ソレは冒険者と呼ばれる者達が入る迷宮
冒険者
ソレは神の恩寵を授かりし人類
彼等は栄誉、名誉、財宝を求めて迷宮へ挑む。
神々はその心の底で英雄の誕生を望む。
神々と冒険者
その二つが集う場所のはオラリオ。迷宮都市、ダンジョンの蓋。
そして、そんな町の色の集う場所で生まれた彼の名は・・・
そんな訳で息抜き転生モノ、はっじまるよ~
ダンまち 転生もの 名前はまだない
死して屍拾うモノ無し。
冒険者にはとっておきの言葉だと僕は思う。
こんにちは、初めまして。僕です。
名前はまだない。だって生まれたばかりですから。
視界はぼやけているし、寒いしで状況把握出来る状態じゃねぇ。
唯一分るのは僕は今泣いて居て、その前に僕自身は死んだ筈だと言う事だ。
聞こえにくい耳に、ぼやける視界に黒髪の人が見える。その人は恐らく僕の母となる人なのだろう。だが、少し待って欲しい。
すんごい眠いので落ちます。
揺蕩う様に夢を見ている。覚醒と睡眠を繰り返す。見るのは夢現の様な世界の流れだ。車が走っていると思えば馬車が走っていた。
そんな事はざらにある。その都度に分らなくなる。夢なのか、現実なのか?本当に僕は死んでしまったのか?
実は意識不明で入院して居て、古蝶の夢を見ているのではないか?
眼はしっかりと見えるようになっている。耳も聞こえるが、言葉は分らない。分る情報は此処が異世界だと言う事だ。
僕の知る世界、ケモ耳でバカでかい剣を持って歩いている男とか居ないもん。
「ふふ、坊はほんに大人しいなぁ。ウチの子とは思えんわぁ」
ころころと笑いながら微笑む母は美人だ。黒髪黒目で少し白い肌。化粧のノリも良いのだろう。美人だ。ついでに若い。若い。
食事は役得と罪悪感とで最高に微妙な気分にさせてくれる。
序に伝えておこう。僕にはまだ名前が無い。序に父親の顔も見た事も無い。
「だぁ」
「ん?よしよし、もうちょっとで着くから、静かにしときぃなぁ」
だが、母は居る。う~む・・・この世界がどう言った物かは良く分らないし、母が何を言っているのかも分らんが、なんとなくだが母子家庭とは結構きついのではないだろうか?
そう思うと、強烈な眠気が襲ってきた。うん、寝よう。難しい事は後で考えるさ。
SIDE OUT
腕の中でスヤスヤと眠り始めた我が子を見ると、あの人の寝顔にそっくりだと思ってしまう。あの人は私が身籠った事を知りはしないだろう。冒険者にコブは要らない。居ない方が良い。私の様な娼婦との子ならばなおさらだ。
ソレに、打ち明けようにもそんな暇は無いだろう。娼婦とその客。今や三大クエストに挑戦しその内の一つを成し遂げたゼウス・ファミリアの一員の一級冒険者様に軽々しく会えるとは思えない。
この道を選んだのは私自身。今日は義理を通しに来ただけだが、この昼は閑散としている町並みを見ると懐かしいと思ってしまうのは、此処で育ったのが長かっただからだろう。
イシュタル様は許してくれるだろうか? もしかしたら私は殺されてしまうかもしれない。坊を連れて来たのは他でもない。イシュタル様は坊を絶対に殺さないと言う確信が在るからだ。
美の女神の一柱。このオラリオにはもう一柱とてつもない美の女神が居るが故に比較される事も在り、荒れてしまわれる事もあるが・・・私はイシュタル様の方が好きだ。
あの方の愛情は少し分りにくいが、とても優しいのだ。神々の故の価値観の為、此方との差異は仕方がない。
それでも、もう一柱の方の美の女神よりは分り易く親しみやすい。箱入りの子たちには分りにくいだろう。恵まれた場所に生まれた人々には理解しにくいだろう。酷いと言われる事も在るだろう。
だが、底辺に居た事の有るモノ。底辺に落ちてしまった者達ならば分るだろう。
仕事が在り、金銭も支払われ、巧くすれば、綺麗な服を着て、美味しい物も食べられる。人らしい生活が送れるのだ。
女ならば、自身の性別が故の商売故にそうなり易い。男でも、しっかりと働けば店を構える事も出来る。
故に、私は自分の命を対価に坊の生活を保障して貰うつもりでいる。つもりで居た。
「そうかい。まぁ、お前は売れっ子だったし、稼ぎもかなり良かった。が、お前以上も同レベルまだまだ居る。そして、今日は義理を果たしにおめおめと私の前まで来た。」
「・・・・・・・・・」
膝を付き、頭を下げる私にそう言葉を投げかける。
「だが、足りないねぇ。半年以上も客を取らず遠くに引き籠もってた分は此処で働きな。働き次第ではもっと良い仕事につけてやるよ。」
「イシュタル様?」
「産むのは女の喜びさ。性愛も出産も私の好ましいものさ。元気な子を産んだ褒美だよ」
「ありがとうございます」
「令は良いから、行った行った。私はこれから寝るんだよ」
その次の日から、私は給士として仕事を始めた。2か月程すると此方に来る前に仕込まれた礼節や舞の講師としての仕事が主に成った。イシュタル・ファミリア主催で行われる宴で舞ったのは良い思い出だ。イシュタル様も喜んで下さっていた。
そんな忙しい日々を坊と過ごしている内に、坊の事を可愛がってくれている
「そいえば、坊の名前は?」
「・・・あ」
「え?」
どうしよう。決めてなかったよぅ