*UA数20000突破(4/8時点)、日刊ランキング21位にこの小説が載ってあったり、色々とありがとうございます。
追記:最高16位に更新しました。
評価、感想、大歓迎。どうぞ。
◇◇◇
撮影スタジオ。
「では、蒼真さん。さっさと時間がなくなる前に質問コーナーと行きましょうか」
麻弥がそう仕切る。
自分のプロフィールを他人に言いたい放題にされた蒼真は元気なさげにいるが、麻弥はまだまだ張り切っている。
プロフィールと言えど、主にドラマーとして蒼真が行ったこれまでの活動を簡単に説明しただけなので、まだ良かった。
「質問?」
「はい。いくつかはこちらで用意させてもらってますが、勿論コメントの方で上がった質問も取り上げさせて貰います」
「それは麻弥ちゃんに対しての質問もあんの?」
「えぇ~と………ジブンは司会進行なのでないそうですね」
離れてネット配信の様子を見守るスタッフを一瞥した麻弥。自分に対しての質問は用意されていないと知ると何処か浮かれ気味に話し出す。
蒼真は反対につまんないとばかりな態度を見せていた。
「ではいきますよ!」
「ほい」
1―――蒼真さんがドラムを叩く際に気を付けている事、もしくはコツなどはありますか?
「………そやね。迷いを捨てること」
「というと?」
「次はこのフレーズを叩いて、あのパターンに移るから区切れを特に気を付けよう、とか考えたりするかもしれんけど逆にそれが緊張感を生んで、体が固くなってしまって、最終的に失敗に繋がってしまうのではと俺は思ってる」
「ジブンも分かる気がします。いざ、ライブになると全然普段通りの演奏が出来なくなりますから」
「本番は普段の八割しか出せないってよく聞くしね。だからこそ、練習からそれこそ無意識にその曲を通せるぐらいに練習して本番に臨む必要があるってのが俺の意見」
「ありがとうございました。では、次へ」
2―――どれくらい練習してる?
「練習って個人で、かな?俺の場合やと、酷い時には―――」
「酷い?」
「六時間ぶっ通しでひたすら叩く練習を一週間したこともあるぐらい」
「………それは酷いですね」
苦笑いの麻弥。
悪いね、とばかりに蒼真はふんすと鼻を鳴らす。
「今はボチボチとスタジオに籠ってやっとるぐらいかな?」
「大体一回でどのくらいですか?」
「二時間」
「先程のインパクトが強すぎて、長いのか短いのか分からないです」
「これぐらいは普通じゃない?」
「はーい、コメント欄が荒れますのでそういう発言はお控えぎみでお願いしますね、蒼真さん」
「………はい」
立場上、麻弥より下の蒼真。
ゲストのはずなのに、麻弥からの扱いが雑なのは如何にと訴えたい。
3―――何歳からドラム始めました?
「中学一年生」
「切っ掛けとかはどんな?」
「ベースの光に軽音部に連行されたのが切っ掛けやね。そこで誰も手付かずのドラムを見つけて、俺がやることになったと」
「………ドラマーは人手不足が常ですから」
「元々やる前から興味はあったんよ?管楽器とか弦楽器よりかは打楽器がなんか一番惹かれる感じが小さい頃からしてたし」
「そうなんですね」
「それで、いざドラムをやってみると、とことんハマってしまって………そうなるとねぇ~。後はもう自分でも止められないぐらい叩きまくってたのが中学の良き思い出」
「………だそうですよ、皆さん」
麻弥の無言の空白があった。
4―――練習とかは具体的には何をしてます?
「まぁ………困るよね」
「ですね」
「初心者だとまずは基本のエイトビートを叩けるようにすることかな」
「と言いつつ、エイトビートだけでも数パターンありますから。初心者からしたら大変だと思いますよ」
「そこは気合いで乗り気ってもらうしかないな」
軽く苦笑いを浮かべる蒼真。
ここはもう譲りようがない最低ラインのようなものだ。
「一先ず自分の好きな曲のコピーをするのがドラムが上手くなる近道になるんかね………」
「蒼真さんはそのように?」
「基礎練は程ほどにして、後は好きなバンドやアークラの楽しい曲とか。他はね………気に入ったフレーズもひたすら繰り返して叩いてるな」
「あ、蒼真さん。そのアークラの曲の中でも難しいフレーズは多くありますが、どうすれば叩けるようになりますか?との質問も多く来てますよ」
麻弥はモニターを見ていた。
そこで蒼真が話す内容を掘り下げる質問を見つけた麻弥は折角の機会だからと彼に聞いてみたのだ。
「難しいフレーズ………多分あれのことかな?ぱっと何個かは思い付くけど、あれはね曲に合うからやってるって理由もあるけど、己の限界の挑戦も兼ねて、あえて難しくしてるってのもあってね、完コピされると俺の立場が………まぁまぁまぁ麻弥ちゃん?ちゃんと答えるから」
「ジブン、何も言ってませんよ?」
「………それもそうか。行き詰まった時はゆっくりとそのフレーズを確実に噛み締めるかの如く練習するのが一番。それでも無理ならさらに遅くする。今の実力で出来るまでスピードを落として、慣れてきたら徐々に原曲までスピードを戻していくってのが一番の近道やと俺は思うな」
「なるほど………ジブンも無意識に蒼真さんと同じことをしてしまってる気がしますね」
「………その発言も危なくね?」
「え?そうですか?」
5―――憧れのドラマーとかはいますか?
「憧れ………勿論いるけど、言いたくはないかな」
「どうしてです?」
「俺が尊敬してるって向こうが知ったら、会った時にうざい顔で言い迫って来るのが目に浮かぶから」
「となると、実際に会う仲なんですね」
「でも、初めて会う時は既にその頃から尊敬してたから、だいぶ緊張してたぞ?流石に」
「誰だって尊敬する人と会うのは緊張しますよ。知ってます?実はジブンも蒼真さんと初対面の時は緊張してたんですよ?」
「あーあの時?全然そういう風に見えなかったけど」
「まぁまぁその話はまた今度にしましょ!」
自分の話題となると速攻で切り上げる麻弥。
「蒼真さん、他には居ないんですか?」
「他………俺の親父とか、かな」
「い、意外ですね………」
「ドラマーではないんやけどね。何て言うか………物事に取り組む姿勢とか態度、やり方?過去に起きた問題をあっさりクリアしてきた親父のその背中を見て俺は育ってきたから。まだ高校生だけど、色んな面で有難いとは思ってる」
「それは、男だけの………でしょうか?」
「いや、それは知らんけど」
6―――今後の目標は?
「難しい所よな。まぁバンドとしてはどんどん沢山の人に俺達の音楽を聴いてもらって欲しいのが一番かな。ライブで全国を色々と回ってみたいしね」
「蒼真さん個人の目標とかはどんな風に?」
「正直………あんまない」
「え?ないんですか?」
「うん、ない。あえて掲げるなら、そやね。五体満足で健康のまま死ぬまでドラムが出来たら良いなぁとは思っとるけど………それも目標とはちょっと違うし………あ、そうだ。自分のドラムセットを製作してみたいとは思っとるよ」
「それは、目標よりかは夢に近いですね」
「そうなるんよな~。今のセットもそれなりに満足しちゃってるから、オリジナルのドラム製作は余裕があればの話になると思うわ」
7―――麻弥さんの事はどう思ってますか?
「………だそうですけど、蒼真さん?」
「麻弥ちゃんの事………ね」
ちらり、と蒼真の視線が麻弥の方へ。
そわそわとしてる麻弥。明らかにこれから答える蒼真の答えに麻弥の期待が隠しきれていない。
蒼真もうっすらとそれには気づいていた。
「―――の前にほら、麻弥ちゃん。何か出とるよ」
「え?あ、ここで一度休憩を挟む、とのことですね」
スタッフのカンペに気付いた麻弥が冷静に読み上げる。
ぶっ通しも骨が折れるので数分の休息をここで挟むそうだ。あえて、質問に答える直前を狙うのも休憩の間に視聴者が遠ざかるのを防ぐ目的があってこその手段の一つ。
「その間はパスパレの曲を流すそうなので、ぜひお聴きください!また曲が終わると蒼真さんの質問コーナーを再開いたしますので、皆さんのんびりお待ちくださいね」
「では"Pasttle*Palettes"より―――」
―――"はなまる◎アンダンテ"。
麻弥編-2の2- 終
*次回は蒼真と麻弥の二人に関わる質問をしていきます。活動報告の方でそのアンケート実施中かつ締め切りも近いですので、ぜひ一目だけでもよろしくお願いします。