Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 花音ちゃん、まじ天使(挨拶)。

 新イベントの星二の花音ちゃん、可愛いすぎません!?しばらく呆然としてましたわ!

 ………落ち着きます。

 花音ちゃん編、完結に向けて早足となっておりますのでだいぶ話が飛び飛びに今後なります。今回はまだギリセーフです。

 評価、感想、大歓迎。お待ちしております。



-2の3-

 ◇◇◇

 

 古びれたビル。

 

「ここは………」

 

 私はゆっくり店内を見渡す。

 古びた木材の香りがする。加えて、天井近くの壁際まで綺麗に並べらて展示された楽器がより一層、部屋の狭さを際立てている。

 正直、居心地が少し悪い。

 まだ此処の空気に慣れていない、という理由がその大半を占めるとは思うけど、今の私にとってはあまり長居は遠慮したい場所。

 唯一頼りの蒼真君は入店してから迷うことなく、受付テーブルの方へと歩いていく。置いていかれたくない私はそそくさと後を付いていった。

 やがて、蒼真君は受付前で足を止める。

 

「あ、蒼君じゃない。いらっしゃい」

「ご無沙汰です」

 

 店奥の受付に座っていた年上の女の人。

 蒼真君はその人と会話を始めた。私は後ろから眺めていた。元から二人は知り合いらしく、女の人は蒼真君に気付くと椅子から立ち上がり受付のテーブルまで動いていた。

 置いてけぼりの私。それが何だか少しだけモヤモヤする。

 今日だけでも、私の知らない蒼真君ばかりと遭遇する。彼と会って一年も経ってないので当たり前だと言えば、当たり前だけど。

 それでも、少しずつだけど彼の事を知ることが出来た、とポジティブ思考にすれば、モヤモヤ感から救われた気分は味わえる。

 

「それで、例のものは?」

「奥に並べてあるよ?取ってこようか?」

「いえ、大丈夫です。もしかして桐山さんもそっちにいます?」

「うん、いると思うよ」

 

 頷いた蒼真君は左奥の別の部屋へと向かうのか、また離れていく。私は彼の後ろを追いかけようか迷ってしまう。

 

「あれ?」

 

 と、声がかかる。

 反射的に視線を向けてしまうと、先程蒼真君と話していた女の人とがっつり目が合ってしまった。

 女の人がにこやかに笑顔を浮かべる。

 

「蒼君の付き添いかな?」

「え?あの、あ、はい!」

「ふふ、緊張しないでもっとリラックスして?取って食べる訳じゃないんだから」

 

 唐突な質問に声が裏返ってしまうが、女の人は優しく返してくれた。この人、いい人だ。

 ふー、ふー、と深呼吸を繰り返して心を落ち着かせる。気がつけば、蒼真君の姿は完全に見失ってしまった。

 

「蒼君の彼女さんかな?」

「ふぇぇ!?ち、違います!!」

「なるほど。少なくとも脈ありね………」

 

 姉さんの質問に私はもうパニック状態。

 全力で首を横に振る私にはお姉さんの微弱な呟きなど耳に届かない。

 

「でも、珍しいこともあるんだ」

「………どういうことですか?」

 

 私の問い掛けにお姉さんは答える。

 

「蒼君、いっつも一人で来るからね。誰かと来る、それもこんな可愛い子を連れてくるとは………」

「可愛い………」

 

 私の頬が熱を帯びてしまい、熱い。

 こんな目に遭うのなら、心の準備をしておきたかった。

 

「蒼君も罪だね」

「えっと………」

「あ、そう言えば名前をまだ聞いてなかった。名前はなんて言うの?」

「松原………花音です」

「可愛い名前。花音ちゃんって呼んでいい?」

「はい」

「よし、覚えた。私は(ゆう)って言うの。よろしくね」

「ゆ、夕さん………」

 

 どうにか私は会話に付いていく。

 ほんわりした喋りでどんどん攻めてくる威圧感はこの人にしか出せない、と私は肌身を持って感じた。

 

「にしても蒼君も女の子を楽器店にデートに来るって何考えてるんだろうね?」

「デ、デート!?」

「うん、デート。ここに来る前も何処かに行ってたでしょ?」

「どどどうして分かるんですか!?」

「それはだね、蒼君が此処に来る時はいつも午前中の間に、だからだよ。でも、今日は午後に来たから寄り道でもしてたのかなって。さて………花音ちゃんの手荷物を見る限り、寄り道はデパート辺りかな?」

「………その通りです」

「蒼君、全然服に興味ないでしょ?」

「そ、そうなんです!!………はっ!?」

 

 共感してくれる人につい本音が。

 

「うん、結構がっつりデートしてるね」

「はいぃ………」

 

 この人には反論しても無駄だと学んだ。

 蒼真君のファッション無関心ぶりも知っている夕さん。となれば私にとって、蒼真君と夕さんの関係が気になってくる。

 

「あの………」

「ん?」

「夕さんって………蒼真君の事はいつから知ってるんですか?」

「気になる?」

 

 やっぱり、この人、苦手。

 

「乙女な返答をありがとう。顔、真っ赤だよ?」

「ふぇぇ………」

「あはは。これは後で蒼君に一言言っておかないと。お礼に花音ちゃんの知りたいこと、答えるね。結論から言うと、蒼君は小さい頃から知ってるよ」

 

 夕さんの答えに私の目が点になる。

 蒼真君の幼い頃を知る人物が今、私の目の前にいるのだ。

 

「関係で言えば、そうだね………蒼君のバンド、あるでしょ?」

「はい」

「そのバンドのベースの実の姉さん」

「な、なるほど………」

「私の弟と蒼君が中学生から友達で、よく此処に顔見せてくれたから自然と………ね」

 

 夕さんはそう言葉をくくる。

 蒼真君のバンドのベースさんの姉で、実家が楽器店を営んでいるから蒼真君もよく夕さんと会う、ということらしい。

 

「まぁ此処も来月には閉まっちゃうんだけど」

「え!?閉店するんですか!?」

「あー、違う違う。ごめんね、単なる移転だよ。此処、お爺ちゃんが経営主だけど、もう歳でしんどくなってきたらしくてね。折角だし私の両親の住んでる所でやることにしたんだ」

「移転………よ、良かったです」

 

 移転と聞いて胸がほっとする。

 私は初めて来たとは言え、蒼真君にとっては思いでの場所。それが消えるのは心苦しい。

 

「花音ちゃん。蒼君、あぁ見えてなかなか本音は言わないから、もし攻めるならとことん攻めること、と私からのアドバイス」

「どういうことでしょうか………!?」

「若い内に頑張りたまえ、恋する少女!」

「は、はい!」

 

 気迫に負けて返事をしてしまう。

 夕さんが右手を天に向けて上げるから私もしなくちゃダメかと思い、左腕を上げる。

 ―――この最悪のタイミングで私は一番最悪の人の声を後ろから聞いてしまった。

 

「何やってんの?」

「そ、蒼真君!?見見見た!?」

「思いっきりガッツポーズしてんね」

「ふぇぇえ!!夕さぁぁぁん!!」

「はーい、よしよし。渾身のブロウが入っちゃったね。蒼君!なんてことしてんの!」

「いや………聞かれたからつい」

 

 夕さんの胸元へ抱きつく私。

 蒼真君は夕さんに軽い説教を頂戴してしまう。

 これは事故。事故なのだ。

 

「花音ちゃん、置いてけぼりにしたの思い出して帰ってきたんやけど………」

「蒼真君、それは?」

 

 ぶつぶつしてる蒼真君が両手で重たそうに抱えている物体にようやくと言った感じで私は見た。

 あの形状はスネアドラムかな。

 

「今日はこれ目当てで来たんよ。これ、普通のスネアやなくて、なんとウッド製のスネア!」

「へぇー」

「………まさか興味なし?」

「そんなことはないよ?私、ウッドスネアを生で見たの数回ぐらいだから」

 

 自慢そうに嬉しそうに言う蒼真君。

 そんなに喜ぶなら、もう少し私との今のこの状態も嬉しそうにしてほしい気持ちもぼちぼちある。

 そして、端を見ると夕さんが驚いた様子でいた。

 

「え?もしかして花音ちゃん、楽器とか行ける口?」

「もしかしても何も花音ちゃん、俺とおんなじドラマーだぞ。だから、連れてきた」

「あーそれは夕ちゃん、びっくり!」

 

 夕さんは私のこと、どういう目線で見てたのだろう。気になってしまう。

 

「なので、夕さん」

「ふぇ?」

「え?私の真似!?」

「あ、気にしないで。何?蒼君」

「いつも通りこれをあいつに持ってくるように伝言をお願いします」

「いつも通りね、分かった」

「それと花音ちゃんの案内もお願いしていいですか?」

 

 蒼真君は夕さんにそんな提案をする。

 夕さんが楽器の案内をしてくれるのはとてもありがたい。けど、あわよくば―――

 

「それは無理かな」

「え?どうしてです?」

「花音ちゃん、蒼君にやって欲しいみたいだよ、ほら」

 

 蒼真君の目がこちらに。

 恥ずかしくてつい私の目線は床とご対面してしまう。うぅー、私のバカ!

 

「お、お願いします………」

 

 勇気を絞りに絞って出した一言。

 蒼真君を見れない為、緊張がじわじわと私のからだ全身を包み込む。返事が返ってくるこの時間がやけに長い、そんな気もしてくる。

 

「やれんことはないんやけど………」

「ほーら、そこで渋らない!後は私がやっておくから大人しく行ってこい!」

「へーい」

 

 と、私の手が握られる。

 

「花音ちゃん」

「は、はい………」

 

 顔を上げるとそこには蒼真君が。

 近い。近い。顔が近いよ~。

 

「うわぁ………後で弟にも言っとこ」

 

 今日一番の急接近に私の心臓の鼓動がばくばくと跳ね上がっていく。顔が真っ赤にまってしまう。

 こうなってしまえば、最早私は理解せざるを得なかった。

 

 ―――私、松原花音は蒼真君を好き。

 

 今日、彼に対する気持ちをはっきりしようと目標にして挑んだ。その答えがこれ。

 

「なら、俺のいつも使ってるの教えれば良いんかな?こっちやから付いてきて」

 

 でも、同時に次の目標は決まった。さっき夕さんのアドバイスもきっとこれのことを指しているはず。

 次の目標。それは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 CiRCLE。Aスタジオ。

 

「それじゃ、皆さん、片付けしてくだーい」

 

 美咲の合図を切っ掛けにハロハピのメンバーは各自の作業へと散っていく。今は練習も先程一段落つき、撤収している最中。

 

「花音さん」

「どうしたの?美咲ちゃん」

 

 三バカを横目に美咲は花音の座るドラムの近くへとやって来ていた。

 実は美咲には今日の練習を通して、気になることがあったのだ。それを確かめようと花音の元へ。

 

「今日はやけにドラムが楽しそう?みたいな感じでしたけど………何かありました?」

「そ、そうかな?いつも通りだけど………」

「なら良いんですけど………あれ?」

「美咲ちゃん………?」

 

 美咲の視線は花音の手先へと。

 

「スティック、変えました?」

「やっぱり美咲ちゃんにはバレちゃうね………」

「ということは?」

「うん、蒼真君のお薦めで試しに使ってみてるんだよね、このスティック。でね!美咲ちゃん!これがとっても使いやすいんだよ!」

「は、はぁ………」

「つい思わず今日は派手に叩いちゃったけど、まだ予備はあるから大丈夫。うん」

「予備………ですか」

 

 口がひきつり気味の美咲。

 

「うん!本番用と予備用、それに保存用があるから」

「………」

 

 この時、美咲は思った。

 

 ―――蒼真さん。せめて花音さんだけは私の味方のままにしてください。そっちに行かれちゃうと私の限界まで一気に………ほんと、無理なんで。

 

「あ、もうスタジオ出ないと」

 

 スティックを頬擦りした花音を美咲はそっと私は見てない、そうだ見ていないのだ、と心に決めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 松原花音編-2-『Shopping』 終

 

 




*麻弥編でアンケートをしています。詳細は活動報告の方にありますのでお時間があれば、ぜひ。

『どうかしてるぜ補足シリーズ』
・桐山さん
→夕さんのお爺さん。夕さんの本名、桐山夕。


・夕さんの弟
→蒼真のベース担当。蒼真編が終われば、バンドリの誰かをヒロインにして書くかもしれない。


・ウッドスネア
→物によっては金が凄いことになります。


・次の目標
→ひ・み・つ♪


・花音さん………?
→オタク化しちゃった。主人公、まじ悪。

お気に入りの話はどれですか?「花音編」

  • -1-『Aquarium』
  • -2-『Shopping』
  • -3-『Conclusion』
  • -4-『Braeker』
  • -5-『Proof』
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