Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 難易度29。無理でした!




-3の1-『レッツ密着!』*

 ◇◇◇

 

 練習スタジオ。

 

「では、カメラ回しますよ~」

 

 麻弥の合図にポチッとカメラが作動する。

 カメラのレンズがじっと俺の立ち姿の全身を捉える。心なしか、むず痒い気もしなくもない。

 機材大好きな麻弥ちゃん。完全に撮影する方に意識を没頭させているが、本来の仕事はそっちでは無かろう。

 

「………これ、回っとるの?」

「回ってますよ」

「………で、どうすんの?」

「………どうしましょう」

 

 撮影は専門外の俺。肩書きはアイドルだが実際は機材いじりの大好きな麻弥。

 どちらも密着に関してはド素人に近い。スタッフさんも人員が別の問題児に割かれているようで此処にはいない。

 麻弥の担当スタッフはいる事にはいる。でも、麻弥の持つビデオカメラだけ渡してどっか行った。大雑把というか、信用されるというか。

 

「取り敢えず、麻弥ちゃんが観てる人へ説明的なのをしたら?」

「えっ!?ジブンが、っすか!?」

「俺がすんのも変な気がせぇへん?」

「確かに………」

 

 番組的に俺はゲスト扱い。そんな俺がいきなり、「どーもー」から映像が流されると観ている側はビックリしてしまう。

 麻弥も理解はしているはず。だが、行動に移そうにも撮影始めの手本がこの現場では無いに等しいので躊躇してしまっている。

 

「こ、今回はこちらに居ますアークラ、ドラマーの蒼真さんを密着することになりました」

 

 少々手間取りながらもナレーションを始めた麻弥ちゃん。その間、じっとカメラのレンズはこちらに向いたまま。そこはプロ根性魂。

 一言言い終えた麻弥ちゃん。何かを訴えかけるかのように彼女から視線が突き刺さる。

 あ、自己紹介しろってことね。

 

「アークラ、ドラム担当のソウです。今日はよろしくお願いしますね」

「はい、よろしくお願いします」

 

 ここでカメラの撮影が一旦止まる。

 

「これで良いんですかね………?」

「分かんねぇ」

「ふへへ」

「ふふっ」

 

 お互いに苦笑い。兎も角、やることはやったので大丈夫しょ。

 スタッフから具体的な指示があった訳でもないので適当に編集で纏めてくれることを期待しておく。

 

「それでですね、蒼真さん。今後の予定は………あ、その前に撮影再開しますね」

「へーい」

 

 ズズズ、とレンズの動く音がお気にいり。

 

「この後の予定はどのように?」

「今日は何時間かドラムの練習して、そっから商店街に寄って買い物やね」

 

 少ないように思えるが、今日は金曜日。普通に学校の放課後であるからだ。

 現在時刻は只今16時前後のはず。

 

「なるほど………では改めて、蒼真さん、よろしくお願いします」

 

 密着は計三日間に分けて行われる。

 今日と土日を跨いで、続け様にアークラのメンバーは日頃の過ごし方や風景をパスパレの子達にカメラに収めて貰うのだ。

 と自慢げに言いつつ、流石に本来の予定や外せない用事もあいつらにもあったみたいで初日からこうやって密着されているのは俺だけというね。

 

「って言ってもこれから一時間程度、俺がひたすらドラムを叩くだけやけど………」

「お気にせずいつも通りでお願いします」

「良いんか?見てるだけやと、つまんないと思うけど」

「そんなことないですよ?こうやって近くで見学して貰えて、勉強になりますから」

「なら、良いけど………」

 

 麻弥ちゃんは部屋の隅に椅子を置き、そこに座った。

 カメラがあるって認識だけでなんだかむず痒い気分に浸りながらも俺はイヤホンを耳につけ、ドラムを前に座る。

 

「んじゃ、やりますか」

 

 スマホをタッチ。

 音楽の再生が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 二時間後。

 

「楽しかったです!」

「な~。俺も久しぶりに刺激をもらった」

 

 練習スタジオを出たジブンと蒼真さん。

 二人並んで歩きながら話す会話のテーマは

決まって先程までのドラム練習だ。

 蒼真さんの宣言通り、初めの一時間弱はひたすら蒼真さんがドラムの練習をしているだけの時間が続いた。

 曲をイヤホン越しに聴きながら合わせて叩いたり、気になる箇所を集中的に繰り返したり。他には、基礎の練習など。多くのドラマーさんがするような練習方法を蒼真さんは採用していた。

 その後、休憩を取るらしい蒼真さんはイヤホンを耳から外してジブンに一言。

 

『麻弥ちゃんも叩いてみる?』

 

 この時、ジブンはどう返事したか覚えてません。他人のドラムセットを体験させてもらえるのは滅多にない機会。ましてや、その相手が蒼真さんなのです。興奮しない理由がないでしょう。

 後半の一時間はあっという間。互いの好きなフレーズを自慢しあったり、気になる点をアドバイスしてドラミング技術を高めあったり、と充実した時間を過ごせました。

 

 うん?ジブン、何かを忘れているような―――

 

「あっ………」

「どした?」

「これ、本来は蒼真さんの密着のはずなのにですよ?………それなのにジブンがつい舞い上がってしまいました………」

「今更?別にいいんやない?まだ密着自体は初日やし、これからまだまだ取り高をとれるチャンスはあると思うよ」

「蒼真さん………」

 

 蒼真さんはこういう人です。

 彼は他人に対しておおらかに接してきます。そう言えば、自分に対しては自棄にシビアですが、何かこだわりでもあるのでしょうか。

 

「蒼真さんはドラムに対して譲れない信念ってあるんですか?」

「ああは言ったけど、まさかの今聞くのね………」

「い、いえ!?これは個人的に気になっただけでして………」

 

 気付いた頃には口から漏れていました。

 きっと、かつてのジブンなら遠慮してしまい発言事態なかったであろうこの質問にしてしまった側のジブンですらただならぬ予感がします。

 蒼真さん、悩み始めました。

 

「………楽しいが一番の理由かな」

「やっぱり結局はそうなりますかね」

「俺の場合は他にもあるっちゃあるけど………これはあんまり良いもんでもないからね」

 

 その時の蒼真さんは遠くを見つめていました。

 

「ともかく今はあれやね」

「はい?」

 

 あれ、とは何か。

 その答えは蒼真さんの視線が教えてくれました。気づかぬ内に商店街の一角へとジブン達は来ていたようです。

 夕飯前の食材調達に赴いた主婦らしき方達がそれはもう沢山。お店の方も活気に盛り上がっています。

 

「麻弥ちゃん」

「はい?」

「普段やったら大丈夫やけど、今回は多分ヤバイことになると思われるから予め言っとく。覚悟はしておいた方が良い」

 

 ―――覚悟っすか?

 

 その言葉の意味が体感するのは少し先の未来であることをこの時のジブンはまだ知るよしもありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 商店街。

 

「皆さん、す、凄い活気ですね………」

 

 場所も移り、現在の俺と麻弥ちゃんは商店街の通りを歩いていた。俺が持つビニール袋から分かるが、もう既に何件かの店には立ち寄っている。

 麻弥ちゃん、とてもお疲れのようで。俺は慣れてしまったが、此処の店の主人達の押しが凄いんだよね。容赦なく我先にとお勧めを出してきたり、誉めに誉めて油断した隙を狙ったりと正直、正面から相手にしたくないのが本音である。

 だが、相乗効果として貰えるオマケもそれはもう大量の大量。お陰様で出費が安く済むので、仕方なしにオジさん達の世間話ぐらいは付き合ってやっている。

 

「良かったね。後は帰るだけやから」

「よ、良かったっす………」

 

 うん、麻弥ちゃん、気の毒でしたね。

 

「それにしても蒼真さん、随分と皆さんから慕われていましたね」

「そうかな?」

「はい。皆さん、とても優しい目を向けていましたから」

「毎日ってぐらい行ってるからやろうね」

「もしかして、普段から蒼真さんが料理してる感じですか?」

 

 麻弥ちゃん、それはない。

 

「妹の担当だよ。もしくは母さんが家にいるときは勝手にやるけど」

「なるほど~」

「んで、この通り!俺が荷物運びさせられとる」

 

 ぐっとビニール袋を持ち上げる。

 

「優しいお兄さんじゃないですか。立派です」

「………」

「あれ?照れてます?」

「うるせぇやい」

 

 初めて、そんなこと言われた。

 

「ん?」

 

 と、ここで空いっぱいに大きなチャイムの音が鳴り響いた。この時期では夜七時になったことを意味する。

 その音に釣られ、何と無く上を見上げた俺と麻弥ちゃん。

 

「もうこんな時間になっちゃいましたね」

「お?もうそんなに経っちゃったか。麻弥ちゃん、次はウチに行くよ」

「へ?………」

 

 まるで初耳とばかりな反応。

 俺がその場を振り返ると麻弥ちゃんの動きが停止していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 ジブン、全ての動きが止まる。

 

「へ………?」

「ん?そういう話って聞いてるんやけど」

「ウチって………蒼真さんの家っすか!?」

「そりゃあそうやろ。スタッフさんから麻弥ちゃんも夕食に招待してもらえませんかって聞いた母親が今頃ノリノリで作っとるはず」

「ちょっ、ちょっと待ってください!!」

 

 慌ててジブンは蒼真さんから距離を置いて、スマホを通じて連絡をすることに。

 直ぐに電話は通じました。先程の蒼真さんの台詞の真偽を単刀直入に確かめます。その質問は予測されていたのか、スタッフさんからの返事はあっさり返ってきちゃいました。

 お陰で、緊張した顔付きで蒼真さんの元に戻る羽目に。

 

「………蒼真さん」

「どうやった?」

「その通りっす………」

「やろやろ」

 

 自分の発言に嘘がないと判明した蒼真さんは安心した表情をみせます。この時のジブンにそれを記憶に留める余裕はないです。

 

「んじゃ、暗くなる前に行こ行こ」

「はい………」

 

 勿論、ここから断るなんて選択肢もなく。ジブン、大人しくとぼとぼ蒼真さんの背中を徒歩で追いかけます。

 

 ―――蒼真さんの家!?ヤバイどころじゃないですよ!?

 

 どうやら大和麻弥、山吹家に急遽、家庭訪問することになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -3の2- へ続く。

 

 

 




*書いてる途中私はふと思った。
 ただのデートやないか?これ………。

『ネタが尽きてきた補足シリーズ』
・最初のくだり
→仲良いな、お前ら。


・別の問題児
→日菜ですね。


・麻弥担当の番組スタッフ
→"モデル撮影"編で麻弥のお姫様抱っこされた時に悟りを入れていた人。あの後、蒼真と仲良くなっているので今回の麻弥担当に抜擢された。


・「………これはあんまり良いもんでもないからね」by蒼真
→えっと、はい。ご想像の通り、蒼真の過去に隠されてます。


・商店街
→大人達からは自分の子供並に大切にされている。


・麻弥ちゃんの家庭訪問
→いらっしゃーい。山吹家にようこそ!
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