漢体これくしょん 日東丸提督のブラ鎮建て直し物語   作:かのんベール

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長門ちゃん

俺はボロボロになったイージス艦に乗り込んで帰港した。艤装を展開して生身で帰りでもしたら最悪は実験台にされかねないと考えたからだ。

 

が、結局それも杞憂だった。恐らくは俺の仲間であろう筐体が次々と日本に現れたからだ。俺の帰港は日本海軍初の帰港ではあったが、艦娘によって助けられた他の前線の隊員も同様に帰港を果たしており、俺も助けられた隊員の一人として処理された。

 

筈だった。

 

問題は俺の配属されていた海域には艦娘が出現していなかった点である。もし艦娘が嘘をついているとしたら、ただでさえ多い不安の声を煽ることになる。だが、俺も本当のことを告げることはせずに気を失っていたの一点張りを通した。俺は紛れもなくイレギュラーなのだ。艦娘は読んで字のごとく女だ。だが漁船である俺は男なのだ。結局、俺が実験台にされる可能性はどこまでも捨てきれず、現場を混乱させてまで俺は自らの保身へと走ったのだ。

 

国民や他国への説明のために上層部は大忙しであった。そのため謎の多い俺の海域に関しては俺が自力で帰港したのだと強引に解釈をし、俺を一階級昇進させることで早期解決が図られた。

 

23歳 中佐

 

異例の昇進スピードであった。が、艦娘のインパクトが強すぎて気に止める者は誰もいなかった。棚ぼたではあったが少しは褒めて欲しかった。

 

 

 

艦娘を指揮するには人間から選出された提督が必用とされた。提督には妖精が見えることが絶対条件であった。すぐさま全国から少佐以上の階級の者が集められ、適性検査が行われた。しかし、適合者の数は極めて少なかった。結局大本営に勤務する者と提督として鎮守府に配属される者とを合わせて、当初予定していた人数にギリギリ届いたくらいの人数しか適合者は現れなかった。もちろん漁船である俺には妖精が見えた。結果、俺は晴れて提督候補生となったのだった。

 

大本営の提督候補生仲間は殆どが歳上であり、友達が出来るとかそういうことは期待できそうになかった。俺達は候補生ではあったが一人につき一体の艦娘が秘書艦として与えられた。大本営での教育もあってかその扱いには様々な対応が見て取れた。兵器としてぞんざいに扱う者、性の捌け口にする者、射撃の的にする者、人として尊重しようとする者、腫れ物の様に扱う者。実に多種多様であった。因みに大本営としての教育では艦娘は兵器であるとの見解だった。勿論、人権などは有していない。俺は自分の正体をますます隠すよう努力した。

 

当然俺にも艦娘が至急された。長門だ。まぁ俺はコイツのことが嫌いではない。ただ、ちょっと苦手だ。そのことあるごとにビッグ7なことを自慢するのやめてくれません?こっちは無理やり連れてこられて漁船としての本望を遂げることなく撃沈された身なんですけど…。本当は大漁の旗を掲げて帰るのが俺の喜びな訳であって、間違っても敵を倒すことなんかじゃない。まぁ相手はそんなことは知る由もないだろうがな。まぁ要するに未練と嫉妬だ。

 

「定刻だ、行くぞ」

 

「うむ」

 

秘書艦には決まった回数の訓練が課せられている。これには提督も同伴して沖に出なければならない。

 

近海に敵艦を含めた障害が無いかを確認する。次に閃光弾を打ち上げて訓練の開始を近海の船に伝える。最後に大本営からの許可を取り付けて、訓練開始である。訓練の内容は提督が決めるために様々であるが...

 

「こい!長門!」

 

「うむ!全力で行かせて貰う!」

 

俺のメニューは演習だ。

 

「また負けてしまったか...。やはり提督は強いな」

 

「いや、長門の練度も上がってきている。抜かされる日は近いかもしれないな」

 

そう、現時点では俺の方が強い。ビッグ7よりも哨戒挺のが強いのは何故か。その答えは数の暴力だ。長門という戦艦が一隻しか存在しなかったのとは反対に東日丸は何十、何百と存在していた。その力の集結が俺という漢娘なのだ。ん?娘じゃないな...。息子か?いや...、ん?あれ?うーん...

 

「提督?どうされたのだ?具合が悪いのか?」

 

「ん?あぁいや、何でもない。早く帰って補給でもするか」

 

「そうだな...」

 

「なんだ、あんまり嬉しそうじゃないな」

 

「やはり提督は一緒に食事してはくれないのだな」

 

「あぁ...。俺は部屋で食べる」

 

「兵器と食卓を同じくするのは嫌か?」

 

とても辛そうに、でもどこか期待の隠った眼差しが向けられる。しかし、俺には答えることができない。

 

「そう深く考えるな、長門。別に俺が艦娘であることを隠していることと俺がお前たちを嫌悪していることはイコールにはならない。俺には人間のときの記憶がある。俺には両方の立場が分かる。お前たちは兵器だ」

 

「...っ!」

 

「だが、人間でもある。人間とはどこからが人間なのか。そんなのは法学部の奴にでも聞いてくれ。経済学部の俺には分からん。だが、少なくとも俺は人間だし、お前たちも人間だと思う。だからそんなに気にしなくてもいい。考えるだけ無駄だ。いくら考えたところでお前という存在が変わることはないんだからな」

 

「そうか...。やはり提督は優しいのだな。いつか提督が食事に誘ってくれる日を待っているぞ」

 

「あぁ、いつかな...」

 

いつかは来ない。

 

俺に食事は必要ない。必要なのは補給のみだ。鎮守府の運営は次のように規定されている。

 

原則として艦娘には食事を与えること。但し物資が不足している際にはこの限りではない。

 

俺は部下の立場を理解しようと努力してきた。しかし結局は部下に恨まれながら死地へと送り出すことしか出来なかった。次こそは艦娘の立場を理解出来る提督になろうと、最前線の辛さを少しでも理解するために食事は捨てた。これは死んでいった部下達へのせめてもの罪滅ぼしなのだ。

 

(次こそは俺の目指した指揮官となる。だからいつかは俺を赦して欲しい...)

 

十字架を背負って生きていくのもなかなかに肩が凝るのだ...。




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