Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 花音ちゃん、まじ天使(挨拶)。

 この小説もついに-4-に突入。また、UA数も30000突破(5/11時点)とありがたい結果に。感謝です。
 花音編は完結に向けて、佳境に入ります。なかなかの展開となる予定ですので気長にお待ちください。作者はあくまでハッピーエンド好きです。

 ―――では、どうぞ。



-4の1-『Breaker』*

 ◇◇◇

 

 あの二人が初めて出逢ったのは中学一年生の時のはず。私が蒼君と会ったのはその後だけど、多分合ってると思う。

 

 ―――え?切っ掛け?

 

 きっと軽音部に入部した一年生同士、自然と話もするようになったんだろうね。私もそうだし。蒼君はどうやらベースの子に引き摺られる感じの成り行き入部だったらしいけど何だかんだで仲良くなってたみたい。

 

「ねぇ!ボク達でバンドやろうよ!」

 

 この彼女の一言が始まり。

 まず、私が最初の犠牲になった。小学校からの付き合いもあって、彼女に狙いを付けられた。リードギター担当。

 次にバンドに加入したのはベース担当の光君。口数が少ない男の子だけど、その分、内に秘めている情熱は誰にも負けていないぐらい熱い印象だった。

 そして最後にドラム担当として蒼君が加入した。その時、私は彼とはまったく面識がなかったけど真面目でクールな印象がその時私には彼に対してあった。暫くして、その印象は呆気なく崩れるけど。

 ボーカル担当は勿論、言い出しっぺの彼女。

 

「とりあえずの目標は武道館!」

 

 ………なんて言ってる馬鹿はともかくとして。これでようやく私達四人がバンドを旗にして一つに集った。

 

 ―――初代"アークラ"が始動したんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 羽沢珈琲店。

 

「―――ここまではOKかな?」

 

 私・松原花音はその言葉に小さく頷く。

 私と同席している、黒髪ショートヘアーの彼女は驚くことに蒼真君と以前バンドを組んだことがある仲だったらしい。

 でも、そのバンドは既に解散している。高校に進学する時にはメンバー同士が別々になってしまい、それ以来完全にバンドとしては機能停止してしまっているそうだ。

 

「………でも、やっぱり喋らないと駄目かな?今更なのは分かってるけど………」

「それはどういう意味で、でしょうか………?」

 

 彼女の名前は"辻原可織"さん。

 前バンドでギター担当をしていた彼女。今も趣味程度ではあるものの、音楽を楽しんでいるみたい。

 今日可織さんと私が会っているのには理由がある。

 沙綾ちゃんに相談を持ち掛けたあの日以来、私は沙綾ちゃんから聞いた事が忘れられずに毎日を過ごしていたのだ。

 

 ―――蒼真君の元カノ………。

 

 蒼真君本人にその件を聞いてみようとも考えた。けど、蒼真君はきっと私達から隠すって、沙綾ちゃんが太鼓判を押しており私もそれに賛同していた。だから、この案も断念せざるを得ない。

 具体案が出ない。そのせいで私の心の中はもやもやした感触がずっとあった。

 そんな、ある日のこと。

 

『花音?最近あなた、変よ』

 

 こころちゃんからその台詞が出たのはスタジオ練習の終わり頃だった。

 バンドの皆に個人的な理由で迷惑をかけていたと私はその時知ってしまい、申し訳無い気持ちで胸がいっぱいになってしまう。

 

『子猫ちゃん、悩み事なら私達に打ち明けるが良い。』

『かのちゃん先輩、大丈夫?』

『無理しないでくださいね』

 

 バンドメンバーから心配の声を受けて、私は素直に打ち明けることに決めた。

 

 ―――蒼真君のことなんだけど………。

 

 こころちゃん達に相談した結果、なんやかんやのやり取りがあって、黒服の人達に協力してもらうことになった。

 そして、私は中学時代の蒼真君がバンドを一緒に組んでいた一人の存在を知らされる。

 その人が"辻原可織"さん。現在の彼女が何処で何をしてるかは不明であったけども、何とか連絡を取ることに成功した。

 なので、こうして蒼真君の昔話を語って欲しいと彼女にお願いした。承諾は望み薄だと思っていたが、可織さんはそれを快諾。わざわざ喫茶店までご足労願っている。

 

「あんまり楽しい話でもないよ?」

「はい、分かってます。私はそれでも聞きたいです」

 

 可織さんの問いに私は迷いなく頷く。

 

「うん、なるほどなぁ………ふーん。ソウ君、恵まれてるんだね………」

 

 小さく可織さんは呟く。

 そこに含まれた真意は今の私には謎のまま。可織さん達の昔を私は知らない。

 

「じゃ、話そうか。私と蒼真君と光君………そして"璃里亜"ちゃん。四人でバンドしてた頃の話を………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 "アークラ"。それが私達のバンド名。

 

「え?それって今の蒼真君のバンドと同じ名前じゃ………」

 

 うん、そうだよ。

 今のアークラはね例えるなら、"二代目"って感じかな。実はメンバー半分が初期のメンバーと変わってるんだよね。

 詳細を話すと、ベースの光君とドラムのソウ君は同じ。だけど、ギターとボーカルの子が入れ替わってる。

 お察しの通り、初代のギターは私ね。って言っても、私が辞めた理由は単にバンド活動するにおいて環境が悪かっただけでソウ君達と仲が悪いとか、音楽の方向性の行き違いでぶつかったとかじゃないから安心して?

 なんなら今でも連絡はたまに取り合うぐらいだし。ライブも予定が会えば観に行ってるよ。

 

「なら、どうしてボーカルさんはバンドを離れてしまったんですか?」

 

 ………居ないんだよ、もう。

 

「え?」

 

 中学三年の冬に。

 

「ご、ごめんなさい………!!」

 

 ううん、気にしないで。今日はその話をしに来たんだから。

 

 初代アークラボーカル"遠堂璃里亜"ちゃん。

 

 璃里亜ちゃんはいつも無邪気にはしゃいで周りの皆に笑顔を見せていた天真爛漫な性格の女の子。彼女の笑顔を見て、私達も何だか救われた気になっていたぐらい。

 璃里亜ちゃは軽音部ではボーカル一筋。ギターも初めはやろうとしてたけど、手先が不器用な璃里亜ちゃんはすぐに諦めてた。

 でも、声の出し方は人一倍得意な女の子でもあったんだよ。透き通るように綺麗な声で聴いてると不思議と気持ちが高揚する彼女独特な歌声の持ち主。学校内では璃里亜ちゃんの噂で持ち切りになるぐらいの人気ぶり。

 

『細かいことは気にしないでガンガンいくよ!!』

 

 これが耳にタコが出来るほど聞いた璃里亜ちゃんの口癖。

 天真爛漫ではあるけど、悪く言えば無鉄砲ぶりで悪目立ちするのが璃里亜ちゃんの特性。

 ライブの時でも想定外の行動は当たり前。セットリスト全てを終えたかと思えば、気持ちが荒ぶってしまったのか新たな曲を勝手に始めたり。一緒にやる身としては油断できない存在だね。

 でも、逆にその破天荒ぶりは客受けしちゃった。バンドの人気は右肩上がり。文化祭とかではとても盛り上がって、そのお陰で楽しかった思い出がたくさん出来た。

 それでその璃里亜ちゃんの暴走を毎回止めていたストッパーが蒼君。色々あったりするんだけど、結局は蒼君が璃里亜ちゃんを抑えると全てが片付いてしまうって感じがアークラの日常になってたかな。

 

「バンドは………楽しかったですか?」

 

 勿論。あの時間はとても大事にしたい時間だよ。今もその気持ちは変わらない。

 

「それでは………何が?」

 

 一から順番に話すね。

 私達のバンド、アークラは最初は軽音部内で定期的にライブを披露する程度の些細な目標を目指して頑張っていた。

 でも、ライブを数回こなしていくと璃里亜ちゃんは満足できなくなっていったのだろうね。もっと沢山の人と一緒に歌を歌いたいと言うようになった。

 璃里亜ちゃんに押し負けるかのように、そして私達は自らの限界への挑戦として、バンドとして学校外の世界に飛び込んだ。と言っても近くのライブハウスにお邪魔しただけの話だよ。

 

「楽しそうですね」

 

 うん、今思えばライブハウス巡りは楽しかった。

 璃里亜ちゃんや蒼君のお陰であったかもしれないけど私達は周りのバンドとは似ても似つかないスタイルだったから余計にね。

 

 ―――ここからが本題だよ。

 

「え?」

 

 ある日、璃里亜ちゃんから相談があるって私は呼び出された。初めての事だったから何かあるんじゃないかって思わず不安になっちゃったぐらい。

 まぁある意味、その不安を裏切ることになるんだけど。

 

「………」

 

 気になる?花音ちゃん。

 

「………はい」

 

 恋したんだって。

 

「………はい?」

 

 ――――時は数年前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 放課後の教室。

 

「それで話って?」

 

 私・可織の眼前に映る少女は私の問いに直ぐには答えなかった。彼女の性格なら直ぐに答えそうなのに答えない、その態度に私は妙な違和感を覚える。

 

「可織って()はしたことある?」

「こ、恋………!?」

 

 私は一瞬呆気に取られた。

 これは嘘だ。もしくは夢だ。彼女の口からその言葉が飛び出すなんて。

 

 ―――"遠堂璃里亜"。

 

 それが彼女の名前。一言で纏めるなら思考が読めない暴走少女。暴走すると私ですら手が付けられなくなるのは日常茶飯事だ。

 私の所属するバンドのボーカルでもあるからして、彼女との付き合いはだいぶ長い。小学校の低学年から私達は一緒にいる。

 そんな璃里亜から恋という単語が出るのは今までになかった事例。つまり、私にとって緊急事態に他ならない。

 

「私の場合、無い訳じゃ無いけど………」

「なら、良かった。ボク、最近胸が痛いんだ。常にじゃないから病気でもないし………可織なら知ってると思って」

「胸が痛い?どういう風に?」

「チクチクしたり、ズキンとしたりする」

 

 彼女は自分の胸元を掴んだ。

 

「どういう時に痛いの?」

「それは………」

 

 璃里亜は目線を逸らした。

 

 ―――え?この子、誰?ほんとにリリー?

 

 正直、気持ち悪いぐらいだ。

 璃里亜という少女は本来、周りに笑顔を撒き散らす元気全開な性格の持ち主。ここまで奥手になっている彼女に私は疑いの目を向けるぐらいに今の璃里亜は豹変してる。

 恋する少女は此処まで変化させるとは。恐るべし。私にそれは他人事ではないので簡単に人には言えないけど。

 

 ―――となると相手は………。

 

「………蒼君だね」

「っ!!………う、うん」

 

 予想は見事に的中。

 気付かない方がおかしいぐらいだけど。あんなに蒼君に視線を向けて、璃里亜はニコニコとしまくってるのだから。本人がそれに気付いているかは別だ。

 

「蒼ちゃんといると安心するんだけど、他の女の子と仲良く話してるのを偶然見ちゃって………そしたら、何だか嫌な気持ちに………」

「それで自分が蒼君に恋してるって思った?」

「うん。いつからかは覚えてないけど、ボク、もっと蒼ちゃんのこと知りたいって思った」

「なら、そうだね。蒼君は案外鈍感だし、リリーから告白したら?」

「こ………こくはく?」

 

 ―――あれ?

 

 璃里亜の反応が鈍い。

 てっきり「うん、そうだね!」ばりの返答が来ると構えていたのに。これでは何だか不完全燃焼だ。

 

「………ボクが?」

「なんで私がしないといけないの?」

「それはそうなんだけど………恥ずかしいよ」

「なっ!?」

 

 ―――あのリリーが!!ふぉぉぉ!!

 

 今、絶対に璃里亜の口から恥ずかしいと言った。彼女に言わせたい言葉ランキング上位に君臨する内の一つだ。

 人前に立つことも。そして歌うことにも緊張を感じさせない度胸だけは人一倍の彼女にまさかの例外を私はついに発見してしまった。

 でも、よく考えてみる。なんと言おうと璃里亜にとってこれは所謂初恋になるのではないか、と。親友の恋を全力で応援するのは私のセオリーじゃなかったのか、と。

 

「リリー、やるよ。やるからにはとことんやるから。蒼君をメロメロにさせちゃうんだから」

「ふぇぇ………可織が怖いよ………ボク、そんなキャラじゃないのに………」

「さぁ!!楽しくなってきた!!」

 

 本人は乗り気ではないが、璃里亜は世間から見れば美少女だから問題ない。ただ中身が残念なだけで。

 蒼君は璃里亜の気持ちに気づいてるのかな。個人スタジオに数時間引き籠ってるぐらいのドラムバカだから気づいてない方に私は賭けるけどね。

 ともかく、こうやって―――

 

「お手柔らかに………ね?ホントだよね!?」

 

 ―――私、辻原可織は友達の恋物語を応援することを神に誓うことになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -4の2- へ続く。

 

 

 

 

 




『メイン二人と関係なく話が進むので補足シリーズ』
・辻原可織
→初代アークラのギタリスト。今は蒼真達とは別の女子校に通っている。中学の出来事で一旦は音楽から離れるものの、すぐにギターを手に取り弾き語りなどを趣味程度に嗜んでいる。


・遠堂璃里亜
→初代アークラのボーカリスト。人を魅了させる歌声に彼女本来の元気いっぱいさが加わり、聴く人を自然と楽しませることが出来た。初代アークラの中学文化祭でのライブは後輩に伝説として受け継がれている。


・リリー。
→可織が璃里亜に付けた渾名。


・璃里亜に言わせたい言葉ランキング
→可織独自の採点基準により定められたランキング。因みに一位は可織の密かに持つ邪心が混じった結果、「もう………バカ。大好き」になった。



*本日(5/11)、マイエンジェル花音ちゃんの誕生日です。もう白状します。昨日?の深夜にバンドリログインしたら花音ちゃんのおめでとうイベントが流れてきて、そこで気付きました。
 慌てて即行で仕上げたこれを投稿。でも肝心の花音ちゃんが全然出番なし。Wow!
 なので急遽ですが、短編を書いてみましたので此処まで読んでくださった皆さん。最後までお付き合いお願い申し上げます!


 ◇◇◇(おまけ)

 5月11日。その日は大切な日。

「え?欲しいもの?」

 俺は彼女にそう尋ねた。
 何か欲しいものは無いか、と。彼女と付き合って数年の月日が流れた今、直接聞いた方が手っ取り早いし確実に喜ぶと俺は学んでいた。
 俺の恋人の花音は深く考え込む仕草をした。正直、そこまで考え込まれると何を言われるかこっちはたまったもんじゃない。

「でも急にどうしたの?」
「どうしたも何も………花音、誕生日近いやろ」
「あっ………」
「今、気付いたのか」

 花音はどうやら何が欲しいかではなく、俺の質問の意図を考えていたようだ。
 抜けてると言うか、天然と言うか。
 それが彼女の可愛い魅力の一つでもあるのだが。

「………ほんと可愛いよな、花音って」
「えっ?………えっ!?」

 猛烈に花音の反応が激しくなる。

「蒼真君が………私のこと可愛いって………!!」
「何を今さら。常日頃、思ってますけど?」
「ふぇぇ!?そ、そうなんだ………」

 嬉しい、と微かな声が耳に届く。
 黙る俺も花音の本音の気持ちを知り、ちょっぴり気恥ずかしくなってしまった。

「それでだ。花音に欲しいもんってある?」
「う~ん。これはあると言うことになるの………かな?」
「何?俺の可能範囲でなら、やるけど」

 保険は一応賭けておく。
 花音の事だから、そんな無茶苦茶な要望は来ないだろうけど。ハロハピに感化されてやってしまった、となれば否定は出来ない。
 数秒の間を置いて花音は欲しいものを口にした。
 その前に少し早いけど―――

「私の欲しいもの。それは………あなたの全て、です―――なんてね。えへへ」

 ―――お誕生日おめでとう、花音。

「………ん?俺にどうしろと?」
「私と一日デートしてくれたら良いかな。勿論、何処に行くかは蒼真君にお任せします」
「そか。水族館でいいやろ」
「もーう!!そんな適当はダーメ!!千聖ちゃんに言いつけるよ!!」
「………了解。それまでに考えとくよ」


 花音編-短編その1- 終

お気に入りの話はどれですか?「花音編」

  • -1-『Aquarium』
  • -2-『Shopping』
  • -3-『Conclusion』
  • -4-『Braeker』
  • -5-『Proof』
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