以下の文章を読んで問題に答えなさい。
それは不思議な依頼だった。
「頼むから、もう貴女しかないわ。」
「だからってなあ、内容が内容なんだよなあ。」
「貴女なら私の知らないレパートリーがあるかもしれないでしょう。だから頼んでるの。」
「だって、おかしいんだぜ。なんで私のところまで料理の依頼が飛んでくるのか。」
それはいつもいつも本を借りに行く、紅魔館のメイドの十六夜咲夜が私に頼んできたという奇妙なこともあるが、ただそれだけではない。
「お嬢様が他の人の料理を食べてみたいと仰るので、白澤やら半妖やらに(1)頭を下げたけれど、誰も引き受けてはくれなかった。」
「妖夢ならやってくれそうなのに。」
「そんな【1】ヨユウはないとのことよ。あの怪人が家計と労力に多大な影響を与えているからなのね。」
「仕方ないな。」
そう言って私は椅子から立ち上がった。
「この私、霧雨魔理沙がこの【2】キュウチを救ってみせるぜ。」
「ちゃんとやってくれるのでしょうね。そうじゃなきゃ、本当に針を千本呑ませるからね。」
「あのなあ、私だってちゃんとやるんだからそんなに脅さないでほしいぜ。ハイプレッシャーは苦手なんだぜ。」
そうは言っても信用を勝ち取れることはなく、あくまでも咲夜は自身が(2クライアント)だから(3)私を頼っているといった風に解釈して間違いなさそうだった。そんな態度だから、私も彼女のことを少しは警戒していた。
「うっひゃー。こんな設備見たことないぜ。」
「紫がこの前、こちらにいらした時に『外界の料理店のキッチンに似た大型設備ね。』と言ったわ。」
「うちにある冷蔵庫もかわいいもんだぜ。」
この咲夜の自慢の顔が憎たらしいが、とりあえず中を確認する。ひとしきり見終わったところで今度は調味料を。勿論のこと、醤油やごま油、また私には耳でしか聞かなかったナンプラーなどもあった。(4)色々有りすぎて言葉を失った。
「まだ、足りないものがあるなら言ってほしいわ、魔理沙。」
「上等じゃないか、やってみせるぜ。ここのわがまま姉さんをぎゃふんと言わせてみせるぜ。」
「助かるわ、魔理沙。」
こんな環境で飯をつくるだなんて、人生他にあるだろうか。最高級の舞台でできるなら誰でも飛び込んでいくに違いない。ますますこの空気を味わいたい、そう思った。
「これでも一人暮らしている、一、女だからな。」
「そうね。楽しみにしているわ。一応私も手伝うから、ちゃんとやりきってほしいわ。」
「もはや中途【3】ハンパには出来っこなさそうだぜ。だから(5)大船に乗ったつもりでいてほしいぜ。」
本気の目の色を見せると、笑顔で合図された。レミリアの知らない(6)一面が見られるかもしれないというちょっとした期待も含めつつ、お米に手をだした。
「お嬢様、夕飯ができました。」
「なら、すぐに向かうわ。」
咲夜の服に仕掛けた無線で向こうの様子を聞いていたが、なかなかスリルのある状態だと感じた。よくこんな環境で生きていけるな、とさえ思った。それは兎も角、まもなくレミリアへの挑戦が始まる。果たして、彼女の口に、そして咲夜【4】カンシュウの味になっているか。こういうどきどきを(7)昔の人も味わったのだろうか。隠しカメラで見る紅魔館は、普段飛び込んで見える世界とはかけ離れていて、自分の想像以上に優雅な生活をしていた。咲夜はいつもこんな光景を目にしていたとは。
「それでは、いただきます。」
当の本人は全く違和感がなさそうにありついている。なんか、吸血鬼のイメージが飛んでいった。まるでどこぞの貴族の食事会みたいな雰囲気だ。しかし、本日の料理担当はいつもと違う。
「ねえ、咲夜。」
まずい、ばれたか。
「(8)」
その言葉を聞いて思わず涙が出そうになった。まさか、なかなかの評価をしてくれるとは思ってもみなかった。
「ありがとうございます。」
隙を見てこちらにいい顔をしているのが憎いが、気分は舞い上がっていた。こんな感覚は(9)宇宙から世界を覗いているようなものだろう。
「では、いまのうちにデザートの準備を。」
そう言い残して咲夜は部屋を後にした。
「完璧ね、魔理沙。」
「ここまでいい評価されると思っていなかったから拍子抜けしたぜ。さて、フィナーレと行きますか。」
そして、最後を締めるべく、ケーキを運びながらあの部屋へ向かった。
「お待たせしました。本日のデザートです。」
そして私の自慢のミルクレープが出される。扉の向こうでは本日のシェフが様子見しているとは考えていないだろう。声だけでも満足そうにしているようだから、どんな表情をしてくれるか、わくわくするに決まっている。咲夜からゴーサインがついに出た。
「おう、レミリア。美味しそうなもの食べてんじゃん。私に分けてくれてもいいんだぜ。」
「な、急にどこからわいてきたの。」
それでも、頑固として分けずにほおばったのを見た。めちゃくちゃ気に入ってるようで結構結構。
「まあ、分けてくれたらレシピを授けてやってもよかったのになあ。」
「え!?」
「当たり前だぜ、頑固ちゃん。」
レミリアはまるで石像のように固まってしまった。
「お前が咲夜に、他のひとのご飯が食べたいってこぼしてたみたいでな。それで私に(10)が立ったわけだ。私の料理はお口にあわなかったかい。」
「魔理沙もちゃんとそういうスキルはあるのね。感心したわ。」
「私を見縊らないでほしいぜ。これでも一人暮らしして自炊してるからな。」
「そうだったわね、【5】シツネンしていたわ。これは一本取られたわ。」
「咲夜、大成功だな。」
咲夜の朗らかな笑顔が見れてほっとした。あいつの笑顔なんて割と見かけないし、そもそもあまり会うこともなかったのもあった。ここまですっきりするとも思ってなかった。これで生計を立てる、ということまでは厳しいとしても偶にはやってみても面白そうだ。
こうして、今宵の紅い豪邸は今日も優美に一日を過ごしていくのだった。
問題
【1】から【5】の漢字を含むものはどれか。
【1】ヨユウ
1 党首がユウゼイする。
2 ユウダイな眺め。
3 ユウギに厚い人。
4 ユウフクに暮らす。
【2】キュウチ
1 コウキュウの平和。
2 キュウソ猫を噛む。
3 カキュウの用事。
4 議論がフンキュウする。
【3】ハンパ
1 ジュウニヒトエ。
2 カッパを着る。
3 この事態のホッタン。
4 ハシゴで上へ行く。
【4】カンシュウ
1 サークルのカンゲイ会。
2 カンシの目をくぐる。
3 ムカンサで出品する。
4 総理カンテイの近く。
【5】シツネン
1 その考えをネントウにおく。
2 カネンセイのある気体。
3 ネンチャクテープ
4 ジネンジョを使った一品。
(1)頭を下げるの、ここでの正しい意味として合っているものを選べ。
1 依頼する
2 感謝する
3 指導する
4 謝罪する
(2)クライアントに合う表現として最適なものを選べ。
1 観客
2 事務員
3 仲間
4 顧客
(3)「私を頼っている」に合う表現として最適なものを選べ。
1 depend on me
2 take me to
3 pick me up
4 keep me from believing
(4)色々有りすぎて言葉を失った。とはどういうことか。最適なものを選べ。
1 言葉を失う前に異変が発生していたということ。
2 見かけは素晴らしいが、実際は醜いありさまだと感づいたということ。
3 大きい冷蔵庫や様々な食品や調味料があり、驚愕したということ。
4 保管されていた食品や調味料が、素晴らしい鮮度であったということ。
(5)「大船に乗ったつもり」とはどういうことか。最適なものを選べ。
1 覚悟をもってほしいということ。
2 仲間同士であるということ。
3 信頼してほしいということ。
4 ただ見守ってほしいということ。
(6)一面を本文の意味で英訳した際に最適なものを選べ。
1 attitude
2 impression
3 appearance
4 expectation
(7)に関連して、正しいものを選べ。
1 12世紀にノルマンコンクエストが行われた。
2 藤原頼道は征夷大将軍になっている。
3 元の首都は大都である。
4 栄花物語は大鏡が作られた後に作成された。
(8)に入るのに最適なものはどれか。
1 いつもと違うわ。
2 いつにもまして、腕をあげたかしら。
3 なにか仕組んだかしら。
4 食べられるものじゃないわ。
(9)に関連して、正しいのはどれか。
1 太陽の爆発現象をプロミネンスという。
2 衛星には火山がない。
3 絶対等級は、恒星の位置を1パーセクにした時の明るさのことである。
4 宇宙の物質構成は、目で見えるもののみで説明はできない。
(10)に入る語句を選べ。
1 白羽の矢
2 めど
3 道標
4 髪
解答
【1】 4 遊説 雄大 友誼 裕福
【2】 2 恒久 窮鼠 火急 紛糾
【3】 3 十二単 合羽 発端 梯子
【4】 2 歓迎 監視 無鑑査 官邸
【5】 1 念頭 可燃性 粘着 自然薯
(1) 1 頭を下げるという表現には、1か4の意味しかない。ここでは謝罪の意は読み取れない。
(2) 4 顧客、来談者という意味。
(3) 1 その他は全く意味が違う。
(4) 3 他はそういう描写がない。
(5) 3 他はこの文意にあわない。
(6) 3 一面とは、料理をつくったのが魔理沙だったと知らされた時のレミリアの様子のことを指す。1から、態度、印象、様子、期待。
(7) 3 11世紀、なっていない、先にできた。
(8) 2 涙が出そう、なかなかの評価、そのほかにも褒められている描写がある。
(9) 4 フレア、ある(イオなど)、10パーセク
(10)1 文意に沿うのはこれだけ。
全15問