ある日の昼頃、
九尾こと九重 天狐は砂かけ婆の長屋で昼寝をしていた。昨日は近くの寺で夏祭りが開催されたのだが天狐は「寝たいからまた来年」という理由で行かなかったのだ。
「スゥ〜……スゥ〜……
すると
バサバサバサバサバサ
「…ん?」
窓から何やら羽ばたく音がして、その音に天狐は目を覚ました。手で顔を拭いながら音のした方を見るとそこには一羽のカラスがいたのだ。
「なんだ…?確か……化けガラスだっけ…?」
「カーッカーッ!」
天狐が言った言葉に頷くかのようにそのカラスは鳴いた。するとそのカラスの口から手紙らしきものが落ち、天狐はそれを拾った。開いて中身の文の内容を見ると差出人は鬼太郎からだ。
「ん〜なになに…?『今すぐ夜行さんのところに来て欲しい』?まぁ暇だしいっか」
天狐はカラスの頭を撫でるとそのカラスは飛び立ち天狐も長屋を後にした。
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天狐が夜行のところへ行くとそこには鬼太郎、猫娘、子泣き爺、砂かけ婆達がテーブルに座り待っていた。
天狐が来るとテーブルの上に座っていた目玉親父や皆がこちらに気づいた。
「お〜!ようやく来たか!」
「どうした?いきなり呼び出して まさか妖怪か?」
天狐の問いに目玉親父は「その通りじゃ」と言い、夜行に説明を頼んだ。
「ここんとこの話なんじゃが…全国各地の妖怪達が氷漬けにされる被害が相次いでおるのじゃ」
「氷漬け?というと思い当たると言えば雪女……か?」
「その通り」
そう言うと夜行は日本地図が描かれた巻物を取り出した。
「昨日、被害に遭ったのは岩手の『座敷わらし』じゃ」
『座敷わらし』とは子供の姿をした妖怪で見た目に似合わぬとても強い力を秘める妖怪だ。そんな妖怪がやられたとするとその雪女は只者でないということが分かる。
夜行はそれから地図を手でなぞりながら説明を再開した。
「雪女は東北地方からどんどん南下し、人間と共に暮らす妖怪を次々と襲っているようだ」
「とは言うものの雪女って豪雪地帯に住む妖怪だろ?ましてやこんな季節にこんな大移動するなんておかしくないか?」
天狐はそう質問すると目玉親父はそれに答えた。
「それもそうじゃ。何か特別な理由があるやもしれん……じゃがこのままにしておくと間違いなく被害は拡大するじゃろ。一刻も早く止めなければ」
目玉親父がそう言うと皆は頷いた。
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一方、二話から出番がなかったねずみ男は河原に捨てられた祭りのゴミを漁っていた。
ガサガサガサガサ…
「おいおいなんだこりゃぁ?祭りの後はひでぇモンだなぁ。食えるのに捨てちまうなんて……………お!?これはまだ新品の奴じゃねぇか!?よくねぇ〜ぜ」
そう言うとねずみ男はゴミの中から丸々残っていたリンゴを見つけそれにかぶりつこうとした。
「いっただきま〜 カチ!……凍ってる!?」
そのリンゴが瞬時に凍ってしまったのだ。
その直後に、背後から謎の声がねずみ男に話しかけた。
「ねずみ男、人間の残飯なんか漁って…妖怪の誇りはないのか?」
「んぁ?誰だか知らんが俺のライフスタイルにケチ付けるなんざ…………」
ねずみ男は固まった。なんとそこには、とてつもない冷気を放つ白い女がいたからだ!
「ゆ……雪女!?」
「フンッ…汚らわしいネズミが!」
そう言うと同時にその女性はねずみ男に向かって口からとてつもなく冷たい息を吹いた。
「ぇ…えぇぇぇぇ!?ちょっとまって!?………ってあれ!?」
ネズミ男は咄嗟に逃げようとするも既に足はその息の餌食となっていた。そして雪女は不気味な笑みを浮かべゆっくりとねずみ男に近寄った。
「あぁー!!!やめて!?何でも言う事聞きますからぁぁぁぁぁ!!!」
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一方その頃鬼太郎達は準備を整え、妖怪横丁の入口へと集まっていた。
「さて、行く前に聞いておくけど、天狐、炎は扱えるかい?」
「あぁ。炎は勿論 氷も使える」
その問いに天狐は普通に答えた。すると
「遅くなったな鬼太郎」
すると火の妖怪を集めに出かけた砂かけ婆が3人の妖怪を引き連れて戻ってきた。
「何でこんなに多いんだ?俺一人で十分だろ?」
「いや、念には念を入れておかないと思ってね。万が一君が凍らされてしまったらお終いだから」
「成る程ね」
鬼太郎は輪入道達に横丁で待機してもらうようお願いし、準備が整った。
「あとは奴が現れる場所を特定し待ち伏せればよいだけじゃな」
「そんな事が出来るのか?」
「今カラス達が探してくれています」
「猫達もね」
目玉親父の考えに子泣き爺は質問するが、鬼太郎と猫娘が既に手は打ってあるようだ。
すると
「おぉ〜い!!!!」
門の入り口から誰かがこちらに向かってきた。
よく見るとそれはねずみ男だった。ねずみ男は息を切らしながらこちらに走ってきた。
「た…大変なんだよ!俺、見たんだよ!雪女を!」
「な…何だって!ソイツはどこに!?」
鬼太郎はネズミ男にその時の状況を聞いた。
「突然俺の前に現れてな…俺を氷漬けにしようとしたんだよ。俺は『マズイ』と思って咄嗟に屁をこいて何とか逃れたんだよ。そしたらソイツは口が滑ったのか俺に次の襲撃相手を言ったんだよ…!」
「それは誰だ?」
天狐が聞くとねずみ男は猫娘に指を向けた。
「猫娘だとよ」
「わたし!?」
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『まもなく閉園の時間です。またのお越しをお待ちしております』
あれから鬼太郎達はねずみ男から重要な情報を聞き、それを元に作戦を立てると、先日 天狐が面接しに行った遊園地へと向かった。
「いいかい二人共?僕らは影から見守る。二人はいつも通りにしていてくれ。奴が来たと同時にあの火口へと誘導してくれ。それと同時に僕らはつるべ火で輪入道達に合図を送る」
「了解」「分かったわ」
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ガラガラガラガラ
「「お疲れ様です」」
「いや悪いね二人共、遅くまで残ってもらって」
「いえいえ。それより、中にはもう誰もいませんか?」
「あぁ。僕らだけで最後だ。あとは頼むよ」
「「お疲れ様でした」」
遊園地のオーナーが帰ったのを確認すると天狐と猫娘は瞬時に鍵を閉め、塀を乗り越え中へと入った。
その時、その場に激しい風が吹き、辺りをたちまち氷漬けにした。
「ようやくおでましか」
「ニャ!」
二人が見上げるとそこには、ねずみ男を襲った雪女が青い目を向けてこちらを見ていた。
「猫娘、なぜ妖怪なのに人間社会なぞに生きる?」
「そんなの私の勝手でしょ!」バッ!
そう言い猫娘は警備服を脱ぎ捨てるといつもの服装となった。
「堕落した妖怪め…横にいる人間共々氷漬けにしてやろう!!」
ヒュゥゥゥゥゥ!!!!!
「ニャ!」「よっ」
雪女が吹いた吹雪を二人はギリギリに躱した。天狐と猫娘は二手に分かれて雪女から逃げた。
「ッ…!人間は後でいい…まずは猫娘を氷漬けにしてやろう!」
そう言い雪女は猫娘を追いかけていった。
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「………猫の方に行ったのか?」
一方 天狐は近くの観覧車の上から猫娘の方角へと向かう雪女を眺めていた。
「さて、そろそろ行くか」
そう言うと天狐もその場から跳躍し跡を追った。
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「はぁ…はぁ…はぁ…」
一方猫娘は自分の身体能力を生かし何とか逃げきれ、今は遊園地の中心部にある山の麓の火口に来ていた。
「鬼ごっこはおしまいだ」
「ッ!」
雪女は猫娘に追いつき、目の前に現れた。だが、これが作戦の第1段階なのだ。
「引っかかったわね!今よ!!」
「なに!?」
ボォオオオオオオオオオ!!!!!!
猫娘の合図と共に、その山の火口から炎の渦が発生し、雪女を包んだ。
「猫娘!」
「鬼太郎!」
すると、その近くに潜んでいた鬼太郎たちも出てきた。
「天狐は?」
「もうすぐ来るはずよ。それより…」
猫娘と他の皆もその炎の渦を見つめた。
「やれたかしら?」
「………いやまだだ!」
すると、その炎の渦がたちまち氷に包まれていった。
「人間が作った炎で私を焼けると思っているのか?」
グシャァァァンッ!
その氷の塊となった炎の渦がバラバラに砕け散るとその中心から雪女が出てきた。
だが、策はこれだけではない。
「まだこれからだ。今だみんな!!」
そう言い鬼太郎は第2段階の作戦を実行すべく輪入道達に合図を送った。
しかし
何も返ってこなかった。
「ど……どういうこと!?つるべ火達は!?」
猫娘が動揺していると雪女は懐から何かを取り出した。それは氷に包まれたつるべ火だったのだ!
「な…!」
「どうして…つるべ火達の居場所が…!?」
そんな中 その場を去ろうとする一つの影が…
「ねずみ男!やっぱりアンタだったのね!シャァァァァァァ!!!」
「ゆ…許してくれよ〜…俺だって腹ん中に氷の塊入れさせられたよう〜?」
そう言うとねずみ男が自分の布の裾をあげると、腹が氷で包まれていた。
その瞬間、その氷はさらに拡大し、
「あらやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 ガチンッ!
ねずみ男を氷漬けにした。
「人間に媚びへっつらった罰さ。さぁ…!お前らも氷漬けにしてやろう!」
「ま…待て雪女!お前の一族には人間と結ばれて子供まで設けた者もいるであろう!何故そこまでして人間を憎む!」
目玉親父が雪女に聞くと雪女は目を鋭くさせながら答えた。
「ソイツが一族の掟を破った罪で雪入道様に処刑されたのよッ!!!!」
そう叫ぶと雪女はまた鬼太郎達を睨んだ。
「お前らも同罪だッ!!!」
「ッ!!」
雪女が口を開け鬼太郎達に向け吹雪を出そうとした時
「到着っと」
鬼太郎達の後ろに黒い影が現れた。
「「天狐!!」」
「すまんな。色々と遅くなった」
突然の闖入者に雪女も混乱していた。
「な…!貴様はさっきの人間!」
「よう。お前が雪女か。随分と強い妖気じゃねぇか」
そう言うと天狐は鬼太郎達を押しのけ雪女の真ん前に立った。
「人間が…私と戦う気か?」
「あぁ そうだ。お前と戦う。おい鬼太郎!こっからは俺一人でやらせてもらう。いいか?」
そう言い天狐は鬼太郎に同意を求めると鬼太郎は止めようとした。だがそれを目玉親父に止められた。
「ど…どうしてとめるんですか!父さん!」
「元々九尾という妖怪は様々な妖術を操る妖怪。その中でも『狐火』と呼ばれる炎は地獄の炎に次ぐ程 強力な妖術じゃ!あやつと共に闘えばお前も諸共焼き尽くされてしまうぞ!」
その説明に鬼太郎は驚くと天狐の問いに同意した。
「今回は君にお願いするよ!」
「了解」
鬼太郎の同意を得た天狐は再び雪女に向かい合った。
「最後のお別れは済んだか?」
「何言ってんだ。これはお別れなんかじゃねぇ」
ゴォォォォォォオオオオオオ!!!!!!!!
すると天狐の周りに赤く燃え盛る五つの炎が現れた。
「さぁ…来いよ?」