に心配ですね』
「なるほど」
巴のバンドのボーカルちゃんか。
巴とその子は昔からの幼馴染なのでお互いの事は嫌と言う程、分かりきっているはず。それでもなお巴がこうしてボーカルちゃんではなく、俺に心配事を明かしたのはきっとボーカルちゃんは巴の助言のみでは今更止まれない信念の持ち主を示唆しているのではないかと予想される。
ここで俺は溜め息をひとつ。
生憎、どのバンドでもメンバー周りを見るのが多い人種の大半はドラマーだ。曲の基本軸を司り、自然と他の楽器にも意識が向く。
逆にボーカルは暴走してしまうイメージが俺の中である。勿論、良い意味で。
ぱっと思い付くのは、我らのボーカルでもある藍斗にポピパの香澄。そして災厄の異端児、ハロハピのこころ。
―――結構………いるね。
「ドラマーは黙って見守っておけばいいさ」
『そうですかね?』
「俺達は一番後ろで気楽に叩くだけで十分やろう。巴もそのボーカルちゃんが心配だろうけど、悪いようにはならないから。俺が保証する」
『………はい。分かりました』
「なら、よろしい」
『でも、具体的には何を?』
「待てよ。今、考えっから」
『分かりました』
さっきよりも随分と辛辣な返事だ。
目標はあれだ。アフロのボーカルちゃんのプライドを折らないようにしつつ―――
―――何やったっけ?
「え?巴が心配なのはそのボーカルちゃんが勝ち負けでずたぼろになってしまう可能性があるってこと?」
『いや、それはないです』
「じゃあ、何が不安なん?」
『………アタシ、何で迷っていたんですかね?』
「知らねー」
要はいつも通りで良い。
『あ、蘭がアークラのボーカルに馬鹿にされて怒って対バンになったから、収集が着くかどうかだけは不安です』
「藍斗に馬鹿にされた?………ん?」
『蒼真先輩?どうされました?』
対バンライブの切っ掛けを俺は知らない。
てっきり、主催の誰かがアフロを誘ったとばかり思っていたが、事態は予想外の方向へ走っているみたいだ。
藍斗がボーカルちゃんを罵倒した、と言葉を鵜呑みするとそんな解釈になるが多分ちがう。きっと何処かで発生した勘違いが原因だ。藍斗は肝心な時に言葉足らずな性格をしているので、それもまた今回の件を悪い方へ助長する手助けになってしまったのだろう。
「巴、そのやる切っ掛けになった話を詳しく」
『あ、はい』
―――ひとまず、あいつは事情聴取決定だ。
-2の2- へ続く
*ひまりちゃんのえいえいおー!はオチに使いやすいなぁ。ごめんね。
『さぁ!行こうか!補足シリーズ』
・隠れアークラファン
→つぐみ。特に推しはギタリストの子。SNSアカウントは既にフォロー済み。
・アークラのライブ
→恒例とも言えるぐらいに、ライブの始まりにはあることをしている。それを巴は以前に観てしまったのだ。
・「―――一回負けたのは覚えてる―――」by蒼真
→いずれ、登場します。因みにオリキャラではないです。バンドリキャラでもない。
………ヒント多すぎたかな?
・ボーカル、暴走してしまう説
→沙綾と花音ちゃんはお察しの通り、苦労が絶えないです。