まさかの第二弾です。
今回はぴぽさんの小説のキャラをお借りしつつのオリジナルストーリーとなっております。ぴぽさんの方でも全く違うストーリーが投稿されてますのでぜひそちらもご覧ください。
コラボ、ありがとうございました!
コラボ相手:ぴぽさん
コラボ小説:『日常の中にチョコより甘い香りを』
https://syosetu.org/novel/172914/
*世界線は沙綾編。沙綾と蒼真が一歩進んだ関係になってから暫くしての時系列となってます。
―――では、どぞ!
◇◇◇
有咲家。蔵。
「何してんだよ………」
ポピパの恒例練習。
今日の練習は新曲の調整に大忙しの筈だと腹を括っていた有咲の目に映るのは楽器よりも別の方に興味が移るメンバー達。
香澄やたえならまだ許す。いや、本来許しては駄目だがこの二人に限っては諦めの境地に踏み行っている。
一方で、問題なのは―――りみだ。
真面目でおっとりした性格。
普段の練習もきちんとこなすが故に有咲も余計な負担はかからず、素直に信頼を置ける人物の一人。
そんな彼女もまた練習の開始時刻になってもソファから動こうとはしていなかった。
「りみりん!これは?」
「これは………潤君の寝顔かな?正直、どうして撮ったのか私もあまり覚えてないけど………」
「可愛い!!」
「確かに。可愛い。これだとオッちゃんと良い勝負になるかも」
「この油断しきった表情が良い………っ!!普段の潤君だと全然私に甘えてくれないから………」
「くぅ~!!りみりんだけズルい!!」
―――深く息を吐く。
そして、またこのパターンかと思った。
あの奥手そうに見えるりみに驚くことなかれ、恋の青春が訪れたのだ。話題の彼はポピパ全員と顔見知りでもある。
有咲の監視の目が届かなくなれば、香澄がぐいぐいと二人の関係につい問答無用にて問いただし、たえがその手助けに入る。
加えて、りみもりみで満更でもない笑みで答えてしまうものだから、第三者からはどうしようもない。
「あ!有咲~!」
まるで猫の如く。
ぴょこぴょこ動く香澄の猫耳が有咲の気配を即座にキャッチする。逃げ道を失い、渋々と有咲は近寄った。
テーブルに置かれた一つのスマホ。
女の子が持つ可愛らしいデコレーションがなされたスマホ画面には此処とはまた別の景色を写し出していた。
会話からも分かってはいたが、どうやらりみの
―――潤君。
りみの彼氏。
最近二人はそういう関係になった。知り合ってから数日もしない内に怒濤の勢いで惹かれ合った。
一目惚れ。そんな恋の入り口もまたある。
有咲にとって、恋とは無縁の存在。故にりみの感じた恋心を完全に理解出来るとは思っていない。
「それで?さっきから何見てるんだ?」
「潤君の写真集!!」
「香澄ちゃん!?そんな大声だと、恥ずかしいよぉ………」
「有咲も見る?」
有咲はおたえの手元をじっと見る。
ポピパ全員と彼だけで撮った集合写真。りみと彼を中心に笑顔が満ちている。
少し―――気恥ずかしくなった。
「て、てか!沙綾はどうした!?」
「さーや?」
「沙綾ちゃん?そう言えば、さっきから姿が見えないけど………」
「あっ、沙綾だったら」
「ん?」
おたえが階段を指差す。
視線を向ければ、絶妙のタイミングで階段を下る沙綾の姿がそこにあった。
「え?何々?私の噂でもしてたの?」
面白いネタを見つけたかのような沙綾。
私も会話に入らせろと、ソファに接近。おたえの横に腰を下ろす。
「りみの惚れ惚れする話を聞いてた」
「へぇ~。最近のりみ、ずっと彼氏さんに夢中だもんね」
「そ、そうかな………?」
「うん。端から見ても気になるぐらいには」
迷いなく断言する沙綾。
やはり女子となると恋ばなは興味津々な事例らしい。
「正直………羨ましいかな」
ぼそっと漏れた沙綾の本音。
自然とそれは有咲の耳にも届いた。だからこそ、一つの疑問が有咲の胸の中で生まれる。
「そういう沙綾はどうなんだ?」
「へ?私?」
「有咲の言う通りだよ。さーやもソウとは最近、どうなの?」
案外、恋沙汰が多いポピパ。
羨ましそうにりみの惚れ話を見守る沙綾もどちらかと言えば有咲の知らない世界へ踏みいっている。
「聞いちゃう………?」
「おー?さーや、ソウ君と何かあったの?」
「うん。聞いてくれる………?」
不安そうに揺れる沙綾の瞳。
有咲は即座に理解する。これは重要案件だ。下手をすれば、今後ポピパの存続に直結する程には。
有咲はゆっくりと瞼を閉じる。
ここは―――私の出番だ。
「香澄」
「ありしゃ?」
「おたえ」
「有咲?」
「ちょっとそこ、どいてくれ」
有咲が堂々とソファの前に。
「りみと沙綾。そこに座りなさい」
◇◇◇
蔵の地下。
「では!!第………何回?何回でもいいや!ポピパ女子会パーティーを始めたいと思いまーす!!」
パチパチパチパチ。
「今回のテーマはなんと"彼氏と上手くいく付き合い方"。そこの所、香澄はどう思う?」
「う~ん、仲良く一緒に歌うとか?」
「私はウサギを一緒に飼えば良いと思うんだ」
「え~!」
勝手に盛り上がる二人。
対して、一方的に取り残された三人はどんな様子かというと―――
「有咲が仕切るなんて………珍しいね」
「うん。でも、私としてはちょっと嬉しいかも」
「どうして?」
「有咲ちゃんは私と沙綾ちゃんを指名したでしょ。私と沙綾ちゃんに共通する事って言えば………」
「えっ?あっ………彼氏がいる、かな」
「確証はないけど、多分そうだと思う。有咲ちゃん、そういうのは苦手というか嫌ってるイメージがあったから………」
「りみりん」
「な、何?」
「聞こえちゃったみたいだよ」
「え?」
ちらりと有咲を見る。
顔を真っ赤に染め上げ、視線が迷いに迷うという乙女な反応を有咲は見せてくれた。
「そ、そんな訳ねぇし………ただ気になった―――」
「有咲も好きな人出来たの?」
「ななな!!なんでそうなるんだよ!!」
「だってね~?りみりん」
「うん。有咲ちゃん、こういうのには全然興味を示してくれないから」
沙綾やりみと違って。
有咲に異性との付き合いは皆無に近い。過去においても、クラスメイトですら話す機会は全くないまま過ごしてきた。
だがしかし。
有咲も今では思春期真っ盛り、花の女子高生。恋に興味がないと言えば、嘘となってしまう多感な時期なのだ。
「興味がない訳じゃないし………むしろ、あるって言うか、ないって言うか………沙綾が悩んでるそうだったから友達として相談に乗りたかったっていうか………」
「今の有咲、とっても可愛い」
「ふふ、可愛いね」
「うるさい!!」
照れ隠しに叫ぶ有咲。
沙綾とりみの二人もまた有咲の好意には素直に甘える事にした。滅多にない恋人について語る機会でもあるが、シンプルに有咲の気遣いが嬉しかったのもある。
わざとらしい咳でどうにか場を戻す有咲の姿につい微笑ましくなる二人であった。
「あぁもう!話を戻す!二人とも、最近の調子はどうなんだ?」
「あれ?何の調子の事かな?」
「そ、それはだな………かかか彼氏っ………!!」
一つのワードにフレーズした有咲。
「沙綾ちゃん、あんまり有咲ちゃんを弄っちゃうと………流石に」
「そうだね。ごめんね、有咲」
「う、うん」
りみの仲介に沙綾は大人しく従う。
顔を真っ赤にした有咲もまた素直に沙綾の謝罪を受け入れていた。
「私と潤君はいつも通りだよ。帰りにチョココロネも沢山買ってきてくれるし」
「あぁ………確かに。潤君、店に来ると必ずって言って良いほど買っていってくれるから」
そっと視線を逸らす沙綾。
言えない。自分がりみの彼氏をチョココロネを餌にからかって楽しんでいるだなんて。
「沙綾ちゃんは?」
「私とソウ君もいつも通りだと思うよ」
「なら、さっきのあれは何なんだ?ソウさんとも順調なら、特に」
有咲はそう告げる。
喧嘩とかそういう類いの悩みなのかと有咲はてっきり思っていたが沙綾の反応をみるなり、完全な的外れらしい。
「ううん、有咲。私が言いたいのはそうじゃない」
沙綾は首を横に振る。
「―――いつも通り
「は?」
沙綾は重い口を開く。
根本的な要因は二人の付き合いの長さであった。
りみと潤は知り合ってまだ浅い。互いの接する関係がくっきり定着しないままの付き合いが続いたことで、両者共に新鮮な気持ちで恋愛に挑めた。
ただし、沙綾の場合だと事情が異なる。
沙綾の彼氏、蒼真と沙綾は幼い頃から知り合った仲。これまで一緒に過ごした時間は膨大で、長年培った絆はそう簡単には壊れない。
だが、その代償として現れたのは互いの関係性の固定化。沙綾が蒼真に対する接し方は頼りがいのある兄、蒼真が沙綾に対する接し方は無駄に頑固な妹というイメージが浸透してしまっている。
今更、恋人になったから接し方も変える、なんて展開はもっての他。結局は普段と同じ日常に戻ってしまうのがオチ。
本当にそれで良いのだろうか。
彼とは更にもう一歩進んだ関係を望む沙綾にとって、これは尚更無視出来ない死活問題であった。
「私と潤君は友達という期間が殆どないまま恋人になっちゃったけど、沙綾君とソウさんは小さい頃からの幼馴染みだもんね………」
「うん。私の性格のせいかもしれないけど、やっぱりソウ君と一緒に居ても付き合う前と同じ感じになっちゃう」
「関係を変えるのは難しいもんね………特に好きな人なら尚更………」
「分かるの?りみりん」
「うん。何となくだけど………」
そっとりみは己の手を握る。
胸の中にあるモヤモヤとした不透明な気持ち。理由は違えど、経験のあるりみだからこそ汲み取れる思いもまたある。
そんな中―――
「別にどっちでも良いだろ。今のままでも」
有咲ははっきりと口にした。
「有咲………ちゃん?どうしてそんなこと………」
りみが驚きの表情で見つめる。
沙綾もまた口には出さないものの、驚きで動きが固まってしまっていた。
「いや、悪い意味で言ったんじゃない。人間ってのはそう易々と境界線を跨げる程、度胸が据わってる訳がないってだけ。沙綾だってソウさんともっと知りたいと思う反面、現状で満足してしまってる部分もあるだろ?」
「う、うん………言われてみれば」
「そういうもんなんだよ、恋愛なんて。変わろうと思えば思うほど、変われなくて………自分が不本意だと思う場面で肝心のその瞬間が訪れたりする」
有咲の語りは止まらない。
「なら、私はどうすれば良いの?」
「それは………私には分からない。沙綾とソウさんだけにしか分からない。でも、沙綾が一歩進みたいって思うのならきっといつかその瞬間は訪れる筈」
「そ、そうなんだ」
普段の有咲からは想像がつかない。
あのツンデレで他人に対してアドバイスするだけでも己で苦戦苦闘するあの有咲がするすらと口にしたのだ。
沙綾だけでなく、隣に座るりみも困惑ぎみになってしまった。
「やっぱり恥ずかしいな………慣れない事をするのは………」
「ねぇねぇ有咲?」
「ん?おたえ?どうした?」
有咲の肩をつついたおたえが一冊の小説を取り出す。
「今の台詞ってさ、この付箋が付いてある所に書いてあっ―――」
「ちょっ!?おまっ!?それだけは!!返せっ!!」
「えっ、やだ」
有咲が本を取り返そうと必死な形相に。
だが、おたえは有咲の猛攻撃をひらりと避けてから追いかけてきたから逃げる精神で逃走を開始。
一気に部屋が騒がしくなる。
「あはははは!!」
「沙綾ちゃん!?」
「だ、ダメだ………っ!!笑っちゃう………!!」
そして、いきなり笑う沙綾。
香澄も置いてけぼりは寂しいのか有咲の後を追い掛ける始末だし、なんだか悩んでた自分が馬鹿らしく思えてきた。
笑いすぎて零れた涙を拭きつつ、沙綾は秘めた思いを言葉にする。
「私、決めたよ」
「うん」
「今を全力で楽しむ。ポピパと過ごす時間、ソウ君と過ごす時間。どれも私にとってはかけがえのない時間だから」
「私も沙綾ちゃんと同じ。この空間がいつまでも続くとは限らないから」
「りみりん。今の私達ってさ、あれだよね」
「あれ?………あっ、うん!」
二人はせーの、と息を合わせ―――
「「幸せ………!!」」
-2-『有咲の受難』-完-
*全く関係ないですが、前イベのつぐみをゲッチュしました。あざす。
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