漢体これくしょん 日東丸提督のブラ鎮建て直し物語   作:かのんベール

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茶番

部活動を解説するムービーの放送が終了し、部屋の電気が付けられた。

 

「ではこれも後日希望を提出するように。毎度のことながら全ての要望が通る訳ではないので了承して欲しい。ただし、あくまでも貴様らの生活をより豊かなものにすることが第一の目的であるため、ある程度の我が儘は許容しようと思う。なにかある場合は長門に相談するように。内容によっては俺の前に連れてこられる可能性があるので注意するように。ものは試しだ。言ってみるだけならばタダだからな。俺と会話しなくてはならないという点に目を瞑ればノーリスクだ、是非試してみろ」

 

ちょっと思案顔のやつもいるな。恐らく思うところがあるのだろう。那珂とかは確実に来るだろうな。まぁ予想は付くが。

 

「ではこれで第一回相談ミーティングを終了する。このあと長門から講師候補には資料が配布される。あと、資料を無くした奴は腕立て伏せが待っているのでくれぐれも無くさないように。では長門の指示で解散」

 

「それでは資料を配布する。名前を呼ばれた者は前まで取りに来い」

 

後を長門に任せて退出する。

 

資料を提督室に置いて食堂へと向かう。昼まで時間がない。みんな頭を使ってお腹が空いているだろうからな。

 

取り敢えず昨日の夜にタイマーをセットしておいた炊飯器の中身を確認する。因みに一つは俺がアパートで使っていたものだ。あとは元々あったやつと新しく買ってきたやつと大本営の物資からちょろまかしたやつだ。多分ギリギリ足りると思う。

 

次に味噌汁の入った特大の鍋に火をつける。この鍋は戦争で廃校になった学校のものを拝借した。

 

犯罪スレスレというか犯罪によって手に入れた調理器具と食品で用意された料理は白米と味噌汁だけ。正直お昼としては物足りないどころの話ではない。

 

五分後に長門からメールが入る。どうやら会議が終わったらしい。ある程度温まった味噌汁の火を消すと食堂を出る。流石に悪魔の提督がお昼を用意していたなどと噂が広まっては大変だ。

 

遠くから聞こえる長門達の足音と雑談の声に背を向けるようにして、本館を後にする。まだお昼の準備は終わっていないのだ。

 

俺は久しぶりに愛車のBMWに乗り込む。実際には1日振りなのだが、この短期間で色々ありすぎてなんだか久しぶりな気がする。

 

が、そんな感傷に浸っている暇はない。急いで車を近所のスーパーへと走らせる。タイムリミットは白米と味噌汁が配膳されるまでの僅かな時間だ。その間にお総菜の購入を終えて食堂まで届けなくてはならない。

 

鬼の形相でスーパーへと駆け込むと、カゴを引っ付かみお惣菜コーナーへと見事なダッシュを決める。因みに50m走は5秒台なのでまぁまぁ速い。主婦が驚いているがお構い無しだ。片っ端から適当におかずになりそうな食品をカゴへとぶち込んでレジへと向かう。

 

汗だくで必死な俺に気を使ったのか、引いたのかはよく分からないが、愛想のよい主婦のおばさんが列を譲ってくれた。しっかりとお礼を言ってその好意に甘える。

 

俺が焦っているのが伝わったのか、店員のおばさんが二人がかりでレジ打ちと袋詰めをしてくれる。普段は本気じゃなかったのだと感じられるスピードで会計が進む。

 

程なくして金額が表示される。お札はある程度予想してあらかじめ出してある。あとは端数を揃えるだけだ。

 

しかし、人は往々にしてあと少しだと思うと気が緩むものだ。つい焦ってしまった俺の手から小銭が二枚滑り落ちてしまった。一秒が何倍にも引き伸ばされていく。重力加速度によってコインは次第に加速していく。もはやコインのの加速は誰にも止められない。折角の周囲の人々の協力を無駄にしてしまうのか。俺のために列を譲ってくれたお客さん、本気を出した店員さん、それらの記憶が走馬灯のように頭を駆け抜ける。あぁ俺はまた人の信頼と期待を裏切るのだと脳裏で自然と納得することができた。

 

 

 

 

 

 

 

否!納得などしていない!

 

 

 

このままでは瞬きをする間もなく落下したコインが空虚な音を響かせることになるだろう。だが、それではいけない。

 

人間の反応速度の限界は0.2秒。コインはまだ手から滑り落ちた直後だ。俺の手からの距離はおよそ2cm。二つは無理だとしても一つならなんとかなるだろう。脳が電気信号を発する。信号は神経を駆け抜けて腕から指先へと伝えられる。反応、反射、音速、高速!指先の速度は音速を越えてコインへと向かう。

 

刹那。

 

そう形容するにふさわしい瞬間の後に俺の右手が動作を止める。ほどなくして置き去りにされた音が二つ重なって聞こえてきた。果たして俺の右手の中には確かに一枚のコインの感触があった。

 

だがおかしい。重なって聞こえるはずの音は、コインが地面にぶつかったときの甲高い音のはずだ。だが実際は違った。実際に聞こえてきたのは空気を切り裂く鋭い、それでいて優しさを多分に含んだ音だった。

 

怪訝に思いながらもう一枚のコインが描くはずだった軌道を視線でなぞる。果たして俺の目に飛び込んできたのは女の子の手であった。俺は驚いて顔を上げて女の顔を確認した。

 

そこには慈愛と母性に満ち溢れた優しい女神が微笑んでいた。数刻前に俺に列を譲ってくれたババァ女神だ。

 

女神は呆ける俺の右手にコインを握らせた。そのコインは体温だけではないなにかによって暖められていた。握りしめられた右手のコインから腕を通して愛という名のエネルギーが俺の中へと流れ込んでくる。それが俺の頭のてっぺんから足の指先までを包み込んだとき、俺の意識はとても穏やかな気持ちと共に覚醒した。

 

正気へと戻った俺に女神は語りかけた。

 

「あなたのことを待っている人がいるのでしょう?だったらこんなところで挫けている暇はないはずだ。早く行ってあげなさい」

 

「はい!」

 

俺はガラにもなく元気な返事を返すと、残りのコインを店員さんに渡す。レシートを受けとると俺は袋を持って走り出した。俺の背中には沢山の人々からのエールが送られていた。俺なんかのために応援してくれる人がる、協力してくれる人がいる。その事実に自然と胸が熱くなる。視界はボヤけてよく見えない。だが、今の俺は止まることなく走り続ける。全ては鎮守府で待つ皆のために。

 

 

努力の甲斐あって、なんとか間に合うことができた。裏口で長門にお惣菜のスーパーの袋を渡す。その時長門から掛けられた労いの言葉に俺は報われた気がした。

 

楽しい食事に提督の俺が顔を出すのも野暮と言うものだろう。久しぶりに一服しよう。昔カッコいいと思って始めた人畜無害な電子タバコを片手に俺は海岸へと向かった。

 

 




多分深夜に書いたんじゃないかな...。読み返したんだけど、誤字が凄いし、ストーリーも脈絡がなくて直すのが大変だった。正直投稿するかも悩んだ
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