漢体これくしょん 日東丸提督のブラ鎮建て直し物語   作:かのんベール

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不幸だー!!

季節も冬になり寒さも本格的になり始めた。こんな寒い季節に海をクルージングなんて何を考えているのか俺には分からないが、そのプランを提供している俺が言うのは些か可笑しいかもしれないな。

 

「わぁー!凄く綺麗!」

 

まぁ、この時期は通常の夜景に加えてクリスマスのイルミネーションなんかで無駄にピカピカしてるからな...。

 

「萌香、大切な話があるんだ」

 

つまりは、プロポーズに最適といえる。

 

深海棲艦が登場したことにより、民間の船は海から姿を消した。たまに護衛付きの貨物船などが出港するだけで、クルージングなどの企画は全て姿を消した。だが、海軍ならナイトクルージングも可能だ。安全とは言い難いが、深海棲艦が出現してもある程度の対処が可能だ。沖にでなければ対した問題にはならない。しかし海軍がクルージングでお金儲けなどできるはずもない。そんな行事に割ける余剰戦力など何処にもないのだ。俺を除いて。という訳で大本営には勿論、鎮守府にも秘密でナイトクルージングを実施しているのだ。ライバル会社が存在しないので値段はいくら吊り上げても客は減らない。問題はどうやって客を集めるかだが、これはブライダル関係の会社と秘密裏に提携を結ぶことで一定の集客に成功している。顧客満足度も高く、評判は上々だ。

 

「はい、こちらこそよろしくお願いします!」

 

どうやら今日のクルージングも成功したようだ。明日はクリスマスイブだ、より一層気合いを入れて挑まねば。

 

 

 

 

そう思っていた時期が俺にもありました。

 

「どう責任を取るつもりだ!」

 

結果は大失敗であった。川内が討ち倒し損なった艦娘がこちらにやって来てしまったのだ。深海棲艦出現の入電でクルージングを中止すべきだった...。深海棲艦は俺が倒した為に直接的な被害はなかった。が、とてもプロポーズといった甘い雰囲気ではなくなり、殺伐とした雰囲気が流れてしまった。もたらした結末は破局。吊り橋効果など卓上の空論でしかなかったことが証明されてしまった。

 

「返答次第では裁判も辞さないが?」

 

「そう仰られましても、危険性に関しましては事前にご報告させて頂いておりますし、実害的な被害が出ていない以上...」

 

「破局したんだぞ!?それでも被害が出ていないというのか!?貴様では話にならん!直接大本営と話をさせてもらう!」

 

「お待ち下さい!」

 

大本営にバレては元も子もない。

 

「賠償金を支払わせては頂けないでしょうか。示談という形を提案させて頂きます...」

 

「値段次第だな」

 

どうやらこちらにも不利な点が潜んでいることに勘づかれてしまったらしい。かなり足元を見られてしまった...。

 

話し合いは難航した。内容が内容なだけに弁護士を呼ぶことも叶わない。相手も相手で、裁判や大本営といった単語をチラつかせる。仕方なく此方も高圧的な語調や、わざとらしく銃をチラつかせたりしながらヤクザのような交渉を仕掛けた。が、此方が不利なことには変わりなく最終的に億単位の損害賠償を支払うこととなってしまった。元々不正な金であったために、口座ではなく現金で保管してあったのでそのまま手渡しとなった。口座を使えばマイナンバーから所得として扱われ所得税が40%も掛かってしまうため、相手も手渡しを希望した。これで相手は億単位の脱税者だ、お互いに弱みを握ったところで今回の件は決着となった。正直俺の惨敗だった。

 

勿論これで全ての問題が解決とはならなかった。これだけの損失を出してしまったのだ。今月の給料など何処にもない。なんと言い訳をするべきか...。

 

次の給料日、俺は針のむしろと化していた。

 

「どういうことかご説明願います」

 

「だからさっきも言っただろ、今月の給料は5万円だ」

 

「ふざけているのですか!?」

 

「元々給料など貴様らには無かっただろう。元に戻っただけだ、一々騒ぐな」

 

「また横領ですか?次は無いと以前ご報告させて頂いたハズですが?」

 

「じゃあなにか?今この俺の話を録音していた奴はいるか?」

 

「......」

 

「いないよなぁ?」

 

まあ、居ても取り上げるんだがな。

 

「今月の給料はちゃんと支払われた。と言うことだ」

 

「テメェ!ふざけるなよ!」

 

「なら大本営に訴えるか?言っておくが俺は大本営から来た人間だぞ?お前らの戯言と俺の発言のどちらを信用するかなど考えるまでもない。証拠の無い貴様らの発言など取るに足らない戯れ言に過ぎん。この馬鹿め」

 

まあ、大本営への連絡手段は長門が管理しているからな。連絡など不可能だが。

 

少々強引ではあるが、勝利を確信した俺は提督室へと戻った。しかし、机に置かれていた書類で俺の勝利は打ち砕かれることとなった。

 

『大本営にて行われる艦娘の年末点検についてのお知らせ』

 

大本営の気まぐれによって俺は突然の危機に晒されることとなった。

 

翌日の朝礼はいつも以上に肌寒く感じられた。

 

俺は艦娘の射抜くような視線に晒されながら朝礼台へと登る。

 

「敬礼!」

 

長門の号令が掛かるが、敬礼が帰ってくることは無かった。

 

「今回は見逃してやるが次はないぞ、特に年末に大本営で行われる点検でそのような態度を取った場合、その場で即刻解体してやるからな」

 

年末点検という聞きなれない行事に艦娘が困惑する。

 

「今月の29日に大本営で艤装を中心とした点検及び技術力の検査がある。しっかりと体調を整えておくように。尚、その間の近海の警備は大本営所属の艦が引き受けることになっている。長門」

 

「詳しい検査項目に関しては追って資料を配布する予定だ。以上、解散!」

 

そしてその日は遂にやって来た。

 

俺は久し振りに大型バスの運転席に着いていた。前回のショッピングとは打って変わり、暗雲とした気分だった。艦娘たちが余計なことを言うのではないかと気が気でならないのだ。それとなく注意はしてみたが果たしてどれだけ効果があるかは疑わしかった。若干通常よりも遅く運転していたにも関わらず既に大本営が見え始まってしまった...。今日は呉鎮守府との合同での点検だ。あそこの鎮守府もブラックだという噂は聞いている。まあ、問題に成る程の環境では無いのだが...。違いが顕著に出るかもしれない、そこを突つかれないように上手く立ち回らなくては...。

 

艦娘を残して呉鎮守府の提督に挨拶に向かう。ついでにあちらの艦娘も確認しておかねば...。

 

「お久しぶりであります、西方大佐!」

 

「おぉ、菊地君ではないか。若いのに提督になったそうだね?」

 

「はい、分不相応とは思いますが誠心誠意勤めさせて頂いております!これも候補生時代の大佐のご指導ご鞭撻のお陰であります!」

 

「ははっ、いや大袈裟だよ」

 

とは言うものの満更でも無さそうだ。

 

「本日は恐れ多くも合同での点検でありますが、ご迷惑とならぬよう統率いたしますのでどうぞ宜しくお願いします!」

 

同時に年代物のワインと横須賀の地酒の入った紙袋を差し出す。この人は酒豪だからな、好みの酒も大体把握している。後は大本営の担当に任せてお酒を飲みに行くこと間違いなしだ。

 

「おぉ!やはり菊地君は昔から気が利くな!なにか困ったことがあったらいつでも相談しなさい。力になろう」

 

「ありがとうございます」

 

「おら!とっとと並べ、このグズどもが!」

 

近くにいた駆逐艦が蹴り飛ばされる。ある程度の反抗心は残っているようで、ついでに俺まで睨まれてしまった。

 

「じゃあ後は大本営の担当と菊地君に任せたよ」

 

「は!お任せ下さい!」

 

そういうと紙袋の中身を確認しながら建物の中へと消えていった。

 

「横須賀鎮守府提督の菊地だ!これから俺の艦娘も隣に整列させる。私語は厳禁だ!一言でも会話してみろ、二度と呉鎮守府に生きて帰れると思うなよ」

 

呉鎮守府の艦娘の敵意に溢れた視線に晒されながら長門に連絡を入れる。

 

程なくして艦娘たちが長門を先頭にしてやって来た。因みに課業行進の真似事をさせている。

 

「一の体型に整列!」

 

戦艦の金剛を先頭にして一瞬にして決められた順に整列が完了する。

 

「番号!」

 

続いて1から25までの番号が点呼される。

 

「提督、長門以下26名の整列、完了しました」

 

「ご苦労」

 

報告を終えた長門が列の先頭に入って整列が完了する。これが軍隊というものだが呉鎮守府の艦娘は驚いているようだ。因みに大本営の人間も一応軍人なので特に驚いたりはしない。

 

「では挨拶をお願い致します」

 

「今日一日お前らの点検を指導する草鹿だ」

 

「「宜しくお願いします!」」

 

「よ、宜しくお願いします...」

 

勿論声が揃っているのが横須賀でバラバラなのが呉だ。初端から教育の違いをひしひしと感じながらも、遂に年末点検がスタートした。




その幻想をぶち壊す
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