漢体これくしょん 日東丸提督のブラ鎮建て直し物語 作:かのんベール
ここはどこだ?
空にはアメリカの戦闘機が飛んでいる。
船の乗組員が慌てながら打電する。
乗組員2人が機関銃に撃ち抜かれる。
機関銃が1機の戦闘機を撃墜する。
それから30分もしないうちに俺は撃沈された。
......。
景色が変わる。また海だ。
潜水艦が近づいてくる。
どうやら俺のことを漁船だと勘違いしているらしい。攻撃はない。
予定通り、地引き網に潜水艦が引っ掛かる。
船がどんどんと傾いていく。
俺は撃沈された。
......。
またか...。
もう何度も撃沈されている。
次は特攻だ。
速力7ノットの船で速力20ノットを越える洋巡艦に突撃する。
特攻できずに撃沈された。
だが、乗組員は諦めてはいなかった。
敵艦のスクリューを目指して泳ぎ始める。
人間魚雷。
彼は軍人ではなかった。漁師だ。
彼らの最後の打電は天皇陛下万歳だった。
軍人よりも軍人らしく、誇りを持って国のために尽くした彼らが俺は好きだった。
そうだ、俺は...
「...っ!」
目が覚めるとそこは地獄だった。だがそこに屈強な漁師は居なかった。変わりに居たのは深海棲艦だ。仲間は全滅。残ったのは指揮官の俺だけのようだ。
だが、絶望はない。俺には目の前の深海棲艦を倒す自信があった。俺は立ち上がると艤装を展開した。やり方は生まれたときから知っているかのように分かった。むしろ今まで出来なかったことの方が不思議なくらいだった。今の俺には二つの記憶がある。小佐になるまでの記憶と、日東丸としての記憶だ。
日東丸。
それは徴用船となった漁船の名前だ。日清戦争のころから民間の船が軍に回収され始めた。それが徴用船だ。特に漁船の徴用船と漁師の組み合わせは最強だった。台風を難なく乗り越え、荒海でさえも掻き分けて進む。さらにレーダーの技術が遅れていた日本軍において人間レーダーの役割をも果たした。彼らは黒潮部隊に配属され、国の盾となるため哨戒活動に当たった。しかし、敵艦隊をどれだけ早く発見出来たとしても打電により敵に居場所がバレてしまっていたため、すぐさま撃沈させられていた。生還率は三割。出撃したが最後、戻ってくることは出来なかった。故に彼らは特攻船と呼ばれた。彼の有名な特攻隊と同じように厚遇された。しかし、徴用船の存在はひた隠しにされていたために記録は殆ど残っておらず、今日までその武勇がもてはやされることはなかった。しかし、地引き網で潜水艦と戦ったり、爆撃機を打ち落としたり、特攻を仕掛けたり、人間魚雷になったりと、分かっているだけでもその武勇は正しく英雄である。7.7mm機銃。良くても57mm砲や、爆雷。いずれも貧弱な武器であった。それでもなんとか成果を出そうと奮闘した海の男達の魂は今、一体の日東丸として復活を遂げた。
その日、どこからともなく現れた少女たちが次々と深海棲艦を撃沈させていった。今まで傷一つ付けることの叶わなかった相手を年端も行かぬ少女たちが倒してしまったのだ。彼女たちを深海棲艦と勘違いして攻撃した艦隊もあった。しかし彼女たちには傷一つ付けることが出来なかった。まるで深海棲艦のように。人々は彼女たちを畏怖した。しかし同時に歓喜もした。彼女たちは少なくとも人類の味方であった。ようやく見いだされた勝機に人類は安堵したのだ。彼女たちはどこから来たのか?何者か?誰もが疑問に思った。しかし、彼女達には記憶がなかった。気づいたらそこに居たそうだ。だが古い記憶はあった。それは彼女たちが戦艦だった頃の記憶。そして撃沈された時までの記憶だ。人々は彼女たちをこう呼んだ。
「艦娘」と。