Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 最近、お気に入りのバンドリ小説を見つけてはふとその作者さんが自分の小説(貴方が今読もうとしてる、これ)をお気に入り登録されてるのを発見してしまい、沙綾のぬいぐるみをぎゅっとしてしまいました。誰得やねん。

 評価、感想しても………ええんやで?



-3の2-

 ◇◇◇

 

 山吹蒼真、実家。

 

「貴女が麻弥ちゃん?いらっしゃーい!!」

 

 ―――ガチャン。

 

 俺は玄関を閉めた。

 迷いなき即断を目撃した隣にいる麻弥ちゃん。俺の顔をちらっと見るなり、複雑な表情を浮かべる。

 分かる。気持ちは分かるけど、俺も被害者側であるんだって。

 

「蒼真さん………?」

「これが日常」

「へ?」

「日常」

「りょ、了解っす………」

 

 憂鬱だな。これを開けないと家に入れない。

 だけど、このまま麻弥ちゃんを困らせる事態になるのはもっと不味い。

 覚悟を決めて、扉をオープン―――

 

「お帰りなさい!ご飯にします?お風呂にします?それとも………わ・た・―――」

 

 ―――ガッチャン!!

 

「………ふぅ」

「蒼真さん?」

「お玉を持ち、エプロンを着たばばぁが居たな?あれは幻想に過ぎない」

「蒼真さん………?」

「さてと………」

 

 もう一度、扉をオープン。

 さっきと違い、声は飛んでこない。何事かと視線を下にずらすと―――

 

「………死んでるな」

「よく冷静でいられますよね、蒼真さん」

 

 腹部を包丁で刺され、仰向けに倒れる一人の被害者がそこに。第一発見者の俺と麻弥ちゃんは特に動揺することなく、その現場を眺めていた。

 無駄に凝ってるのか、照明も薄暗いモードへと変わっていた。あの短時間でいつのまに用意したのやら。

 びくびくと死体が動くのがまた鬱陶しい。

 

「どうぞ、麻弥ちゃん」

「えっ?お、お邪魔しま~す………」

 

 靴を脱ぎ、廊下へと麻弥ちゃんを案内。

 恐る恐る麻弥ちゃんは死体(母親)の隣を通ろうとする。異常な状況に巻き込まれた麻弥ちゃん、明らかに警戒体勢。

 頭では理解しているが、恐怖を感じるとなると話は別ってやつだろう。

 が、麻弥ちゃんが死体の頭の近くに足を置いた、その時。

 

 ―――がちっと死体の腕が麻弥ちゃんの足を掴む。

 

「ひっ!?」

「改めて………いらっしゃ~い、麻弥ちゃ―――」

 

 俺は耳を塞いだ。

 

「いやぁぁぁぁぁあああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 リビング。

 

「ほんまに、麻弥ちゃん、ごめんね!!ほんまに!!」

 

 意識が昇天した麻弥ちゃん。

 魂が抜けそうな程、ぼけっとしている。悪化する前にテーブルの椅子に座らせたが大丈夫だろうか。

 相当、あれが衝撃的だったらしい。俺からは見えなかったが、母親は即興のゾンビメイクを施していたようでそれも麻弥ちゃんを放心へ導く手助けをしている。

 焦点が戻った麻弥ちゃんは俺の母親を見た。

 

「平気ですぅ………はいぃ………」

 

 良かった。母親の心配度全開の謝罪に答えられるぐらいには回復したみたいだ。キッチンで鍋が沸騰し出したので慌てて母親は料理の方へと戻っていく。

 これに懲りて、母親には少しは遠慮してもらいたいのだがぶっちゃけ見込みは薄い。俺か妹が友達を家に招く度に母親が家にいると発生する強制イベントなのだから。

 

「もうすぐご飯やから、蒼真!悠希が上にいるから呼んできて!」

「はいはい………」

 

 逆らうと五月蠅いので黙って従う。

 

「ところで麻弥ちゃん、ひとつ聞いてもええ?」

「はい?何でしょうか?」

「やっぱり―――」

 

 また悪巧みを考える母親の顔がちらりと見えたが、無視。麻弥ちゃんには申し訳無いが犠牲にでもなってもらおう。

 階段を上がり、廊下へ。妹の悠希の部屋の前に着くとドアを軽く二回ノックする。

 

「お兄?」

「悠希、ご飯やで」

「うん、分かった。今行く」

 

 さてと。目的も果たしたので戻ろう。

 階段を下ると、その先には何とも表現しがたい異様な光景が広がっていた。料理を運ぶ母親と顔を真っ赤にして俯く麻弥ちゃんの姿があったのだ。

 俺の座る席は麻弥ちゃんの隣。俺の居ない間に何をしていたのか気になりつつも、黙って着席した。

 

「どうした?」

「ななな、何でもないっすよ!!」

「………あっそう」

 

 ぶんぶん!と首を横に振る麻弥ちゃん。

 疑わしさが漂う返答であったが俺は何故かそこで話を切り上げてしまう。

 都合よくダダダ、と勢いよく下る音が聞こえたので俺達の注目はそちらに。

 

「お兄!今日のご飯って!な―――お客さん!?」

「あっ、どうもっす」

「はっ、はい、どうも………」

 

 初対面の悠希と麻弥ちゃん。

 昨日、俺はお客さんが家に来ると伝えていたはずの悠希だが完全に忘れていたらしく普段とは違う張り切った姿を目撃されてしまった。

 恥ずかしくなったのか、唐突に黙りこんだ悠希はお気に入りスペースにある椅子に座ってしまう。

 

「ジブン、嫌われてるのでしょうか?」

「んや、あれは自業自得やから」

「自業自得?」

 

 頭を傾げる麻弥ちゃん。

 そんなこんなで母親自慢の料理も並び終えたらしい。エプロンを外した母親も俺の向かいの席についた。

 ニヤリとした笑みに俺はヒヤリとした。

 

「それじゃあ、蒼真が可愛い女の子を家に連れてきた記念として乾杯ーー!!」

「へ!?」

「………ちゃうからね」

 

 ―――もう、俺のライフは無いんだよ!!

 

 麻弥ちゃんと悠希の紹介を俺が互いにしつつ、母親がお代わりいるかと執拗に尋ねるのを避けつつ、山吹家の晩餐はいつもの日常通りに過ぎ去っていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 帰り道。

 

「なんか申し訳無いです………ここまで来てもらって」

 

 帰りになるともう夜遅く。

 ジブンは帰り道も蒼真さんに付き添って貰っていました。

 暗い道を女の子一人で歩くのは危ないと蒼真さんのお母さんからのお達し。一度は断ったのですが、結局はジブンが折れる羽目になりましたので。

 

「別にこれくらいは問題ないから。それよりも結構遅くなっちゃったけど、麻弥ちゃん家の方とか大丈夫か?」

「あっはい。両親に連絡はしてあるので大丈夫ですよ」

「そっか。それなら良かった」

 

 ―――にしても近いっす!!蒼真さん!!

 

 蒼真さんとジブンの肩が触れるか触れないか。

 そんな絶妙な距離感にジブンの心境内はただならぬ焦りと恥ずかしさが混ざりあっています。

 街灯に照らされた歩道を歩くジブン達。

 その間にあるのは必要最低限の会話のみ。一見、気不味い状況のように思えます。だけど、この空間の居心地が悪いとは自然と思わないジブンがいました。

 

「着いたね」

「へ?―――あっ」

 

 そんな時間もすぐ終わりを迎えてしまう。

 目的地である蒼真さん家近くの駅。駅名を記す看板も見えてきて、いよいよお別れの時間が迫ってきます。

 

「今日はありがとうございました、蒼真さん」

「ん。こっちこそありがとうな。色々楽しませて貰った」

「はい」

 

 改札口前に到着します。

 

「それじゃあ、ここで」

「分かった」

「明日もお願いしますね」

「了解。また明日ね、麻弥ちゃん。じゃあの」

「はい、お疲れ様でした」

 

 ジブンは改札口を通り、駅のホームへと。

 実家がある方面へと電車が発車するホームへと続く階段へと降りたジブンがふと目にしたのは多くの人。

 普段なら気にしない一コマです。ですが、嫌な予感につい何となく視線がそちらへ。

 そして、耳に入ってきたのは―――

 

『電車、今日はもうないらしいぞ』

『マジか。終電にしては早くね?』

 

 ………へ?

 

 なんだか的中しそうな雰囲気に。

 他のグループの会話にも耳を傾けてみます。

 

『なんか事故があったらしいって~』

『ほんと。夜遅くに迷惑だよ』

『どうする?』

『ママに迎えに来てもらう』

 

 事故の影響で電車が出ないなんて。こんな時間帯にとんだご迷惑な事です。

 

 ―――ん?だとすれば、ジブンは家に帰れないのでは?

 

「っ!?…………不味いっすね」

 

 重大な事態へと招かれた事実にジブンの思考がゆっくりと浸透していく。この感覚に慣れていないジブンは直行特急でパニック思考へと陥っていく。

 案を捻らせては理由付きで却下。その工程を脳内で何度も繰り返す。一向に最善の対策案が出ないその焦燥感がより一層悪循環へと陥れて来ます。

 

「あっ!!」

 

 ようやく思い付きました。

 そして、最終的にジブンが選んだ策とは―――

 

「蒼真さぁぁん!!」

 

 これしか無かったんです。

 唯一の救いが帰る前にと、全力疾走で階段を駆け上がり、改札口をこれまでの人生最高速度で突破しました。次にまたしても全力疾走でうっすらとした記憶を頼りに来た道を戻ります。

 蒼真さんはすぐに見つかりました。まだ時間が経っていない事が不幸中の幸いと言えます。

 ジブンの声にはっと振り向いた蒼真さん。やがて、ジブンを認識すると驚いたように声を出しました。

 

「ど、どうしたんや?麻弥ちゃん」

「それがですね………はぁはぁ………電車がもう出ないらしくて………はぁはぁ………」

「えっ!?いつもならまだあるはずやけど」

「さっき事故があったらしくて、今日はもう………」

「事故………なるほどね」

「どどどどうすれば!?」

 

 落ち着いていられません。

 下手をすれば、今日は野宿だって有りうるんですよ。フルパワーで遠慮したい選択肢ですが最終的にはそうならなざるをえないとなると。

 ここで蒼真さん。ジブンの様子を見かねてなのか、とある行動に―――

 

「へっ?そ、蒼真さん?」

「麻弥ちゃん、落ち着けって。まだ絶対に帰れへんくなったわけちゃうやろ?」

 

 ゆっくりと蒼真さんの掌がジブンの頭上を動きます。撫でられています。

 あまりの恥ずかしさにかぁ~と頬に熱が帯びる体験をジブン、この時、はっきりと実感しました。

 止めて貰うなんてことはしないです。

 

「麻弥ちゃんの両親に迎えに来てもらうとか?」

「残念ながら、両親は昨日から出張中で………今は誰も家に居ないんです」

「そっか………」

「あっ………」

 

 思考に浸り、唸る蒼真さん。

 撫でられた手も放され、ついジブンの声が少し漏れてしまいました。聞かれてないと良いのですが。

 

「ん?なんや。こんなときに電話か……」

「こちらは気にせず。どうぞ」

「すまんね」

 

 着信音と共に蒼真さんはスマホをズボンのポケットから取り出します。

 お相手が気になる所ですが、今のジブンにそんな余裕はありません。

 通話していた蒼真さんですが、すぐにジブンの方へと視線を向けてきます。疑問に思いつつも見守っていると蒼真さんは自分のスマホをジブンに差し出してきました。

 

「え?」

「母さんから。麻弥ちゃんに変わってやって」

「あっ、はい」

 

 スマホを受け取り、耳に当てます。

 

「もしもし………あの―――」

『あっ!!麻弥ちゃん?ごめんね!!今、電車が止まってて動いてないでしょ?』

「そ、その通りです………」

『それでね?もし良かったらウチに泊まってく?』

「え?イヤイヤイヤ!今日はもう随分とご迷惑をお掛けしましたのに………これ以上は」

『そんなちっちゃいことは気にしちゃあかんよ?ウチ、麻弥ちゃんの事を気に入っちゃったから』

「で、ですが―――」

『決定やね!蒼真を連れて、戻ってきてね~。んじゃあ』

 

 ―――プツリ。

 

「………蒼真さぁ~ん」

「大体、予想出来るんやけど………」

「これ、返します」

「お、どうも」

 

 スマホを蒼真さんに返却します。

 

「………帰ろっか」

「………はい」

 

 ―――大和麻弥。

 どうやら山吹家に宿泊するとこになってしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -3の3- へ続く。

 

 




*千聖様(星四)が十連一発で当たった→投稿です。


『ふへへへへへへへ』
・蒼真の母親
→こうなっちゃいました(笑)
 

・晩ごはん
→そば飯。


・山吹家に一泊
→いらっしゃーい
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