漢体これくしょん 日東丸提督のブラ鎮建て直し物語   作:かのんベール

22 / 29
準備

艦娘の給料を賃上げする為の資金捻出に頭を悩ませている正にそのタイミングで彼女たちはやって来た。

 

「失礼します」

 

「経理課か。なんの用だ、アポも取らずにいきなり」

 

普段は長門に連絡があるはずなのだが今回はそれが無かった。覚悟を決めた顔つきを見るに重要な案件のようだ。

 

「単刀直入にお伺いします。提督は私達の給料を横領していますね?」

 

なるほど、最近こそこそと会議を開いていたのはそういうことか...。長門にも知らせずに直談判ということは、恐らく俺を追い詰めるだけの資料を既に集めていると見てまず間違いなさそうだ。

 

「何故そう思うんだね?この俺を疑うんだ、それなりの根拠はあるんだろうな?」

 

「勿論です。先日のインターンシップの際に、向こうの社員の方と友好的な関係を構築させて頂きました。軍隊に対し興味があられたようですので、問題のない範囲でお答えさせて頂きました」

 

「成る程、そこで賃金があまりにも低いことを指摘されたという訳か」

 

「はい。そこで私達は軍の賃金のガイドラインを確認させて頂きました」

 

こちらに書類が渡される。なにやら数字が三列に並んでいるようだが...。

 

「そちらの資料には現在支払われている賃金、正当な賃金そしてその差額が表示されています。正当な賃金の算出方法の内訳は次項に記載されています」

 

差額の合計は億単位にまで昇っている。これは艦娘たちが怒るのも無理ないだろう。

 

「それで?俺にどうしろと?」

 

「この事実を大本営に報告し、提督にはこの鎮守府より出ていって頂きたく思います」

 

「それは困るな。しかし私が君たちに正当な給料を支払っていない証拠はどこにもない。君たちが全部使ってしまっただけのことだろう」

 

「なっ...!」

 

まだまだ詰めが甘いな。こういうのはしっかりと証拠を集めてからでなくては駄目なんだよ。艦娘は口座を持っていないので、給料は手渡しだ。証拠を入手するには次の給料日まで待ち、その様子をカメラで撮影。手渡された封筒の中身を確認するところまで写さなくてはならない。もしくは俺が横領している証拠でも納めることだが、そもそもそんな事実がない以上証拠など存在すらしないがな。

 

「次の給料日は一週間後だったな。以降の給料が少なければまた騒ぐがいい。今回は証拠を抑えてすらいないにも関わらず、俺に楯突いた貴様らの負けだ」

 

最後にドヤ顔で勝ち誇ることも忘れない。

 

「次回の給料はしっかりと払って頂きますからね」

 

「あぁ、前から払っていたがな。次は散財するんじゃないぞ」

 

「白々しい」

 

艦娘たちは苦虫を噛み潰したような顔で提督室を出ていった。一先ずは一命を取り止めたようだ。給料の配布映像を大本営に提出されていたら俺は今頃首だったな。首で済めばいいが...。

 

にしても来週かぁ...。取り敢えずは貯金から捻出するとして、来月以降が問題だな。一時凌ぎではあるが、小遣い稼ぎするか。前から悩んでいた案件なだけに一応のプランはいくつか用意してあるのだ。一先ずは一番手っ取り早い所から取りかかるとしよう。

 

果たして翌日の定例会議でその案は可決された。

 

「では鎮守府祭の実行委員会選出を次の定例会議で行う。各自考えておいてくれ」

 

そう、鎮守府祭だ!

 

俺は元々こういう行事が大好きな人間なんだ。学生の頃から実行委員を何度も務め、最終的には生徒会として各班のリーダーになってしまった程だ。正直、参加するるよりも運営した方が楽しいと思う。旅行は準備している時のが楽しいという人が結構いるが、要はそんな感覚だ。

 

俺は学生の頃に運営した学園祭のデーターを探し、それを参考にテンプレとなる枠を作成するなどして次の定例会議を迎えた。その間に給料日が訪れたことで俺の貯金は綺麗さっぱり消え去ったが、よりいっそう下準備に専念することで考えないようにした。

 

「それでは実行委員会の選抜を行う。立候補者はいるか?」

 

意外にも積極的な艦娘が多いようでスムーズに実行委員は決まった。実行委員を残して定例会議は終了、そのまま実行委員会へと移る。

 

「まずは実行委員長を決める」

 

「それならもう決まってるぜ」

 

「ほう、天龍どういうことだ」

 

「さっき話し合って決めたんだよ。実行委員長はこのオレだ!どうだ、怖いか?」

 

「明らかにリーダーには向いてないだろ。誰だこいつを選抜したのは」

 

「天龍ちゃんはいつも駆逐艦の面倒を見ているから、皆を纏めるのは慣れているのよ~」

 

あぁ、そういえば結構面倒見がいいんだったな。

 

「じゃあお前でいいや」

 

「おいっ!なんだその投げやりな言い方!もっと褒めろよ!」

 

「あー、偉い偉い」

 

「テメェ...」

 

「よーし、じゃあ早速会議を始めるぞー。天龍、号令」

 

「え?あっ、お、おう。これから第一回実行委員会を始める」

 

なんか口調まで俺に寄せてないか?

 

「で、なにをやればいいんだ?」

 

「あー、資料作ってきたから取り敢えずはこれに沿ってやってみろ」

 

「えーと...。まずは班分けだな、よし!これから統括、広報、ステージに別れてもらう!」

 

俺はホワイトボードに統括、広報、ステージと書き込む。

 

「おぉ!提督もたまには使えるじゃねぇか!」

 

人をパシりかなんかと勘違いしてないか?なんか龍田が悔しがってるし。

 

「天龍ちゃん、班ごとの仕事はなんなの?」

 

龍田がいい感じに天龍をフォローしている。

 

「えっと...。統括は全体のまとめ役だな。出店する出店の内容の確認及び保健所への確認、当日の警備体制の計画とかだな。広報はパンフレットやポスター、看板、ウェブサイトの立ち上げ。ステージは特設ステージの運営全般だな。放送器具の設置、出演オファー、台本の作成、ステージの進行表の作成とかだな」

 

ホワイトボードへと内容を箇条書きにしていく。

 

「ステージ!?じゃあ那珂ちゃんの出番だね!」

 

「ではステージは神通が請け負います」

 

「私は統括かしら、天龍ちゃんも統括になるんでしょう?」

 

「そうなのか、提督?」

 

「そうなるな。お前は統括のリーダーも兼任してもらうことになる」

 

兼任って言うか仕事の内容が同じだからな。

 

その後も班分けはスムーズに終了した。

 

その後は天龍と何度か会議を重ねながら準備を進めていった。基本的には天龍が鎮守府を纏め上げ、俺が大本営や保健所等への連絡を行った。艦娘たちも楽しんで出店の準備を進めているようだ。因みに提督も出店している。グッズ販売だ。長門に頼んで艦娘から許可を貰ったポスター等のグッズを販売するのだ。美少女グッズ、それも限定品。ネットの反応を見るに鎮守府祭には全国からお客さんが来てくれそうだ。まあ、限定品ではあるが後にネットでも販売する予定なので在庫は大量にある。限定品の定義が揺るぎそうではあるが、取り合いになるよりはましだ。

 

そうして俺の金儲けの為の鎮守祭はとうとう前日を迎えた。

 

艤装を展開した艦娘たちが目を見張るスピードでテントやステージを組み立てていく。が、俺のテントだけ組み立てられる気配が一向にない。これは想定外の事態だ、非常に不味い。普通の人間が一人でテントを組み立てるのは至難の技だ、少なくとも今の俺には出来ない。

 

どうしたものかと頭を悩ませる俺の元に、それは満面の笑みを浮かべた天龍がやってきた。

 

「どうしたんだ、提督?困っていることがあるなら言ってみたらどうだ?」

 

「オレのテントはいつになったら組み立てて貰えるのかなと思ってな」

 

「組み立てる予定はないぞ?」

 

「それは困ったな」

 

...

 

......

 

...............

 

「ニヤニヤ笑ってないで助けてはくれないのか?」

 

「ん?オレは言ってみろとは言ったが、助けるとは一言も言っていないが?」

 

「なら何故来たんだ」

 

「勿論馬鹿にするためにきまってるだろ。どうだ、悔しいか!」

 

コイツ...

 

「それはとても残念だな...」

 

「そうだろぉ!いい気味だ!」

 

「会議を何度もした天龍なら分かってくれると思ったんだがな…」

 

「え…?」

 

「鎮守府祭を成功させようと頑張ってきたんだがな…」

 

「それは…。お前はお金稼ぎが目的で...」

 

「テントが無いんじゃ明日は出店できないか...。折角準備してきたんだがなぁ...」

 

「えっと...、オレは...その...」

 

こうやって全身から悲壮感を漂わせれば天龍ならば折れてくれるだろう。なにせ鎮守府祭の準備で一番苦労したのは天龍だからな。同情を感じ得ないはずだ。

 

「こ、今回だけだぞ!」

 

よし、来た!ちょろい、ちょろい。

 

「なにが今回だけなのかしらぁ?」

 

ちょろいとか言ってすみませんでした!龍田さんがセットなの忘れてましたぁ!

 

「い、いやコイツのテントを...」

 

「天龍ちゃんは委員長なんだからみんなに指示を出さなくちゃダメよ~?」

 

「でも...」

 

「こんなゴミは放っておけばいいのよ?」

 

「そうだぞ、天龍。俺も貴様のような疫病神にテントを触られて店の売り上げが落ちたらたまったもんじゃないからな」

 

「テ、テメェ!人が折角...!」

 

「早く持ち場に戻れ、サボりか?」

 

「...っ!もうテメェなんか知るか!」

 

踵を返すと、天龍はステージへと向かっていった。

 

さてどうするか...。と、テントの骨組みに触れた瞬間に手だけではなく、首筋にもひんやりとした鉄の感触が伝わってきた。

 

「あまり天龍ちゃんに近づくと、どうなっても知りませんよぉ?」

 

いや、龍田さん?どうにかなるんしゃなくて、あなたがどうにかするんじゃないですかね?主に首筋に当てている薙刀で...。

 

「分かってるよ。そもそも疫病神と俺のやり取りを見てて仲が良いように見えたか?」

 

「どうかしらね...」

 

疑惑の目を向けながらも龍田は薙刀を引っ込めてくれた。もう少し気を付けた方がよさそうだ。

 

 




感想なども頂けるようになり、嬉しいです。アドバイスなども頂いており感謝が絶えません!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。