Fate/Advent Hero   作:絹ごし

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第23話「遠い夕暮れ」

 囀るような信号機の音響と共に、車のエンジン音が横を行き交う。新都は、相変わらず人の往来が盛んであった。

 様々な店舗が立ち並ぶ大通り。ガラス張りのショーウィンドウには、目を引くような晩冬の流行の衣服が飾られている。

 

「桜ちゃん。なんか気になる服とか、着てみたい服とか、この辺りに有ったりしない?」

 

「いえ、特には有りませんが…。それに、このお洋服とかお値段凄いですよ?」

 

「むぐぐっ…た、確かに…」

 

 何か、傍らを歩く少女が、興味を示している衣服は無いかと様子を窺うが、反応は芳しく無い。

 それどころか、此方の財布の中身を気遣われる始末だ。不甲斐のなさに、思わず珍妙な唸り声が出た。ショーウィンドウから後退り、歩みを再開する。

 

「「…………………」」

 

 しかし、真司は碌な計画も立てず、閃きの勢いのまま桜を連れ出してしまった。

 何をどうすれば、彼女を元気付けられるのか、皆目見当がつかない。見事にやる気が空回りしていた。

 

「あの、兄さん」

 

「うん、どうした?」

 

 暫しの間、当て所なく街を彷徨っていると、不意に桜が歩みを止めて呼びかけて来た。

 咄嗟に振り返り、真司は桜の足の向き先を目で追う。そこには、二階建ての大きな書店があった。

 

「随分でかい本屋さんだなぁ。そういえば、なんかの本探してるって言ってたっけか?」

 

「はい、少し前に雨に濡らして、読めなくなってしまった本を、このお店で探したいんですが……」

 

「よっし、決まりだね。俺も探すの手伝うよ」

 

 一旦の目的が決まり、真司は内心で安堵する。

 もしも、このまま闇雲に街を彷徨って、無為な時間を過ごしてしまったら、何故新都に来たのか分からなくなる。

 今日は絶対に楽しい一日にしなければならないのだ。決意を新たに、真司は意気揚々と書店へ入った。

 

 

 

 

○○○

 

 

 

 扉に取り付けられたベルが、風鈴のような涼やかな音を奏で、来客を告げる。

 ペンダントライトの照明と、濃い茶褐色が大半を占める木造の内装が、落ち着いた雰囲気を店内に醸し出している。ザ・純喫茶だ。

 店内を清掃していた店員に案内され、真司と桜は席に着いた。歩き続けた足を労わるように、真司は太腿を揉む。

 

「ふぃー、丁度いい場所に喫茶店あって助かったなー。ごめんね桜ちゃん、散々歩かせちゃって。疲れてない?」

 

「兄さん、私はこれでも運動部に所属してるんですよ。体力だって去年よりも相当ついたんですから」

 

「えっ………。弓道部って文化部だったんじゃないの!?」

 

「もう……部長や衛宮先輩に聞かれたら大変な事になりますよ。弓道も立派な武道なのに」

 

 書店での買い物を終えて、約二十分。こうして、他愛の無い会話を交わせる程度には、桜の調子も少しずつだが戻ってきた。

 

「ふーん……」

 

 注文したコーヒーが来るまでの待ち時間。

 真司は手持ち無沙汰に、桜と書店で探し当てた洋書を手に取り、パラパラとページをめくっていく。

 だが、何が書かれているのかさっぱり理解できない。綴られた文字は英語ですら無かった。

 本の邦題は、"変身"というらしい。奇しくも、真司が鏡の前で幾度と無く口にした言葉と同じであった。

 桜に本のあらすじを教えてもらったところ、変身といっても、その意味とは似ても似つかぬ程に、暗鬱としたものだったのだが。

 

「変身かあ………。桜ちゃん、どうする? もしも、この本のお兄さんみたいに、俺が虫に変身しちゃったら」

 

 自らの境遇と重ね、真司が何気なく口にした揶揄いの言葉。

 

「———大丈夫ですよ。そんな事、何があっても、私が絶対させませんから」

 

 直後、その語尾を打ち消すように、桜の言葉が覆い被さった。手にした本から目を離し、真司は怪訝混じりに顔を上げる。

 こちらを真っ直ぐに見据える桜の双眸。安らぎを覚える筈の彼女の眼の奥で、虚ろな影が蠢いた気がした。

 

「な、なーに真面目に答えてるのさ。本の中の出来事なんだから、もっとこう………おっ、コーヒー来たか」

 

 コトリ、と陶器が控えめに置かれる音。鼻孔をくすぐる独特な香り。それらが、ほんの一瞬だけ真司の意識を逸らす。

 再び真司が視線を戻す頃には、既に桜は好奇心で注文したというブラックコーヒーを冷まそうと、息を吹きかけていた。

 

「熱っ……苦っ……」

 

 恐る恐る、チビチビと、液体の極少量を啜っただけだというのに、桜は熱さと苦味の挟撃に遭い、その顔に可愛らしい渋面を浮かべる。

 先程の感覚は、気のせいだったのだろう。

 

「ありゃあ…。やっぱり、まだ桜ちゃんにブラックは早いって。こっちのカフェラテ飲みな、カフェラテ」

 

「あっ……、あのっそのっ……」

 

 見かねた真司は、自分が注文したコーヒーを桜に差し出した。代わりに桜のコーヒーを受け取り、容器の中の黒い水面を見つめる。

 何故か、あたふたとした手振りで、微かに頬を紅潮させている桜を尻目に、真司はカップを手に取り口をつけた。

 見た目は高校生であるものの、中身は立派な大人なのだ。ブラックの苦味だって楽しめる。

 

「熱っ! 苦っ! …………あっ」

 

 と、飲む寸前まで思っていた。予想外の熱さと苦味に、真司は舌を出して仰け反った。

 寸刻にも満たない静寂が、二人の間を揺蕩う。やってしまった。だが、時既に遅し。対面に座る桜は口元に手を当てて、必死に笑いを堪えていた。

 

「ふ、ふふふ……。に、兄さんにも、まだ早かったんじゃないんですか? カフェラテ飲みましょうよ、カフェラテ」

 

「う、うぐぐぐ……」

 

 悔しげに呻き声を上げ、差し出されたカップを押し返しながらも、真司は胸の内でホッと一息をつく。昨晩から暗い面持ちだった桜が、漸く笑顔になってくれたからだ。

 

「べ、別に心配しなくていいよ、飲んでやるって。今のはちょっと熱くて驚いただけだし。………ゔっぷ」

 

 それはそれとして、絶対に認めたくない。子供舌の癖が抜けきってない事実など。

 再び、ブラックコーヒーを味わおうと試みる。だが、無理なものは無理であった。

 真司が堪えきれずに渋みのある吐息を漏らすと、桜は眦をさらに緩ませた。

 

「す、すみませーん。追加で注文いいですかー?」

 

 自分で引き受けたというのに、すごすごと送り返すのは情けな過ぎる。

 甘味という援軍を添えて、真司はゆっくりと、苦い黒水を攻略していくのであった。

 

 

 

 

○○○

 

 

 

 陳列された水槽の中の明かりが、照明代わりの仄暗い空間。大小様々な熱帯魚たちが、透明なガラスに仕切られた水の中を回遊している。

 

「見るだけなら楽しいんだけど、飼うって話になるとなぁ……」

 

 真司は溜息交じりに、水槽の中を泳ぎ回る魚たちを眺める。

 子どもの頃は、よく外で捕まえてきた虫を飼育する事もあった。だが、今になって考えてみると、可哀想な事をしてしまったと思う時がある。

 元々居た居場所から無理矢理に連れ出して、狭い籠の中で一生を終えさせるのだから。

 天敵に捕食される危険から保護したという解釈も出来なくはないが、どうにも言い訳じみている。

 

「つーか、なんでこんなに辛気臭い事考えてるんだ」

 

 真司は眼前の水槽から目を離し、通路の突き当たりで屈んでいる桜に歩み寄って行く。そして、同様に隣に屈み、彼女が見ている水槽を覗き込んだ。

 薄い被膜状の寒天質。被膜の下に連なるように伸びた触手。実に典型的な形をしたクラゲだ。

 クラゲは水の中を、そのまま溶けて消えてしまいそうな儚さで漂っている。

 

「クラゲってさ、魚以上に何考えて生きてるのかわかんないよねー」

 

 真司は水槽の前で手を振りつつ、一定の間隔で同じ動作を繰り返しているクラゲに対して、率直な疑問を述べる。

 すると、桜が一息の間を置きながらも、真司の疑問に答えてくれた。

 

「………多分、本当になんにも考えてないんだと思います。クラゲには脳が無いらしいですから」

 

「へぇー、初耳だよそれ。確かに、身体の中なんか丸見えなのに、それらしいもの無いもんなぁ」

 

 納得の声を上げて、真司は透明な被膜の中身を凝視する。もしも、仮に、クラゲに脳味噌があったとしたら。

 相当にグロテスクな生き物になっていただろう。その見た目を想像してしまい、真司は内心で身震いする。

 

「…………」

 

「……もう飽きちゃった? 鳥とか兎の方とか見に行く?」

 

 そうして暫しの間、傍で一緒にクラゲの漂う姿を眺めていると、横から視線を感じた。

 ゆっくりと隣を見やり、別の場所へ移ろうかと提案する。しかし、桜はかぶりを振って水槽に視線を戻した。

 

「いえ、そうじゃなくって。…何も考えずに生きられるなんて、ちょっとだけ羨ましいなって思いませんか?」

 

「——————」

 

 ———考えるから駄目なんだ…。何も考えなければ…。

 

 コップから溢れた水のように、不意に桜の口から呟かれた言葉。その言葉に、真司は遠い夕暮れの中で、苦悩に塗れた自分自身を脳裏に浮かべた。

 

 ———私は、多くの人々の為に戦う貴方とは違う。貴方の掌から零れ落ちてしまう、たった一人の為に戦っている。

 

 それだけではない。自らの存在を怪物と蔑みながらも、命を尽くして戦おうとした彼女の、決意に満ちた眼光も。

 

「あ、あー…。桜ちゃんの言ってる事、わかるかも。考えれば考えるほど、……迷っちゃう時とかあるもんな」

 

 屈んだ姿勢を崩して、真司は桜の言葉に同意する。意図せず、発した声に暗い色を混ぜてしまった。

 それを敏感に感じ取ったのか、桜は僅かに瞑目した後に、茶目っ気のある微笑みを頬に滲ませて、こちらを茶化してきた。

 

「……意外です。単純な兄さんにも、迷う時があるんですね」

 

「い、いやいや桜ちゃん、少し訂正してもらおうか。俺は単純なんかじゃなくって………純粋。そう、純粋な男なんだよ」

 

 純粋。という単語をどうにか絞り出し、真司は桜に抗議を申し立てる。其処だけは譲歩出来ないのだ。

 すると、桜は朗らかな表情を一転させた。ひうっ、と喉を痙攣らせた後に両手で顔を覆い隠す。

 何か、恥ずかしい出来事を思い出した様子だ。左側の髪を結んだリボン。その下の左耳が、茹で上がった蛸のように紅く染まっていた。

 

「はっはーん」

 

 予期せぬ反撃の機会。逃す手は無い。歓喜の趣くままに口角を吊り上げた真司は、どんな事を思い出したのか追及してやろうと口を開く。

 

「どうしたのさ桜ちゃん、もしかして———」

 

「———に、ににに兄さんっ! ワンちゃん見に行きましょう、ワンちゃん!」

 

 しかし、それは叶わなかった。追求の言葉を言い終わらぬうちに、桜が機敏な動きで背後に回り込み、真司の背中をグイグイと押してきたからだ。

 しかも、よりにもよって犬のコーナーまで誘導しようとしているらしい。反撃の算段は、敢え無く犬への恐怖で砕け散った。

 

「ちょっ、桜ちゃん待って。俺、犬駄目なの知ってるよねっ!?」

 

「せ、せっかくペットショップまで来たんですから、この際克服しちゃいましょうよっ」

 

 羞恥から逃れようとする必死の誘導。恐怖から逃れようとする必死の抵抗。しばらくの間、拮抗した二つの感情は後者が折れる事によって収束した。

 

 

 

 

○○○

 

 

 

「この辺りに、こんなに広い公園なんてあったんだなぁ。知らなかったよ」

 

 冬枯れによって、やや茶色くなった芝生の広場。芝生を囲むようにして立ち並ぶ広葉樹の木々。

 新都での買い物を満喫し、帰路につく頃合いかと考え始めた真司に対して、桜は最後に寄りたい場所があるのだと頼んできた。

 それが、この広々とした森林公園だった。時刻は午後に差しかかって久しい。太陽が傾き始め、青い空に紅が掛けられている。

 下校途中の小学生たち。散歩をしている老人。デート中のカップルなど、各々が各々の時間を過ごしていた。

 

「私も、ここに来るのは十一年ぶりです。全然変わってないなぁ……」

 

 懐古の念を帯びた瞳で、桜は景色を見渡すと、灰色の石煉瓦の道を沿って歩く。

 そして、屋根の取り付けられたベンチに座り込み、さりげない所作で隣の空いた空間に手を置いた。

 流石に、広い公園を歩き回るつもりは無かったか。やや残念に思いながらも、桜の所作に促された真司は、彼女の隣に座る。

 

「十一年っていうと、俺が桜ちゃんに会う一年以上前か。どうして来なくなったの?」

 

「……丁度、その頃だったんです。私が、間桐の家に養子として貰われたのは」

 

 質問を口にしてから、真司は後悔する。少し想像を働かせれば、察することができただろう。最後の最後で落ち込ませてどうするのだ。

 十年前、深山町を一緒に散策したあの日以来、真司は養子に関する事は極力触れないようにしてきた。

 血の繋がった家族が居ない事など、引け目に思う必要はない。自分が居るのだから、もう孤独に思う必要は無いのだと安心させる為に。

 

「そ、そうだったんだ…。ごめん、無神経な事聞いちゃったか…」

 

 不安げな面持ちで、真司は謝罪を述べながら、傍に座る桜の様子を一瞥する。

 だが、真司の予想とは裏腹に、桜は柔和な表情を浮かべていた。

 

「無神経もなにも、私から話を振ったつもりなんですよ? ……十一年も経ったんですから。ある程度は踏ん切りもつきます」

 

「そ、そう…? じゃあさじゃあさ、この公園でどんな風に遊んでたのか覚えてる?」

 

 間桐の家に来る前の桜は、どのような子どもだったのか。とても気になる。

 真司は、遠慮と好奇を織り交ぜたどっちつかずな声色で、話の続きを促した。

 

「……………」

 

「桜ちゃん?」

 

 しかし、返事は無い。桜は真っ直ぐに芝生の広場を眺めていた。ほんの少しだけ見開かれた双眸の先に、一体なにがあるのか。真司は首だけを忙しなく回し、周囲を見渡す。

 あどけない笑い声。狭い歩幅ながらも、精一杯駆ける足音。そこでは、姉妹と見受けられる幼い少女たちが、追いかけっこをしていた。

 腕白そうな姉が前を走り、大人しそうな妹が後に続く。少し離れた所では、母親と思しき女性が二人を優しく見守っている。

 

「…………あんな感じ?」

 

 紫色の髪が、肯定を示すように縦に揺らめいた。やがて、遊び疲れた少女たちは、母親に連れられて家路へ向かう。

 母親を挟んで手を繋ぎ、今日の晩御飯はなんなのかを、明日はどんな事をして遊ぼうかを、期待に弾ませた声色で話し合いながら。

 

「……………?」

 

 ふとした拍子に、真司は自分の左手を見やる。いつのまにか、桜の右手が寄り添うようにして重なっていた。無意識なのだろう。桜自身も気づいていない様子だった。

 

「仲のよさそうな家族、でしたね」

 

「うん、そうだね」

 

 どこか心地の良い不思議な沈黙が、桜の優しげな声によって霧散してゆく。その声を皮切りにして、桜はこの場所での思い出を少しずつ語り始めた。

 仕事で忙しい父親の代わりに、母親がこの公園に自分たちを遊びに連れてきてくれた事。

 鈍臭い自分では、いつまで経っても足の速い姉に追いつけず、終始振り回されていた事。

 最後に、たまの休日には、母親の友人であるおじさんが遊びに来て、旅先での取材の話をしてくれた事を。

 

「……………」

 

 幼く、何も知らなかった桜には、そのおじさんの話が宝石のように得難く、貴重なものだったらしい。

 彼の話を聞くだけで、狭かった世界が広がったような気がしたのだと。

 

「そのおじさんってさ、記者か何かだったの?」

 

「はい、後になって分かった事なんですけど…。ルポライターという職業の人だったらしいです」

 

「へえー……」

 

 元ジャーナリストの真司としては、桜の話に出てきたおじさんという謎の人物が、自分と同じ職種だったのが非常に気になった。

 是非、一度会って取材のノウハウを教えて欲しいと思ったのだが、この十年間において、そのような人物の話を聞いた事は全く無い。

 おそらく、前の家族と同様に、間桐の家に来て以降は会っていないのだろう。詳しい話を聞くのは、それこそ無神経だ。

 

「あんまり長居してると夜になっちゃうからさ、…そろそろ、帰ろっか」

 

 真司はベンチから腰を上げ、立ち上がる。楽しい時間が終わるのは少しだけ名残惜しいと思う。だが、このように穏やかな締め括りも、偶には乙なものだ。

 

「………あっ」

 

 真司が立ち上がった事により、桜の右手が伸び上がる。そこで初めて、自分の手を握っていのだと気づいたようだ。

 大慌てで手を離し、胸元に引き寄せた。そして、所在無げに真司の後へと続いて来る。

 

「べっつに、手繋いだままでも良かったのにー。それこそ子どもの頃みたいで懐かしかったんだけどなー」

 

「あ、うぅ…。む、昔とは、もう色々と違うんですよ」

 

「まあ、桜ちゃんの言う通りかあ。俺も、そろそろ妹離れの時が来たのかも…。嬉しいような…悲しいような…、なんか複雑だ…」

 

 桜の言葉に何の疑いも抱かず納得し、真司は腕を組んで何度も頷く。感慨深い感情と、物寂しい感情が同時に込み上げて来る。

 しかし、感傷に浸る真司の後ろを歩く桜が、妹離れという言葉に対して酷く狼狽え、その認識を改めさせようと、再び手を握ってきた。

 

「今のはそう意味じゃなくって…。私にはまだまだ、兄さんが必要で…」

 

「本当ー? そこまで気遣ってくれなくてもいいんだよ?」

 

 戯けた仕草で、真司は振り返る。すると、桜はどこか真摯な面持ちで、真司の手にもう片方の手を重ねた。

 

「………本当です。もしも、兄さんが遊びに誘ってくれなかったら、私はずっと家で何もせずに過ごしてたんです。だから、その、今日はありがとうございました」

 

「あ、あははは。楽しんでくれたみたいで、良かった良かった」

 

 真司は気恥ずかしげに頬を掻き、感謝を述べる桜から目を逸らした。

 言えない。途中から本来の目的を忘れて、手前勝手に桜とのお出掛けを楽しんでいたなどとは。

 追及されては敵わない。真司は桜の手を誤魔化すように握り返す。そうして、足早に公園を後にすると決めた。




特に何事も無く、平和的に終わるかもしれない一日。
二人のお出掛けの内容は、HFの劇場版を見返して、なんとなーく思いついた感じであります。

感想、アドバイス、お待ちしております。

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