ヒロインの麻弥ちゃん誕生日に間に合わず、大幅に遅れての投稿です。リアルで用事が重なり、執筆に時間が取れませんでした………。
さらに誕生日特別短編も今回はありません。恐らく、他のドラマーも合わせて今年は無しとなるかもしれないです。
麻弥ちゃん狙いのガチャ40連、見事に空振ったので許してください!!
感想、評価、お待ちしてます!
◇◇◇
リビング。
「これはどうしたら………」
かつてない難題に直面した。
帰宅手段を無くし、ついご厚意に甘えて蒼真の実家に一泊だけとは言え、泊まることになってしまった。
一応、アイドルに身を置く麻弥。
異性宅に宿泊などもっての他で無かろうか。アイドルらしからぬ行動であるのだけは分かる。
もしも、何処かからの
「麻弥ちゃん、お茶置いとくね」
「あ、ありがとうございます」
テーブルに置かれたコップ。
蒼真の母親にお礼を告げる。遠慮気味に一口飲むと、ひんやりした感覚が喉を潤してくれた。
「座ってもいい?」
「え?………はい、どうぞ」
承諾を求めてきた蒼真の母。
麻弥の向かいの席に腰を下ろした。
「それにしても………」
「何でしょうか?」
「麻弥ちゃん、テレビでも十分可愛いんやけど、生で見るとより可愛いわね~」
「ありがとうございます………」
「元々蒼真からアイドルが取材で来るって聞いてたんよ。でも、実はちょっと疑ってた。蒼真にそんな可愛い女の子を家に引き連れて来るなんて思ってなかったから。本当やったんやね~」
有名人扱いに慣れない麻弥。
いきなり褒められると対処に困ってしまう。精々、小さくお礼の返事をするぐらいが限度。
加えて、彼はちゃんと麻弥をアイドルとして実の母親に伝えていた。それが無償に嬉しかった。
「これは蒼真が中学の頃の話ね」
「はい」
唐突に始まる息子話。
と言いつつ、麻弥は興味があった。
「あの子、昔は今よりももっと無邪気にはしゃでは周りを引っ張る性格だったのよ」
「そうだったんですね」
意外だ。
「それが高校入る直前にはああいう風に落ち着いちゃって………反抗期が過ぎちゃったんかな?もう少し楽しんでいたかったんだけど」
「はぁ………」
「他にも理由はあるにはあるのよ?でも、私の口からは内容が内容だけにそう簡単には話せないし………だから、麻弥ちゃん」
「は、はい!」
「知りたいと思わない?」
「へ?」
ニヤリと浮かべたその笑み。
麻弥の前に母親という脅威の壁が立ち塞がろうとしていた。
◇◇◇
蒼真の部屋。
「お邪魔しま~す………」
麻弥が踏み入れたのは彼の部屋。
ノックすれば返事が来たので、恐る恐る扉を開けて部屋の中をそっと覗く。
「蒼真さん、お茶をお持ちしましたよ………」
建前は飲み物の配膳。
ただし、その背後には蒼真の母親による強制に近い意図が働いていた。
曰く、彼の部屋に行けば分かると。些細な違和感でも良い。彼にぶつけてみれば、きっとそれは彼の思惑を触れる糸口へと変貌するから、と。
蒼真の部屋はまさに男子高校生な雰囲気。
漫画や小説がきちんと整頓され、綺麗に敷き詰められた本棚に折り畳まれた毛布があるベッド。何の変哲もないタンス。
ここまで整理整頓されてるとなると彼本来の几帳面、真面目っぷりな性格による影響だろうか。
部屋の内部はテレビやネットで勝手に浸透した麻弥のイメージと殆ど相違がない程、驚くほどに合致していた。
「蒼真さん?」
そして、先程から彼からの返事がない。
強行手段に移る。主の返事無しに中へ踏み入れた罪悪感の扱いに困りつつ、麻弥は彼の姿を探す。
すぐに見つかった。
部屋の壁際に設置されたテーブル。高価な機材が大部分を占めている。
彼は扉に背中を向けていた。頭にはヘッドフォンを装着。パソコンの画面を操作中の様子から鑑みて、作曲中だろうか。
「蒼真さ~ん」
「うわっ!?………なんだ、麻弥か」
「す、すみません………お邪魔でしたか?」
肩をつついた。
突然の不意打ちに驚き振り向いた蒼真であったが、麻弥と目が合うとすぐに冷静さを取り戻す。
彼はヘッドフォンを膝元に置いた。
「んや。丁度キリがいい所に入ったから、気にせんでええよ」
「ありがとうございます。あの、蒼真さん、もしかして今、画面に映ってるのは………」
「新曲のデモやね。アークラの」
麻弥の目の色が変わる。
機材関連に目がない麻弥は普段は目にしないであろう曲のデモ作り場面と遭遇した。
専門知識を要求される曲作り。根幹を知っておくだけでも十分損はない。
「打ち込みもしっかりしてますね………」
「しっかりって言ってもそんなに本格的やないよ。コード進行だけ合わせて、ソロ部分は完全に人任せにしてるし」
「十分凄いじゃないですか!」
「まぁ………そうなんかな」
「あの、見させてもらっても大丈夫ですか?」
「見る分になら、全然構わんよ。ほれ」
ついテンションが向上する麻弥。
もっと近くで見ようと蒼真の肩越しに画面を覗こうとする。
麻弥は蒼真の肩に手を置いた。
「あのさ………麻弥?」
「はい?どうしました?」
「近い。めっちゃ近い」
「近い………?」
ふと言われてみれば。
麻弥の顔が軽く動けば、蒼真の顔と触れるぐらいに近距離に接近していた。
父親以外の異性とは初めてとなる至近距離で麻弥は彼と視線を合わせる。
「~~~っ!?」
意識してしまった。
かぁっと急上昇で熱を帯びる頬。反射的にその場を離れた麻弥は彼から隠そうと両手を頬に当てる。
二人の間に微妙な空気が流れる。
「す、すみません………」
「いや………こっちも役得だったというか………」
お互いに目線を剃らしたまま。
実は蒼真には加えて、背中にぴたっと触れた二つの柔らかい感触も味わっていた。麻弥の自覚がないとは言え、意識してしまうのは男の性である。
ぱたぱた、と掌を団扇代わりに熱を冷まそうとする麻弥は何気に部屋の中を見渡していた。
そして、タンスの上に気になる物を発見。
「蒼真さん、これは?」
「ん?………あぁ、写真だよ」
「写真ですか」
伏せられた写真立て。
それを手に取り、写真を眺めてみることにした麻弥。
写し出されていたのは四人の制服を着た少年少女達。ライブハウスのステージらしき光景をバックに四人は横に並んでいた。
麻弥はその左から二番目に、蒼真の姿を捉える。少々、今と比較すれば若く見えるが間違いなく彼であった。
「そう言えば、麻弥ってさ、俺と初めて会った時に質問しようとしてたな」
「えっと………よく覚えてますね」
「あの時はヒヤリとしたから鮮明に覚えてんのよ」
ドラマー集会の話で。
麻弥は蒼真に質問をぶつけようとしたが、それを蒼真自身が遮った。そのままあやふやになったまま現在に至る。
「確か、アークラが
「蒼真さんが無理してまでは流石に………」
「いや、良いよ。話す。麻弥になら話しても大丈夫やろうし」
蒼真は座る椅子を半回転した。
腕を膝に下ろし、軽く目を伏せた彼はゆっくりと語り始める。
「その写真で言えば、俺の左にいるのがベースの"光"。右隣がボーカルの"璃里亜"。そして一番右のギター担当"可織"。その四人で"アークラ"としてバンド活動をしてた」
「今とメンバーが変わってますけど………」
「あぁ………ボーカルの子が病気で倒れたんだ」
「っ!?………そうでしたか。すみません」
「ん、平気。さてと、時期的に中学卒業の頃の話やったから、それを皮切りにギターとは別々の学校に進学が決まった事もあって、バンド活動がしにくくなるって理由にギターが離脱。残ったのは俺とベース、二人だけ。流石に二人だと厳しくて、泣く泣く活動休止せざるを得なくなった………ってのが麻弥の知りたい全容かな」
話に区切りをつけた蒼真。
「ジブンが初めてアークラを知った時、丁度、活動休止をしていました。ですが、合同ライブで一緒に出場すると聞いて、驚いた記憶があります」
「合同ライブの前から、新メンバーを加入して活動を再開したからね。そこら辺の過程は何かと一悶着あったから省略するけど」
「バンドの曲も方向性は変えたんですか?」
「変えたってか、変えざるを得なくなった。以前は俺が作詞作曲してたけど、作曲は新しく入ったボーカルの奴に任せるようになったから」
「作曲………」
ふと麻弥は部屋の隅にある物を見つける。
「あのギターも蒼真さんが作曲に使ってた、とかですか?」
「あれは………もう居ないボーカルが置いていったギターやね」
「ご、ごめんなさい!またジブン………!!」
墓穴を掘ってしまった麻弥。
彼の母親の助言通りに彼の部屋にある物に訳有りなパターンが多いと自覚する。
ここまで来ると、まるで戒めのように、忘れないように配置しているようにしか思えない。
「そりゃあ、そうなるわ。あいつ、よく物をこの部屋に置いていったし」
「え?あの………璃里亜さん?とはどういう関係だったのですか?」
そして、麻弥は最大の地雷を踏む。
よりにもよって、本人の口から言わせてしまう。彼がここまで拘る理由を。
「璃里亜は俺の………
「え?」
-3-『レッツ密着!』 終
*ぼちぼち、次回作も視野に入れる頃かな………。
『麻弥ちゃん、誕生日おめでとう!!(大遅刻)』
・蒼真の母
→好奇心旺盛。兄と妹が父親似となってしまった為に普段から構ってもらえず、今日は麻弥にターゲットが移った。
そして、息子の事情は何故か知っている。
・「す、すみません………」
「いや………こっちも役得だったというか………」
→1個ぐらいはラブコメしてろや!(羨ま)
・「そう言えば、麻弥ってさ、俺と初めて会った時に質問しようとしてたな」
→全員編-1-より。
・「―――そこら辺の過程は何かと一悶着あったから省略するけど―――」
→あこ編か巴編で取り上げようかな~と思ってます。
・麻弥編-3-終了なの?
→未だに密着一日目ですが、二日目以降は-4-に移行して続ける予定です。