あれから鬼太郎は爆発事故から助けた少女『ヒトミ』の事が気になっている様で退院する様子を見に行っているらしい。
干されたベットシーツが風にたなびく病院の屋上から鬼太郎は入り口から出て行く彼女の後ろ姿を見つめていた。
「アイツの事が好きにでもなったのか?」
「いや…そういう訳じゃ。ただ、ひとみさんが心配なだけさ」
「か〜。名前まで」
「ふん!」
天狐の質問に鬼太郎は特別な感情がないのか普通に答える。一方で、横にいる猫娘は嫉妬しているのか、素っ気ない態度をとっていた。
そんな時だった。
「…おい。何か絡まれてるぞ?」
「え!?」
天狐の声に鬼太郎は咄嗟に気を持ち直すとその場から屋上の柵に手をかける。見れば道路の前に立っていた彼女がねずみ男によって車に乗せられていた。
そして、ひとみを乗せた車はそのまま走り出していった。
「どうする?追うか?」
「勿論!」
一瞬の迷いが生じることなく鬼太郎はすぐさまその場から飛び降りていった。
「ちょっと鬼太郎!!…あれ!?」
猫娘も後を追おうとするが、見れば天狐はあくびをし、追いかける素振りさえも見せなかった。
「あんたは行かないの!?」
「別に。俺が頼まれたのは妖怪との戦い。人間の保護なんざ範囲外だ」
「そんな!鬼太郎が困ってるってのに…」
「知るか。ほら、追いかけなくていいのか?」
「あ〜!!!もう覚えてなさいよ!!」
猫娘はすぐさま飛び降りると、四つん這いで追いかけていったのであった。
「行っちまったか〜。やれやれ」
それを見送った天狐はもう用はないのか、その場を後にして妖怪横丁へと戻ったのであった。
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それから、数時間が経過した時であった。
「天狐!天狐や!大変じゃ!!」
「んあ?」
借りていた長屋の一室で休んでいると、慌ただしい音と共に家主である砂かけ婆や呼ぶ子達が部屋を開けた。
「何かあったのか?」
「鬼太郎が…コンクリートに!!!」
「はぁ!?」
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その後、天狐は案内されると共に現場へと向かうと、そこにはプリンのような円柱型に形どられたコンクリートの塊があり、その上で目玉親父が涙を流していた。
「くぅ…鬼太郎…!!」
「目玉!何があった!?」
「天狐!皆!実はな…」
天狐達が到着すると目玉親父は事情を話した。彼によると、ひとみという少女は『妖怪』であり、なおかつ鬼太郎と因縁深いぬらりひょん の部下であったのだ。ぬらりひょんの介入により大ダメージを受けたところを霊毛ちゃんちゃんこを奪われる形で裏切られ、そのままコンクリートに落とされてこのようになってしまったらしい。
「なるほど。ひとみってやつが妖怪か。微かに手から妖気が感じられてたから、まさかとは思ってたけどな」
「ち…ちょっとアンタ!知ってたの!?」
「いや、確信はしてなかった。それに口出ししてもアイツの事ならどのみち助けてただろ」
「そ…それは…」
天狐の言葉に猫娘は返す言葉がないのか、頷く。
そんな中であった。天狐は何かを感じ取ると、笑みを浮かべた。
「まぁ、その女をどうこうしようと興味はねぇが、ぬらりひょん って奴を消すなら範囲内だな」
「えぇ!?何する気なの!?」
天狐の不気味な雰囲気に呼子が驚くと、天狐は答えた。
「奴らの居場所なら大体割れた。ここからは狐としての真骨頂だ。奴らに大恥欠かしてやろうじゃねぇか!」
「「「「え!?」」」」
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都会の中に聳える高層マンションの一室。最上階に位置する部屋にて。
「いやいやいや〜!愉快愉快!!追い詰められた上に裏切られて殺されたとはな!正に儂が描いていたシナリオその通りよ!!」
大量の料理が並べられたテーブルに座りながら、酒を手に高らかに笑うぬらりひょん と仲間の姿があった。
その傍には鬼太郎のちゃんちゃんこが保管された巨大な金庫もおかれていた。
「憎き鬼太郎との戦いももはやこれまで。今日は祝杯だぁ!!」
すると
「ぬらりひょん様〜お土産がありますよ〜!」
扉が開き、巨大な頭を持った鬼の顔をもつ妖怪『朱の盆』が入ってくると、懐を漁り始めた。朱の盆が懐を漁るも、何もないのか、所々を探し始める。
「あれ?」
「フハハ!くだらん事は良い!」
そう言いぬらりひょんは豪快に笑うと朱の盆に盃を渡し酒を注いだ。
「お前も飲め飲め!今日は無礼講だぁ!」
「よっしゃあ!!!ほんじゃ日頃の恨みとして…オラァ!!くたばれクソジジイ!」
ガシャァァァン
「がはぁ!?」
すると、ぬらりひょんの頭へとボトル瓶が叩きつけられた。
「おぃ!!幾ら何でもハメを外しすぎているぞ!?それにクソジジイとはどういう事だ!?」
「えぇ!?」
上機嫌であったが、酒瓶を叩きつけられたぬらりひょんは流石にその勢いに頭に来たのか立ち上がり朱の盆へと声を上げる。
だが、
「私何もやってませんよ!?酒瓶なんて持ってませんし!」
「なに!?」
朱の盆は首を横に振り否定した。それを聞いたぬらりひょんはようやく気づいたのだ。
_______この場にもう一体、別の者がいることを。
「気をつけろ…!!何かいるぞ…!!!」
「「「「!!!」」」」
その言葉に朱の盆達の4名が辺りを警戒する。
「ぬらひょん!まさか…鬼太郎が!?」
「そんな筈はない…!奴はコンクリートの中だ_____へ?」
再び聞こえてきたその声にようやくぬらりひょん は“もう1人”の存在に気づき、ゆっくりと振り向いた。
そこには他の者達と同じく周囲を警戒している小柄な少年の姿があった。
「………貴様ァァァァ!!!!」
「え?」
その少年の姿を見たぬらりひょんは額から冷や汗を流し始める。
「知っているぞお前!!」
「えぇ!?誰かいるのぉ…!?」
「お前だお前ぇ!!」
「あ〜俺」
見たことがある。あの火事のあった日に自身に殺気を放った大妖怪であった。
そして、正体が露わとなると共にその少年の全身からは超高密度の妖気が放たれた。
「よぅぬらりひょん 。俺は『天狐』テメェを消しにきた」