それと、運営さん。"名前のない怪物"と"回レ回レ!"のカバー追加。ありがとうございます!!
―――では、良いお年を!
◇◇◇
ライブハウス"SquareRoad"。
「いつ見ても………凄いね………」
パスパレ全員集合。
現在、アークラの練習風景を静かに見学中であった。ライブスペースで曲の研鑽に励む彼等の迷惑にならぬよう、ステージから、一番遠い壁際に五人揃って並んでいた。
本音をつい漏らしてしまう彩。その視線は他でもないステージに向けられている。
「………私達には出せない一体感………いえ、これはもはやあの四人だけが一同に揃わないと成立しない音楽ね」
「えぇ………千聖さん。いつか、ジブン達も」
「………そうね」
千聖と麻弥も同じく。
言ってしまえば、彼女達が目撃したのは単なるアークラの練習風景に過ぎない。いつも通り。
だからこそ、痛感する羽目になった。
己のバンド、パスパレとの明確な実力の違いを。
麻弥は思う。ここまで違うのか、と。
アークラというバンドを語るに辺り、まず知るべき存在は彼ら独自のスタイルにある。
ライブでよく目にする光景の一つに、ボーカルもしくはギターが自分達のバンド名とメンバー紹介をするあの光景がある。
当たり前に思えるかもしれない。なのだが、アークラは外でのライブでは一切しない。
曲中で歌詞とは違う生の言葉を発したり、コール&レスポンスへの誘導を理由にマイク越しに喋る場合はあるが、基本的にライブ中は余計な台詞は全く吐かない。
そして、最後の曲をやり終え、締めをくくるその時になって告げる。
―――これが今の"アークラ"だ!その胸に刻んどけ!、と。
終演の果たし状。
そう呼称されるようになった程、アークラでは決まり文句でもあるその言葉。ただ言うだけなら、観客の心に残る印象は薄い。
だが、実際は異なる。多くの人がその言葉に胸を打たれる思いに浸ってしまうのだ。何故かと言えば、その理由はライブの中にある。
―――アークラは音で魅せるバンド。
ドラムの一打に秘めた一魂。ギターの猛烈なメロディ。ベースの全てを飲み込むライン。ボーカルの真っ直ぐに突き刺さる歌への思い。
四つが混ざり合った結果。何倍にもなって、アークラだけが刻める音楽として、曲としてステージで披露される。
「ブラボー、です!!」
「さっきの二番のCメロってどうやって弾いてるのかな~?」
「え?日菜ちゃんでも分からないの?」
「私にだって分からない事は一つや二つぐらいはあるもん」
「そうなんだ………」
日菜はそう訴える。
普段から日菜は何でもすぐにこなす印象を持つ彩は意外そうに答えた。
「そろそろ私達も一緒に練習する頃合いよ」
「ハイ!」
アークラの練習が一旦休憩に入る。
これからの予定としては各パートごとに意見交換をしつつの個人練習へと入っていく。
予め課題曲を決め、その曲を覚えてきたパスパレメンバーは曲を通しつつ、アークラに指南を受けて、個人そしてバンド全体の技術向上を目指す。
「麻弥ちゃん、作戦覚えてる?」
「本当にやらなければ駄目でしょうか………?」
「大丈夫!自信もって!」
「えぇ………はいぃ………」
麻弥は勿論、同じパートの蒼真と。
しかも一対一の指導となる。それだけでも緊張するにも関わらず、彩から一つの指令が下されている。
「それじゃあ!皆、練習頑張ろう!」
「「おー!!」」
麻弥の憂鬱とは無縁とばかり。
彩の掛け声に元気よく盛り上がるイヴと日菜の姿があった。
◇◇◇
―――"アイのギャップ"。
「アドバイスって言われてもなぁ………」
蒼真は困ったように頭をかく。
アークラとパスパレの交流練習において、各楽器ごとに分かれて練習する時間が設けられた。
だが、ドラムの場合、麻弥は既に一人のミュージシャンとして完成してしまっている。この段階まで来てしまえば、各自の拘りやプライドも成立済み。
そこの部分に無闇に触れても、あまり良い結果に繋がらないのは経験済みの蒼真。
だからこそ、困り果てていた。
「と、取り合えず蒼真さん!!自分の演奏を見てもらってからでよろしいっすか!!」
「そう………やな。時間はたっぷりあるんやし」
ほっと息を吐いた麻弥。
ドラムを前に座ったものの、身体は妙に落ち着かない。
掛けた眼鏡をくいっと直す。
「………ん?」
特にこれと言った反応は無し。
やはり、詰めが甘いらしい。作戦は次の段階へ移行する。
その前に演奏の準備、と。
「叩く前に少しごめんなさいっす」
眼鏡を外して、空いてるスペースに置く。
ちらりと背後に立つ蒼真の顔を覗き見た麻弥だったが、流石に一瞬だけでは判断が出来ないと気付く。
「で、では………!!」
蒼真の方へ軽く微笑んでから。
「ん?どした?」
「い、いえ!?何も!?」
「なら良いんやけど」
慌てながらも麻弥は真っ赤に染め上がった両耳に付けたイヤホンに課題曲を流し込みながらふと思う。
―――これ、意味あるんすか!!彩さん!!
恥ずかしい思いをしただけの麻弥であった。
◇◇◇
パスパレ作戦会議。その一。
「駄目だった~!」
「そんな………!?麻弥ちゃんの究極のギャップジェネレーションが効かないだなんて………!!」
「どうして、彩さんがそこまで悲観的になってるのでしょうか」
練習終わりの休憩中。
「男の子はギャップに弱いって言うから!!麻弥ちゃんの眼鏡をかける時と外した時でいけると思ってたのに!!」
彩は悔しそうに地団駄を踏む。
情報源は雑誌。そこに普段、眼鏡姿の女子がふとした瞬間に素の顔を異性に見せれば、その仕草に異性はドキッと感じる。
そんな風に記載されたページを偶然見た彩がこれだと確信して構成された作戦だったが、蓋を開ければあっさりと撃沈。
一番の敗因は―――
「蒼真さん、普段から自分の両方の姿見てますから。今になってだと特に効果も………」
「はっ!!そうだった………!!」
「やっぱり彩ちゃんは彩ちゃんだね~」
「むーー!!」
へへへ、と笑う日菜。
彼女的に彩の作戦での誤算も既に見抜いていたようだ。ただし、面白そうだと言う理由で黙ってたに違いない。
ぷんすかと怒る彩にゲラゲラ笑う日菜の光景に麻弥はそっと溜め息をついた。
「あっそうだ。麻弥ちゃん的にはどうだったの?」
「どう、とは?」
「手答えとかそういう感じ?」
「………蒼真さんは自分よりもドラムをずっと見てるようでした。当たり前と言えば、当たり前ですけど」
「成る程………ふむふむ。蒼真君攻略の鍵はドラムにあり、っと」
「彩ちゃん、今のメモる程かな?」
やるき満々だ。
彩が懸命にペンでメモ帳に書く姿を他人事のように見つめる麻弥であったが、巻き込まれるのは麻弥である。
「それでさ、彩ちゃん」
「何?日菜ちゃん」
「次の作戦はどうするの?」
「ふぇ?つ、次?そ、そうだね~………」
目が泳ぐ彩。
「彩さん、日菜さん。協力してもらうのはありがたいですが、自分的に今の関係も満足してるので―――」
麻弥が喋っている次の瞬間。
―――バァン!!
盛大な音と共に扉が開かれる。
部屋に入ってきたのは休憩に遅れていたイヴであったが様子が変。
自信ありげな瞳にワクワクした口元。
「イヴさん………?どうしました?」
麻弥は嫌な予感がした。
「ルーズさんから良い事を教えてもらいました!名付けると―――"当たって砕けろ"らしいです!!」
「イヴさん。それ、駄目なやつです」
「なんと!!そうなのですか………麻弥さんの力になれず、申し訳ないです………この罪は私の腹を切って償うしか………」
―――ちらっ。
彩と日菜の視線が麻弥に。
ひやりとした汗が浮き出てくる麻弥の頬はひきつる。
要するに、やれと。
他に案がない以上、イヴが持ってきた作戦でしか彼との進展を進める方法がない、と。
「ぐぬぬ………でも、イヴさん」
「はい………?」
「そのルーズさんから聞いた事、教えてください。それからやるかやらないかを考えることにしましょう」
「う~ん………今日の所は妥協してOKかな」
「やった!ねぇねぇ!イヴちゃん!教えて、教えて!」
「はい!!」
「………はぁ」
麻弥はぐったりと項垂れる。
恋の試練はまだまだ続きそうであった。
-4の3- へ続く。
『2018年最後の補足シリーズ』
・アイのギャップ
→"愛"と"EYE(目)"をかけた作者の密かな自信作。
・作者のぼやき
→バンドリ!セカンドシーズンが始まりますね。めっちゃ楽しみですが―――
『香澄達の学年が一つ上がります!!』
………嘘やん?
小説のネタになれば、と企んでいたのに一気に消失。なんなら、この小説も早めに完結させないといけない羽目に。
勿論、頑張りまっせ?なので、評価感想ください。
学年が一つ上がった彼女達と蒼真の話を書くかどうかは未定でございます。
・ご挨拶
→今年一年も「Dreamer of Drumer」では大変お世話になりました。日間ランキングやコラボ、ボリューミーな話数になった等、とても充実した一年になりました。
2019年もまたよろしくお願いします。