Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 言い訳タイム→
 つくしちゃんの口調、ムズいよぉ( ;∀;)
 設定全然公開されてないから、イメージ掴めづらいよぉ( ;∀;)

 ―――では、どうぞ。



-1の3-「あ、あの!!師匠!?」

 ◇◇◇

 

 CiRCLE。スタジオ内。

 

「そう言えば、先週のライブはどうやったん?」

 

 その言葉に私は手を止めた。

 回転椅子に座って、くるくると回っていた私のドラム師匠でもある彼はその動作に気付かない。

 話題に上がったライブ。

 私にとってはあまり良くない結果で幕を閉じていた。正直、思い出したくないレベルで。

 だから、彼から言われるまでは話すつもりは全然無かった。

 

「全然ダメでした………」

「ダメって客がおらんかったん?」

「違うんです。いや、違わなくは無い?………と、兎に角!私達のバンドの出番の時だけ盛り上がりが無かったというか………」

 

 出番が終わった瞬間はそういう物かと。

 精々、寄せ集めの初心者がするライブだから盛り上がりに欠けたのだと思っていた。

 でも、後続で出演したバンド全てが例外無く私のいる楽屋まで歓声が届くぐらいにステージを熱くしていた。

 

「そういうもんだよ」

 

 師匠は呆気なく言う。

 普段からお世話になる彼だが、あまりの冷めた態度に私は少しイラついてしまう。

 

「そういうもんって………ヒドイです」

「だって、他に言い様も無いし」

「何で!?師匠だって知ってるじゃないですか!!ちゃんと練習したのに!努力して頑張ったつもりなのに!」

 

 分かっている。これは只の八つ当たりだ。

 彼に一切、非は無い。私のドラマーとしての実力不足が原因の一環なのも重々承知している。

 あんなにも。練習場所も確保して、覚束無いドラムに試行錯誤を繰り返しながらも諦めずに練習したのに。

 私達の初ライブは呆気なく散った。

 

 ―――散ってしまった。

 

「んじゃ、逆に聞くけど」

「え?」

「つくしのバンドのさ、えっとモニカだっけ?そのモニカにとって、ライブで何がどうなれば成功したって言えるんだ?」

「それは………」

 

 言葉に詰まる。

 私達のバンド"Morfonica"にとってのライブに注ぐイメージ像。

 彼はそれを知りたいと言う。

 

「皆と上手く音を合わせられて、観ている人達を納得させられる演奏をしたら、だと思います」

「………過大評価しても40点」

「へ!?何で!?」

「そっちで考えろって。今回は答えだけ先に知っても意味がないからな。バンドのリーダーなんだろ?」

「リーダーだけどぉ………分からない事は分からないよ!」

 

 たまらず本音が漏れる。

 その私の余りある姿に彼は何故か微笑ましくしていた。

 

「その気持ちはバンドメンバーには言ってあるん?」

「………言ってません」

「なら、そっからやね。俺は一言も一人で解決するようにとは言ってないし」

「………」

 

 詭弁だ。言葉の綾だ。

 だけど、メンバーには秘めたる悔しいという気持ちは隠している。彼はそれすらも考慮して、答えを導くようにと誘ってくる。

 いつからか、私の心は自然と彼の言葉だけはすんなりと受け入れてしまう。

 つまり、これは悪足掻き。

 

「そんなの………今更、ましろ達に言ったって、迷惑かもしれないし」

「迷惑って言われたんか?………ちょっと、ニュアンスがちゃうか。そうやな、逆にメンバーの子達から同じ事を言われたら、つくしはそれを迷惑と感じるのか?」

「………感じません。むしろ、嬉しいです」

「やろ。ほらみー」

「ぐぬぬ…………っ!!」

 

 今日も私は彼に敵わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 CiRCLE。練習スタジオ。

 

「師匠はどうして私にドラムを教えてくれるの?」

 

 とある日。

 今日も秘密の特訓と称して、私はスタジオでドラムを叩いていた。彼は膝の上に乗せたスネアのチューニングの真っ最中。

 スティックをスネアに置いた私の質問を聞いた彼はその手を止める。

 

「つくしが教えろって言ったやん」

「あっ、いや。そうじゃなくて………私としてはてっきり初ライブまでの関係かと」

「えっ、その方が良かったのか………っ!?」

「ううん!!違うの!!私に時間を割いてくれるのが申し訳無いから………」

 

 この二人だけの時間。

 最初は奇妙な空間で自分でも不思議に思えるぐらいに謎に包まれていた。ドラムはぐんぐん上達したけど。

 でも、今ではこの時間を私は心地よいものだと感じていた。委員長として、リーダーとしての重荷を背負わずに只、彼の弟子としているこの時間が。

 私自身もびっくりしている。普段は絶対に赤の他人の前では口にしない弱音を彼の前では呆気なく吐いてしまう自分に。

 

「う~ん、なんやろな………」

 

 顎に指を当てて、彼は思考を巡らせる。

 知り合って間もないけど、師匠は不思議な人だと思う。初対面である私のお願いもあっさりと承諾して、こうして事後保証もしてくれる。

 あっ、ライブまでだと思ってたのは私の思い込みだったみたいだけど。黙っとこ。

 一方で、単純に私は知りたかった。彼はどういう心意で私にドラムを教えてくれるのか。

 

「何でなんやろ?」

 

 返ってきたのは疑問でした。

 

「師匠だって、分かって無いじゃないですか」

「そんな嬉しそうにする事………?」

「えっ?私の顔って今そうなってるの?」

「うん。弛んどるぞ、頬が」

「へっ!?」

 

 ぱっ、と手を当てて隠す。

 その仕草に彼がやってやったとばかりに笑い始め、またしても彼にからかわれたと私は気づいてしまう。

 いつもそうだ。私が年下だからと良いことに面白半分、言葉巧みに遊んでくる。

 

 ただ―――正直、そんなにイヤではない。

 

 学校での私は委員長としての身分がある。

 特殊な学校である故、生徒も人並み以上の天才しか集まっておらず、少しでも油断すればあっという間に置いていかれるそんな世界で、だ。

 私もまた追いかけるだけで精一杯。

 その証拠に他のメンバーと違って、秘密裏に楽器の練習もしている。きっと、真の本物は無駄な練習もせずに本番に挑むのだろうけど。

 無い物ねだりはさておき。月ノ森学園の肩書きを背負う必要がない彼と過ごす時間はとても楽しい。

 

「冗談はさておき。えっと、つくしにドラムを教える理由やったか」

「冗談………あれ?無かったのでは?」

「そっ、やっぱり無いね。考えたけど何も思い付かなかった」

 

 首を傾げる私。

 私が悪いのではない。特に理由が無いのに私にドラムを教えている彼に非があると思う。

 

「なら結局は何で?って話に戻るけど、結論から言えば、つくしといるこの時間は俺にとっても有益やと思えるから、やないかな?」

「私との時間が有益………?」

「そっ。他にもあるぞ。出来なかった事が出来るようになった時のつくしの喜び具合。あれは教えるこっちも吊られる勢いで嬉しくなっちゃう」

「なっ………!!」

 

 脳裏に浮かぶ鮮明な映像。

 

『やったぁー!!師匠!!私、出来るようになったよ!!』

 

 スティックを両手で天高く上げて。

 満面の笑みで報告する私のその姿は今振り返ってみれば、随分とはしゃぎ過ぎでは無かろうかと思えるレベルでの有頂天ぶり。

 いや、確かに嬉しかった。とても苦戦していた場所だけに、その時の記憶は今でも鮮明に覚えている。

 

「わ………わ………わ………っ!!」

「わ?」

「忘れてください!!少しも思い出さないで!!」

「そんな無茶な要望は通りませ~ん。せめて、アップダウンが出来るようになってから、出直して下さいな」

「ぐぬぬ………!!」

 

 今日もまた私は負けてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 CiRCLE。休憩スペース。

 

「ふむ………こんなもんか」

 

 録画した動画の鑑賞中である師匠。

 バンドの雰囲気も知りたいから、こっそりと撮ってきてくれと頼まれた時は裏では別の理由が働いてるのでは、と疑いもした。真剣に映像を見つめる師匠の姿できっぱりと晴れたけど。

 さて、現実逃避はここまで。

 赤の他人に練習風景を見られると考えるだけでも緊張して落ち着かないが、見終えた師匠に評論を聞かないと。

 

「どうでしたか?」

「いやぁ………スマホ越しでもバイオリンって迫力あるんだな~。すげぇ」

「るいさんのバイオリンはプロ並みに上手ですから!!………って、違います!!私のドラムです!!」

 

 モニカのメンバーの一人、るいさんのパートはバイオリン。

 例を見ない変則的なスタイルでもあるので、どうしてもそちらに視線が移ってしまうのは身内目線からでも共感出来る。

 でも、師匠には私のドラムを見て欲しい。評価して欲しい。そして、アドバイスとか指導とかして貰いたい。じゃないと、上手くなれない。リーダーとしての威厳が無くなってしまう。

 

「つくしのドラムは………バンドとなると悪目立ちはして無いし、かと言って無粋に目立っても無いしな………普通?」

「ふ、普通」

「これからに期待って感じか」

 

 普通じゃダメ。

 このペースだと他のメンバーに遅れる。そう考えるだけで私の心に焦燥感が住み着いてしまう。

 

「まっ、気にすんな。まだまだ発展途上なんだし、俺もちゃんと付き合うから」

「ふわっ!?」

 

 と、頭上にずっしりとした感覚。

 続いてそっとそれが左右にゆっくりと動いていく。

 あまりの衝撃っぷりに思考が飛んだ。

 

「あ、あの!!師匠!?」

「ん?あっ、すまん。つい癖で」

「い、いえ………」

 

 そして、撫でられた髪にそっと触れる。

 大きくて、逞しくて優しかった彼の掌。不思議と胸の中がいっぱいになる。だけど、どこか心地好くて。

 初めての感覚に戸惑いつつも、どうにか返事だけは。果たして、上手く返せただろうか。それすら確認する余裕が今の私にはない。

 

 ………今日も、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -1- 終




『補足シリーズ』
・つくし
→ストーリーでは常にポジティブ思考を見せていたが、裏ではネガティブ思考に捕らわれているかもしれない。
 そんな姿をつくしは自然と彼の前でも見せるようになっていた―――感じなテイストで進行します。

・アップダウン
→アップダウン奏法。ハイハットをスティックの腹で叩き、手首をくいっと上げて………。興味ある人は検索してみてください。脱初心者になる為に必需レベルで重宝するテクニックです。

・他のモニカメンバー
→次回以降から、ちょくちょく登場するかと。


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