Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 二人目は、かの天使、花音ちゃんです。

 自分は家に帰った際に部屋の扉を開けると花音ちゃん(のタペストリー)が迎えてくれる至福の毎日を過ごしております。とは言え、星四の花音ちゃんはいないのです。
 故に書くのです。


*一応、念のために軽い説明を入れておきます。
 ◇◇◇………大幅な場所、時間などの転換。
 ◇………………少しの場所、時間などの転換。

 全員編-1-の後の話となります。主人公と花音は顔合わせ済み、という点を覚えて読み進めることをお薦めします。



松原花音編
-1の1-『Aquarium』*


 ファーストフード店。

 

「「あっ………」」

 

 お互い偶然にも顔を合わした。それも客と店員として。ドラムの個人練もほどほどに小腹が空いてしまったので、此処に入店したのだがまさかこんな所で再会するとは。

 その相手は花音さん。どうやらユニフォーム姿から察するに此処でバイトしているようだ。あの集会以来会うのはこれが初。

 

「………このセットお願いします」

「あ、はい。畏まりました」

 

 何事もなかったかのように会話をこなす。向こうも絶対に気づいているはずだが互いにそこは触れない。

 特に知り合いだからと言って俺に対する接客自体に変化はなく、彼女にジュースやハンバーガーの種類を告げた。

 

「合計で780円になります」

 

 紙の野口さんを彼女に渡す。

 お釣りをレジから回収した花音さん。俺もそれを受け取ろうと、掌を差しのべる。

 

「っ!」

 

 ぴくっと、花音さんが反応した。

 お釣りを渡される際、ちょっと彼女の手と触れてしまったがそこまでリアクションされるとちょっとショック。

 俺だって少し緊張したのに。

 

「「………」」

 

 んで、だ。この時間帯はどうやら店自体が暇らしく俺の後ろに並ぶ人もいない。花音さんも俺の頼んだ商品が届くまですることもない。

 お互いすることなく、目を合わせたかと思えばすぐ反らす。そんな初な反応を繰り返していた。主に花音さん。

 反応が面白いから、じっと見つめていたらそうなっていた。あ、泣きそう。

 

「あの………何か用ですか?」

「いえ、お久し振りだなぁと思いまして」

「あ………あの日以来ですね」

 

 良かった、俺の事は覚えてもらえていた。じゃなければ、ただのナンパ野郎だ。

 本来ならこんな世間話は店員と客とでは駄目なのだが、客が疎らである為、これぐらいの談笑は目を瞑ってもらえるみたい。

 レジ対応してるのも花音さんだけみたいだし。

 

「ここでバイトしてたんですね」

「う、うん………」

 

 どこか他人行儀な花音さん。

 会ったことがあるとは言え、まだ一対一で会話したことはなかったはず。

 加えて、男性が苦手とも耳にしたこともある。緊張するのも無理はない。

 

「………俺もバイトしてたんですけどね。最近はあんまりかな………」

「そう……ですか………」

「………」

「………」

 

 うん、会話が続かん。

 男苦手の花音さん。コミュニケーションがあんまり得意ではない俺。まぁ、話題がないと続かんな。

 ドラムの話でもすべきだろうか。

 だが、花音さんのドラムを語るにはまずバンドの方から知ってもらう必要が大いにあるだろう。という、俺もあまり他人に自慢できるほどの知識を持っているわけではないが現段階での話だ。

 バンド名は"ハロー、ハッピーワールド!"。

 世界中を笑顔いっぱいに。そんな目標を掲げたバンド。初めは、なんとも大規模な目標だとか、理想の夢を見すぎている可哀想な人だとか、大抵の人は感じるだろうが演奏を目の当たりにすれば分かるはずだ。

 ただ、ここであまりにも膨大な量になってしまうを理由にバンド名を略称しての"ハロハピ!"の詳細を語る訳にはいかない。

 取り敢えず、三行で纏めると。

 

 ーーーボーカル、超破天荒。

 ーーー加えて熊さんにわんぱくにイケメンに、ひたらすツッコミ要素多い。

 ーーーそれを支える花音さん、すげぇ。

 

 の以上である。

 

「花音ちゃん?」

 

 と、店の奥から呼ぶ声。

 トレーを持って出てきたのは花音さんと同じ制服を着た女の子。

 その子はレジ前、花音さんの隣に来るとトレーに乗った商品を差し出してきた。よく見ると俺の頼んだ物だ。  

 

「あ、ごめんね、彩ちゃん」

「ううん、気にしないで」

 

 首を振って、軽く微笑む。

 その一連の動作はまさに店員の鏡の象徴であった。

 

「お待たせしました。ご注文の品です」

「あ、どうも」

 

 その店員さんは俺に商品を渡して、自分が手持ち無沙汰になると元の持ち場に戻る素振りは見せず、俺と花音さんを交互に見比べていた。

 

「もしかして花音ちゃんのお知り合いさん?」

「う、うん………」

「なら、挨拶しといた方が良いかな?」

 

 小さい声で会話が始まった。

 俺はもう席の方へ行っても良いのだろうか。

 と、大きく一歩彼女が出てきた。

 

「あ、初めまして!私、丸山彩と言います。花音ちゃん共々よろしくお願いします!」

「あ、ご丁寧にどうも。山吹蒼真と言います」

「よろしくお願いします!………山吹?あの山吹さん?………え、でも?あれ?」

 

 俺の名字に彩さんが反応した。

 どうやら彼女は沙綾の事を知っているようだ。山吹、という名字でぱっと思い付くのは"山吹ベーカリー"のパン屋ぐらい。

 彩さんはそのパン屋の常連さんなのかな。

 

「沙綾?」

「あ、そうです!!………え!?お兄さん!?」

 

 思わず声を上げる彩さん。

 たまらず花音さんが辺りを様子見するが、店内は俺達以外誰もいないので特に何も起こらない。

 

「正確には従兄やね」

「従兄さん!!初めて知りました!!」

 

 はわわ!、と段々慌てる花音さん。

 微笑ましく見てると、花音さんの様子が変わってきて。

 

「あの………そ、蒼真さん!」

「えっ!?あの花音ちゃんが………!!」

 

 事情は知らんが、彩さんが感動してる。

 

「どうしたの?」

「彩ちゃん、"Pastel*Palettes"のボーカルですけど………覚えてないですか?」

「ん?」

「え?」

 

 俺と彩さんの視線が一切に花音さんへ。

 "Pastel*Palettes"。確か、麻弥さんの所属するアイドルバンドでつい先月のライブでも共演したバンドの一つにあったはず。

 そのバンドのボーカルが彼女。そりゃあ見覚えあるはずだ。

 

「彩ちゃん。蒼真さん、この前のライブで出てたゲストバンドのドラマーさんだよ」

「俺達………初めまして、じゃなかったですね」

「えへへ~。そうでしたね~」

 

 つまり、沙綾とはバンド繋がりなのか。

 あいつも意外と交友関係が、広い。あれ?なんか違うな。まぁいいや。

 

「ていうかもうそろそろ………」

 

 俺の視線は下、トレーの上に乗って食欲をそそる匂いを醸し出すハンバーガー達へ注がれる。

 早くしないと冷めてしまう。美味しさ半減。

 

「あ、ごめんなさい!」

「いえ。お気になさらず」

「すみません。申し訳ないですけど、最後に一つだけ良いですか?」

「え?あ、何ですーーー」

 

 そう言うと彩さんは俺の耳元まで近付きーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ファーストフード店。外。

 

「お待たせしました!」

 

 先程の制服姿とは売って変わって私服姿で登場した彩さん。

 

『ご相談したいことがあるので、お店の外で待っててもらって良いですか?私の今日のバイト、もう終わりますので………』

 

 あぁ言われては男として断れまい。

 ライブで共演した同士ではあるものの、それはバンドの話であって個人となると話は別。

 実質上、初対面に近いのだが彩さんはどういう意図で俺に相談することを決めてしまったのか。しかも彩さんは花音さんの友達、でもあるので無下に扱えないのが何とも。

 

「わざわざありがとう御座います、山吹さん」

「いや、それは良いんですけど………」

「………どうかされました?山吹さん」

 

 今、彼女の耳打ちシーンが脳内でリピートされた。流石、アイドルバンドのボーカルをしているだけあって声質はとっても善きであった。

 不思議そうに首を傾げる彩さん。

 話を逸らさなくては。

 

「ふと思ったんですけど、山吹さんって正直ややこしくないですか?」

「え?あー………それもそうですね………」

「だから名前で呼んでも別に構わないですよ」

「なら失礼して。蒼真君………で合ってます?」

「合ってます」

「でしたら、この際ですし、私のことも名前で呼んでください。なんなら呼び捨てでも!」

 

 今、犬の残像が見えた気が。

 

「いきなりそれはきついな………彩ちゃんって呼んでも?」

「全然構わないですよ!あ、ついでなんですが、蒼真君って高校生です?」

「高校二年生」

「え!?私と同学年!?なら、敬語じゃなくても良いよね?蒼真君、さっきから敬語で話してるとどうしても違和感を感じちゃうから………」

「そんなに俺の敬語が変?」

「ううん!!全然!!なんというか………喋り方を無理してるというか………何言ってるんだろう、私。あはは………」

「大丈夫。大体、言いたいことは分かった」

 

 よし、何とか誤魔化せたようだ。

 自分でも段々何を言ってしまうのか発言に少し恐怖を感じてしまうが、今のところ問題はない。

 彩ちゃんも別の意味で同じなのか、から笑いをしてる。

 というより、敬語の件をどうにかしたい。ついこの前も別の子に指摘されたばかりだ。

 

「それと蒼真君。ご相談の件なんだけど………」

「え?あ、そうやった」

「詳しい話は私のいつも行ってるカフェで話しても良いかな?」

「それって時間かかる?」

「う、うん。場合によっては………だけど」

「了解した」

「うん、ありがとね!じゃあ早速だけど行こっか。こっちだよ」

 

 彩ちゃんが先陣を切って歩き出す。

 うーむ。これはますます相談の内容が分からなくなってきたぞ。バンド関連の線が今のところ濃厚だ。

 

「先にどんな内容が聞いてもええかな?」

 

 先手を打つ。

 そんな気分で聞いた俺。他に特に深い意味を込めることはなく、ただ何となく。

 ん?、と彩ちゃんが後ろを振り返る。

 

「えっとね………」

 

 ただその後の彩ちゃんの一言でこの先、その相談がただ事で終わらないのを痛感する羽目になってしまうことを俺は知ってしまう。

 

「ーーーちょっと蒼真君とデートしてもらおうかなぁ………なんてね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 -1の2- へ続く

 




 あれれ?彩ちゃんがヒロインに?
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