Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 遅かれ早かれ、もう別れの季節。
 同じバンドリの小説が次々と完結を迎えて、寂しいの一点思いです。お疲れ様でした!

 評価、感想、大歓迎。お待ちしてます。
 では、どうぞ!



-2の1-『ドラム図鑑』*

 ◇◇◇

 

 某所。撮影スタジオ。

 

「では、ついに始まりました!毎週金曜20時から配信しています"ドラム図鑑"!本日の進行は"Pasttle*Palettes"のドラム担当"大和麻弥"がさせて頂きます!」

 

 ジブン、麻弥はただいまカメラに向けてカンペに書かれた文字を意気揚々と読んでいた最中であった。

 撮影であるが、同時に某動画サイトへの生配信でもあるので放送事故が危ぶまれる可能性がある。でも、この"ドラム図鑑"という企画は至って穏やかに進んでいくのでその心配も杞憂。

 内容は至極単純。ゲストのドラマーさんと色んなテーマで語り合うだけ。ドラムセットを並べてみたり、お互いの自慢の機材を紹介しあったり。

 これが、ネットではそこそこの人気を出している。プロの方もゲストで呼ばれたりするぐらい。観ている人にとっては勉強になったりするそうで右肩上がりで視聴者が増えている。

 

「おっ、もうこんなに多くの人が観てくださってるのでしょうか?ありがとうございます!」

 

 視聴者と配信者が直接コミュニケーションを取れるのも、この生配信の魅力でもある。さらに視聴者の人数も画面から確認が出来るので早速、ジブンはそれを観ていた。

 

 ―――542。

 

 序盤と考えると、これは相当な数である。

 

「コメントの方も見てますよ~」

『今日は麻弥ちゃんだー』

『麻弥ちゃーん!手を振って~!』

『後ろのドラムセットすげぇ』

 

 視聴者の記入したコメントもジブン側から確認出来る。これも魅力の一つだ。

 カンペに進行を仰ぐ文字が出る。

 

「では、早速ですが!」

 

 メインイベントへといきなり突入。

 毎回、恒例のゲスト紹介。ジブンはそれが誰なのか知らされていない。

 緊張の一瞬。でもジブンは楽しみになってきている。同じドラマーと機材関連を存分に語り合えるのだ。期待に胸が踊りまくる。

 

「ゲストの登場となります!どうぞ!」

 

 張り切って声を出した。

 暫くの間、静寂が訪れる。

 

「あ、あれ?」

 

 普段ならここでゲストが登場。でも、誰も現れる気配がしない。撮影カメラの背後のスタッフも特に目立った動きはない。

 

 と言うことは………これは―――

 

『麻弥ちゃん!後ろ!!』

 

 コメントに流れたその一言。

 咄嗟に私が振り向くと、そこには一人の男性が満面の笑みをして立っていた。彼の手にはスタンド。その先には―――

 

「ひゃぁ!?」

「あはは、ドッキリ大成功やね」

 

 ―――シンバル。

 

 完全に油断していたジブンにそのシンバルの甲高い音は驚愕の一打となった。

 つい悲鳴がスタジオ全域に漏れてしまい、たまらず恥ずかしい気持ちになってくる。

 

「そ、蒼真さ~ん!!」

「ごめんね、麻弥ちゃん。さて、観とる皆さん、今のちゃんと観れた?貴重映像やったぞ~」

 

 カメラに向けて蒼真は手を振る。

 

『ふわぁぁぁ!!ソウさんだぁぁぁ!!』

『観れました!家宝にします!』

『ありがとう………』

 

 一気にコメントが流れる。

 それを一望した蒼真は満足そうに頷くが、ジブンはそれが気に入らなかった。

 カンペが更新される。スタッフサイドもドッキリは完全に把握済みのようでやってやられたとはこの事なのか、とジブンは分かってしまう。

 

「で、では改めて………自己紹介の方をお願いします」

「了解」

 

 画面の左側に映るジブンとは逆、右側に置かれた椅子に座った蒼真はこほん、と一息置く。

 

「本日のゲスト、一応ドラマーの山吹蒼真です!よろしく!」

 

 こうして"ドラム図鑑"のオープニングは無事に終えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 山吹家。リビング。

 

「あっ、始まった」

 

 パソコンの某動画サイトを開いた私、沙綾は目的としていた動画をすぐに見つけた。と同時に動画の配信も開始されたようで、画面に麻弥ちゃんの座ってる姿が目立つ。

 

「ソウ兄ちゃんは?」

「まだみたいだね。ゲストだから麻弥先輩に呼ばれるまで待たないと」

 

 妹の沙南を隣の椅子に座らせる。

 リビングのテーブルにぽつんと置かれたノートパソコン。山吹家の日常とはかけ離れた光景であった。機械は苦手な一家なのだ。

 あっちの山吹家はそうとは限らないかもしれないけど。

 と、弟の純が私の肩越しに覗く。

 

「ねぇねぇ、奥にあるのがソウ兄のドラム?」

「え?………どうだろう?」

 

 画面に映るスタジオの背後。

 明らかに誰かのドラムセットが置かれてある。しかも二つ。

 片方は麻弥のだと仮定すれば、もう片方はゲスト自慢のドラムセットのはず。番組の中でゲストの機材紹介コーナーもあるので後々わかるだろう。

 

『では、早速ですが!ゲストの登場となります!』

 

 番組始まって早々。ゲスト登場の番となる。多くの人はここで誰なのか胸を膨らませているらしいが、私は今回のゲストを知ってるので残念ながら味わえない。

 純と沙南の二人は逆にゲストの登場をこれかとばかりに期待しているらしく、そわそわしているのが私まで伝わってくる。

 

「あっ、いた!」

「ホントだ!ソウ兄だ!」

「何やろうとしてんの………」

 

 画面の奥からこっそりと忍び寄る蒼真。

 進行の麻弥は気付いていない。不安そうにキョロキョロしているが、プロ魂から背中を見せる訳にはいかないのだろう。結果的に不吉な笑みを浮かべる蒼真の接近を許してしまう。

 そして、私はそんな蒼真の手に持つ物を見て、苦笑いするしかなかった。

 

『ひやぁぁ!?』

 

 悲鳴がスピーカー越しに響き渡る。

 自由に出せるコメントも大量に右から左へと通過していき、視聴者側も大盛り上がりを見せていた。

 

『そ、蒼真さ~ん!!』

『ごめんね、麻弥ちゃん。さて、観とる皆さん、今のちゃんと観れた?貴重映像やぞ~』

 

 蒼真が手を振る

 それを見た沙南は元気よく手を振り返す。

 

「沙南、向こうからは見えてないんだよ?」

「分かってる!でも、やるんだ!」

 

 彼のことを相当お気に入りの沙南。

 姉としては嬉しいやら、寂しいやら。複雑な心境。

 

「おぉー!!すげぇー!!」

 

 弟の純は自分の知ってる人が画面に映っている事象に興奮が収まらないようだ。科学技術の発展を肌で感じている的な感じだろうか。

 こんな飽きない二人の様子を見ている内に蒼真と麻弥のやり取りが再開していた。今はちょうど蒼真が自己紹介をするみたいだ。

 

『本日のゲスト、一応ドラマーの山吹蒼真です!よろしく!』

 

 ここで一旦、画面が切り替わる。

 パスパレの曲がBGMとして流れて番組定番の静止画が出る。この間にスタジオ内では転換が行われている。

 

 ―――数分後。また画面が切り替わる。

 

『では!ここからは紹介コーナーとなります!内容は主に謎に包まれた蒼真さんのプライベートなどを掘り下げながらになりますが、蒼真さん、よろしいですか?』

 

 テレビだと滅多に見ないが、ネット番組ではよくあるコーナーらしい。私はそれほど見ないが、有咲が言っていた。ここでゲストの心情だったり、独自のこだわりを視聴者は知ることが出来る。

 特に蒼真は世間では、謎多きドラマーとされている。

 

『えぇ、勿論です』

 

 画面左側に座る麻弥と右側に座る蒼真。

 普段の店に訪れる時の抜けてる服装とは違って、画面の向こうでは完全にお洒落を決めてる彼になんだか不満を覚えつつも黙って見守ることに。

 

『では、早速………まずは観てくださってる方に蒼真さんの軽いプロフィールをご紹介しますね』

『うわぁ………恥ずかしいやつ………』

『ちょっとお静かに良いですか?』

 

 台本を手にもつ麻弥の鋭い注意。

 萎縮するかのごとく蒼真が小さくなる。

 そして「何それ理不尽や………」とらしき台詞がスピーカーから微かに届く。

 

『wwwwww』

『麻弥ちゃん強いです』

 

 コメントでも無論、それを逃さない。

 家のキッチンが少し慌ただしくなり物音が目立ってくるのが気になり、私はそちらへ意識を向ける。

 

「沙綾~。ちょっと良い~?」

「はぁーい」

 

 母親から声がかかる。

 

「純、沙南。仲良く観るんだよ」

「あいさー」

「はーい」

「純、変な返事はしーなーい!」

「ごめーんなさーい」

 

 まぁ、どうせ彼の影響だろう。

 そんな思いを抱きつつ、沙綾は母親の手伝いへキッチンに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -2の2- へ続く。

 




《なんかあった補足シリーズ》
・ドラム図鑑
→元ネタありです。中身はだいぶ変わりますが、ぜひ、そちらもご覧ください。


・「あいさー」
→どっかに空飛ぶ猫がいたようだ。
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