Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 親指勢なのでどうしても「ティアドロップス」のラスサビ前のスライドでコンボを切らしてしまいます。何かコツはないのでしょうか。

 さて、麻弥ちゃん編-1-も短いですがこれで終わりです。とは言え、作者なりのラブコメ要素もそれなりに入れたつもりなので是非評価や感想なり、くれたら嬉しいです。



-1の2-

 ◇◇◇

 

 撮影スタジオ。

 

「では、撮影を始めまーす」

 

 スタッフのかけ声でいよいよ本番。

 俺も随分と時間をかけて着替えてきたので準備も万端。大半はパスパレメンバーとの雑談のせいでもあるが。

 そうそう、麻弥ちゃん以外のメンバーも普通に全員居た。てか、襲撃してきた。

 控え室で待機していたが、俺が来たということで着替え室に覗きに来たらしい。特に暇ぁ、だから来たよ!と水色ショートの子が嘆いていたのが印象的。

 今日一日纏めて撮影予定のパスパレメンバー。最後が麻弥ちゃん、とのことでよろしくとベースさんに言われた。

 会ってから思い出したが、彩ちゃんもパスパレの一員。なので当然いる。ただ向こうは麻弥ちゃんの相手が俺とは知らなかったらしくーーー

 

『蒼真君!?え!?なんで!?』

 

 と、相対したときには彩ちゃんの動揺はまったく隠しきれなくなっていた。彩ちゃん、世間は案外狭いものなんです。

 

「はーい。分かりましたー」

「………慣れないな、これ」

「大丈夫ですっ!蒼真さんにお似合いですから!」

「そうかな………」

 

 隣の麻弥ちゃんが返事をする。

 俺も不安を漏らしつつ、歩き出す。

 少し前に、そんなこんなで互いの自己紹介も兼ねつつ、彼女達のプロデュースで俺の服装が決められたのだが、如何せん、俺はファッションには微塵も興味がない。

 つまり、どういう服で何をアクセントにしてるのかが一切不明。ただ、キーボードの子からはお似合いでカッコいいです!ブシドー!とのことなので大人しく着ている。

 あの子、どこの国のハーフなんだろう。ブシドーって何のことやら。

 

「まずはそうね………」

 

 カメラマンの指示に従い、動く。

 撮影、とは言ったもののスタッフも最小限。カメラマンとディレクターとその他数人。そして、俺と麻弥ちゃん。

 大人数から注目が浴びるとただでさえ緊張しているのに余計に動きに強張ってしまう。その点では、ありがたい配慮だ。

 

「にしても案外ホーム感あるよな」

「それは蒼真さんが来るならって千聖さんの配慮のお陰ですね」

「そうなん?」

「えぇ」

 

 千聖さん。パスパレのベースさん。

 以前からも女優として活動しており、パスパレのまとめ役を買っている程の真面目さん。たまにテレビのドラマでも見かけるので人気なことは確か。

 小さな配慮も出来るとはあの人、何者だ。

 

「二人ともまずはベンチに座ってね」

「座ったあとはどうすれば?」

「そうねぇ………お好きにして頂戴。こっちで勝手に撮っておくから」

 

 そう言われても。

 ベンチに腰かけた俺と麻弥ちゃん。スタッフから自由にとの指示が出たが、逆に今はそれが困る。

 

「撮影がこんなあっさりしてるとは」

「ジブンも初めてです」

 

 適当な会話をこなすしかない、とお互いに理解はしているのでそつなくこなしていく。

 でも、一つ問題が。

 麻弥ちゃん、普段は眼鏡をかけてるのたが今はコンタクトレンズなのか眼鏡はしていない。

 それを見た俺は。

 

 ーーーうわっ、超美少女やん。

 

 ギャップが物凄いとはこの事。会話は普通だが、俺はさっきから麻弥ちゃんの方を一切見ていない。

 だって、見たら意識してまうから。

 

「蒼真さんのバンド、近々ライブはしないんですか?」

「え?ライブ?………来週ぐらいに対バンはするね」

「な!?それはどことですか!?」

 

 超絶に興味津々の麻弥ちゃん。

 

「Aftergrowとやったかな」

「アフロ!絶対観に行きます!蒼真さん、知ってます?アフロとはジブン達パスパレも曲を提供してもらったりと仲が良いんですよ!」

「そうなん?それは意外」

「ですね。まさかですよ!」

 

 Aftergrowがパスパレに曲提供とは。これまた身近な所でまさかの繋がりが発見された。

 あの頑固なボーカルがパスパレに合わせた曲を作ったのか。嘘だぁ。

 

 ーーーと、ここで。

 

「蒼真君~。もっと麻弥ちゃんの方に顔を向けてね~」

「っ!?」

「どうしました?」

「んや………」

 

 くっ、あのカメラマンやりよる。

 ここは男として覚悟を決めないと。そう心に誓って俺は麻弥ちゃんの方へと振り向く。

 

「あの………蒼真さん………そんなにじっと見つめられても………ジブン………恥ずかしいのですが………」

「あっ、すまん」

「い、いえ………」

「いいねーーー!!それ!!」

 

 外野が騒いでるが知らん。それどころではない。

 俺も麻弥ちゃんも照れ臭くなってしまい、どちらとも視線を反らす。

 

「ほんとごめん」

「そんなことは………ないです………はい」

 

 これは………気まずい。

 

「よし!次に行きましょ!」

 

 ここでカメラマンがノリにのった勢いでそんな提案をしてくる。

 一息落ち着けると思った両者。それは儚くも即座に消される。

 

「蒼真君!座ったまま麻弥ちゃんの腰に腕を回して頂戴!」

 

 目をパチクリとする俺。

 

「………すみません。もう一度お願いします」

「麻弥ちゃんの隣に移動して、腰に手を回すのよ!ほらほら男の子!」

 

 待て待て待て。待てやーい。

 それはちょっとハードル高くないですかな。麻弥ちゃんはまだ知り合ったばかりの女の子ですよ!?

 彼氏でもないのに腰に手を回すなんて事ーーー

 

「蒼真さん………お早めにお願いします。ジブンも緊張しちゃうので」

「………良いの?」

「はい。今日はそういう撮影ですから」

 

 麻弥ちゃんがそう言うなら、と俺は彼女の隣に腰を下ろす。近い。女の子特有の香りが鼻孔を刺激してくるが、今の俺は無心に近い状態。

 ゆっくりと左手を麻弥ちゃんの背後から伸ばしていく。

 

「はぁ~い。そのまま笑って~」

 

 笑えるか!と訴える。勿論、届かない。

 むしろ仕上がりが気になる。苦笑いになってる自分しか想像できない。

 麻弥ちゃんとは密接になってる。意識しないように心掛けるが無理。

 ひとまず、柔らかい。全身を使うドラマーなのに何故だ。

 

「OK。もういいわよ~」

 

 数回、フラッシュを浴びたら許可が降りた。即、俺は左手を彼女の腰から離して深呼吸を目一杯する。

 

「………」

「………」

 

 序盤と比べるとどうしても静かになってしまう。

 麻弥ちゃんは俯いたまま、両手を膝の上で握り拳を作ってじっとしている。

 俺はというと、カメラマンのニヤリとした笑みを見逃さないでいた。

 

 ーーーこれは………まだまだ続くぞ。

 

「それじゃあ次はお姫様抱っこ行こうか!」

「おおおお姫様抱っこですか!?」

 

 覚悟を決めた麻弥ちゃんでもこれで完全にパニックモード突入だ。俺はそれに入ると無言になるタイプ。

 ここはもう無だ。無の境地を極める修行だと脳内に植え付けるのだ。

 

 ーーー無。無。無。可愛い。無。

 

「麻弥ちゃん」

「そ、蒼真さん?」

「ほら、もうやるよ。大丈夫、ちゃんと俺が支えてやんから」

「は、はい………」

 

 両者、思いを胸に立ち上がる。

 俺は麻弥ちゃんの腰と膝裏に手を伸ばして彼女を持ち上げる体勢へと移行。その間、お互いの表情が見えないのでもう行き当たりばったり。

 そして、数秒の空白を空けてから俺は麻弥ちゃんを軽く持ち上げた。

 

「お、重くないっすか………?」

「んや、全然。想定よりは軽いな」

「よ、良かったです………」

 

 辿々しい俺達に対して、スタッフ側では女子の割合が高いせいか、まさかの大盛り上がり。加えて、鬱陶しいほどに囃し立ててくる。

 

 ーーー成長したな………麻弥ちゃん。

 ーーーいけ!!そこだ!!いけぇ!!

 ーーー二人とも良き人生を………。

 

 誰だ、悟りを入れてくる奴は。感動しちゃってる人にいたっては、あんた保護者かよと声を大にして言いたい。

 後で押せ押せ煩い人と語り合うことに決めた俺は胸にいる麻弥ちゃんの様子を伺う。

 

「………恥ずかしいですね」

「………」

「………蒼真さん!何か言ってくださいよぉ~」

 

 身動きが取れない麻弥ちゃんの悲痛な叫びが聞こえる。すまん、俺もある意味限界なんだよ。

 この麻弥ちゃんを抱っこしている時間はゆっくりと進んでいるような錯覚を俺はじっくりと味わっていた。うでの疲れも貯まってきた。

 幸か不幸か、すぐに終わりは近付く。

 

「ありがとー!もうOKよー!」

 

 よし、許可が降りた。

 早速と言わんばかりに俺は麻弥ちゃんを下ろそうと体勢を変えようとすると。

 

「蒼真さん」

「うん?」

「もう少しだけ………このままで良いですか?」

「え?………あ、うん。構わんけど」

 

 麻弥ちゃんがそう言うなら、と俺は彼女を下ろすのを中断した。でも、俺にとって彼女の発言の真意は謎に包まれたまま。

 数秒して麻弥ちゃんは再び言う。

 

「もう大丈夫です」

「分かった。ゆっくり下ろすから気を付けて」

「はい、ありがとうございます」

 

 結局、俺の胸はもやっとしたまま麻弥ちゃんを優しく下ろした。聞こうにも聞きづらい。うーん。

 思考の海に沈んでると、カメラマンが近づいてくるのが見えた。どうやら撮影も終盤に入ってきたようだ。

 

「さて、次はあなたたちの意見を取り入れての撮影をしようかなって考えているの。急で悪いんだけど、何かあるかしら?なければ、これで撮影は終了よ」

「俺達のですか?」

「なるほど………ジブン達らしい何か………」

「そこまで深く考えなくてもいいわ。軽く撮ってみて、良かったら雑誌に載るだけだし二人だけの思い出の記念写真としてでも大歓迎よ」

 

 つまり、ただのおまけ程度と思えばらしい。

 あってもなくても良い素材とのことなのでこれはカメラマンさんなりの好意、お礼と捉えるべきか。

 

「俺と麻弥ちゃんね………あ」

「蒼真さんとジブンですか………あ」

 

 俺と麻弥ちゃんは目を会わせる。

 そして小さく相槌を入れる。ここまでこれば、意見は言わなくても同じだろう。

 

 山吹蒼真と大和麻弥。

 

 二人の共通点と言えば、言わずともがな思い浮かぶ。

 

「なら、折角やし」

「はい!それで行きましょう!」

 

 ーーーそう、()()()だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 後日談。

 

「あれ?麻弥ちゃん、それって………」

 

 事務室のテーブルで雑誌を広げている麻弥を目撃した彩。しかもそれには見覚えがあったのでたまらず麻弥の背後へと陣取る。

 

「あ、彩さん!そうです!この前の撮影がもう出来上がったみたいですよ!」

「えっ?そうなの?どれどれ………あっ。私のは上手く撮れてる………のかな?」

「あはは………彩さんらしい一枚じゃないですか!」

 

 彩の写真はばっちりメイドさん。ただし、転けそうになって運ぶ途中の皿を危うく落としそうになっているシーンを抜き取ったかのようになっていたのだ。

 これには麻弥もフォローを入れるが、あまり成果は見られない。

 

「あ、そうだ。麻弥ちゃんはどれ?蒼真君も映ってるのかな?」

「ちょっと待ってくださいね………あっ、これです」

「えっ?………す、凄い。カッコいい………」

「ありがとうございます、彩さん。ふへへ」

 

 そこに映し出されていたのは麻弥。それは良い。麻弥と背中を合わせているのは蒼真だ。

 彩が驚いたのはそこではない。ドラムのセットを前にスティックを握り締めて陣取る麻弥のその堂々たる一瞬の姿を切り取ったかのような臨場感あるその一枚はもはや感動の域を超越せざるをえない大作であったのだ。

 

「いやぁ………蒼真さんとセッションしてた所を撮られたみたいでこんな感じになっちゃいました~」

「だとしても………だよ!!蒼真君と何か撮ってるんじゃなかったの!?」

 

 蒼真と麻弥の撮影中はずっと楽屋待機の彩。

 自分達に比べて、随分と長引いていたので撮影が難航していたのかとばかり思っていた。まさか、二人がドラムのセッションをしていたとは。

 

「えっ!?あ、あれは………秘密です!」

「そんなぁ~ズルい!教えてよ!麻弥ちゃん!」

「駄目ですって!あれはジブンと蒼真さんだけの秘密っすから」

 

 それでも、とばかりに詰め寄る彩。でも麻弥が白状する日はきっと来ない。

 

 ーーーこれはジブンと蒼真さんの………。

 

 あの日、記念撮影として自分が彼にお姫様抱っこしてもらった写真。それだけは誰にも見せたくはない麻弥の密かな決意の表れでもあった。

 

 

 

 

 

 大和麻弥編-1-『モデル撮影』 終

 




 一周年記念イベント、超楽しみです。
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