Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 特別編。今回は巴大人verでお送りします。
 あ、現在のイベントで麻弥ちゃん狙いの20連は無事に死亡致しましたことをここで報告します。くそぉ………。

 さて、本日4月15日。巴の誕生日なので、誕生日に関するお話です。イチャイチャ要素は少なめですけど………。

 ―――では、どうぞ。



巴大人編-1-『誕生日』

 ◇◇◇

 

 山吹家。

 

「ソウ、今日も仕事なのか?」

 

 テーブルでいつもの朝食を摂っていると、巴がエプロン姿で近付いてきた。

 巴と一緒に暮らすようになって五年。今では随分、巴のエプロン姿も板についてきたなぁと思う。

 あの頃は酷かった。

 俺も手伝うと言ったものの、自分でやりたいと頑なに譲らないので渋々任したのが悲劇の始まり。

 元々俺は巴が家事をしないのを知っていた。でも、料理とかはレシピ通りにやればまぁまぁ形にはなるぐらいだと思っていたが。

 だがしかし、世間は甘くない。

 巴の料理生活初日に漫画で見る真っ黒に焦げた塊をこっそり目撃してしまった過去の俺がアフロの女子力ナンバーワンのひまりに助けを求めることを即決していたのは鮮明に覚えている。

 

「今日は………下手したら夜まで続くかもしれん」

「そうか………分かった」

 

 残念そうに落ち込む巴。

 俺の仕事は昔と変わらずドラマーをやらしてもらっている。

 普段なら夕方帰りの俺だが、来週に迫ったライブの打ち合わせや練習がかさ張ってしまっているので必然と帰りが遅くなる。

 

「ご馳走さま。美味しかったよ」

「あぁ」

 

 空いた皿をシンクへ運ぶ。

 出掛ける準備まであと少し余裕があるので巴と一緒に選んだソファへ腰を下ろした。

 

「あ、パスパレ」

 

 テレビの番組チャンネルをぐるぐる回してると見知った顔がテレビに出ており、俺のリモコンを持つ腕が止まる。

 どうやらニュース番組でバンドの紹介をされているようだ。彩ちゃんがライブMCでやらかしてるシーンがばっちり流される。

 

「相変わらずの慌てっぷり」

「これでもだいぶマシになったやろ?」

「どうだろ?」

 

 巴が俺の隣に座る。

 と、思えば巴が肌と肌が触れ合うぐらいの超至近距離まで密着してきた。

 恐る恐る、俺の手を握り始める。

 

「珍しいね」

「そういう気分なんだ」

「甘えたい気分?」

「………うん」

 

 俺の肩に頭を乗せる巴。

 あまり付き合う当時から自ら甘えるという行為をしてこなった巴が急にしてきたので俺は心中では驚きつつも冷静に勤め、彼女の頭を撫でる。

 

「もう時間じゃないか?」

「………ホントだ」

 

 巴に言われ、壁時計を見た。

 仕度の時間も考えれば、これ以上の浪費は避けたい。

 巴は俺から離れてテレビを眺めている。

 ソファから重い腰をあげて、準備へと向かおうとした俺。ふとあることを思い付いしまったので実行することに。

 

「どうした?」

「行ってきますのキスはしないのか?」

「んなぁ!?良いから早く行ってこい!!」

「へいへい」

 

 顔を真っ赤に照れてしまった巴。

 俺はニヤリと巴に気づかれないように笑みを浮かべる。

 

「………巴も相変わらずやね」

 

 彩が緊張してMCが上手にならないように、巴のこういう照れ屋な所は昔から変わらない。つまり、チャームポイント。

 それはそうと今日は大切な1日だ。巴には悪いが暫くは我慢してもらう。早速耐えきれそうにない行動が巴に出ちゃってるが頑張ってもらう。

 兎に角、今日は絶対に無闇に出来ない。

 何故かというと―――

 

 本日、4月15日。

 

 ―――巴の誕生日である。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 アタシの今日の予定は以下である。

 午前中は病院で定期検診を受けて、そのまま昼頃には羽沢珈琲店で"Aftergrow"の誕生日会に参加。

 本来、夜には旦那の蒼真と二人っきりで晩酌をする予定であったが、蒼真の仕事が長引くそうなのであまり宛には出来ない。

 

 ―――はぁ………今日がアタシの誕生日って分かってるのか………?

 

 今朝の蒼真は特に何も言ってくれなかった。

 来週にドームライブが迫り、忙しいとは分かっているが言葉の一つぐらい欲しかったのが本音。

 時刻はもうお昼時。目の前には"close"と書かれた板が吊り下げされた扉が見える。

 

「あ、巴ちゃん!いらっしゃいませ!」

 

 羽沢珈琲店へ入ったアタシを迎えたのは看板娘として働いているつぐみであった。結婚後も旦那と何度か訪れているので店内は見慣れているはずなのだが今日の雰囲気は全くもって違った。

 綺麗に飾り付けをされた店内。今日が貸し切りになってるならではの派手な飾り付け。これら全てが自分の為に用意されたとなると嬉しくなってくる。

 

「こっちだよ~」

 

 ひまりの案内に付いていく。

 店のカウンター席のその手前。テーブルが長方形に四つ並べて固めて置かれていた。そのテーブルの中央に聳え立つのはホールケーキ。

 そして、テーブルを囲むように座る三人の人影。

 

「おっ、来たよ!」

「ようやく主役のご登場ですか~」

「久しぶり、巴」

 

 ひまり。モカ。蘭。

 かつての同じバンドメンバーが勢揃いしていた。全員が社会人の一員となった今、こうして無事に全員がまた集合するのは珍しい。

 アタシの場合はまだ主婦であるので、余裕はある方。だが、モカや蘭はそもそも地元を離れて仕事をしており、滅多な事では連絡すら寄越さない。

 

「久しぶり、皆。いつ以来だ?」

「う~ん………半年ぶり?」

「私とモカとひまりは先週蘭ちゃんの誕生日で集まってるから、巴ちゃんとだけ半年ぐらいかな?」

「あー蘭、行けなくてすまんな」

「気にしてない。蒼真の地方ライブに付き合ってたんでしょ?そう言えば、巴、送ってくれたプレゼント届いたよ。ありがと」

「おきに召して良かったよ」

 

 懐かしい思い出が一気に甦る。

 期間が空けば空くほど、喋りたい話は積もっていくもの。今日、アタシ達の間で話題が尽きることはまずないだろう。

 それにしても皆、大人びている。

 アタシが見たのは高校生時代の面影を引き継ぎつつも社会人として成長して来た、彼女達の姿であった。

 

「はーい!一先ず、先に巴ちゃんの誕生日のお祝いをやるよ!」

「いぇーい」

 

 羽沢珈琲店ギリギリ看板娘のつぐみが仕切る。

 

「では私が代表して。復唱の方をお願いします………こほん」

 

 ひまりがわざとらしく一咳。

 一応バンドのリーダーのひまりなりに責任を果たそうとしているのだ。

 

「巴!お誕生おめでとう!!」

 

 そして、訪れる静寂。

 

「………誰も続かない!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 誕生日会。終盤。

 

「新婚生活はどんな感じ?」

 

 ケーキも皆で仲良く食べ終えて、雑談へと入る雰囲気の最中に聞いたひまりの視線が巴へと行く。

 

「う~ん………今まで通りだな」

「それは同棲してた頃と同じってこと?」

 

 蘭も会話に入る。

 

「おう。結婚したからって生活が激変するわけでもないからな~」

「まさに夫婦円満ですかな~?」

「巴ちゃん、良いなぁー」

 

 モカのイヤらしい質問とつぐみの羨ましい視線が巴へ突き刺さる。

 ここに居る巴を除いた四人は独身。唯一、つぐみがその噂があるものの他の三人はまったく色沙汰がない。

 

「なら、夫婦円満の秘訣とかあるの!?」

「そう言われてもな………」

「まぁまぁひまりちゃん、落ち着いて」

 

 つぐみがひまりの元へ駆け寄る。

 

「それでトモちん、何かないの~?」

「モカまでもか………特に何もしてないよ」

「キスとかは?」

「っ!?」

「バッサリ来るな………まぁ………たまに?」

「「おおー!!」」

 

 何故か起こる拍手。

 蘭の真っ赤に染まった頰が一際目立つ中、巴への追求は続く。

 

「じゃあ!じゃあさ!蒼真君の何処が好きなの!?」

「ご、ごめんね………私にはもう抑えきれないかも………」

 

 ひまりの暴走は止まらない。

 

「ギャップ………だな」

「なんと………!!」

「ライブで観る蒼真は迫力があって逞しさがあって正直いつ見ても惚れ惚れするぐらい」

「あれ?今日の巴ちゃん、いつも以上にガンガン言ってる気が?」

「でも家に居る時の蒼真はホントに気が抜けていてほっとくと何をしでかすか分からないぐらい不安なことばっかしてて………でも同時にそれが可愛くも思えてきて………」

「これこそ姉御魂………」

 

 つぐみがこっそり呟く。

 

「巴!今日はとことん話して貰うからね!」

「マジか………」

「ひまり、やるなら六時まで」

「蘭もか!?」

「こう見えて蘭ちゃんも恋愛に興味が出てきたんだよねー」

「乙女な蘭、可愛い~」

「………うるさい、モカ」

 

 本当に六時前まで誕生日会は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 山吹家。午後六時。

 

「おっ、お帰り」

 

 アタシが玄関を通り、リビングへ繋がる扉を開けるとキッチンで何かの作業をてきぱきこなしている蒼真の姿があった。

 鍵が掛かっていたのに人の気配がしていたので不思議に思っていたがまさか蒼真だとは思ってもみなかった。

 

「え?仕事はどうした?」

「あーそれね。終わった」

「終わった!?」

「だって、今日は巴の誕生日やろ?切り上げてきたに決まってるよ」

「………そ、そうか」

 

 どうにか動揺しつつもイスへと座る。

 蒼真がアタシの誕生日をちゃんと覚えていてくれた。そして、早めに帰ってきてくれた。

 些細な事かもしれないが、アタシにとって嬉しい気持ち以外浮かんでこない。好きな人なら尚更だ。

 

「軽めのご飯だけど………」

 

 そう言って彼がテーブルに置いたのはシンプルに作れる料理。普段はアタシがキッチンに立つ身なので、蒼真の手料理は滅多にない。

 

「へぇ~上手に出来てるな」

「巴と一緒に暮らす前は自炊してたからな」

「………もう五年か」

 

 蒼真と同棲を始めたのは大学生活の終わりに近い頃。プロデビューが近い彼の手助けをしたくて、ついその頃のアタシは彼の家にお邪魔してそのまま定着してしまった。

 

「さてと、食べるか」

 

 蒼真に促され、アタシはテーブルに置かれたコップを手に取る。蒼真は飲み物を調達するために冷蔵庫へと向かう。

 

「何呑む?」

「今日は………そうだな、遠慮しとく」

「え?昼に呑んできたんじゃないやろ?自分の誕生日でもあるのに………珍しいな」

 

 冷蔵庫から缶ビールを一つ取り出した蒼真はアタシの向かいに座った。

 

「んじゃ、巴の誕生日を祝って………乾杯」

「乾杯」

 

 二人の空間にガラスの音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 おまけ。

 

「来年は二人でどっか行きたいね」

「………」

「ん?巴?どした?」

「来年はあれだ………二人では行けないな」

「え?」

 

 蒼真が固まった。

 完全に彼は勘違いしている。が、お陰で表情が凄いことに。面白いものが見れたと心の中に刻んでおく。

 

「来年はともかくこれからは()()で………かな」

「それって………マジか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巴大人編-1-『誕生日』 終

 

 

 




『おめでたいよ巴!補足シリーズ』
・4月15日
→巴ちゃん、お誕生おめでとぉぉぉぉーーーーー!!!


・蒼真×巴
→この二人はあんまりイチャイチャせずに、のんびりした日常を過ごしているイメージ。


・アフロの恋愛事情
→巴だけが24才で結婚してる。蘭は音楽一筋。モカとひまりは特に設定なし。つぐみもあると匂わせておいて具体的な何かはなし。誰かコラボでも何でも良いので案をください。


・不安にことばっか
→主に家事。ソファで寝る。洗濯物、干すけどそのまま放置………等々。


・お誕生プレゼント
→ネックレスを蒼真は用意していたが、それ以上の物が返ってきちゃった。

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