漢体これくしょん 日東丸提督のブラ鎮建て直し物語 作:かのんベール
艦娘たちが四種目全てを経験したところでお昼となる。が、間宮も参加しているのでお昼の準備は当然ながら出来ていない。
しかし抜かりはない。今日は給食センターから給食が届けられているのだ。通常は一食分の注文など出来ないのだが、今日はたまたま近隣の中学が突然休校となったので、その余りを買い取らせてもらったのだ。そんな都合のいい偶然があるのかと言われればそんなものはない。が、タンカーを爆撃した時点で俺には良心やモラルとかいうものは残っていないからな。こんなのは朝飯前だ。
そんなことは露知らず、艦娘たちは給食を食べている。運動した後の食事はおいしそうだ。
そんな中、俺は昨日と同じように車を走らせる。今日の目的地は近隣の図書館だ。正直文化活動は多岐にわたるので、全てを経験させるのには無理があるのだ。そこで本を見て学んでもらおうと言うことだ。
昨日と同じように長門のメールで昼食の終了を確認してから食堂へと向かう。
「午後は文化活動を体験してもらう。といっても準備することができなかったので、本を使って調べてもらう。書道と将棋、囲碁、かるたは俺のやつをロビーに置いておいたから勝手に使ってもらって構わない、実際にやってみろ。本は借り物なので傷つけないように。一週間は置いておくから譲り合って使え。質問は」
那珂と目が合うがスルーする。
「俺は提督室にいるから頼みがあるやつは長門か俺に言え。長門、後は頼んだぞ」
「任された」
俺は提督室に戻るとコンテナ船の被害報告や職種の進路希望の調査書などを処理していく。
しばらくすると、扉をノックする音が聞こえてきた。
「入れ」
「那珂ちゃんだよー」
「その挨拶の前任の評価はどうだった?」
「えへへ...」
まぁ殴られただろうな。
「で、なんの用だ。見ての通り俺は忙しい。手短に済ませろ」
「その...艦友活動なんだけど、アイドル活動やりたいなー!なんて...」
「確かお前は前任の提督の時からアイドルを自称してたんだってな?」
「そうだよー」
「それはお前にとって殴られてまでも続ける価値があることなのか?」
「那珂ちゃんはアイドルだからねー!誰かが笑顔を届けなくちゃいけないんだよ...。それは那珂ちゃんの役目なの...」
「俺にも殴られるかもしれないぞ?」
「それでも、那珂ちゃんはアイドルだから…」
「そうか」
「......」
室内に沈黙が訪れる。まぁここまで本気の奴には協力してやるのもやぶさかではないな。
「お前は歌って踊るアイドルだったな」
「うん!那珂ちゃんが考えてるんだよ!」
「もしダンス教室に通えるとしたら、どうだ?」
「行きたい!けど...」
少し落ち込む那珂に一枚の紙を渡す
「それはとあるサイトのコピーなんだがな…。鎮守府の近くにダンス教室があるらしい」
那珂がキラキラした目でプリントを見ている。
「だが兵器である貴様らには身分証がないから学割が使えない」
どこか期待をしていた那珂の目が落胆とともに伏せられる。
「仕方がないので那珂には19歳という設定で通ってもらう」
学生料金は18歳までだ
「えっ!」
那珂の顔が勢いよくこちらに向けられる。
「ただしタダというわけではない」
なにせ年間で18万もかかるのだ。那珂だけ特別扱いというわけにはいかん。
「なにをすればいいの?」
那珂が警戒気味に質問してくる
「お前を近いうちに横須賀鎮守の艦娘アイドルとして売りだそうと思う」
「本当に!?」
「あぁ、そこで収益を上げろ。それが条件だ」
「那珂ちゃんなら余裕でトップスターになっちゃよ!」
「それはよかった。じゃあ今から教室に登録しに行こうか」
「え!今から!?」
「ほら、置いていくぞ。早く着いてこい」
「お、おー!」
助手席に那珂を押し込んでから車を発進させる。
「那珂ちゃんお車に乗るの始めてー!」
「はしゃいでないでちゃんと経路を覚えとけよ。次からは一人で通うんだからな」
「えー」
「えー、じゃない。自転車買ってやるから必死で漕げ」
「買ってくれるの!?」
「ママチャリだからな?ロードバイクとか高いやつは買わないからな。あれは短距離の移動には向かないからな」
「うん!」
本当に分かってんだろうな…。
「あと、俺とお前は兄妹という設定だ。絶対に提督とか呼ぶんじゃねぇぞ」
「なんでー?」
兵器がダンス教室に通ってるとかバレたら大本営から怒られちゃうだろ
「なんでもだ。絶対に艦娘ってバレるなよ」
「お兄ちゃんって呼んで欲しいのー?」
「バカなこと言ってるとはっ倒すぞ。ほら、着いたぞ」
「うわー!」
「いいか、ちゃんと挨拶しろよ?」
「了解です!」
ちょっと不安だが、よしとしよう。
中に入るとカウンターに人がいないようなので声を掛ける。
「こんにちはー」
「はーい!」
奥から若い女の人が出てきた。インストラクターの人だろうか。
「新規で会員登録がしたいんですけど...」
「ありがとうございます~。お二人ともですか~?」
「いえ、妹だけでお願いします」
「かしこまりました~、ご兄妹なんですね~」
「えぇ、出来の悪い妹でして」
「あらあら、可愛らしい妹さんじゃないですか~。鼻筋も通ってて、お鼻なんてお兄さんそっくりですよ~」
「えぇ、鼻は母親譲りでして。な?那珂」
「そ、そうだね!お、お兄ちゃん!」
「仲がよろしいんですね~」
「そうですかー?」
「えぇ。あ、紹介がまだでしたね~。私はここのインストラクターの三浦あずさです。よろしくね~」
「あっ、えっと!那珂ちゃ...那珂です。よろしくお願いします」
「ではお兄さん、こちらの申し込み書類の記入をお願いします~」
「分かりました」
「もしお時間よろしければ少し体験していってはいかがでしょうか~?」
「どうする、那珂?」
「やりたい!」
「じゃあすみませんがよろしくお願いします」
「分かりました~。その間に書類の方、お願いしますね~」
書類の記入が終わってから待つこと30分。満足げな那珂と先生が出てきた。
「お待たせしました~」
「ありがとうございました。那珂は大人しく言うことを聞いていましたか?」
「えぇ、とってもいい子です~」
「那珂、今後も失礼のないようにしっかりと学ぶんだぞ」
「はーい」
「では書類の方、確認させてもらいますね~」
先生がカウンターに向かう。
「那珂、そこの自販機で好きなの買ってこい」
疲れていそうな那珂にSuicaを手渡す。
「自販機?」
あ、知らないのか。
「着いてこい」
自販機の前まで那珂を連れて行く。
「まず、欲しい飲み物のしたのボタンを押す」
試しに缶コーヒーのボタンを押すと、ボタンが緑色に点灯した。
「次にカードをここに当てる」
するとお金が支払われて飲み物が出てきた
「と、いう仕組みだ」
「すごいーい!」
那珂ちゃん大興奮です。
「じゃあ飲み物買ったらカウンターに来い」
那珂に再度Suicaを手渡してからカウンターへと向かう。
書類のコピーや規約書などを受け取る。
「那珂ちゃーん」
「はーい!」
飲み物を片手に那珂がかけてくる。無事に買えたみたいだ。
「はい、これが那珂ちゃんの会員証よ~」
「ありがとうございます!」
カードを那珂が嬉しそうに受け取り...
「うげ...」
露骨に顔をしかめる。
「では今日はありがとうございました。これからも妹のことをよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします~。またねー那珂ちゃん」
「ありがとうございましたー!」
那珂からSuicaを受け取ると、那珂と並んで建物を出る。雲ひとつなく澄んだ青空は少女の新たな夢への旅立ちをまるで祝福しているようだ
「提督」
「なんだ?」
「提督って菊地っていうんですね」
「そうだな。今日からお前は菊地那珂だ」
カードには菊地那珂の名前が刻まれていた。
「うへぇ...」
だから露骨に嫌な顔するなよ...。せっかくいい感じで終わらせようとしたのに。
菊地・那珂の、ちょっとお時間よろしいですか?
那珂ちゃん引くわー!