Dreamer of Drummer   作:ソウソウ

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 ドリフェスであこ(看護師ver)が当たってしまったので以前の宣言通りにあこちゃんの特別編です。
 それはそうと"Neo-Aspect"、超格好いいじゃないですか。作者はひたすらヘビロテです。

 では、どうぞ~。



あこ大人編-1-『努力のフィナーレ』

 ◇◇◇

 

 とある飲食店。

 

「今日のライブ、お疲れ様!かんぱーい!」

 

 リサの声を受け、五つのグラスが上がる。

 かちん、と甲高い音が部屋いっぱいに広がっていく光景にリサはたまらず感動してしまった。

 

「皆、お疲れ様」

「お疲れ様です」

 

 現在"Roselia"はライブ打ち上げの最中である。

 

「お疲れ様でしたぁ!!」

「お疲れ様です………」

 

 つい数時間前まで彼女達はバンドの聖地とも称される武道館にいた。それも演者として。

 ライブのチケットは完売。抽選形式であったが倍率は高く、入手が困難とされる程の人気ぶりであった。

 だけど、ここまでの道のりは苦難の連続。

 高校で既に人気もあったRoselia。それでもプロとして活動していくと公表すると途端に世間から様々な意見が出たのだ。やっていける、応援する的な物が大半であったが、中には批判的な物も少なくはない。

 曰く、―――

 

 ―――ボーカルにメンバーが付いていけてない。

 ―――全て歌姫万歳バンド。

 

 "孤高の歌姫"友希那の圧倒的存在感。

 それがRoseliaの魅力であり、弱点でもあった。友希那が目立つと他の担当メンバーは逆にそんな彼女に相応しいレベルでないといけない。

 遥か上を行く友希那に追い付く。特に苦労を重ねたのがドラム担当のあこ。最年少ということもあり、経験が一番低いあこはRoseliaのドラマーとして認められるだけの努力をどれだけしたのか。

 そして、ライバルバンドの存在もまた自分達を奮闘させられた理由の一つとしてあるがそれはまた別の話。

 グラスを片手にリサはあこの元へ。

 

「あこ~、今日のドラム良かったよ!」

「本当ですか~?」

「えぇ。リサの言う通りね、あこ。特にソロが決まってたわ」

「友希那さぁ~ん!!ありがとうございます!!」

 

 この武道館ライブを通して、完全にあこは世間一般からRoseliaのドラマーとして認められていた。

 他にもリサに紗夜に燐子。全員がこうして今までの試練を力を合わせて乗り越えてきたのだ。ただ事では壊れない絆がRoseliaにはある。

 

「それですが、宇田川さん」

「はい?どうしました?」

「一曲目で早速もたつきましたね」

「ぐっ………ごめんなさい」

 

 容赦なく反省点を指摘してしまう紗夜とうち浸れるあこの光景に絆は本当にあるんだよね?とリサは思った。

 

「わ、私もあこちゃんのドラムは今日が一番しっくり来たと思うよ………」

「りんりん~!!」

「えっ、あこちゃん!?」

 

 燐子の胸元へ飛び付くあこ。

 デビュー当初はガヤガヤして嫌な雰囲気であったがこうして賑やかな打ち上げが出来ているので結果オーライ、全て良し。

 

「にしても遅いわね」

「えぇ、確かに。すぐに合流すると聞いていたのですが」

 

 友希那と紗夜がさりげに店の入り口を気にし始める。

 打ち上げに参加するのはこれで全員ではないのだ。予め遅れると連絡があったのでRoselia組は一足先に開始している。

 と、リサの視線はあこの表情へ。頬を少し赤らめ、視線を下にキョロキョロするその姿は完全に恋する乙女だ。

 

「あ~こ~?もしかして待ちきれない?」

「そそそそんなこと無いですよ!?」

「あこちゃん、それじゃあ説得力ないよ………?」

 

 自分がその立場だとそわそわしてしまう気持ちは分からないこともないとリサは同情するが、からかうとなると話は別だ。

 日頃のイチャイチャを見せつけられている鬱憤を晴らす時である。

 

 ―――その時、貸し切りの個室の扉が開く。

 

「お待たせだぜ!!」

 

 まず現れたのはアークラのボーカリスト。

 彼の背後には同じくアークラのギタリストとベーシストの姿があった。

 

「アークラも今日はお疲れ~」

 

 今日のライブの前座をしてくれたのは他でもない"アークラ"の皆であった。

 当日まで前座の詳細は不明とあったにも関わらず、アークラが登場すると会場は一気に熱狂の渦へと巻き込まれた、あの光景はもはや圧巻の一言に尽きる、とリサは後に語る。

 

 ―――アークラとRoselia。

 

 二つのバンドの関係は一言では語り尽くせないだろう。密接的に、そして運命的な関係で成り立っていると言っても過言ではない。

 

「あれ?」

 

 あこがアークラを一瞥して疑問を上げる。

 

「蒼真君は?」

「あぁ。蒼真なら用事がまだあって遅れてくるってよ」

「っ!?………がーん」

「よしよし………」

 

 燐子が落ち込むあこの背中を擦る。

 リサは知っていた。あこがアークラのドラム担当"山吹蒼真"に今日のライブでの頑張りぶりを誉めて貰おうとしていたことを。あわよくば、彼に甘えてしまおうと企んでいたことを。

 何故かって?答えは簡単。自分の好きな人には誉めてもらいたいものだからだ。あこと蒼真はそういう関係である。

 

「んじゃあ、もう一回乾杯行くよ!!」

 

 追加で来た三人も空いてる席に各々腰を下ろして、グラスを全員持つ。

 

 ―――蒼真抜きのライブ打ち上げが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 30分後。

 

「お待たせし―――」

 

 彼が来た。

 その瞬間に動く影が一つ。勿論、あこ。

 

「蒼真君っ!!」

「ぐはっ!?」

 

 扉を開けたと同時に蒼真を襲ったのは腹部への衝撃。どうにかそれを堪えると、突進してきたあこが両手を背中に回して抱きついていた。

 困り顔の蒼真。軽く周りに視線で助けを求めるが、前提として誰も顔をそちらへ向けてはいないという蒼真にとって最悪の状況であった。

 頼みの綱の燐子は藍斗と会話してる。専ら、ゲーム歓談に違いない。

 

「ど、どうした?あこ?」

「あこ、頑張ったよ」

「お前なぁ………もう二十歳すぎたろ」

 

 成人へとなったあこは飲酒もしている。今もあこの座るテーブルにはお酒らしきグラスが。

 因みにあこはお酒に強い体質だ。少なくともこのメンバーの中では一位、二位の程に酒への耐性がある。

 

「ソウ」

「姫ちゃん、どうにかしてくれへんかな?これ」

 

 腰にがっつり抱き付くあこ。

 蒼真は珍しく酔ってるのかと考えたが、あこの耳が赤く染まっていたのでわざと照れながらもやっていると分かった。

 姫ちゃん―――友希那はちらりとあこへ視線を向け、呆れたように首を横に振る。

 

「無理ね。大人しくされるがままになっておきなさい」

「………マジかぁ」

 

 十中八九、友希那があこの暴走を制止すると見越していた蒼真にとってこの彼女の発言は痛手であった。

 飲み会に遅れたとは言え、蒼真はライブを終えてからまだご飯を口にしていない。とても腹が減っていた。

 そこに旨そうな料理が。手に届く距離にあるのにあこがそれを止める。

 

「………ところで、準備は出来てるの?」

「………余計な時間喰ったけど何とか」

「そ。私達は何も出来ないから」

 

 友希那の内緒話に蒼真も合わせる。

 微かに聞こえる会話。中身が聞き取れないことにあこが反応して顔を上げる。

 

「蒼真君?友希那さん?」

「何でもないのよ、あこ。私、飲み物取ってくるわ」

 

 変に硬い友希那に蒼真の不安が増える。

 孤高の姫様でも、どうやら芝居は下手なようだ。

 流石に変に感じたのか、あこは首を少し傾けるが特にそれ以上の動きは見せない。

 

「あっ、忘れもんした」

「そんなこと言って。あこ、絶対に離れないよ」

「なら、あこも来るか?」

「え?」

 

 ここでようやく拘束が解けた。

 黙って抜けるわけには行かず、友希那は席を外しているので蒼真は真っ先に視界に入った誰かに声をかけることに。

 

「リサ、あこ借りるな」

「ん~?お好きにどうぞ~。あ、その前にちょっとだけ。あこ、こっちにおいで」

「なーに?」

 

 リサの元へ駆け寄ったあこ。

 あこの耳元にリサは口を近づけるとそっと呟く。

 

「………ガンバってね」

「うん?どうゆうこと?」

「後で分かるから、ほら!っと!」

 

 意図も分からず、悩むあこにリサは彼女の背中をバン!と力強く叩く。

 

「うわぁ!?」

「あこ、置いてくぞ」

「あっ、うん、分かった!!またね!!リサ姉!!」

「行ってらっしゃ~い」

 

 ―――この時、あこは気付いていない。

 

 蒼真、あこ以外の全員が二人の出ていく姿を各々違えど微笑ましく見ていたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 武道館。

 

「蒼真君?どうして此処に?忘れ物って?」

 

 誰もいない観客席。静寂が包むその空間にあこは居た。

 頭上の窓から月明かりが入る。儚く幻想的な景色にあこは謎の緊張感を感じる。

 階段上に設置された席。その間の通路を彼は黙々と降りていく。あこの質問に何も答えなかった。

 

「………ふぅ」

 

 やがて彼はゆっくりと中央へと向かう。

 あこの視線に目立って移るのはダイヤモンド型に設置されたステージ。

 このステージであこはつい数時間前までドラムを叩いていた。真っ暗闇に照らされた何千もの光。それらが視界いっぱいに広がる神秘の光景をあこは脳裏に浮かべていた。

 

「あっという間やったな」

「う、うん」

「あこはさ、これからどうしたい?」

「え?ど、どうって?あ、待って!」

 

 あこの返答も待たず、蒼真は数歩進む。

 

「アークラもRoseliaも昔以上に人気が出てきて、お互い忙しくやってしまったやろ」

「あっ………そっちの話………うん」

「来月から俺は全国ツアーで暫くあことは会えない日々が続く」

 

 それはあこにとって承知の情報であった。

 だからこそ、今日は存分に彼に甘えたいと気持ちが高まったのだ。

 

「これはまだ非公開やけど、それが終わると俺、海外にライブしに行くことになった。半年ぐらい」

「か、海外………?それって………これまでよりも蒼真君と会えないってこと………?」

「そうなるね」

「そんなの………ヤだよ」

 

 あこにその知らせは死活問題。

 愛しの彼が海を越えてしまう。自分も追いかけたいがRoseliaという居場所も掛け替えのない大切な場所だ。どちらかなんて選べない。

 あこは蒼真が大好き。たまに彼にお子様扱いされるのが癪だったけど、高校生で怒濤の成長期を迎えたあこは大人の色気を身に付けているので最近はなくなった。

 だが肝心の言動は昔と変わらず。彼にそれほど、大人の色気浴びせ効果がなかったのが少し不満ではあるけど。

 彼のドラムを叩くカッコいい姿が好き。なんだかんだ言って結局は優しくあこの頭を撫でてくれるのが好き。あこのややこしい中二病発言にも付き合ってるのが好き。

 

 ―――好きになった切っ掛けはもう覚えていない。

 

「イヤだよ!!………あこ、蒼真君にドラムを見てほしくて………一緒に居たくて………Roseliaの皆と頑張って来たのに………それなのに蒼真君は遠くに行っちゃうんだ………」

「あぁ」

 

 ―――隠していた気持ちが爆発。

 

 あこはじっと我慢していた。他の女性達と仕事を優先するとは言え関係を築いていく蒼真につい嫉妬してしまったり、折角の二人きりに蒼真が何も相手をしてくれないことに葛藤を覚えたり。

 最悪の果てには彼はあこを愛していない、なんて嘘な感情も心の中て芽生えたりした。

 それでもどうにか二人は協力しあって、話し合って、ぶつかりあって、それらを乗り越えて来て、やがてはラブラブなカップルと変わらない生活を続けていた。

 両者のファンからも祝福の声を数多く貰った時は感極まりない何かにあこがどっと心を打たれたこともあった。

 

「だからさ………少し早いけど」

 

 そして、彼は小さな箱を懐から取り出す。

 あこは見ただけでそれが何なのか分かってしまった。たまらず涙腺が緩み、口元を隠してしまう。

 そっと彼は箱を開けた。

 

 ―――指輪だった。

 

 片膝を着いた蒼真。

 武道館中央のダイヤモンドステージ。そのさらにど真ん中に二人はいる。

 あこは理解が追い付かない。ただ目に写るのは彼の覚悟を決めた瞳と純粋に輝く指輪だけ。

 

「どんなに離れていても俺はあこが大切で、あこを愛してるという事は変わらない。君を愛するこの気持ちに嘘偽りはない。もし、あこが良ければ、その証としてこれを受け取って欲しい」

 

 この時、あこは涙が止まらなかった。

 

「宇田川あこ。私、山吹蒼真と………」

 

 "嬉しい"。その一言すら辿々しい。

 

「―――結婚してください」

「………はいっ!!」

 

  ―――努力が実った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 大人あこ編-1-『努力のフィナーレ』 終

 

 

 




『5thlive行きたかった作者の補足シリーズ』
・アークラメンバー
→ベースとギターに至ってはそこにいるのに台詞はまだないという悲しい現実。ベースの名前だけは会話などで出てるのにギターの存在感は0。


・姫ちゃん
→蒼真は相変わらず友希那を名前で呼ばない。てか、まだ恐い。


・「あっという間やったな」
→蒼真:あことの恋人生活
 あこ:武道館ライブ

 途中であこが狼狽えたのはこれが原因。


・蒼真の告白。
→指輪の準備やその他の用意に時間を取られてしまったので遅れて到着。
 事前にあこ以外のメンバーには通達しており、会場も責任者に掛け合って許可を貰っている。


・後日談
→二人が飲み会に戻ると、ホールケーキが用意されていたらしい。お菓子大好き、リサの力作だ。
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