感想や評価、お待ちしております。
P.S.日菜ちゃん、紗夜さん。お誕生日おめでとうございます!!
◇◇◇
ショッピングモール。
「………ようやく着いたよ」
予感はしていた。
具体的には駅を降りて改札機を通った直後からだ。花音ちゃんの足が止まり、左右をキョロキョロし出した。
もうこの段階で俺は気付いていた。
―――この子、既に迷っとる………と。
「うん、思ったより駅からすぐ近くだったね………」
「やのに、お陰様でこの辺りの地理を一気に知れた感覚を味わうことになるとはね~」
「………ごめんなさい」
あそこで右を選べば、即目的地着。
なのに、花音ちゃんは見事に左を選択した。俺はこの駅で降りるのは初めてで尚且つ花音ちゃん自身が人の力を借りずとも辿り着けると宣言したので後ろを付いていくだけだったが、それが不幸の始まりとは。
兎や角言っても、時間は戻ってこない。それほど時間をロストした訳ではないので気を取り直して行こうと心掛ける。
「花音ちゃんは何を買いに?」
「服………かな?」
「かな?」
「あっ、うん!お洋服を買いに来たの!」
誤魔化そうとする花音ちゃん。
でも、今明らかについさっき考え付いたような感じがしていたのだが。
「んじゃ、レッツらゴー」
「あっ………」
「どうかした?」
「ううん、何でもない。早くいこ」
とは言いつつ、花音ちゃんの視線は俺の手元へとチラチラ伺うかのように動いている。
成る程、そういうことか。
「ん」
俺は右手を差し出す。
「えっ?」
「花音ちゃん専用迷子対策」
「もぅ!」
言葉とは裏腹に彼女は俺の手を掴む。
またはぐれられても困るから。特に両者とも未知の土地となれば尚更。手を繋いでおけば、そんな不安も解消される。そういう理由で俺は彼女に手を差し伸べた。
………本当にそれだけか?
隣にいる花音ちゃんはニコニコしている。
俺と手を繋ぐのが嬉しいのだろうか。そう思ってくれていたら正直、俺も嬉しい。でも、同時に気恥ずかしい。
―――考えるな。自分はあれを忘れたのか。
………昔の記憶が過ってしまった。
一気に興が冷めたような感覚を覚えてしまう。こんなもの、とっとと捨て去りたいのに。
「蒼真君?どうしたの?行こ?」
「あ、あぁ………」
俺はこの気持ちを胸の奥にしまった。
だって、これは二度と思い出してはいけない過去の造物なのだから。
◇◇◇
ショッピングモール。
「………やっぱ、花音ちゃんも女の子やん。ヤバ」
「むぅー。それ、どういう意味なの~?」
おーらら。聞こえてしまっていた。
買い物を終えた俺と花音ちゃんは同じショッピングモール内の全国展開のファミレスで昼食を摂るつもりで席に座っていた。
既に注文は終えて、料理待ち。その時間に先程の会話が発生した。
俺はちらりと足元を見る。
「んや、随分と買いましたなぁーって」
「そういう蒼真君は逆に服に興味が無さすぎると思うよ。ライブの衣装とかどうしてるの?」
彼女の足元には数個の紙袋。
中身すべてが今日の戦果である。俺には無縁の物体が数多く存在していた。
花音ちゃんが試着した際に感想を求められたのでそれなりに上手く返してはいたつもりだが、此所まで大量の荷物になるとは予想外。
「ライブの服は妹にパス。もしくはその日の気分次第」
「っ!!そういうのは良くないよ!」
俺の答えは花音ちゃんには不合格のご様子。そうは言われましても、実際にあまり関心が無いので必然的にそうなってしまう。
「決めました」
「………ワッツ?」
「ご飯食べたら蒼真君の服を買いに行きます」
「Oh………それはありがたいんやけど、花音ちゃん、あのね?」
「ふぇ?」
暴走モードに入りつつある花音ちゃんを落ち着かせる。
「俺の用事も先に済ませちゃって良か?」
「あっ、そ、そうだよね………今日は蒼真君が付き添ってくれる予定じゃなかったもんね………」
「ごめんな。花音ちゃんとの買い物はいつでも大歓迎やし、俺の服についてはまた今度にでも一緒に行こうな?」
「また今度………うん」
どうにか納得させる事に成功した。
このままだと、俺の財布の偉人達はあっという間に亡き者へと変貌してしまったであろう。
何故か頬を少し赤らめた花音ちゃん。
「あっ、そうだ………」
すると花音ちゃんは何かを思いだし、足元の紙袋の中を探り出す。俺は不思議そうに彼女のその動きを見ていた。
やがて、花音ちゃんは一つ小さな袋に包まれた何かを取り出した。それを俺の方へと両手でそっと差し出してくる。
「はい、これ。朝のお礼です」
「え?いつの間に買ったん………ありがとう」
「どういたしまして」
笑顔を見せる花音ちゃん。
俺はじっと彼女からのプレゼントを見ていた。あまり異性から貰ったことがないので、どういうリアクションをすれば良いのか分からない。
「これは?」
「リストバンドだよ。男の子に選ぶのは初めてだからお気に召さないかもしれないけど………」
「リストバンド………初めて………」
「えっ、いや………あの………深い意味は………」
両者ともに気不味い空気が。
あ、あのですね。そういう情報を言われましても理解が追い付かないと言いますか。何と言いますか………ともかく。
「うん、花音ちゃん、ありがとね。大事に使わせて貰うから」
「はいぃ………」
まだ花音ちゃんは復活しない。
「お待たせしました!御注文の品でございます!」
ここで料理が運ばれてくる。
お互い無言のままに店員さんが料理を目の前に置いていくのを眺める。
店員が席から離れると、目の前から食欲を刺激する憎たらしい匂いが醸し出す。
「取り敢えず食べようか」
「………そうだね」
「いただきます」
「いただきます」
この後、料理は美味しくいただきました。
◇◇◇
とある駅。
「んじゃ、こっちやから。足元とか気を付けてね」
次は蒼真君の買い物。
私は彼の誘導に付いていく。迷子対策などと不服であるが、今もちゃんと私の右手は彼の左手と繋がっている。そして、それを考慮してなのか、彼はゆっくりと移動する。
蒼真君は細かな気遣いが得意。繊細な性格の持ち主。しかも、それも黙って行うことが多い。私はちゃんと気付いていた。
今も歩道を歩いているが、道路側を彼が歩く。たまたまかもしれないが帰りは繋ぐ手が逆になるので彼は意識して行動していることが分かった。
さらにさっきの買い物だって、彼の性格が出ていた。新作衣服の試着の時に思わず彼に感想を聞いてしまったが、彼は困る顔を一つせず丁寧に答えてくれた。
ファッションに興味がない、分からん、知らんと口では言いつつ、ちゃんと他人の服装は事細やかに見ている彼。なのに、肝心の自分が疎かになっているのは私のファッション魂が許せなかった。
故に勢い目掛けてあんな発言をしてしまった。後悔の気持ちが精神を支配しつつ、結果的にまた彼と出掛ける約束が取れたのは結果オーライでもある。
こんな彼の性格だからこそ、彼のドラムにもその影響が出ているんだね、と一人納得しながら私は知らない道を歩いていく。
「どこに行くの?」
「んーもうすぐ着くから」
こうやって彼は目的地を教えてくれない。
もやっとした感触を胸に抱きながら、私はひたすら彼と一緒に歩いていく。
―――数分後。
「ここ」
「ここ?」
彼の足が止まり、到着したことを知らせてくれる。私は眼前にある建物の看板へ視線が移る。
でも、文字が掠れて読めなかった。
「中は楽器店やな」
「楽器店?」
だとすると、老舗の類だろうか。
「んじゃ、入るよ」
彼は私の手を離し、店内へと入る。
「えっ、まっ、待って!」
置いていかれた私は慌てて彼の背中を追いかけるのであった。
-2の3- へ続く。
*おーい主人公さん!?手を繋ぎ過ぎじゃないですかー!!??あぁ!?
《どうでも良い補足シリーズ》
・「服………かな?」
→買い物に行くと言いつつ、何も考えていなかった花音ちゃん。可愛い。
・過去の造物
→花音編-3-以降で掘り下げていく予定。
・おーらら。
→スマホゲームに登場する梨忍者の口癖。
・蒼真の妹
→ぼちぼち登場するかも。
お気に入りの話はどれですか?「花音編」
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-1-『Aquarium』
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-2-『Shopping』
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-3-『Conclusion』
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-4-『Braeker』
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-5-『Proof』