Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 まさか、宇田川姉妹のイベントが来るとは!!
 でも、スターがない………。orz。



-3の2-

 ◇◇◇

 

 お化け屋敷。内部。

 

「………ひゅうどろ、って感じではないんやな」

 

 お墓に人魂が浮かぶ。そんな和風的な装いを俺は予想していたのだが、実際の感じはというと全然違った。

 これは完全に………"病院"がモデルだ。

 今も廊下らしき場所をゆっくりと歩いているが、さっきから数字三桁のナンバープレートが暗闇でも目に入る。

 病室の番号かな。血だらけ、だけど。

 そして、あれはコースの案内のはず。適所に設置された矢印通りに進んでいく。

 

「………」

「………」

「………二人とも喋らんね」

 

 入ってから二人は一向に無言を貫く。

 袖を引っ張られる感覚も同時に強くなる。

 静かだとつい怖い妄想をしてしまうが、それは逆に自ら難易度を上げる諸行になってしまう。二人にそんな余裕は無さそう。

 さて、いざって時にどんなパニック状態になっちゃうかな。別の意味で俺が痛い目に合いませんように。

 ある程度進んだが驚く仕掛けは特にない。次に、視界に入ったそれに俺はようやく頃合いだと見て、足を止めた。

 

「………どうしました?」

「いや、もうそろそろかなって………」

「何がだ?」

 

 つぐみの質問にそう答える。

 巴の方はすぐに分かるはず。

 職業病なのか、俺は普段から演出関連には目がない。ライブや曲の参考にしたいので手当たり次第、収集してしまう。

 今回も無論、例外ではない。

 矢印は完全に扉を指している。開けろ、との指示だろう。

 がちゃり。

 俺が製作者だとすれば、扉を開けた先で―――

 

「きゃぁぁああああ!!」

「うわぁぁああああ!!」

 

 ほら、来た。這いつくばる長い髪の女。

 呻き声もまさに本物。この病院で亡くなった霊って設定だろうか。

 暗闇に医務室とホラー要素満載なので、流石に一瞬ビクッとしたものの、既に偽者と理解してるので一度姿を捉えれば、後はもうこっちの物。

 

「………」

 

 ただ、俺には別の問題が発生した。

 両脇の彼女達は完全に恐怖に支配されてしまっている。俺の腕へと身体をぴっちり引っ付けて来る。

 つまり、程よい膨らみもくっついて来る。

 つぐみは一般的な女の子の体型なので、彼女と密着してしまった感想はありがとうの一言。だがまさか、巴もそれなりの柔らかい感触があったとは。

 いかん。邪念は消す。抹消なり。

 

「蒼真さぁぁん~!!」

「~~~~~~っ!!」

 

 ぐいぐい密着してくる。

 男の(さが)と苦闘が必須になってしまった俺を全力で無視のつぐみと巴。

 恐怖に染まりきった人が間近にいると逆に落ち着く現象を全身で感じながらも二人を引き摺る勢いでコースを進む。

 

「ん?ここは?」

 

 次に来たのは手術室のようだ。

 手術台の上にはまさに今にも動き出そうな人が寝そべっている。悪趣味なことに。

 

「いやぁぁぁ………」

 

 あれを視界に入れたくないつぐみは俺の腕へと顔を埋める。

  巴もつぐみほどまでとは言わない。が、彼女の腕からは震えが伝わる。

 

「ほら」

 

 このままではもたない。

 つぐみには一旦、離れてもらう。不安そうな瞳からの視線につい心打たれそうになるが我慢あるのみ。

 俺は彼女の眼前に手を差し出す。

 

「これは………?」

「手を繋いだ方が安心するやろ?」

「そ、そうですね………!!」

 

 深く納得してもらえて何より。

 と油断しつつ、片手で繋ぐのかと思いきやのつぐみは両手でぎゅっと俺の左手を握り締めてきた。

 ひきつる俺の頬。横目で確認すれば、健気に怯える少女がそこに。

 黙って受け入れるしかないようだ。

 

「巴はどうすんの?」

「………だだだ、大丈夫!!」

「凄い説得力のない返事やな」

 

 意地でも巴は首を縦に振らない。

 姉としての威厳か。友達の前で普段とは違う姿を晒したくないのか。

 どちらにせよ、俺には関係ない。

 

「ちょっと、巴さんよ。離れてくれ」

「どどど、どうして!?!?」

「扉ぐらい開けさせてくれ。右で開けたい」

「そそそ、そっか………」

 

 手術台の上の人形は単なるオブジェクトだった。次の場所へ移動する今でも動く気配すら見せない。

 ふと、ある考えがよぎる。

 ビビりながらも結局、何もないんかいと油断しきった人に背後から襲う。そんな意地汚いやり方を。

 勢いよく俺は振り返った。

 

「な、なに!?」

「………俺の考えすぎやった。気にしないで」

「何を考えてたんだ!?」

 

 流石にそこまではしてないか。

 周りに敏感な巴は俺の咄嗟の行動にビビりまくっていた。つぐみは俺の腕にしがみついて、一部始終を見てすらいない。

 今の巴には何を使ってでも驚かせそうな自信しかないぐらい隙だらけ。好奇心がそそられるが、本人からの仕返しが怖いので止めておくが。

 再び、病院の通路へと俺達は戻る。

 矢印からの指令はもっと奥へ行けとのこと。それと隣にはギブアップ用の扉も設置されている。

 あくまでこれはアトラクション。なので、途中リタイアも勿論可能なのだ。

 

「どうする?もっと行く?それともここで止めとくか?」

「どうしよう………巴ちゃんは?」

 

 判断に迷うつぐみは巴に決断を乞う。

 特に巴の態度からは分かりにくいが、多分三人の中で一番のビビりは他でもない、巴だ。

 因みに俺の服の引っ張りも一番強い。あんまし関係ないか。

 普通なら此処でリタイアするのも有り。

 でも、どうやら巴にはそれが出来ないような理由があるみたいで―――

 

「いや、アタシは行く」

「それは良いんやけど………大丈夫か?」

「ここに入る前にあこからメールが来たんだ。お化け屋敷、怖かったけどクリア出来たって言うメールが」

「なるほどね。途中でリタイアしてまうと、あこちゃんに顔向け出来ないと」

 

 どうやら前者、姉の威厳だったらしい。

 弟・妹に出来て、兄・姉が出来ない。そんな事があってたまるかと孤軍奮闘してしまうのは兄・姉の宿命だろう。

 つまり、妹のいる俺にとって、巴の抱く思いを理解できない事はないのだ。

 

「んじゃ、とっとと行くか。長居しても怖いだけやし。つぐみちゃんも来る?」

「………はい」

 

 つぐみの握る力がぎゅっとなる。

 リタイアであれば、すぐに解放される。つぐみはそれ以上に独りぼっちになるのが嫌だったのだろうか。

 

「無理すんなよ?ちゃんと脱出する最後まで俺が側に居るから」

「ありがとうございます………!!」

 

 微笑んで返してくれるつぐみ。

 うん、可愛いな。聖女もしくは天使だ。

 

「巴も。あこちゃんに負けたくないのも分かるんやけどそれ以上に我慢の限界を越えるのも不味いんやからな。無理やと思ったら即座に俺を頼れ、いいな?」

「わ、分かった………」

 

 釘を指すように二人に言い付ける。

 やけに現実味を帯びていたような注意なのは気にしないでくれ。幼馴染からの制裁は貰いたくない。マジ勘弁。

 

「さてと………」

 

 攻略を異常なほどに警戒しながらも再開。

 どうにか二人を無事に出口まで送り届けたいのだが、怖すぎで有名なお化け屋敷なので多少は覚悟した方が良さげかな。

 通路をゆっくりと進む。

 

「ん?」

 

 背後から物音。

 

「あっ………やべ」

 

 確認する。向こうに人が立ってる。

 よく見れば、あれは手術台の上にいた人形もどきではなかろうか。誰も答えてくれないけど。

 不気味なのが、片手に持つ注射器。

 ぽたり、と未知の液体がその先端から溢れてる。

 正直、全力で引いてる。

 

「来ないで………!!」

「無理無理無理………!!」

 

 神に願うつぐみ。呪文を唱える巴。

 俺の心でごっそり彼女達を守れる自信を削られた一方、化け物は長い黒髪に隠れて曝け出し状態の片目を真っ直ぐこちらへ向けた。

 そして―――走ってきた。

 もう一度言う。

 

 ―――走ってきたぁぁぁあああ!!

 

「まずっ!!つぐみちゃん、逃げるぞ!!」

「えっ!?えっ!?」

 

 追い掛けて来た。なら、逃げるしかない。

 幸運にも、案内の矢印は走りながらでも目視で判断しやすい。てか、客達を走らすつもりで設計されてあるようだぞ、これ。

 つぐみを握った左手で強めに引く。彼女が転ばないように力の調整は慎重に。

 もう片方の姫様の様子も確かめないと。

 

「巴!!行けんか!?」

「あ、足が震えて………!!上手く走れ………!!」

「あぁもう!!しゃらくせぇ!!」

 

 俺は問答無用に巴の手首を掴んだ。

 

「な!!何すんだ!?」

「今は()()()()

「………」

「何も考えんな。黙って俺に付いてくる」

 

 走る。走る。走る。

 二人の手を引く俺に背後がどうなったか確める方法はない。ひたすら安全地帯を目指して進むのみ。

 息を切らしながらも二人は懸命に追い付こうとしてくれている。

 時間にしてはとても長く。距離にしては二回、左に曲がったその先で俺はようやく次へ入る部屋を見つけた。

 

「見えた!!後、もうちょい!!」

「はぁはぁ………!!」

「はぁはぁ………!!」

 

 生憎、両手は塞がっている。

 となれば、強行手段を選ばざるを得ない俺は扉を豪快に蹴った。壊さない程度に加減したので勘弁してください。

 これが、引き戸や手前に引くタイプだと本当にヤバかった。

 ちゃんと足で扉を閉め直し、一先ず安全が保たれた現実に一息吐く。繋いでいた手をどちらも解除。床に座り込み、ばくばくした心臓を落ち着かせようと二人は試みていた。

 さっき来た扉の窓を覗きながら、俺は呟く。

 

「体力が戻るまではここで休憩やね」

「私達、逃げ切れた………?」

「分からん。多分、あれがこのお化け屋敷のメインかもしれんし」

「ってことは………また出てくるって事か?」

「かもね」

 

 あんな化け物、もう二度と御免だ。

 ただ、あの女の人のメイクや動き、仕草等からして力の入れ具合がどうも半端がないように思えた。

 俺の予想としては、このお化け屋敷ではあの女から逃げて隠れつつ、脱出する所までが一連のストーリーとなるのではなかろうか。

 兎も角、まさか強制的に走らされるとは予想外過ぎる。今後も俺の予想を上回るのは前提で行動をしていかないと。

 まさか、女と遭遇したあのタイミングで、また違った選択肢もあったかもしれないが今更どうしようもない。

 

「ここからが本番って訳だ」

「そんなぁ………」

「一応、安全地帯っぽいのはあるみたいやし、その都度、休める。気を楽に、つぐみちゃん」

「はい………」

 

 俺がそのように判断した根拠はあそこにあるリタイア専用の扉の存在が占める。まさか、こんな所まで追い掛けてくるとは思えないし、合っているだろう。

 人によれば、一気に驚かせて貰える方が好きかもしれないが此処はじっくり料理をしたいタイプのお化け屋敷らしい。

 

「二人とも体力は戻った?」

「はい!!」

「何とか………」

 

 じっとしてるのも時間の無駄。

 立ち上がるつぐみと巴。次に進むのは部屋の奥であり、建物の構成が不明な以上、何処に繋がるのかさえ分からない。

 

「蒼真先輩………良いですか?」

 

 恐る恐る、とばかりにつぐみが差し出したのは小さな女の子らしい掌。

 握って欲しいらしい。

 俺がその手を優しく握り返してあげると「やった………」と小さく声が漏れる。

 

「巴は?」

「………」

 

 無言で出てきたのは彼女の左手。

 状況が緊迫してきた中、巴自身も恐怖に余裕がないようだ。こうやって素直に初めからしておけば良いものを。

 すーはー。

 深く深呼吸を一つ。いざ、参らん。

 また扉か。どう開けよう。

 

「巴、開けてくれ」

「アタシが!?」

「俺、手が空いてないし」

「イヤだ!!」

「………だとすると」

 

 ―――ブルブルブル。首を左右に振る音。

 

「………強く握らないでくれます?二人とも」

 

 脱出したいのは山々。

 けど、本当にいけるんか、これ………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -3の3- へ続く。

 




*☆9 1124英太さま
 評価して頂き、ありがとうございます。


*Q.作者はお化け屋敷行ったことあるの?
 A.ないね!!
  ホラゲーの実況ばっかり観てるね!!
  ………話に出てきた化け物もゲームに出てきた何かを参考にしたのですが、正直、その何かを覚えてません。

『ふゅるりふゅるりと補足シリーズ』
・このままではもたない
→色んな意味で。いや、マジで。

・すぐ蒼真は手を出す(笑)
→特に意味はないですよ?変な意味もないですよ?

・蒼真のお化け屋敷に対して
→普段から奇想天外の母親のせいでびっくりするのには耐性がある。ゲーム好きなのでホラゲーも既に幾つかクリア済み。また、小さい頃に沙綾ともお化け屋敷に入った事があり、そこでひと悶着あった。その経験から結構、蒼真はお化け屋敷の内部でも余裕でいる。この小説の沙綾は無理。
  また男を見せる絶好のチャンスであった訳だが、果たして結果はどうだろうか。つぐみちゃんにもしてしまったが、そこも含めて。
 そして、次話は蒼真と巴の立場が入れ替わるかもしれない………多分。
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