あこ編も後半戦の開始です。ご感想や評価など、存分にお待ちしてますよ!!
◇◇◇
蒼真家。蒼真の部屋。
「………歌詞が思い付かん?」
パソコンで編曲の作業中に一本の電話で手を止めた蒼真は相手の相談にがちのトーンで聞き返してしまっていた。
蒼真にとって、相手が相手だけに無縁となる悩みだと思っていたからだ。
『えぇ。そうよ』
「………あぁ………うん。なんかお疲れ様」
『それはお互い様よね?』
"湊友希那"。蒼真の電話相手。
実力派ガールズバンドの第一前線を走る"Roselia"のボーカリストであり、"孤高の歌姫"とさえ称される実力の持ち主。
そんな彼女が何を企んでか、蒼真に歌詞の相談を持ち掛けていた。
―――ん?作詞してんの、俺って気付いてんのか?それとも誰かが言った?
先程の友希那の台詞から蒼真は自身のバンドの作詞担当は自分だと彼女に知られているのを瞬時に判断。
意図が計り知れない彼女の心意に蒼真の疑惑は尽きない。
「で、用件は?」
『言ったじゃない。新曲の歌詞を考えてるのだけれど、全然進まないって』
「………それは俺に言う必要あんの?まずはメンバーにじゃない?」
『勿論言ったわ。その結果、あこが提案したソウに相談した方が良いって意見で纏まったのよ』
「あこが?え?何で?」
『さぁ?あこが貴方を薦めた理由は知らないわ』
あこ本人に自分が作詞をしていると蒼真が言った覚えはない。
なら、あこはどのルートからその情報源を入手したのか。真っ先に思い付くのはあこの姉かつドラマーの―――
「巴のやつか………」
『何?』
「んや、こっちの話」
アフロとの対バンライブでそんな話をした記憶がある。宇田川家長姉、巴経由であこは蒼真が作詞をしていると知ったのだ。
特に作詞しているのを隠している、という訳でもないので構わないのだが何とも言えない複雑な気持ちのせいで落ち着かない。
『なら、良いかしら?本題よ』
「すまんね。どうぞ」
『ソウは作詞はどうしてるのかしら?』
「………あー俺のは参考にならへんと思うけど」
『どうして?』
「ちょいとやり方が複雑。一言では説明できん」
『そう………なのね………分かったわ』
「直接会えば、解説みたいなんは出来んことはないけど………」
友希那の寂しそうな声。
つい反射的に蒼真が余計な一言を出してしまう。これが始まりだとは知らずに。
『行くわ』
「は?なんやて?」
『ソウに会いに行くわ』
「おふ………そこまで………流石に節操詰まりすぎやないかと思いまっせ」
美少女の言葉に胸が打たれる蒼真であったが瞬時に正気を取り戻した。
『この新曲は次のライブには間に合わせたいの。インスピレーションがそこにあるのなら、じっとしていられないわ』
「そうかい………」
短い付き合いでも分かる。ここまで来てしまえば、彼女の頼みを断るのは不可能。
逆に考えるのだ。他のバンド、ガールズバンドのトップランカーの作詞方法を見せてもらえるのなら、此方としても十分利益が見込めると。
蒼真は立て置き型のカレンダーに目を走らせる。
「予定………次の日曜は暇だけど」
『日曜日ね。その日にソウの家に行けば良いのかしら?』
「俺の家?そうやね。家の住所はまた送るから」
『ありがとう。それじゃ、次の日曜日は楽しみにしとくわ』
―――通話が終了しました。
スマホをパソコンの隣に置く。
座椅子の背もたれへ体重を乗せた蒼真は特に意味もなく天井を見上げる。
そして―――気付いた。
会話の流れに誤魔化されていたが、改めて思い返すと別にこうする必要なかったことが一つだけ。
「姫さん、なんで俺の家に来んの?カフェとかCiRCLEでも行けたんじゃあ………」
時は既に遅し、である。
◇◇◇
蒼真の実家。
「いらっしゃい」
チャイムが鳴り、玄関の扉を開けた。
フェンスの向こうに待っていたのは私服姿の友希那。彼女は相も変わらず真っ直ぐな視線を俺に向けていた。
「今日はごめんなさい。貴重な休息を頂く感じになってしまって………」
「それは構わんよ。慣れっこやし、気にせんでよろしいぞ」
「ふふ………少しは気が楽になったわ」
のんびりと会話をこなしながら、俺は家に入る上で邪魔になるフェンスをどかそうと庭先まで、歩みを進めた。
「蒼真先輩!!」
と、可愛らしい声で誰かが俺を呼ぶ。
壁でちょうど俺の死角に入っていたらしく、友希那以外に誰かがいたようだ。
「あこちゃん?あこちゃんも来たの?」
「はいっ!!」
今日も満天の元気っぷりなあこ。
真夏の天気日よりな本日なのか、あこの服装は気軽に運動しても平気そうなラフな格好。
ノースリーブなんて男の俺には無縁だ。
「友希那さんと偶然ばったり会いまして!!なんと!!蒼真先輩の家に行くって言うじゃないですか!!」
「………姫さん、もしや誰にも言ってなかった?」
「えぇ………こうなるとは分かっていたから………」
どっちにしろ事の顛末は同じであったらしい。
バンドメンバーに伝えないにしろ、一番友希那が危惧していたあこがこうやってバッチリ付いてきてしまっているのだから。
他のメンバー、紗夜や燐子辺りはきっと遠慮するだろう。リサは友希那が行くならって興味本位に付いてきそう。
「あこもお邪魔して良いですか………?」
「ん。全然いけるよ。どうぞ~」
「やった!!」
フェンスを開けて、二人を迎える。
中学生のあこはお初の実家訪問にテンションが舞い上がり、意気揚々と駆け出して行ってしまった。
「色々………ごめんなさい」
「なんで姫さんが謝ってんの?むしろ、あこちゃんが来てくれて、俺はちょっと安心したね。姫さんが一人で抱え込んでたなら、無理にでもあこちゃんと一緒に来なかったと思うし」
「………あこと会ったのは本当にたまたまよ」
「それでもやって」
Roseliaもまだまだ安泰らしい。
バンドの悩みは一人で抱え込めるほど容易い物ではないと俺が何度も痛感しているからこそ思えるこの感情。うん、大事。
「ん?あこちゃん?」
先に突撃したあこが玄関入ってすぐに停止していた。
小さく呟いていたのは呪文の言葉。多分。
「妾と同等………否、それ以上………」
さらに向こう側、廊下には別の少女が。
「あ、どうもです………ん?」
あの反応は明らかに困ってる。
友希那も彼女に気付いた。つんつんと指で俺の腰をつついてくる。
「あの子は?」
「俺の妹」
「だとしたら、二人は何をしてるの?」
「知らんよ………」
殺伐とした感じではない。
むしろ、このまま二人はどうなるだろうと邪道な考えが浮かび、見守ることに。
「貴様………名は?」
「あなたこそ………何ですか」
あこ。中二病モードに入ってる。
「妾は大魔王あこ!!蒼真先輩は妾の永遠の
「むぅ………兄さんは私の兄さんです」
「兄さん?」
あこの頭上にハテナマーク。
てか、俺がいつあこの手下になったと言うのだ。友希那さん、変な視線はこちらに向けないで。
「私は"山吹悠希"………兄さんの妹です。覚えておいてくださいね?―――魔王さん」
―――これが出逢い。
ドラマーの妹、あこ。
本物の家族の妹、悠希。
山吹蒼真と関連する二人の妹が運命的な出逢いを果たしたその瞬間を偶然にも俺と友希那は目撃したのであった。
…………うん、どうでもいいね。
-3の2- へ続く。
『あこちゃん!!の補足シリーズ』
・友希那の会いに行くわ発言
→ただ単に作者が言われたい台詞ってだけであって、本編に深い意味はないというオチ。因みに本作品の友希那さんは天然ぶり(ポンコツとも言う)が高めに設定済み。
・「は?なんやて?」by蒼真
→なんやて!?○藤!!………って言いたい。
・蒼真の母親は?
→ざんねーん。出張中!!
出してしまうと、話の展開がカオスになっちゃうので今回は出番なしです。
・7月3日
→あこの誕生日。
ってことで、毎度お馴染みの短編です。
◇◇◇(○○ください!!)
ライブハウス"CiRCLE"。
「蒼真先輩~!ん!」
受付をしてるとあこがいきなり満面の笑みで両手を差し出してきた。
―――ん?
練習終わりのRoseliaは既に片付けを済ませ、今日は解散のみ。だが、あこは帰らずに俺のところへ来た。
正直、あこのこれは何を要望しての行動か分からない。彼女の小さな掌が段々と不気味なオーラを醸し出す。
お手上げ状態の俺は素直に白状することに。
「あこちゃん、これは何?」
「ええー!!先輩からは何もくれないんですか~?」
「………なんか目出度いことでもあったん?」
すると、両腕を腰にあてたあこ。
えっへんと偉そうに仁王立ちするその姿は本人には悪いがとても微笑ましい。
「あこ!!今日が誕生日です!!」
「………おー、おめでとー」
「なので、はい!!」
「すまんね………何も用意してないんだわ」
「つ !?」
俺の目には驚きでピョンと跳ねるツインテールと丸く見開いた目。そして、悲しみに満ち溢れる表情が現れる。
「代わりと言っちゃあれやけど―――」
「何ですか!?」
「おっと………ちょい待とうね。あこちゃんのお願いを一つ聞いてやろう。俺の出来る範囲でなら、何でも」
「お願いを一つ………ですか?」
「おう」
「なら、二つ、あこのお願いを聞いてください」
「そういうのはダメ」
「そんなぁ~」
………危ない。
中学生と言えど、最近の子はあなどれない。
「なら………蒼真先輩、こっちに来てしゃがんでください」
「それぐらいなら………でも、何すんの?」
あこの指示通りにカウンターを離れ、彼女の前で膝座りとなる。
この状態ではあこの視線が上。
ゆっくりと迫ってきたあこは恐る恐る俺の腰から腕を回した。
そして、俺の胸に顔を埋めるように抱き付いてくる。
「あこちゃんってこれ、好きよな」
「そうですか~?蒼真先輩の匂い、あこ、好きなんですよ。そのせいかもしれません」
「匂い………匂いかぁ~。喜びずらい」
数秒か。数十秒か。
ずっとあこは俺にハグしたまま。俺もじっとするままだとあれなので、そっと彼女の頭を撫でる。
「ふわぁ~………もう大丈夫です!!」
「ん?これでOK?」
「はい!あこは満足です!!」
俺には割と足りない気もするが、本人が笑顔なので良しとする。
「あっ、でも―――」
俺は油断していた。
あこが再び俺の頬近くに接近していたのに反応が遅れた。
故に―――
―――チュッ。
「先輩!!ありがとうございました!!」
あこは嵐のように去っていった。
終
・リクエスト募集中!!
→詳細はソウソウの活動報告をご覧になってくださいな。