Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 ほら、出すよ。



二葉つくし編
-1の1-「もしかして初心者の子じゃない?」


 ◇◇◇

 

 CiRCLE。受付。

 

「暇だなぁ………」

 

 とある日のこと。

 派遣バイト員として、受付に立つも客が来る気配が全くもって皆無。

 最近は繁盛してきた、と豪語していたまりながこの現状を目の当たりにすれば、何て言うのか。

 正解は「後は任せたね~」だろう。

 と言うか、現在進行形で店番が俺だけなのもそのせいである。

 

「あ、あの~………」

 

 人手不足なのは分かる。

 音楽業界も最近は流行りの病が原因で大人数が集まるイベントも大々的な開催は厳しく衰退する一方的だし、出演する側も人が集まらないと分かってるからライブする意思は薄れているように思える。

 俺のいるバンド"アークラ"も事態が収拾するまでは曲作りに励む方針だ。ライブばかりでそちらに手を付けられ無かったから丁度良いタイミングじゃないの?と言われるとそうなるが。

 

「あ、あれ?聞こえてない………?」

 

 さて、更なる今後の方針をどうするべきか。

 ベースの光とそこら辺に関しては念入りに話をしておくとしよう。あの馬鹿二人には事後報告になっても文句は出ないだろうし。

 三年生ともなると進路面も考えておく必要があるし、まだまだ忙しくなりそうだ。

 

「すみません!!」

「わぁい!?」

 

 ―――び、びっくりした………。

 

 いつの間にか受付前にいた女の子。

 ツインテールに結んだ紫よりな黒髪にまだまだ成長途中を醸す幼い顔付き。

 キリッとした目付きだが、瞳の奥は不安げに揺れていた。随分と待たせてしまったようだ。

 

「どうかされました?」

 

 次の予約までは確か数時間後。

 しかも顔馴染みのガルパの子達なので、目の前の少女はまた別の用件で尋ねたと判断する。

 

「えっと………個人練習をしたくて………」

「あっと、なるほど。個人練習用に使える部屋は………空いてますね。大丈夫ですよ」

「良かった~」

 

 ほっとする彼女。

 個人練習の割には荷物にギターケース類の存在が確認出来ない。となれば、ボーカルかドラムかキーボード辺りが無難か。

 と、手提げ鞄を左手に持っているのが見えた。そこからひょいと顔をだすスティックの先端も。

 

「もしかして………ドラムの練習でも?」

「えっ?あっ、はい。そうですけど………」

 

 やはり、正解か。

 ぴったりと当てられた事に驚いた様子の彼女はじっと俺の顔を見つめる。

 

「………あれ?でもなんで?あっ、もうドラマーとしてのオーラが出ちゃってるとか?」

 

 そして、小さく呟く。

 案外どんくさい一面を持つ子なんだな、と感想を持ちつつも俺は素直に指摘してあげる事にした。

 

「鞄からスティックが出てますよ。移動する際に引っ掛かると危ないのでちゃんとしまっておいた方が良いですね」

「あっ………!!ありがとうございます!!」

 

 綺麗な角度でのお礼。

 真面目な一面もあるんだなぁと感慨深い思いに身を浸しつつも、慣れた手付きで手続きをこなす。

 

「何時間にします?」

「あっと………2時間くらいで!」

「2時間ですね~」

 

 と、俺はふと手を止めた。

 空いてるスタジオに設置されたドラムの調子がやや不調な傾向にあるとの報告を思い出したのだ。

 もしもの可能性を考え、ドラムに詳しい俺が派遣されたのだから軽い注意程度で問題は無いか。

 

「もう入っても大丈夫ですね。それと最近、ドラムの調子が良くないみたいなんで何かあれば構わずに呼んでくださいな」

「分かりました!!ありがとうございます!!」

「はーい………って、もうおらん」

 

 ツインテールを揺れる。

 いよいよドラムが叩ける高揚感に浮き浮きした彼女は意気揚々とスタジオへ向かってしまった。

 分かるよ、その気持ち。自宅練習が出来ないからつい気持ちが荒ぶってしまうね。

 

「蒼真君、調子はどう?」

 

 と、スタジオへ続く廊下から入れ違いにライブハウスの支配者、まりなが堂々とした振る舞いで登場してくる。

 

「さっきのまりなさんの言い分を聞きたいぐらいに暇ですよ」

「くっ………!!蒼真君がいる日に限って予約がないだけなのに………っ!!」

「まぁさっき知らない子がスタジオ入った所ですけどね」

「え?どんな子?」

「知ってどうするんですか」

「後で幸運のバイト君に会えたね!って報告をする為だよ!」

「俺は招き猫扱いか何かですか」

 

 出現率が極端に低いのは認めよう。

 だがそれは俺がこのライブハウスの人員不足を補う為に派遣されたからであって、しょうがない部分でもある。

 ドラムという楽器柄、詳しい人は希少。

 まりな本人もギターを嗜んでるのでそういう方面でのトラブルは対処可能だがドラムとなると専門外らしい。

 とは言え、だ。全員がお手上げ状態は流石に不味いので、仕方無しに俺が居るという訳である。

 

「それでそれで!!どんな子が来たのかな?」

「名前は知りませんけど………お嬢様っぽい風格でしたね」

「それから、それから!」

 

 一体、何が面白いのやら。

 

「髪型はツインテール。それに担当パートが俺と同じドラマー………ぐらいですかね。ぱっと挙げられるのは」

「ツインテールにドラマー………」

 

 特徴は捉えているとは思う。

 どうやら、まりなも該当する人物に心当たりが合ったらしい。はっ!とこちらを見る。

 

「もしかして、初心者の子じゃない?」

「知りませんよ」

「それもそっか」

「確かに、初心者っぽいって言われるとそんな雰囲気はありましたけど」

「だとしたらほぼ確定かな。最近、活動を始めた"Morfonica"ってバンドは蒼真君、ご存じ?」

「俺がガールズバンドの最先端まで把握してるとまりなさんはお考えで?」

「そっかぁ………知らないのも無理ないか~。あっ、でもチェックはしておいた方が良いかな。"Morfonica"は最近の私の個人的なお薦めバンドだし」

「それくらいなら………暇があるときにやっときますけど。参考までに、他にもいます?そういうの」

「う~ん………ガルパの子達以外ってなると、RASかな?」

「ラス」

「うん、"RAISE A SUIREN"。ファンの間ではRASって略すのが定番だね。あの友希那ちゃん達にも引けを取らない本格派バンドって感じ」

「へぇ~。あのRoseliaにですか」

「バンドメンバーの一人にチュチュって愛称の子がいるだけど、噂じゃ友希那ちゃんをスカウトしたんだって。でも、あっさり断られちゃって」

「でしょうね。姫さんもそう易々と今のメンバーを捨てる真似だけはしないでしょうし」

 

 友希那を引き入れたい思いは分かる。

 彼女の歌声はそこらのボーカリストより何倍も秀でており、おまけに彼女自身の性格も妥協を許さない徹底ぶりだ。

 正直、アークラとしてもライバルとして相対したくない候補の筆頭にも名を馳せるぐらいだ。

 そんな友希那を目につけたチュチュって子もスカウトのセンスは多少あるように思える。肝が据わってる。

 

「そのせいか、今じゃ打倒"Roselia"って目標掲げて頑張ってるみたいだよ」

「なるほど、そこら辺の事情は追い追い。一応、出来る限りの確認はしますけどもあまり期待はせんで欲しいですね」

「次の標的はもしかしたら、蒼真君達かも」

「………物騒な世の中なことで」

 

 ライバル求める系バンドは御免だ。

 アークラは自由気ままにやる方向性だし、根本的な部分が合わない気がするから。仮にこちらのバンドに油を注ぐような行為をすれば、保証はしかねないが。

 まりなさんとの世間話が盛り上がる一方。

 

 ―――………………ぁぁ!!

 

「………今のは?」

「悲鳴に聞こえたけど………蒼真君、ちょっと見てきてくれないかな?ここは私がいるから」

「そうですね、行ってきます」

 

 受付を離れ、通路へ踏みいる。

 聞こえた方角には無論、スタジオがある。使用中となると、対象となるのは一ヶ所だけだから場所の特定は容易い。これが全部屋満室だと一々確認しなければならんので大いに助かる。

 十中八九、さっきの子が何かしら引き起こしたのだろうと思いながらもそのスタジオの扉前へと辿り着く。

 やはり、防音扉が完全に閉まっていない。防音扉はとても重く、初心者がやらかしがちなミスの一つだ。

 悲鳴が微かに聞こえた時点で、もしかしてとは思っていたが。

 

「すみませ~ん、声が聞こえたので確認で来ました~。大丈夫ですか~?」

 

 扉をちょっと開けて、覗く。

 ノックなんて無意味だし、楽器を弾いてる様子もないのでこちらの方が手っ取り早い。

 

「あ、あの………!!」

 

 先程の子がひょいと部屋奥のドラムから顔を出す。

 一見、可愛い仕草だがその表情は最後に見た嬉しさ溢れるものとはうって変わって、今にも泣き出しそうな悲しい表情へと変貌を遂げていた。

 あー、と瞬時に悟った俺が気にしないでと声をかける前に彼女は涙声で告げる。

 

「ごめんなさぁい………!!壊しちゃったかもしれませ~ん………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -1の2- へ続く。




*つくしちゃんの設定、あってる………?
 特に口調。あったら、その都度修正入れます。

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