イヴちゃぁぁぁぁぁぁああああんんん!!!
なんで来てくれないのぉぉぉぉおおお!!!
◇◇◇
○○高校。第一音楽室。
「おっ………全然いない」
放課後終わり。今週の掃除当番も問題なく終わらした俺は部活動をするために足を運んでいた。
扉を開き、中を覗くと一人ギターを弄る姿が確認できたがそれだけ。てっきり、他のメンバーも既に揃っていたと思っていたがそうではないらしい。
「蒼真~、弦張り替えるの手伝って」
「自分でやれ」
「ケチ。スティック折れてしまえ」
「聞こえてんぞ」
そいつは俺に手伝う意志がないと判断すると中断していた作業へとまた戻った。なんやかんや言いながら結局は自分一人でやるのが恒例。
中へと入った俺はポツンと置かれたドラムへと向かう。
部活動名義のこのドラムは部員のドラマーが共有して使っている。なので、自分の持ち込み機材は他の人が邪魔にならない場所に置いておくのが通例だ。
壁際に無造作に置かれたシンバル群をドラムの近くへ持ち運ぶ。
前の人のセッティングがある程度残っているので、俺はあの後輩が前に使ったのかな、と思いながらも自分に叩きやすい高さへとシンバルやスネアのスタンドを調節する。
「他の二人は?」
「知らんよ」
「だとすると、二人とも日直かな………」
彼の名は"吉宮ルーズ"。
イギリス人と日本人、一対三のクォーターらしいが正真正銘日本育ちの純日本人。親の教育の賜物なのか英語が人一倍得意ぐらいが取り柄の少年。
身長は男子では低い。背の高い順で前から数えた方が早い。これは本人に言うと拗ねられる。
バンド内ではギターを担当。と言いつつ、楽器の練習歴がメンバーでは一番浅く、技術面ではどうしても一歩劣ってしまうのがここ最近の本人の悩みらしい。
それでもアークラのギターを担えるのはこの無邪気な性格と観る人達を己のライブへ巻き込む天性を兼ね備えているからだ。
―――閑話休題。
ドラムで軽く体を解していると扉が開く。
入ってきたのは放課後になっても寝癖が未だに付いているあほ野郎だった。
「お?光はまだ?」
「Yes。アイトと一緒に来ると思ってたよ」
「そっか」
"秋野藍斗"。
我らのボーカリスト。観客を熱狂的に惑わせる歌声を武器にステージを駆け走る。
二代目となったアークラでもその歌声は勢いを増すばかりであり、周りからの期待も何かと高い。
一方で、プライベートでは残念な性格の持ち主でもある。肝心な部分で言葉足らずに突き通し、問題を引き起こすことも多々。
でも何故か彼女持ちという一番のリア充でもある。藍斗の彼女についての詳細はまた後日。
「因みに何してたん?」
「ん?………あー、あれだ。宿題をちょいとな」
「出してなかったんかい」
彼の成績は下から数えた方が良さげ。
俺の場合では安定の中の上、上の下辺りを維持している。無難であることが大切。
「あーーーーぁぁぁああ」
喉の調子を確認していく藍斗。
ボーカルは体力の消費が特に激しい。喉も油断していると一気にやられるそうだ。
「まずは何からやる~?」
「んー?曲か?」
「イエッサー」
「めんどいし、いつもので良いんやない?」
「ニルヴァーナのあれ?」
「それ」
了承の返事はぼちぼちに。ルーズはチューニングへと移行する。
と、ここでようやく最後のメンバーが姿を見せた。
「遅れてすみません」
「んー。光、最初はウォーミングアップがてらにいつものやるから準備よろしくな」
「了解です」
ベースを背負った少年"桐山光"。
彼とは中学の頃からの長年の付き合い。ベース一筋で頑張ってきたピュアな少年。
基本に忠実かつ土台を重視する演奏スタイルを実行する。なので、初心者の後輩達には人気。
どこでも誰でも丁寧な口調で話す。
勉強も出来て、教師陣からの信頼も厚い。生徒会長に推薦された噂もあったぐらい。結局、辞退したようだが。
―――突如、ジャーン!と部屋中に鳴り響く。
チューニングを完了したルーズが意気揚々と愛用ギターを弾いたのだ。
「さて………Everybody!!Are you ready!?」
「ノリノリだな」
「いつでもいけます」
「んじゃあ、行こうか」
この四人が現段階の"アークラ"。
今回はこんな高校生男子どもの何の変哲もない日常の一角を切り取っていこうではないか。
………需要あるか?これ。
◇◇◇
第一音楽室。
「次のライブのセトリ、どうすんの?」
藍斗がそう提案した。
近々アークラが出演予定のライブとなると、とある大学主催の学祭にゲスト出演として呼ばれたライブだろうか。
高校生代表として俺達は大学生に喧嘩を売りに行くことになる。
仲良くして行こうじゃないか。
「その前に一つ。今回はオリジナルよりカバーメインで行くべきかと」
「え?どうして?」
「他のバンドに合わせて、ですよ。先日、ライブ当日の詳細と一緒に出演バンド一覧も送られてきましたけど、どれもプロのバンドを文字ったバンドだらけのようですし」
「まさか、藍斗………一番年下の俺達がオリジナルをやって目立つわけにはいかんやろ」
「ソウマのオリジナルを披露したら、誰であろうと勝っちゃうから仕方無しに止めてあげよう感が凄い」
「おい、ルーズ。そんなつもりは………あらへんよ?」
「Oh………yeah………」
「では、どうします?文化祭の曲を幾つか引っ張って来ます?」
うーん。悩み所だ。
「なら、俺"ヤーヤー"やりたい」
「あー………あれか。とやると、そっち路線で固めるのも有りやな」
藍斗の言う曲は一言で言うなら、短い。
全体的に流れが早く、気づけばあっという間にサビを通り越して終わりを迎えてしまう疾走感が楽しい曲だ。
「なら、僕は"Back"で!!」
正式名称がちゃんとあるのだがめんどくさいのかちゃっかり曲名を省略しちゃうルーズ。
コール&レスポンスがある曲で基本的に全パートで難易度はそれほど高くはない。ただただ、シンプルにカッコいいかつ楽しい。
「となれば、余裕もありそうですし、前々から固めていた"ガッデム"もいけそうですね」
「―――っ!?!?!?」
「どうしました?ルーズ」
「………No!ボクが一番しんどいパターンになっちゃうよ!!」
「んなこと言っても、逃げてばっかだと上手くならんぞ。練習あるのみ!!」
「アイト~。ぐぬぬぬ………」
"ガッデム"は難易度が格段に上がる。
特にギターはソロが激ムズ。
各自で練習するようにと通達されていた曲の一つだが、ここでようやく解禁となる訳だ。
「後、一曲は欲しいですね」
「蒼真から、何かないのか?」
「………一曲ぐらいは客受けするのは欲しいよな」
「確かに………そうですが」
「"おっぱ―――」
「うわぁぁぁぁあああ!!」
「どどどうしたの!?」
「マジでその曲だけは止めてくれ!!」
藍斗の奇声にルーズが驚嘆。
恋人がいる癖に藍斗は下ネタに弱いので敏感なセンサーが感知すると即座に逃走の姿勢を見せる。
「おーけー。止めよう」
「む?」
「代わりに"疑疑"で」
「客受けするか微妙なラインですね」
「もう………どうでもいいわ」
「さいですか」
イントロがひたすらカッコいい。
その曲を象徴する一文だ。加えて、サビのボーカルも耳に残り易いリズムが特徴的だろうか。
「一先ず、これ以上は持ち時間次第やからここまでやね」
「ですね。特にルーズはちゃんと練習してこないと………死にますよ?」
「ひぇぇぇ………」
ルーズよ、グッドラックだ。
-4の2- へ続く。
*☆9 (●´ϖ`●)さま
ブラックティガさま
評価をくださり、ありがとうございます!
『分かる人には分かる補足シリーズ』
・2代目
→新たに加入したボーカルとギターですが、その時の話も蒼真の過去編二章的なポジションで関与してきます。
・「ニルヴァーナのあれか?」
→定番の定番。皆さんも一度は耳にしたことはあるはず。
・セットリスト
→会話の中で出てきた曲は全部で5つ(途中の却下された物も含め)。バンドも日本のだと1つ、他は全て海外となります。ちゃんと実在してますよ。
因みに全て分かりましたか?どれも自分がお奨めするバンドです。特に却下された奴。
・作者のぼやき
→ジャンヌ水着欲しい。スカディさん当てたから、運を使い果たしてなければ良いのだが………ってことで、水着イヴちゃんと水着有咲が来てくれないので更新遅れます。