Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 前回イベントのチャンレンジP?を貯めに貯めて、結局1つも消費せずにイベントが終了してしまったソウソウです。
 お陰で10万位ぐらいでしたね。
 今回のイベントも頑張りましょう!




宇田川あこ編
-1の1-『最強のドラム』*


 ◇◇◇

 

 スタジオCiRCLE。

 

「妾と勝負せよ!流動の王よ!」

 

 ………なんやねん、これ。

 個人練上がり。受付の隣にある小さなスペースで恒例のココアを飲んでいた時の出来事だ。

 簡潔に言う。

 絶賛、中二病の彼女に唐突に宣戦布告された。あ、中学生なのでぎりセーフか。

 彼女の名前は"宇田川あこ"ちゃん。

 どうやらあこも練習終わりのようだ。ただ俺と違ってバンド全体での練習かな。他のメンバーはここからでは見当たらない。

 

「急にどした?」

「友希那さんから聞いたんです!蒼真先輩!」

「あぁ………うん?何を?」

「友希那さんが"Roselia"にドラマーとして蒼真先輩を誘ったことがあるって!」

「あぁ~。あったような無かったような………」

 

 うろ覚えだけどそんなこともあった。

 そもそもあこの言う友希那って子があまり名前と顔が一致してない。あ、あの銀髪の声が透き通ってる女の子かな。

 自慢ではないが、ドラマーはバンドにおいて希少価値が高い。そもそもドラム人口が低い。やるにも敷居が高いという無駄に大変な楽器。

 それ故に結論から言って、あちこちから取り合いになる。うまい人ほどいくつもバンドを兼用してる、ということもざらにあるほどなのだ。

 

「どっちなんですか!?」

「………本人が言ってるんならあるんちゃうんかな~」

 

 若干、放棄気味の俺。

 

「なら、勝負です!」

「何故そうなる」

「世界二番目のドラマー、あこが許さないからです!」

 

 偉そうだが、敬語なので面白い。

 ロビーでのやり取りなので周りに筒抜け。受付の人も優しい笑顔で見守ってる。

 

「二番目?一番目は?」

「お姉ちゃんだよ?」

 

 "宇田川巴"。あこのお姉さん。

 確かに彼女はなかなか良きドラマー。

 因みに宇田川姉妹は二人揃ってドラマーという珍しい姉妹。加えて、仲も良好のようで微笑ましい限りだ。

 

「蒼真先輩………どうしても"Roselia"のドラマーは私しかいないってこと証明したいんです」

 

 つい俯いてしまうあこ。

 "Roselia"とはあこの属するバンドの名前だ。本格派実力バンドとして、名を広めている。

 その内の実力者のそんな様子を間近に見て、俺は残酷に突き放す訳にはいかなかった。

 

「分かったから。ほら、そこ座って」

 

 向かいのイスに彼女を座らせる。

 

「確かに、あこちゃんの言うようにそんな誘いを君のボーカルちゃんから貰ったことはあるよ………多分」

「多分?」

「それがな、記憶が曖昧なんよ。確か………」

 

 俺は昔の情景を思い出すことに。

 

「てか、流動の王ってなんや?」

「蒼真先輩のドラムスタイルから、そんなあだ名が付いてましたよ?」

「え?まじでか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 ライブハウス。数ヵ月前。

 

「………今日も疲れたな」

 

 出番も先程終えて、現在は会場脇に設置された自動販売機へ飲み物を買いに来ていた。

 ライブは大盛り上がり。熱狂的過ぎて、会場内の気温が跳ね上がったような錯覚を覚えるくらいだ。

 スポーツドリンクのボタンを押す。

 下からそれを取りだし、メンバーの待つ楽屋へ戻ろうとするが―――

 

「………あの?」

 

 銀髪の少女がこちらをガン見していた。

 少し距離をおいたままの彼女は真っ直ぐ俺の目と合う。

 ライブを見てくれてた子、だと判断した。向こうは俺のことをどう認識しているのだろうか。

 

「あなた………名前は?」 

「ソウ………ですけど」

 

 この時は本名で名乗るのに抵抗があった。

 直感が警告をしていたのだ。

 仕方ないので、芸名を、と言いつつ本名を短くしただけだが、これで通させて貰うことにする。

 

「ソウ………」

「良いんですか?今日のライブ、まだ続いてますよ?」

 

 俺達の出番は真ん中あたり。今頃はまだ後続のバンドが演奏しているはずだ。ライブ目当てで来たのなら、観ておくべきバンドがずらりと並んでいる。

 ただ彼女は呆れるように首を横にふる。

 

「えぇ、構わないわ。だって今の私の目的はあなたなのだから」

「………ん?俺?」

 

 一瞬、思考が止まった。

 はっきりと言い遂げた少女に対して、俺は悟った。こいつは色んな意味でヤバイと。

 と、彼女は眼光を鋭くする。

 

「ソウ。私とバンドを組みなさい」

 

 成る程、そういうことか。

 彼女は俗に言う美少女の類いに余裕で入るぐらいの美貌だ。もし、彼女と活動することになれば話題になるのも時間の問題と言える。

 しかし、俺の答えはもう決めてある。

 

「嫌ですよ」

「………っ!?………何故かしら?」

 

 断れる、とは予想外だったようで明らかに彼女の動揺している様子が見てとれる。

 

「何故って………そもそも自分こそ誰ですか?実力どころか名前すら分からない人とバンドをやろうとは俺は思わんし、俺は今のあいつらとで十分満足してますんで。ではまた」

「あっ!ちょっと!―――」

 

 俺は適当に切り上げて、会場へと戻った。関係者以外立ち入り禁止の扉をくぐったから彼女ももう諦めるはず。

 雑にしてしまった感も否めないが、特にこれと言った問題はないだろう。

 だって、もう彼女とは会うことはないから。

 

 ―――当時の俺はそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 スタジオCiRCLE。

 

「―――って、感じですっかり忘れとった」

「………蒼真先輩」

 

 あはは、とから笑いする俺にあこちゃんの視線が突き刺さる。

 うん、怒ってるな。

 "宇田川あこ"という少女にとって俺のあしらってしまったあの少女は憧れの象徴でもあるみたいで。

 悪いことをしたのは反省してます。

 

「………その後で、友希那さんは紗夜さんとりんりんとリサさん、そして私とでバンドを組むことになったんですよね?」

「そ、そういうことになるんやろうね………」

 

 ―――バンッ!

 

「私、なんか許せないです!」

 

 思わず肩がビクッとなってしまった。

 テーブルを叩いたことで、より周りからの注目を集めることにあこは気づいていない。

 あこの気持ちも分からなくもない。

 例えるなら、出来た恋人が自分の知らない頃に馬鹿にされたような感覚だろう。

 

「でも、今はあこちゃんが立派に"Roselia"のドラマーをやってるんやろ?あのメンバーの中でちゃんと自分を主張出来るんのはすごいと思うよ」

「え?そうですか?……えへへ、蒼真先輩に誉められたぁ~………」

「………あれ?」

 

 一瞬であこの怒りが鎮火した。

 

「あこちゃんの頼みであれば、Roseliaのドラムやったるけど?」

「―――っ!?ダ、ダメです!!それだけは絶対っ!!」

「あの時もしもだけど俺が引き受けてたら、今頃あこちゃんは………」

「………ぐはっ!!」

 

 今度はあこ、ダウンした。

 

「冗談やって。今もやるつもりは一切ないから」

「蒼真先輩なら、やりそうで怖いです」

「うん、あこちゃんの俺に対してのイメージが気になるな………」

 

 考えない。考えない。

 

「そういえば、Roseliaの次のライブっていつ?」

「次ですか?確か、今月はもうないので………来月の中旬じゃないですか?」

「来月なら余裕ありそうやし、観に行こっかな」

「えっ!?ホントですか!?」

「新曲とかやんの?」

「それは秘密です!!あ、でも、それについて蒼真先輩に、相談したい事があったんですよ!!思い出しました!!」

 

 つまり、新曲あるんだな。

 相変わらずこういう所は抜けている。ある意味、それが彼女の魅力でもあるわけで。

 

「どうもフレーズがしっくり来ないというか………合ってない気がするので蒼真先輩にも実際に叩いて確認して欲しいなと思いまして」

「………あっと、もうこんな時間」

 

 これは時間かかると悟った俺。スマホで現在時刻を確認して、帰るアピールを実行する。

 

「蒼真先輩、逃げはダメですよ?」

「いや、俺、この後ね、用事がね」

「さっき蒼真先輩がここにいると一緒にもう今日の予定もないってまりなさんから聞いてますから!」

「………」

 

 ちらっと受付を見るとここの従業員でもある、まりなさんがニコニコと微笑んでいた。

 くっ。まりなさんと会計してる時の雑談でついうっかり漏らしてしまったのだ。

 

「あこちゃんこそ練習はないんか?」

 

 状況は不利。それを承知で反撃を試みる。

 自分の逃げが無理なら、相手の追いを無理にする。そんな理論から基づく行動。

 

「大丈夫ですよ?今はバンド練の休憩中です」

「休憩?え?ってことは………」

「そんなことはないですよ?まだまだ時間は―――」

 

 ………いやいやいや。

 

「あこ」

 

 彼女を呼ぶのは俺ではない。

 あこの背後にいる人だ。当の本人も声で誰か分かってしまっていたようで恐る恐るゆっくりと振り返る。

 言い忘れていたか、俺が"流動の王"のように彼女にも渾名がついている。

 

 ―――"孤高の歌姫"、と。

 

 その人が今、目の前に。

 

「友希那さん………」

「えぇ。あこ、どうしたの?もう練習の時間よ?………それと」

 

 彼女の視線がこちらへ。

 渾名通りのその風格に堪らず背筋が伸びそうになってしまう。

 ゆっくりと彼女の口元が開き、

 

「久しぶりね」

 

 俺の名前を口にする。

 

 

 

 

 

 

  

 ―――ソウ。

 

 

 

 

 

 

 -1の2- へ続く

 




 友希那のラスボス感ぱねぇ。
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