アキブレに山田先生が出たので、始めました。なんか山田先生だけ素のスペックが高いような気がしますね。ちょっと嬉しいです
栗色の髪を持ち、美しい翠色の瞳を持つ少年——国北翠——は一週間待った。というのも、少年の父が旧友に連絡してからやれることがほとんどなく、精々今開示されているISの情報をニュースや、新聞などで得ることしかやれることがなかったのである。学校に行っても、心ここにあらず、といった様子だったようで、友人から心配されるほどであった。翠は約束の日であるため、朝からソワソワしており、家の中をグルグルと回ったり、ずっとブツブツと何かを呟いていたようだった。翠本人は無意識だったため、父親にその姿を指摘され、大笑いされていた。そんなような親子のやり取りが昼食まで続いた。そして、翠が使い終わった食器を洗い終えたころ、チャイムの音がなる。翠はすぐに応答しようとしたが、父が先に出ていった。そして、1分も経たない内に父はある男を連れてきた。男は、身長は170にも満たないくらいの痩せ型で、頬がこけている。夏だというのに、長袖シャツに手を通し、ズボンは半ズボン。髪は丸坊主に剃っていた。更にその手には、丈夫そうなスーツケースを持っていた。すべてがバラバラ、あべこべで似合っていない、変な人、それが翠の最初の感想だった。
「わざわざすまないね、技世」
「なーに、気にすることはないよ、シュウ。弱い僕らの立場をひっくり返してくれるっていう話だしー? それで彼かーい?」
倉持技世、彼の話は父から聞いていた。飄々としている、というよりは軽薄な男である、それが父の言っていた技世の評価である。なんでも相当なプレイボーイだったようで、父とつるんでいた時は、髪を銀髪に染め、ポニーテールにしていたようであるが、今そのような面影はまったくない。ただ、軽薄な印象だけが残っているだけである。
翠は、そんな人物にジッと見られて固まっていた。技世の方も何を喋るでもなく、ただ見つめているだけである。そんな状況に困った翠が遂に、口を開く。
「初めまして、国北
「お、なんだよー。挨拶できるじゃーん? てっきり今はやりのコミュ障くんかと思っちゃったよねー」
「技世、君が見つめているからだ。昔も言っただろう? 人は見られていると緊張してしまうと」
「シュウの息子だし、大丈夫でしょー?」
「翠は私よりも妻の側面を強く受け継いでいるのだがね」
「そうなん? んじゃま、俺の方も自己紹介っと」
技世は先ほどまでの態度から一変して真面目そうな顔つきと雰囲気を醸し出し、空間を包む。スイッチを入れる、とはこのようなことを表すのだと自然に翠は思う。そして、技世は、その雰囲気のまま自己紹介を始める。
「倉持技世です。倉持技研のトップをやっています。今は男に風当たりの強い時期だけど、自衛官たちの男が多かったために、まだ首を挿げ替えられていません。でも、ISの技術を研究、開発をするにあたり女性を多く受け入れることになりました。恐らくこのままでは僕は失脚すると思います。それで、君に僕の望みを託したく、ここに来ました。僕は僕の知るISのことを君に提供する。そして、君はこの世界をひっくり返し……いや、押し上げてください」
ペコリ、と翠に頭を下げる技世。翠はいきなり態度の変わった技世に戸惑うも、元々彼の言うことは決まっている。
「はい! 俺に任せてください!」
その力強い言葉を聞いて、技世は先ほどの雰囲気を霧散させ、腕をダラリと下げる。
「うーん、やっぱシュウの息子じゃーん? やるって決めてたら物怖じしないとことかさー。いいねー、可愛げのある息子でー。俺も息子がいて、翠くんと同い年で男なんだけどー、全く俺のことを心配もしないのよねー。あー、お父さん悲しいわー。まあそれは良いとして、本題ねー」
技世は、頑丈なスーツケースから色々と資料を取り出した。その中にはISを動かす教本、ISの整備のための教本などISに関する本が大量に入っていた。更にその一冊一冊が分厚い。
「一応今はこれ結構情報レベル高いのよー? 俺だから一週間だったけどねー」
「本当に感謝しています。倉持さん」
「技世でいいよー? 名前の方が好きなのよねー。とりあえず今のISは篠ノ之束がコアを作っている限り、日本の軍事力。そして、この本はめちゃめちゃなことを言う篠ノ之束の言うことをめちゃめちゃいっぱい書いたやつ。天災様の言うことはわからんくてねー、とりあえず色々書いてみたってわけよー」
「じゃあ技世さん。つまり、色々書いてありすぎて、天災の教本だから、まとめられていないせいで、分厚すぎるわけですね」
「そういうことよー、ほんでね、これを渡してもいいんだけどー。ちょいと困るわけね? さすがの俺でも情報漏洩しちゃったら俺の首が飛ぶからねー」
「じゃあどうしてこれを?」
「まあ、今は俺達のようなISの専門にされた技術者でも全く情報が受けられていないってわけよー。それを伝えるのとー、
技世はまたスーツケースから一枚の資料を取り出す。今度は教本ではなく、ただのチラシであった。
「それは……?」
「これはねー、倉持技研付属高校ってのを政府が作るらしいのよー。名前は私立くんだけど国立くんの学校ねー。そんでー、そこでは男女問わずにISの勉強ができるって謳ってる。まあ簡単に言えば、IS学園が女子限定の学校だから一応の措置として男も学べるよ!ってだけの学校」
「ということは俺もそこに入学すれば、ISの勉強をすることができるんですね!」
「そういうことー、ただ少し問題があるのよー。あと半年くらいで開校するんだけどー、教本が良くない。このままじゃ学ぶ人の全てが無駄になるばかりさ。更に一緒の年にIS学園も開校するわけねー。もっと言えば倉持技研付属高校はIS学園の受け皿、もしくは戦闘技術を学びたい人たちではなく、技術職を熱望する人たちの場所になるだろうね。多分男連中でISの技術職に就きたい人はそうそういないからー、ハーレムあるよ、羨ましいねー! 憎いねー!」
「いや、女性だらけって辛いですよ。今は」
「いやーでも、ほとんど女子高になるんだよ? だって今の申し込みも女子ばっかー。あぁ、俺が若かったらなー」
「技世、その辺にしておきなさい。翠が困っているじゃないか。まあ話をまとめよう。翠はこの半年間、倉持技研付属高校に行くために、勉強をする。そして、受かってから本番の勉強が始まる、そういうことでいいんだね? 技世」
「んまー、大体そんな感じよ。でも、シュウ。俺が翠くんに渡すのは、そうじゃない。いらない勉強は必要ない」
「ほう? というと?」
「どういうことですか?」
「実を言うと、俺は特別推薦の権利を持っている。俺の持つ特別推薦枠が二つあってね、それを君と息子に使うつもりさ。だから試験はパス、なしでいい。意味のない勉強する必要はないってねー。ただこれからの放課後と予定が合えば土日も
その時にこれだから男は、ってバカにされたけどねー、と技世は付け足し、カラカラと笑う。
「俺がそんな風にバカにされないような世界に戻してみせますから。待っててください」
「うん、もう聞いた答えだけど、敢えて言うねー。翠くん、その言葉が聞きたかった! シュウだけじゃない、俺の想いも君の力に変えていってくれ! そして、恋をしてくるんだ! 恋はいいよー? ワンナイトラブでもなんでも、女性と対等に色々してきなさい!」
「はい……? と、とりあえず今は色恋沙汰は考えられないですけど、そういう一夜限りとかはちょっと……」
「あっはははは! そんなとこまで、シュウそっくりじゃないか! シュウもねー」
と言いかけたところで、技世の頭に拳骨が落とされる。技世が痛みに悶え、頭を抑え、拳骨が飛んできた方向を見ると、笑顔など浮かべずただ怒りの表情を持った驟雨が立っていた。
「さて、技世。電話で息子のことを任せるとは言ったが、そういったことまで任せるとは言った覚えはないぞ? いいかね? そもそも君は昔からそうだった。私たちが真剣にお付き合いをしていたのに、茶化し続けてくれたね? 私も年だからね、ちょっと最近怒りっぽくなってしまってね。今日は君を殺すことを踏み止まれるか怪しくなってきたぞ」
「ジョーダン! ジョーダンよー、シュウごめんって! あっ、痛い! 髪が無い分今までより痛い! ちょま、本気じゃーん? ちょーっとシャレにならないからっ! 無理無理、今日は退散! 翠くーん、じゃー来週の土曜ね! ちゃんとウチ来てよー!」
技世は驟雨の殴打の雨を器用に躱しながら、広げた荷物をまとめてサッサと出て行ってしまった。
「ふむ、逃げられたか。まあ技世が変わってなくて安心したよ」
驟雨は満足そうに顎に手を当てると笑みを浮かべる。翠は今までに見たことのない父の姿に唖然と立ち尽くしているだけであった。翠が発した言葉は、技世の言葉に対しての返答。ちゃんと行きますという一言だけであった。
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