書き散らす、短編集?   作:B-in

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ドラえもん?

月が天上に上り。星が輝く夜。

 

その光は雲に隠され辺りは暗かった。生茂る草木に囲まれた公園にある街灯がチカチカと明滅する音が時折響く。

 

小さい雨音と合わさり、それは子供の奏でる拙い音楽のようにも聞こえた。

 

―――ねぇ、ドラえもん

 

顔に痣をこさえて、膝を擦り剥いて、だけど誇らしげに、でも弱弱しく笑う少年が言う。

 

―――僕、勝ったよ? 一人で勝ったんだ。

 

 

 

少年の勝利にではなく、その心意気に、その姿に、自分の為に行動してくれた親友に涙を流しながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある種の異次元空間にドラえもんはいた。

タイムマシンを使い未来に帰るのだろうと、その姿を良く知るモノ達は思うだろう。だが、その未来こそまやかしなのだった。

 

一人の男がドラえもんと似たようなタイムマシンに乗り現れる。壮年の男性だ。

 

「終わったんだね。」

 

「うん。のび太君は立派に成ったよ…本当に立派に…」

 

滂沱と例えられる程の涙があふれ出す。

 

「ロボットに癖に涙もろいなぁ、君は」

 

「うぅ、だって…だって…」

 

そこから続く言葉を男は予想していた

 

「僕達はのび太君に…彼一人に全てを任せてしまうんだよ!! 僕達は何もできない。何も!!」

 

「そうだ。私たち人類はただ一人の少年の人生を狂わせる事でしか存続できない。」

 

男は眼を閉じ、自分達人類の非力差に歯を食いしばった。

 

「彼だけが繋げる絆があった。」

 

蘇らせた恐竜を護る為に密漁者と戦った。

 

「彼だけがその心の強さを保てた。」

 

ただ一人雪山に残されても、仲間を信じ戦い抜いた少年が居た。

 

「彼のその才能が必要だった」

 

その義憤は何処までも優しく、常に誰かの為にその引き金を引き絞った。

 

「彼は諦めると言う事を深く知っている」

 

知っているからこそ諦めなかった。だからこそ、危機に置いて発想の良さ、応用の使い方が巧かった。

 

「彼は信じる事止めなかった」

 

だからこそ前を向き進んで行った。

 

「彼は誰かの為に泣く事の出来る人間だった」

 

例えいじめっ子でも、その人が理不尽な目に会えば励ます事の出来る人間だった。

 

「ドラえもん。25年間の繰り返しご苦労だった。」

 

「出来杉指令…僕は自分を許せない。だって僕はのび太君の親友だ、僕は彼の相棒だなのに何もできないなんてあんまりだ」

 

「既にタイムループ衛星は消滅させた、認識阻害も出来ない。何よりも既に歴史は変わった、分るだろう。少しずつ自分が消えて行くのを。」

 

未来は確実に変わったのだ。

 

「はい。でも、これだけは言っておかなきゃ」

 

ドラえもん男に背を向けて頭を下げた。

 

その先に続く時代には一人の少年がいる。その彼に頭を下げるのだ。

 

 

 

ごめんね、のび太君。僕は君に、君達に沢山の嘘を吐いてきた。

 

僕は本当は22世紀に生まれたんじゃないんだ。僕が生まれたのは30世紀なんだ。

 

今の君には分らないかもしれない。確実な変化が起こるのは2175年なんだ。でもその変化を変える為には今の君が大人に成る頃から変えなきゃならなかったんだ。

 

ごめんね、のび太君。

 

怖い思いを一杯させちゃったよね? 沢山泣かしてしまったよね? 

 

でもね、君が宇宙で、現代で結んだ絆は全部本当のものだ。それが、これからの君を支えてくれる。

助けに成ってくれる。

 

君にはこれから沢山の辛い事が待っている。同時に幸せも待っているんだ。

 

だから、もう駄目だと思ったらいつでも諦めてくて良い。だから…僕の残した物をどうか呼んで欲しい。君なら分ると思うから。分ってしまうと思うから。

 

もし、分らなかったら、気づかなかったら、道具を使って欲しい。僕的には使って欲しいんだけどね。

 

最後まで君と一緒に居られないダメな親友だけど。君の未来に幸多からん事祈ってるよ。

 

ありがとう。のび太君。

 

 

 

 

 

 

 

一人と一体はそのまま溶ける様に消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のび太狭く感じる部屋で涙を流しながらどら焼きを頬張っていた。

 

ジャイアンとスネ夫に騙されたのだ。ドラえもんが帰って来たと、なけなしの貯金を叩いて勝ったどら焼きを無駄だったなと笑われたのだ。

 

怒りだ、頭の中が沸騰し心がぐちゃぐちゃになる。

 

ふと、ドラえもんの残して行った道具を使おうと思った

 

「うそ800?」

 

説明文を読めば嘘が真となる薬と言う内容だった。

 

「コレが有れば!!」

 

仕返しの方法が思いついた。それと同時にこれを使えばドラえもんが戻ってくるかもしれないと言う希望も見えた。

 

「…ドラえもん」

 

その言葉を吐いた瞬間

 

―――これで、安心して未来に帰れるね。

 

―――うん

 

夜の会話が思い出された。

 

「ドラえもんっ…」

 

会いたい

 

親友に会いたい

 

何度も大冒険をした。何回も喧嘩した。何度も笑った。何度も励ましてもらった。何度も怒られた。

 

最高の親友に会いたい

 

「会いたい…ドラえもんっ会いたいよ。」

 

知らずに涙が流れた。

 

それがとても情けなかった。

 

送り出した癖に、もう会いたいと泣く自分が情けなかった。

 

大丈夫と言った癖に、もう頼ろうとしている自分が情けなかった。

 

だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドラえもん。僕はもう一人で大丈夫だよ」

 

のび太はうそ800をトイレに流し捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この瞬間、あの時空の中でドラえもんは完全に消滅したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続かない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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