漢体これくしょん 日東丸提督のブラ鎮建て直し物語 作:かのんベール
特に目立った問題もなく点検は進んでいった。俺の心配も杞憂かと思われたその時に事件は起きた。
点検は大本営に任せて俺は少し離れた位置で艦娘を監視していた。呉鎮守府の鹿島ちゃんのないすばでーに視線を奪われている隙に起きた出来事だった。
なにやら俺の艦娘が一人の軍人と言い争っているようだ。他の軍人も何事かとそちらを向いている。
この位置からでは聞こえないのでこっそりと艤装を展開して聴力を高める。
「先月分の給料も殆んど支払われておりません!」
この流れは不味い...!即刻止めに行かねば!
「最近は軍人として尊重されずに、単なる兵器として扱われているのです!提督を替えて欲しいのです!」
不味い不味い不味い!
「貴様らが兵器なのは周知の事実ではないか。何を訳の分からんことを言っているんだこの化け物が!」
吐き捨てるように草鹿少佐が切って捨てる。
「ひ、酷いのです!こ、この人でなしが!なのです!」
「貴様!化け物の分際でこの俺を侮辱するのか!」
電が蹴り飛ばされる。
「テメェ!」
天龍が砲門を少佐に向ける。このままでは間に合わない!
刹那、天龍から躊躇いなく砲弾が発射される。
が、その弾が少佐に届くことはない。俺が打ち落としたのだ。直ぐに艤装を仕舞うと天龍の元へと駆けつける。
「草鹿少佐!お怪我はありませんか!?」
階級は下であるが、今回ばかりは俺の監督不行き届きである。へり下って対応すべきだろう。
「お宅ではどういう教育をしてるんだね!えぇ!?」
「申し訳ございません!」
「そこの長門が気を効かせなければ俺は今頃あの世行きだぞ!」
長門はお前ではなく俺に気を効かせてその位置に立って、此方に砲門を向けているんだがな...。
「万が一が御座いますので、医務室の方へ」
「そんなもの必要ない!今すぐそいつを解体する!」
「あらぁ~?」
龍田がぁ!頼むから龍田を挑発しないでくれ...。
「医務室の方でお詫びの方を...」
上着のポケットから封筒をチラつかせる。あらかじめ準備しておいた金だ。
「ま、まぁ中佐がそこまでおっしゃられるのであれば...」
どうやら冷静になってくれたようだ。
「貴様らは大人しく点検の続きを受けていろ!長門、また何かあったら対処は頼んだぞ!」
「引き受けた!」
「では行きましょうか」
医務室にいた医者に個室を用意させて、二人での交渉に入る。
「ほんの気持ちではありますが、お詫びになります。お納め下さい」
それなりに厚みのある封筒を渡す。
「こんなに...。なにか条件でも?正直天龍を庇いたい訳ではないのでしょう?」
「えぇ、まあ」
「これだけ頂いたんです。ある程度の頼みは聞きましょう」
「では...。今回の件の発端でありますが、給料や兵器云々の下りを無かったことにして頂きたく」
「あぁ…あの訳の分からない戯れ言ですか...」
「先日鎮守府祭を開催するにあたたって、彼女たちに社会常識を叩き込みまして...」
「成る程、その過程で給料だ人権だと騒ぎ出してしまったと...」
「えぇ...。このままだは謀反の意思があると取られかねません。そうなれば私の立場が危ういものとなってしまう...」
「事情は分かりました。しかし今回の件は他の軍人も見ています。天龍の攻撃を無かったことにするのは無理があるのでは?」
「はい。ですので今回の件は、草鹿少佐が電を蹴り飛ばした、それに天龍が激昂した。という流れにして頂きたく」
「つまりこの金額は、私が謂れのない濡れ衣を着ることも含まれていると...」
謂れもないというか事実だけどね
「まあ、艦娘を蹴り飛ばしたところで特に問題もありませんし、私の評判が落ちるということも無いでしょう。分かりました、大本営にはその様に報告しておきましょう」
話の分かる人で良かった...。
「結果は追って大本営から連絡があるかと思います」
「分かりました、ご協力感謝します」
お通夜状態のバスを運転し、横須賀鎮守府へと戻る。精神的に疲弊しきった俺の元に早速電話が掛かってきた...。
「長門、明日の鎮守府運営は任せたぞ...」
再び大本営への出頭が決まった...。
重い気持ちで待合室で迎えを待つ。
程なくして案内されたのは大本営の第一会議室であった。
入室すると既に元帥を始めとした、そうそうたる顔ぶれが集まっていた。
元帥と向き合う形で用意されたお誕生日席へと向かう。
「掛けたまえ」
「失礼します!」
「早速だが、天龍が草鹿少佐に対し敵対行動を取ったことは間違いないかな?」
「間違いありません!」
「君の見た当時の状況を説明してくれ」
「は!当時私は現場より離れた位置で艦娘を監視しておりました所、草鹿少佐が電を蹴る所を目撃致しました。それに激昂した天龍が発砲。これを長門が相殺したものと認識しております!」
「草鹿少佐からの報告と違いありません」
「うむ。では天龍の処分を伝える」
「は!」
「天龍を解体せよ。これをもって、艦娘への見せしめとすると同時に再発防止に努めよ」
「お待ち下さい!」
「これは決定事項だ。少佐の貴様が意見できる内容ではない」
少佐?
「菊地中佐への処分だが、監督不行き届きの責任として減俸及び一階級降格とする」
降格で済んだことを有り難く思うべきか...
「菊地少佐の候補生時代の成績は優秀だと聞く。提督として赴任した後の成果も目を見張るものがあることは事実だ。よって今回は一階級降格という比較的軽い処罰とする」
「寛大なご配慮有り難う御座います!期待に応えられるよう、より一層提督としての職務を果たして参ります!」
「うむ。後日視察員をそちらに向かわせる。追って詳しい日程を伝える。それまでに天龍の解体をもって、艦娘の再教育を命ずる」
「了解致しました!」
これからどうすべきかを考えながら鎮守府へと戻る。
『天龍、至急提督室に来るように』
本当に至急来たようで、直ぐに扉をノックする音が聞こえる。
「入れ」
「し、失礼します...」
かなり落ち込んだ様子の天龍と...
「失礼しますね~」
龍田がやって来た。
「龍田、今回は大切な要件なんだ。すまんが席を外してくれ」
「それは無理な相談ねぇ。天龍ちゃんが解体されでもしたら大変ですもの~」
龍田が薙刀を此方に向けてくる。どうやら薙刀で抵抗するつもりらしい。
「だがそれだけの問題を起こしたことに違いは無いだろう?」
「やっぱり解体するつもりなのかしらぁ?」
「まだそう決まった訳ではないんだがな...」
「本当かしらぁ?」
龍田が油断して薙刀を引っ込める。
と、同時に俺は艤装を展開する。
「え...?」
俺の持てる最大戦力を投入して、一瞬で龍田を大破する。
「ど、どういうこと...」
長門に勝ち続けてきた俺からしたら、軽巡洋艦の龍田を大敗させるなど造作もない。
「天龍を解体するとなれば、お前が黙っている訳がないからな。今までのように艤装を隠しながらでは、俺は死んでしまう。よって少々リスクを背負ってでも、常時艤装を展開することにした」
「大丈夫か、龍田!?」
龍田を抱き起こしながら天龍が睨んでくる。
「天龍、貴様が大人しく解体されれば良いだけの話だ。それともこれ以上の犠牲を出したいのか?」
「だ...駄目よ...天龍ちゃん...」
「天龍、お前が決めろ」
「オレは...」
「さぁ!」
「オレを解体しろ!」
「天龍ちゃん...!」
「よし、じゃあ着いてこい」
「龍田は...」
「医療課の奴に任せる。心配するな」
「分かった...」
「待って...!天龍ちゃん...」
「オレのせいで誰かが傷つのをオレは見たくねぇんだ...。今回ばかりはオレの責任だ、悪りぃな龍田...」
その後もお互いに別れを惜しんで言葉を交わしていた。が...
「そろそろ時間だ」
「あぁ...」
「天龍ちゃん...」
「そんな顔するんじゃねぇよ!天龍様は不死身だからな!またいつでも会えるから心配するな!」
サムズアップした天龍が此方を振り替える。
「挨拶は終わったか?」
「早く連れていってくれ」
今にも泣きそうな天龍を連れて俺は建物を出た。あらかじめ玄関に止めて追いた俺の車へと天龍を乗せて車を出す。
天龍は我慢が限界に達したのか涙が決壊したダムの如く溢れ出ていた。人ってあんなに泣けるんだな...。
普通は工廠で解体するのだが、今回の目的地はそこではない。が、天龍はそれどころではないようで、自分がとこに向かっているのかも分かっていないようだった。
10分ほど車を走らせると、目的地に着いたので天龍を車から下ろす。
「降りろ、天龍」
「ひっく...うぅ...」
階段を登ってから、鍵を取り出して扉を開ける。
「入れ」
「うぅ...」
下を向きながらトボトボと部屋の中に入る。
「まぁ狭いとは思うが我慢してくれ」
「うぇ?」
うぇ?ってなんだよ...。凄くアホの子みたいになってるぞ...。
「ど、どこなんだよここ!」
今更か...。
「俺のアパートだ」
「.........へ?」
俺が部下の解体などする訳がないだろう?
タイトルとかナレーターがネタバレするスタイル嫌いじゃない。マネーの虎とか