漢体これくしょん 日東丸提督のブラ鎮建て直し物語 作:かのんベール
艦娘達が退室してから程なくして電話の音がなる。
「はい、横須賀鎮守府です......はい...はい...少々お待ちください」
長門の電話応対もすっかり板についてきたな。最初はあの不遜な口調を直すのに苦労したが、これも特訓の成果だな。
「提督、大本営から電話だ」
突然不遜な口調にもどった長門がこちらに子機を突き出している。
「ああ」
保留ボタンを押して電話に出る
「只今お電話変わりました、提督の菊地です」
『ああ、菊地くんか。どういうことだね!?』
「申し訳ありません。現在艦娘から当時の状況を問いただしているところですがどうやら深海棲艦の動きを見落としたようでして、後ろに回り込まれてしまったようです」
『回り込まれただと!どうやったらそんなミスが出来るんだ!しかも戦艦まで投入しておいてだぞ!?こんなことは前代未聞だ!君の能力を買って送り込んだのは間違いだったというのかね!?』
「返す言葉もございません。ただ弁明をさせて頂きますと、前任の提督の艦娘の扱いにより、艦娘たちは完全に疲弊仕切っておりました。今までのツケが回ってきたのだと思われます。仮に戦艦を参加させていなかった場合の被害は今よりも遥かに大きなものだったと予想されます。やはり、最低でも一週間の横須賀鎮守府の機能の停止を具申します」
必死の交渉の末になんとか渋る大本営を説得して一週間の休みを獲得した。
貨物船を攻撃することで減ったコンテナが海に落ちたと誤認させ、さらにその罪を深海棲艦に擦り付けて、休暇を得る。さらに食料も手に入る。一石二鳥どころの話ではない!モラルには反しまくっている気がするがそこら辺は見なかったことにする。
作戦が成功しほくそ笑む俺の元に邪魔が入る。
危険な鎮守府に着任すると決まり即座に購入した監視カメラがさっそく役に立ってしまった。
実務机に設置したモニターには天龍の姿が写し出されている。天龍は深呼吸をすると艤装を展開し、その主砲を提督室の扉越しに俺へと向ける。当然このままでは俺が死んでしまうので即座に艤装を展開し先制攻撃を仕掛ける。
放たれた砲弾は扉ごと天龍を吹き飛ばし壁に打ち付ける。砂ぼこりが俺の姿を隠しているうちに、追撃を加える。本来ならば水中で使うべき爆雷をぶん投げて爆発させる。
こうかは ばつぐんだ!
テンリュウは たおれた!めのまえが まっくらに なった...
爆発音に釣られて艦娘たちが集まってきた。
「提督、これはどういうことでしょうか」
加賀が鬼の形相で詰めよってくる。怖い。
「しらん。暴発でもしたんだろう」
「そんなことあり得ないデース」
「金剛か。なら、お前にでもやられたんじゃないのか?」
「金剛さんがそんなことする訳ないじゃないですか!誤魔化さずにちゃんと答えて下さい!」
「そうねぇ。答え次第では...」
答え次第ではどうなるんでしょうか龍田さん...。
「そう言われても知らんものは知らん。突然扉が吹き飛んで、外で天龍が倒れていたんだ。そもそも、艦娘、それも何故だかは知らんが艤装を展開した天龍相手にただの人間である俺が太刀打ち出来るわけがないだろう。長門だってお手洗いに行っていたんだ、手伝ってもらったと言うこともない」
「それは...」
「そもそもなんでこいつがここで艤装を展開しているんだぁ?」
「‥......」
「あんまり反抗するなら見せしめが必要かもしれんな」
「見せしめなら私がなります!だがら皆さんには手を出さないで下さい!責任は私にあります」
「責任がお前にあるというのはどういうことだ、大淀」
「提督の暗殺を計画したのは私だからです」
「待って下サーイ。計画したのは私ネ。大淀は巻き込まれただけデース。責任は私にありマース」
「あらぁ?提案したのは私のはずだけれど?」
あ、やっぱり物騒な発想に至ったのは龍田さんなんですね。
「もういい、どうせここにいないだけで他の奴も関わっているんだろう。全員処分していたら切りがない。今回の件は不問だ。とっとと天龍を入渠ドックにぶちこんでおけ」
「よいのですか...?」
「だが、次はない。もし俺が攻撃されたならば貴様らの命はない。大本営にも遺言で伝えといてやる。その時は疑わしきは罰せよだ、みんな仲良く解体してやるからな」
ここまで言っておけば大丈夫だろう。
「取り敢えず報告書は天龍抜きで仕上げろ。後日天龍に確認をとる。いいな、金剛?」
「分かったネ...」
「では解散だ。天龍は龍田が運べ」
龍田が天龍を担ぎ上げるのを確認してから、提督室に戻る。
内線番号の一覧から工廠の番号を確認する。810か...。何十年前のネタだよ。まさか海外で先輩が発見されるとはな...。
『はい』
いや、「はい」だけじゃ駄目だろ。せめて部署か名前くらいは言えよ。
「提督の菊地だ。鎮守府内で誤爆事故があったので、夕張に壁と扉の修復を頼みたいんだが」
『誤爆?分かりました今すぐ向かいます』
取り敢えず夕張が到着するまでに書類を作成しておくか。必要資材の申請用書類すらこの鎮守府にはないのか...。いや、無いのが普通なのか?まぁ鎮守府は提督に一任されてるからな。普通なんてのは個人の裁量か...。
なんにせよ艦娘の教育が急務だな。書類の処理も出来ないようでは話にならん。
しばらくすると夕張がやって来た。俺の視線が気になるのか仕事に集中できていなさそうだったが、俺が席を離れるわけにもいかない。いつ届けられるか分からない報告書を待たなくてはならないのだ。だがら我慢してくれ、夕張メロンよ。お世辞にもメロンとは言えないけど。
「失礼するネ」
「なかなか早かったな。どれ今確認してやろう」
どれどれ。おっ、字は上手だな。まぁその内デジタル化するからあんまり関係ないけど。
「コンテナ船の被害状況だが、コンテナが落下とあるがそれは本当か?」
「そうだよ。コンテナを数えたけど一つ足りなかったネ」
「コンテナ番号は」
「港に戻ってから確認するそうデース」
「じゃあ訂正だな。まずコンテナが落ちた。ではなく出航時よりコンテナが一台減っていたため、敵艦による攻撃の衝撃で落下したと推測される、だな」
「細かいネ」
「そんなことはない、目撃者がいないのに断定形では駄目だ。それとコンテナ番号についても注釈を付けておけ。大本営に確認を取るのを怠る可能性に繋がる」
「分かったネ」
「あと、この護衛対象船の欄だが」
「まだあるネ...」
「民間の船との表記では不十分だ。正しくは日本郵船のNYKアルテリアだ」
「そこまで...」
「ちゃんと記録しないと今後に活かせないだろ。護衛対象のノット数や規模は重要だ。赤文字で訂正しておいたから、会議室に戻ってから修正して再提出だ。そしたら解散していいぞ」
「そこまでやったなら提督がやっておいて欲しいデス。みんな慣れない作業でくたくたデース」
「駄目だ。それではいつまでたっても出来るようにはならん。それに慣れてしまえばそんなに苦でもない」
「提督は艦娘をどうしたいのネ...」
「古きよき自衛隊だ。旧帝海国軍でもなく今の腐りきった海軍でもなく、人命を尊ぶことの出来る海自の精神を取り戻す」
「提督...?」
「......という大義名分の元で貴様らに雑用を押し付けて、さらに細かく指摘して精神的に追い詰めて愉悦に浸るのが最終的には望ましい」
失敗した。正直誤魔化せたか怪しいな。まさか信条に関わる質問をされるとは思わなかった...。
まぁ、さりげなく旧帝国海軍もディスっておいたから艦娘からしたら反感をもつ信条だと思うし、多分マイナスの方向で印象は動いているはずだ。俺も元は帝国海軍の船だし、旧帝国軍の全てを否定するわけではない。が、終戦間際の幹部を好きになれというのは正直無理だな。
かつてここまで不遇なヒロインが存在しただろうか?